CHAIN

むひ

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知らないオジサン

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 次の日、目が覚めるとオジサンはいなかった。
少し落ち着いたのか不安が襲ってきた。
ママに怒られる。探してるのかな。やっぱり探すよね。
帰りたい気持ちと帰りたくない気持ちが交差した。
気分を変えようと外に出た。
公園の向こう側にもブルーシートで作られた小屋があり、誰かが小屋の前でラジオを聴きながらお酒?を飲んでいた。
その人はこっちに気付いた。
「おう、おめえか、シゲの連れてきたガキは」
オジサンは『シゲ』と言うらしい。
「全くあいつぁーよー、世話好きにも程があるってーの。ひっひっひ。そのうちよー、痛い目に遭わなきゃいいがな」
このおじさんは少し嫌な感じがした。嫌悪感って言うのかな。
無言で、立ち去るようにオジサンの小屋に戻った。お腹がすいてきた。オジサンが食べてたバッタ。
少しだけ食べてみようかな。オジサンが食べてたから食べられないものじゃないよね。
奥からタッパーを出し一匹出してみた。目を瞑って食べてみる。エビのような味がした。意外といけるかも。気がつくと二つ、三つ食べていた。
「おい坊主、起きたのか。バッタ食ってんじゃねぇか、なかなかいけるだろ。かっかっか!」
何故か恥ずかしくなった。
「大昔はよー昆虫とかも普通に食べてたんだ。そこにあるタンポポだって食べられるしよ。それがいつの間にか忘れられて、逆に嫌悪の対象になったんだ。便利になるのはいいが忘れられていく事も多いんだな」
ほらよっと、オジサンはあんぱんを放り投げる。
「明日からはちゃんと働いてもらうからな、この世の中はもらうだけってのはできねぇ。一方通行なんてありはしねぇんだ」
働くってどうやって。少し興味があった。頷いた。
オジサンは向こう側のおじさんにも酒を持って行った。
「おっさん元気か?酒ばっか飲んでっと体壊すぞ」
「うるせぇよ、シゲが持ってくるから飲んじまうんだぞ。おめぇ俺を殺そうとしてんだろ?いつもわりーなー」
「おめぇさんには仮があるからな。仮に溺れるなよ。かっかっかっ!」
「酒に溺れっ死ぬなら本望よ。ひっひっひっ」
「ばかやろう」と笑いながらオジサンは戻ってきた。
「近所付き合いも大変なのよ。かっかっかっ!」
ドスンと座るとオジサンは少し考え口を開いた。
「俺はな普通の生活を送ってたんだ。満員電車に揺られて会社に着けば上司に怒られ、家に帰れば嫁に怒られ、子供には無視されてたんだ。まあよう、俺が悪いんだけどな。仕事をしなきゃ家族は養えねぇだろ。家族の為と思って一生懸命働いたさ」
家族のために働いてるのに何で怒られたり無視されるんだろう。
「俺は不器用でよ、家族の気持ちなんて考えられなかったんだ。自分が疲れて仕事をする余裕しか無かったんだな。いや、仕事をしてる、俺が養ってるっていう慢心だったんだろうな。ある時家に帰ったら離婚届けが置いてあって誰もいなくなってた。俺のしてきた事はなんだったんだろうなって思ったよ。俺は全部捨てた。何もかもな。一回リセットして何が大事なのか見たかったんだ。人生とはなにか。未だに分からねぇ。だからお前はもっと分からねぇはずだ。それでいい。何が正解なんて死んでも分からねえんだ。だったらこれが正解だと思うしかないんじゃねぇかな」
オジサンは電気を付けた。
「もう暗くなってきたな。寝るとするか。明日は早えーからもう寝ろよ」
毛布にくるまるとオジサンのことを考えた。
家族か…
いつの間にか眠っていた。
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