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prologue 俺と"あいつ"
しおりを挟む空を全て黒く塗り潰したかのように暗い夜。星の瞬きの何倍も明るい月が顔を出し……窓から俺を照らす。窓から射し込む月光は、幻想的で美しく……まるで俺が物語の中に迷い込んだかのようだ。
いや…違うな。
そう思い、口の端を上げる。俺の今の境遇がそう思わせているのだ。
ましてーー………これから起きることは、誰に言っても…信じてもらえないだろう。
「楽しそうだな」
突如、背後に人の気配を感じる。
いやーー……この場合は人ではないのだが。
「今日も独りなのか…?」
"そいつ"は当たり前のことを俺に聞いた。
「ああ………お前にとっては好都合だと思うが?」
俺の答えが不服なのか、少し目を見開くと"そいつ"は、顔を顰めた。
「そうかもしれないが……お前は、本当はーーー……「腹が減っているんじゃないのか?話していないで食事にしたらどうだ?」
「………」
若干、怒気を含ませながら"そいつ"の言葉に被せる。
"そいつ"は口を噤んだかと思うと、先程までと雰囲気を変化させる。すると、"そいつ"の周りを取り囲む空気も変わった。
それは、"そいつ"の力によるものだと……何度も体験している俺は理解する。
これからする行為では、顔を隠すフードは邪魔になるのだろう……"そいつ"がフードを脱ぐ。
そして、俺の方に近付いた。近くに来たからか、"そいつ"の深紅の髪と瞳がはっきりと見える。光に照らされてその整った顔が、俺の方を見る。その美貌に思わず、溜息とともに言葉が零れる。
「………相変わらず、整った顔だな」
そう言うと苦笑しながら"そいつ"は、
「おかげさまで、食事には困っていないからな」
と答えた。
深紅の髪と双眸を持つ"そいつ"は人間じゃない。そのため、特別な食事が必要で………
俺ーーー……………アルファルドは、"そいつ"に食事を提供しているのだ。
"そいつ"の食事はーー……
ーーー…血だ。
そう、"そいつ"は世間で言うーー……
吸血鬼だった。
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