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まさかこんなにも翻弄されるなんて
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◆◆◆
彼の下から抜け出したくても、手がくっついているせいで抜け出せない。
シュティルが胸に秘めていた情熱は、思ったよりも激しくて。
二階にある私の部屋では聞いたこともないいやらしい音が響いていた。
「んっ、……あ、シュ、シュティ、ひぁ……っも、やめ……っ」
「イヴ、感じてる? 顔真っ赤で、かわいい……」
「ひ、ぁあン……っ」
くっついた掌が熱い。
ぶわっと波が押し寄せてきて、私の掌を押さえる彼の手をぎゅっと握った。
シュティルにはそれが嬉しいらしく、にぎにぎと何度も握り返してくる。
「イヴ……かわいい……ほんと……かわいい……すき……」
「そ、ンなに……っ、見つめ、ない、で……ん──っ」
シュティルがキスをしてきても、私の中にある長い指は私を翻弄するのをやめない。
私の上に跨るシュティルの重みで、身体がシーツに沈む。
どうして私の部屋でこんなことになったのか。
それは私が言った「いや」という言葉をシュティルが「一階では」「嫌だ」と受け取ったからだ。
ただ、私の胸を触る彼の手が思ったよりも気持ち良くて、思わず「いや」と言っただけだったのだけど! 確かに店として開けている一階で事に及ぶのは嫌だったけれど!
どうも彼は思い込みが激しい、というか話を聞かないところがあるらしい。
私の話を聞いているようで聞いていないシュティルは、手がくっついているせいで片手が塞がれているというのに、器用に私を担ぎ上げて階段を上がっていった。
運動音痴と言っていた割には、私を抱える彼の腕にはちゃんと筋肉がついているようで、私を抱えながら階段を上がる彼の足取りはスムーズだった。
────なんでこんなにも上手いのよ……!
失礼ながら彼は童貞ではないのかと衝撃を受けていた。
だってそうでしょう。陰気だし、友達の話をしないし、婚約者がいるっていう話も聞かない。
外に出るよりも引き籠って本を読んでいたい彼に恋愛経験があるなんて、正直思っていなかったのだ。失礼だけども。
なのに私を翻弄する指先は手慣れているかのように、私の中を探り、私を快楽の海に落としてくる。
「あっ、ぁあ、シュティ、ル……っ、もう、だめ、また、き、ちゃっ、ああ……!」
大きな波が私の身体を持ち上げて、落としてくる。
身体を実際に浮いていないけれど、この瞬間はいつもそうだ。
シュティルの指で初めての絶頂を覚えさせられたときも、そのあとも何度も味わわされた感覚だ。
私の中から彼の指の感触が消える。
ぼんやりとした眼差しで彼を見上げると、シュティルは私の雫で塗れた手をじーっと見つめていた。
「……イヴが俺の手でこんなにも濡れちゃうなんて、嬉しい」
そしてペロリと舐めて、恍惚と言った風にアメジスト色の目元と口元を緩める。
彼の微かな微笑みとその動作にドキっとしてしまった。
────なんて、いやらしいのか。
初めて彼に色気というものを感じたかもしれない。
カチャカチャと金属が擦れるような音が耳を打つ。
シュティルが制服のズボン寛げていたところだった。
さすがにソレを取り出す瞬間は見ていられなかったけど、もうそのときが来てしまったのだと思い知る。
「シュティル……私はもう家族もいないし、良い家柄の生まれでもないわ。あなたより六歳年上で、あなたよりも少し早くおばさんになっちゃう……本当に、私でいいのかもう少し考え──」
「生まれや年齢なんて関係ない。俺はイヴが好き本当に好き大好き。愛してるイヴしか考えられないくらい愛してる。永遠にずっと一緒にいたいくらい愛して」
「う、わ、わかった。わかったから……もう、言わないで」
シュティルに触れられながらずっと考えていたことを告げると、途中で情熱的に遮られてしまった。
愛の倍返しに頬が熱くなっていくのを感じて、私も覚悟を決めた。
シュティルのことは本当に嫌いじゃない。
かと言って、色恋関係になれるかと問われたら言い淀んでしまうけれど。
でも、流し流され、彼の勢いに圧され、ここまで来てしまった。
その間、不快だったかどうかと問われたら、嫌じゃなかった。
嫌ではなかったから、そこまで強く拒否はしなかった。
これはもう、そういうことなのかもしれない。
でも、年上の矜持とでも言うのか。それを認めるにはなんだか悔しい気持ちがして、まだまだシュティルに対してお姉さんぶりたい気持ちがある。
そしてその気持ちに自信もない。
恋愛事などご無沙汰だったから、不意打ちのような出来事に対しての動揺をときめきだと錯覚している可能性だってある。
だから、私は言わない。
「ああ、イヴ……イヴ、好き、大好き……」
「わかったから、もう言わないでってば……っんぅ」
「無理……言葉が勝手にあふれてきちゃうから無理。我慢できない……」
──好き。
熱く私を見つめ、愛を何度も囁きながらシュティルが私の中に入ってくる。
鈍い痛みをもたらす圧に私は微かに呻きながら、握り合ったままの手をぎゅっと握った。
しかし思ったよりも痛くないのは、シュティルがたくさん良くしてくれたからかもしれない。
噂に聞いていた痛みをそこまで感じることなく、私は処女卒業の瞬間を迎えた。
「ああやばい……イヴ、大好き。大好き……」
「……そんなに、何回も……言わないでってば……ンッ」
あふれる想いをぶつけるかのように、情熱的なキスが始まる。
ちゅるちゅると唇を吸い、舌を入れ込んで、絡めて、歯列をなぞる動きに力が抜けていく。
吐息を飲ませるかのように彼が吐くぬるやかな空気が入り込んで微かに喘ぐ。
長く長く、キスは続いた。
もう、唇がひりひりしちゃうくらいに長く。
彼の下から抜け出したくても、手がくっついているせいで抜け出せない。
シュティルが胸に秘めていた情熱は、思ったよりも激しくて。
二階にある私の部屋では聞いたこともないいやらしい音が響いていた。
「んっ、……あ、シュ、シュティ、ひぁ……っも、やめ……っ」
「イヴ、感じてる? 顔真っ赤で、かわいい……」
「ひ、ぁあン……っ」
くっついた掌が熱い。
ぶわっと波が押し寄せてきて、私の掌を押さえる彼の手をぎゅっと握った。
シュティルにはそれが嬉しいらしく、にぎにぎと何度も握り返してくる。
「イヴ……かわいい……ほんと……かわいい……すき……」
「そ、ンなに……っ、見つめ、ない、で……ん──っ」
シュティルがキスをしてきても、私の中にある長い指は私を翻弄するのをやめない。
私の上に跨るシュティルの重みで、身体がシーツに沈む。
どうして私の部屋でこんなことになったのか。
それは私が言った「いや」という言葉をシュティルが「一階では」「嫌だ」と受け取ったからだ。
ただ、私の胸を触る彼の手が思ったよりも気持ち良くて、思わず「いや」と言っただけだったのだけど! 確かに店として開けている一階で事に及ぶのは嫌だったけれど!
どうも彼は思い込みが激しい、というか話を聞かないところがあるらしい。
私の話を聞いているようで聞いていないシュティルは、手がくっついているせいで片手が塞がれているというのに、器用に私を担ぎ上げて階段を上がっていった。
運動音痴と言っていた割には、私を抱える彼の腕にはちゃんと筋肉がついているようで、私を抱えながら階段を上がる彼の足取りはスムーズだった。
────なんでこんなにも上手いのよ……!
失礼ながら彼は童貞ではないのかと衝撃を受けていた。
だってそうでしょう。陰気だし、友達の話をしないし、婚約者がいるっていう話も聞かない。
外に出るよりも引き籠って本を読んでいたい彼に恋愛経験があるなんて、正直思っていなかったのだ。失礼だけども。
なのに私を翻弄する指先は手慣れているかのように、私の中を探り、私を快楽の海に落としてくる。
「あっ、ぁあ、シュティ、ル……っ、もう、だめ、また、き、ちゃっ、ああ……!」
大きな波が私の身体を持ち上げて、落としてくる。
身体を実際に浮いていないけれど、この瞬間はいつもそうだ。
シュティルの指で初めての絶頂を覚えさせられたときも、そのあとも何度も味わわされた感覚だ。
私の中から彼の指の感触が消える。
ぼんやりとした眼差しで彼を見上げると、シュティルは私の雫で塗れた手をじーっと見つめていた。
「……イヴが俺の手でこんなにも濡れちゃうなんて、嬉しい」
そしてペロリと舐めて、恍惚と言った風にアメジスト色の目元と口元を緩める。
彼の微かな微笑みとその動作にドキっとしてしまった。
────なんて、いやらしいのか。
初めて彼に色気というものを感じたかもしれない。
カチャカチャと金属が擦れるような音が耳を打つ。
シュティルが制服のズボン寛げていたところだった。
さすがにソレを取り出す瞬間は見ていられなかったけど、もうそのときが来てしまったのだと思い知る。
「シュティル……私はもう家族もいないし、良い家柄の生まれでもないわ。あなたより六歳年上で、あなたよりも少し早くおばさんになっちゃう……本当に、私でいいのかもう少し考え──」
「生まれや年齢なんて関係ない。俺はイヴが好き本当に好き大好き。愛してるイヴしか考えられないくらい愛してる。永遠にずっと一緒にいたいくらい愛して」
「う、わ、わかった。わかったから……もう、言わないで」
シュティルに触れられながらずっと考えていたことを告げると、途中で情熱的に遮られてしまった。
愛の倍返しに頬が熱くなっていくのを感じて、私も覚悟を決めた。
シュティルのことは本当に嫌いじゃない。
かと言って、色恋関係になれるかと問われたら言い淀んでしまうけれど。
でも、流し流され、彼の勢いに圧され、ここまで来てしまった。
その間、不快だったかどうかと問われたら、嫌じゃなかった。
嫌ではなかったから、そこまで強く拒否はしなかった。
これはもう、そういうことなのかもしれない。
でも、年上の矜持とでも言うのか。それを認めるにはなんだか悔しい気持ちがして、まだまだシュティルに対してお姉さんぶりたい気持ちがある。
そしてその気持ちに自信もない。
恋愛事などご無沙汰だったから、不意打ちのような出来事に対しての動揺をときめきだと錯覚している可能性だってある。
だから、私は言わない。
「ああ、イヴ……イヴ、好き、大好き……」
「わかったから、もう言わないでってば……っんぅ」
「無理……言葉が勝手にあふれてきちゃうから無理。我慢できない……」
──好き。
熱く私を見つめ、愛を何度も囁きながらシュティルが私の中に入ってくる。
鈍い痛みをもたらす圧に私は微かに呻きながら、握り合ったままの手をぎゅっと握った。
しかし思ったよりも痛くないのは、シュティルがたくさん良くしてくれたからかもしれない。
噂に聞いていた痛みをそこまで感じることなく、私は処女卒業の瞬間を迎えた。
「ああやばい……イヴ、大好き。大好き……」
「……そんなに、何回も……言わないでってば……ンッ」
あふれる想いをぶつけるかのように、情熱的なキスが始まる。
ちゅるちゅると唇を吸い、舌を入れ込んで、絡めて、歯列をなぞる動きに力が抜けていく。
吐息を飲ませるかのように彼が吐くぬるやかな空気が入り込んで微かに喘ぐ。
長く長く、キスは続いた。
もう、唇がひりひりしちゃうくらいに長く。
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