うちの魔王が弱いんです

ゆまん

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魔王ってどれぐらい強ければ倒せるの?

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高い空はとても青く。
広がる草原は深緑で美しい。
白い雲が俺たちの背中を押してくれる。
そう。ここはRPGの世界。


少し暑いある晴れた初夏の日だった。
戦いに負けて、町に戻ったはいいものの食べ物がなく道端で倒れている俺を助けてくれたのは自称『魔王』のとんでもないやつだった。
魔王と名乗る割には小柄で178cmの俺より10cmは低い。童顔で偉そうに喋る男だ。


俺は小さい頃から勇者になるのが夢だった。小さい頃から修行をしてきて、やっと旅立つ決心をして18になって親元を離れて色々な街を見てきた。
いつか北の山に住む魔王を倒して北の大国「キャピラス」の王様から報酬をたくさん貰い、大金持ちになって親を安心させてやるつもりだった。
たが、俺の修行は足りなかったのだろうか。
北の山の入口で銀色の長い髪の男に惨敗した。スラッとした立ち姿で俺を見下ろし「もう来んなよ」と呟いていなくなってしまった。
そこから俺は街に戻ったのだ。



街から北の山の頂上に連れてこられた。
頂上には立派とは言えないがそれっぽい城が建っていた。
「こんなんじゃ力も出ないのだ。もっと勇者は強く、立派であるべきだぞ!」
『魔王がそんなこと言って、倒されたらどうするの。』
「大丈夫だ!倒されないからな!」
魔王の両方のほっぺたを摘みあげた。
「いひゃい!いひゃいぞ!魔王になんてこと、失敬な!」
『ほうら。よわい。』
「そんなことされたら痛いに決まってるだろう!私は知恵と才能があるのだ!」
俺は腰にかけてあるショルダーの中から母国ピステルの旗を出した。ピステルはここよりずっと南にあるそれなりの強国だ。
『ねぇここの国の名前知ってる?』
知らない奴なんて赤ちゃんぐらい。キャピラスより有名だ。
「あー、見たことはある!見たことはあるぞ!」
『やっぱり、頭も弱いんだ。』
「ふむ?頭も弱いだとぉ?魔王への冒涜ぼうとくじゃあ!えいっ!えいっ!」
弱い力で俺の腰のあたりをパンパン叩く。
俺はこんなやつのために今まで剣術を磨いた訳では無い。
『あんたが魔王ならこの世界のラスボスは誰なの?』
「私がこの世界のラスボスだ!」
『は?』
理解ができなかった。

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