白い結婚なんてお断りですわ! DT騎士団長様の秘密の執愛

月夜野繭

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蜜月はいつまでも ②



「ところで、奴とエイベル男爵についてだが」

 クリストフが重々しい声で話しはじめる。
 エイベル男爵とはデリックの父親のことだ。
 わたしもその後デリックがどうなったのか知らなかったので、クリストフの言葉に耳をかたむけた。

「デリック・エイベルはこれまで、貴族に逆らえない平民の子女に対して淫行を繰り返していたようだ。エイベル男爵は息子の所業に気づいていたが、平民相手ということもありすべてを金で揉み消していた」
「まあ……」
「そんなわけで、過去の事件は証拠がない。だが、伯爵夫人であるミルドレッドへの暴力行為だけでも、相応の罪に問うことができそうだ。エイベル男爵家もな」

 平民の女の子にいたずらをしていたなんて。彼女たちはどれだけ怖かっただろう。
 大人のわたしだって、あんなに怖くて気持ち悪かったんだもの。
 暗い気持ちでうつむいていると、クリストフがつないでいた手を優しく握ってくれた。

「クリストフさま、わたくし、なにか被害に遭った少女たちの力になれないかしら」
「ミルドレッドの気持ちはわかるが、おそらく被害者が名乗り出るのも難しいだろう」
「そうですよね……」

 たしかに周囲の好奇の目もあるし、そんなことをされたと公になってしまったら、将来の縁談にも響くだろう。
 自分の無力さに悲しくなってきてしまった。
 そのとき、ずっと黙っていたヴィリアムが口を開いた。

「今の状況だと、デリックを極刑から終身刑に減刑する代わりに、エイベル男爵家の財産の大半を没収することになるでしょう。その財産をもとに、貧困層の女性を援助する基金を作ることならできるかもしれません」
「えっ、本当ですか?」
「はい。直接的な被害者救済にはなりませんが、貧困層の子女の教育などに回せれば、巡り巡ってこれから先の被害者を減らせる可能性はあります」

 平凡な見かけのヴィリアムが、なんだかすごいやり手に見えてきた。さすが将来の宰相候補。

「ありがとうございます! わたくしにできることなら、なんでも協力しますからおっしゃってくださいね」

 わたしも役に立ちたくてそう言ったら、クリストフに止められた。

「ミルドレッド、簡単にそんなことを言うんじゃない。とんでもないことに利用されたらどうする」
「ええ?」

 クリストフはちらりとヴィリアムを見て、警戒しているようだ。
 ヴィリアムはなんだかニヤニヤしている。

 あれ? もしかして、ヴィリアムは見た目どおりの穏やかで堅実な文官ではないのかしら。
 アレクシスがヴィリアムの横で、少し苦笑している。

「たしかに、うちの旦那さまをあんまり無条件に信用しないほうがいいかもしれないわ。役に立つと思われたら、どんどん使われてしまうわよ。これでも、切れ者の宰相補佐閣下ですから」

 ヴィリアムがアレクシスを見て、にっこりと微笑む。一見優しい笑顔だけど……言われてみると、なにか隠した腹黒そうな笑みにも見えてくる。

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