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第一部 第四章 隠された世界の真実
番外編 爆誕☆コゲマコ君~宇宙から飛来したキノコ胞子の恐怖~ ≪前編≫
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※こちらのお話はXのRP企画が発端です。
5400字+FFさんとの愉快なやりとりで生まれました。
時間軸……第二章、最終話の夜かな。笑
差し入れ作戦・黒いローブの少女の襲撃があった日の晩、ルーカスと双子の姉妹達がシリアスに話していた裏で起きていたかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
パラレルワールドと捉えて良いです。
世界線を越えて、色々とぶっ飛んだコミカルなお話です。
本編のシリアスから離れ、笑いの一時をどうぞお楽しみ下さい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
とある晩の事。
イリアは可笑しな夢を見た。
真っ新な空間に発生した、高温高密度の暗黒物体が膨張して、果てし無く広がって行く夢だ。
「どこまで広がるのだろう?」と、眺めていると、今度は突然、勢いよく巻き戻るかのように収縮していって。
——最期には大爆発を起こして弾け飛んだ。
キラキラと七色に光る粒子が飛散して、双子月が輝く夜空へと場面が変わる。
七色に光る粒が夜空の画布に数多の弧線を描いて、流れ星のように地上へ降り注ぐ、とても幻想的な光景が映し出された。
(キラキラ輝いて、宝石みたい……)
思いの他、空が近くに感じられる。
イリアは光に手が届きそうな気がして、手のひらを上に腕を伸ばした。
すると、流れ落ちたそれが手の中に舞い込んで来て、確認しようとしたところで——目が覚めた。
ゆるゆると瞼を開き、二、三度瞬きを繰り返せば、見慣れたベッドの天蓋と、そこへ向かって伸びる自分の腕が見えた。
「……ん。あ、れ……?」
目の前に映し出された光景と、先ほどまで見ていた光景が一致せず、軽く混乱する。
とりあえず、伸ばした手を戻して、ベッドに横たわる体を起こした。
辺りを見渡せば、ここは良く見知った公爵家の客室だった。
部屋は薄暗く、ベッドの横に備え付けられたテーブルには、暖かな橙色が灯る卓上の照明器具がある。
「えっと……夢?」
今日は色々な事があったせいかな。
妙に鮮明で、それでいて幻想的な夢を見てしまった。
ふと、先ほど伸ばしていた手が固く握られている事に気付く。
夢の中で、光る粒子へ届きそうだと思って伸ばした手だ。
心なしか握り込んだ手の中にほんのり熱を感じる。
イリアは不思議に思い、握った手を覗き込んだ。
一本ずつ、指を開いて伸ばして見ると……。
神々しく七色に輝く粒子が、手のひらにあった。
夢の中で見たそれだ。
宝石みたいだと思ったが重みはなく、予想外にほわほわして浮かんでいる。
綿毛のようにも見えるし、何とも不思議な物質だ。
それよりも何故、夢の中で見た物が現実にあるのだろう。
「何なんだろう、これ……」
不可思議な現象に、イリアは首を傾げた。
次の瞬間の事だ。
それは「ビュン!」と擬音が付きそうな程、勢い良く手のひらを一人でに離れ——超高速で線を描きどこかへと飛び去って行った。
通り道にはキラキラと虹色の残滓が舞っている。
……よくわからないけど、追いかけないといけない気がした。
「ま、待って!」
イリアは枕元に置いた淡い水色のストールを手に取るとベッドから抜け出し、軌跡を追った。
——光を追って行き着いたのは、厨房だ。
夜の厨房は静まり返っており、暗くて見通しが悪いのもあってほんの少し不気味だ。
それに不思議な事に、ここに来るまで誰とも出会わなかった。
公爵邸を守る騎士の姿も、いつもであれば近くに控えているはずの双子の姉妹やリシアの姿もなかった。
常とは違った様子の状況に、僅かな不安を抱きつつ、厨房の奥の方へと続く虹色の残滓を辿っていく。
そうして追いついた先にアレはあった。
「——な、なんでこれがここに!?」
イリアは上擦った声を上げた。
ゼノン殿下に「独創的な料理」と言わしめた、黒い物体のそれが、堂々と白い皿に乗って存在していたからだ。
「ちゃんと処分したはずなのに……!」
既視感だ。
昼食会の後、この手で確かにゴミ箱に突っ込んだはずだった。
何度も念入りに、ゴミ箱に収まっている事を確認したから間違いない。
なのに、存在するはずのない、悍ましい様相を呈したそれ——早く焼けた方がいいと思って、強火で炙ったら炭化したオムレツの成れの果て——は堂々と皿の上に乗っている。
そしてその真上に神々しい七色の光を放つ、ほわほわが浮かんでいた。
とにかく訳が分からない。
アレがここにある事も、ほわほわの事も。
どう理解すればいいのか、考えあぐねていると——。
ほわほわが降下してアレに吸い込まれていき、そして発光した。
七色から白へと色を変えた光が、黒い物体から洪水のように溢れ出る——。
「きゃっ!」
あまりにも眩しくて、咄嗟に眼前へ腕を掲げて光を遮り、瞼を閉じた。
正確な時間はわからないが、存外に長い時間、アレは光を放っていたように思う。
閉じた瞼越しには光を感じなくなり、恐る恐る瞼を開けば、光源が失われたそこは真っ暗闇に支配されていた。
(一体何が起きたの……?)
状況が飲み込めず唖然としていると。
「……よう、創造主」
闇の中から、声が聞こえた。
「え?」
この時は幻聴だと思った。
だって、ここには人の気配なんて全くないのだから。
「チッ。自分で生み出した被造物もわっかんねェのか?」
「被造物……え?」
だけど、舌を打つような音と、声が再び聞こえて、その考えを改める。
イリアは瞬きを繰り返し、闇に目を凝らすが、やはりよく見えない。
——と、そこで思い出す。
周りを照らす魔術があって、自分がそれを使えると言う事に。
活用しない手はない。
イリアは右の手のひらを胸の位置に掲げて紡ぐ。
『太陽よ』
そうすれば眩く発光する小さな球体が手の中に生まれた。
手のひらを離れ、天井近くまで高度を上げたそれは、まるで太陽のように周囲を明るく照らす——。
しかし、光を得て見通しが良くなった辺りを見回しても、人影はない。
「誰なの……?」
他に変わった様子もないし、可笑しな点と言えば、白い皿の上に乗った黒い物体がここにある事だけ。
まさかアレが言葉を発する訳がないし。
痛ましい姿のアレ——炭化したオムレツを見つめながら、そう思ったのだけど……。
「おいおい、ばっちり見えてんだろ?」
もぞり、とそれが蠢いた。
一瞬、自分の目を疑った。
けど、やっぱり見間違いじゃなくて。
もぞもぞ、と動いて、オムレツが皿の上から持ち上がるのが見えた。
……なんか、ひよこみたいな足が生えてる。
「え、えええ!?」
衝撃的すぎてお腹の底から声が出た。
あり得ない。
意味がわからない……!
よくよく見ると、オムレツの形をした黒いそれに、吊り上がった凛々しい眉毛と、丸い白目の中心に黒目のある瞳、V字型の口のような物がついていて、完全に顔が出来上がっていた。
さらに顔の頭頂部の片側に、エターク王国の国旗を飾ったピックがご丁寧にも立っており、反対側には白い卵の殻みたいな帽子が刺さって、赤い液体が垂れている。
ちょっとした恐怖だ。こわい。
「なんで!? だって、ただの焦げ卵——!!」
「創造主……自分で生み出しておいて、その呼び方はあんまりじゃねェか?」
それは、顔?体?から生やした手を腰?に当てて、ドスの利いた低い声を響かせた。
これが何なのかはわからないけど、元の物体を作り出した自覚は確かにある。
〝創造主〟とは多分、自分の事を差しているのだとイリアは思った。
5400字+FFさんとの愉快なやりとりで生まれました。
時間軸……第二章、最終話の夜かな。笑
差し入れ作戦・黒いローブの少女の襲撃があった日の晩、ルーカスと双子の姉妹達がシリアスに話していた裏で起きていたかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
パラレルワールドと捉えて良いです。
世界線を越えて、色々とぶっ飛んだコミカルなお話です。
本編のシリアスから離れ、笑いの一時をどうぞお楽しみ下さい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
とある晩の事。
イリアは可笑しな夢を見た。
真っ新な空間に発生した、高温高密度の暗黒物体が膨張して、果てし無く広がって行く夢だ。
「どこまで広がるのだろう?」と、眺めていると、今度は突然、勢いよく巻き戻るかのように収縮していって。
——最期には大爆発を起こして弾け飛んだ。
キラキラと七色に光る粒子が飛散して、双子月が輝く夜空へと場面が変わる。
七色に光る粒が夜空の画布に数多の弧線を描いて、流れ星のように地上へ降り注ぐ、とても幻想的な光景が映し出された。
(キラキラ輝いて、宝石みたい……)
思いの他、空が近くに感じられる。
イリアは光に手が届きそうな気がして、手のひらを上に腕を伸ばした。
すると、流れ落ちたそれが手の中に舞い込んで来て、確認しようとしたところで——目が覚めた。
ゆるゆると瞼を開き、二、三度瞬きを繰り返せば、見慣れたベッドの天蓋と、そこへ向かって伸びる自分の腕が見えた。
「……ん。あ、れ……?」
目の前に映し出された光景と、先ほどまで見ていた光景が一致せず、軽く混乱する。
とりあえず、伸ばした手を戻して、ベッドに横たわる体を起こした。
辺りを見渡せば、ここは良く見知った公爵家の客室だった。
部屋は薄暗く、ベッドの横に備え付けられたテーブルには、暖かな橙色が灯る卓上の照明器具がある。
「えっと……夢?」
今日は色々な事があったせいかな。
妙に鮮明で、それでいて幻想的な夢を見てしまった。
ふと、先ほど伸ばしていた手が固く握られている事に気付く。
夢の中で、光る粒子へ届きそうだと思って伸ばした手だ。
心なしか握り込んだ手の中にほんのり熱を感じる。
イリアは不思議に思い、握った手を覗き込んだ。
一本ずつ、指を開いて伸ばして見ると……。
神々しく七色に輝く粒子が、手のひらにあった。
夢の中で見たそれだ。
宝石みたいだと思ったが重みはなく、予想外にほわほわして浮かんでいる。
綿毛のようにも見えるし、何とも不思議な物質だ。
それよりも何故、夢の中で見た物が現実にあるのだろう。
「何なんだろう、これ……」
不可思議な現象に、イリアは首を傾げた。
次の瞬間の事だ。
それは「ビュン!」と擬音が付きそうな程、勢い良く手のひらを一人でに離れ——超高速で線を描きどこかへと飛び去って行った。
通り道にはキラキラと虹色の残滓が舞っている。
……よくわからないけど、追いかけないといけない気がした。
「ま、待って!」
イリアは枕元に置いた淡い水色のストールを手に取るとベッドから抜け出し、軌跡を追った。
——光を追って行き着いたのは、厨房だ。
夜の厨房は静まり返っており、暗くて見通しが悪いのもあってほんの少し不気味だ。
それに不思議な事に、ここに来るまで誰とも出会わなかった。
公爵邸を守る騎士の姿も、いつもであれば近くに控えているはずの双子の姉妹やリシアの姿もなかった。
常とは違った様子の状況に、僅かな不安を抱きつつ、厨房の奥の方へと続く虹色の残滓を辿っていく。
そうして追いついた先にアレはあった。
「——な、なんでこれがここに!?」
イリアは上擦った声を上げた。
ゼノン殿下に「独創的な料理」と言わしめた、黒い物体のそれが、堂々と白い皿に乗って存在していたからだ。
「ちゃんと処分したはずなのに……!」
既視感だ。
昼食会の後、この手で確かにゴミ箱に突っ込んだはずだった。
何度も念入りに、ゴミ箱に収まっている事を確認したから間違いない。
なのに、存在するはずのない、悍ましい様相を呈したそれ——早く焼けた方がいいと思って、強火で炙ったら炭化したオムレツの成れの果て——は堂々と皿の上に乗っている。
そしてその真上に神々しい七色の光を放つ、ほわほわが浮かんでいた。
とにかく訳が分からない。
アレがここにある事も、ほわほわの事も。
どう理解すればいいのか、考えあぐねていると——。
ほわほわが降下してアレに吸い込まれていき、そして発光した。
七色から白へと色を変えた光が、黒い物体から洪水のように溢れ出る——。
「きゃっ!」
あまりにも眩しくて、咄嗟に眼前へ腕を掲げて光を遮り、瞼を閉じた。
正確な時間はわからないが、存外に長い時間、アレは光を放っていたように思う。
閉じた瞼越しには光を感じなくなり、恐る恐る瞼を開けば、光源が失われたそこは真っ暗闇に支配されていた。
(一体何が起きたの……?)
状況が飲み込めず唖然としていると。
「……よう、創造主」
闇の中から、声が聞こえた。
「え?」
この時は幻聴だと思った。
だって、ここには人の気配なんて全くないのだから。
「チッ。自分で生み出した被造物もわっかんねェのか?」
「被造物……え?」
だけど、舌を打つような音と、声が再び聞こえて、その考えを改める。
イリアは瞬きを繰り返し、闇に目を凝らすが、やはりよく見えない。
——と、そこで思い出す。
周りを照らす魔術があって、自分がそれを使えると言う事に。
活用しない手はない。
イリアは右の手のひらを胸の位置に掲げて紡ぐ。
『太陽よ』
そうすれば眩く発光する小さな球体が手の中に生まれた。
手のひらを離れ、天井近くまで高度を上げたそれは、まるで太陽のように周囲を明るく照らす——。
しかし、光を得て見通しが良くなった辺りを見回しても、人影はない。
「誰なの……?」
他に変わった様子もないし、可笑しな点と言えば、白い皿の上に乗った黒い物体がここにある事だけ。
まさかアレが言葉を発する訳がないし。
痛ましい姿のアレ——炭化したオムレツを見つめながら、そう思ったのだけど……。
「おいおい、ばっちり見えてんだろ?」
もぞり、とそれが蠢いた。
一瞬、自分の目を疑った。
けど、やっぱり見間違いじゃなくて。
もぞもぞ、と動いて、オムレツが皿の上から持ち上がるのが見えた。
……なんか、ひよこみたいな足が生えてる。
「え、えええ!?」
衝撃的すぎてお腹の底から声が出た。
あり得ない。
意味がわからない……!
よくよく見ると、オムレツの形をした黒いそれに、吊り上がった凛々しい眉毛と、丸い白目の中心に黒目のある瞳、V字型の口のような物がついていて、完全に顔が出来上がっていた。
さらに顔の頭頂部の片側に、エターク王国の国旗を飾ったピックがご丁寧にも立っており、反対側には白い卵の殻みたいな帽子が刺さって、赤い液体が垂れている。
ちょっとした恐怖だ。こわい。
「なんで!? だって、ただの焦げ卵——!!」
「創造主……自分で生み出しておいて、その呼び方はあんまりじゃねェか?」
それは、顔?体?から生やした手を腰?に当てて、ドスの利いた低い声を響かせた。
これが何なのかはわからないけど、元の物体を作り出した自覚は確かにある。
〝創造主〟とは多分、自分の事を差しているのだとイリアは思った。
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