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23.立ち去りなさい
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謁見の間の重厚な扉が音もなく静かに開いた。
そこに立っていたのは宮廷魔術師長の正装である深い蒼のローブをまとった私、フィーナ・セレスティア。ローブにはグリゼルダ皇国の紋章が燦然と輝く。
私が一歩、また一歩と玉座へ向かって歩を進める。
貴族たちはいきなり現れた見慣れない女を訝しげに見つめた。
「な……何者だ、貴様は……?」
「その顔……どこかで……。まさか……いや、そんなはずは……」
次第に確信めいた動揺へと変わっていく。
彼らの記憶にあるのは常に青白い顔で壁際に佇み、震えていた『幽霊令嬢』の姿。目の前にいる、穏やかに気品を放つ女性とどうしても結びつかない。
「フィーナ……・セレスティア……? 『出来損ない』の……!?」
ある貴族が吐き捨てるように言った。
その言葉を聞いた瞬間、ロイエルの空気が一変し凄まじい圧が放たれる。
「……貴様、今なんと言った」
「ロイエル」
凛と響いたその声に、彼は落ち着きを取り戻す。
私は「ありがとう」と伝えるように、そっと微笑みかけた。
玉座の少し手前で足を止めると、ゆっくりと彼らに向き直った。
見覚えのある顔がいくつも混じっている。
かつて私を嘲笑っていた者たちの顔。
「皆様、お久しぶりです。セレスティア家のフィーナです。そして……その不名誉な愛称で私を呼ぶことを許すのはこれが最後です」
その一言で貴族たちが青ざめる。
「驚いているようですね。あなた方が私を捨て、そしてあなた方が見捨てた土地、グランフェルドで何が起きたのか、まだご存じないよう」
私は真実を宣告する。
「グランフェルドは甦りました。あなた方が搾り取り、死に至らしめたあの土地は今や生命の息吹に満ちた聖地となっています。そしてそれを成し遂げたのは、あなた方が『出来損ない』と蔑んだこの私です」
「な……なにを……」
「馬鹿なことを……! あの死の大地が……お前のような女に……!」
信じられないと首を振る彼らに、私は最後の宣告を下した。
その声はかつて私が受けた数多の罵声とは真逆の、どこまでも勇敢な響きを持っていた。
「このグリゼルダ皇国はエリオット王国の都合のいい避難所ではありません。ここはあなた方が虐げ、見下してきた人々が自らの力で未来を切り拓いた場所です。この国にあなたたちの居場所はありません。―――どこへでも立ち去りなさい!」
瞬間、私の周りを舞っていた精霊たちが威嚇するように強い光を放った。謁見の間の空気がピンと張り詰め、貴族たちは見えない力に押しつぶされるかのように後ずさる。
「ひぃぃぃ……!!!」
誰かが悲鳴を上げ、みっともなく床に尻餅をついた。
それを皮切りに秩序は完全に崩壊した。
先程までの傲慢な態度は見る影もなく、彼らは我先にと扉へ殺到し、互いを押しのけ、もつれ合いながら、這うようにして謁見の間から逃げ去っていった。
あっという間に静寂が戻った謁見の間で、ロイエルが私のそばに駆け寄ってきた。
「フィーナ! よく言った! あいつらにはあれくらい言わないと分からん!」
玉座のアウレリア陛下も満足げな笑みを浮かべていた。
「宮廷魔術師長、フィーナ・セレスティア。見事な初仕事でした。あなたこそこの国の誇りです」
「もったいなきお言葉です。彼らが口にした『厄災』とやらも自分たちの行いが招いたことでしょう。これよりはただ、このグリゼルダ皇国の未来のためだけに力を尽くしてまいります」
私は胸に手を当て、深くお辞儀をした。
もう誰の言葉にも傷つかない。誰の侮蔑にも怯えない。
私には守るべき国と愛する人々がいる。
この力はそのためにこそあるのだから。
私を捨てたあの国の行く末も、そこに残った者たちの声ももう私の心には届かない。
決意を新たに顔を上げると、ロイエルが愛おしさに満ちた瞳で私に微笑みかけてくれた。
そこに立っていたのは宮廷魔術師長の正装である深い蒼のローブをまとった私、フィーナ・セレスティア。ローブにはグリゼルダ皇国の紋章が燦然と輝く。
私が一歩、また一歩と玉座へ向かって歩を進める。
貴族たちはいきなり現れた見慣れない女を訝しげに見つめた。
「な……何者だ、貴様は……?」
「その顔……どこかで……。まさか……いや、そんなはずは……」
次第に確信めいた動揺へと変わっていく。
彼らの記憶にあるのは常に青白い顔で壁際に佇み、震えていた『幽霊令嬢』の姿。目の前にいる、穏やかに気品を放つ女性とどうしても結びつかない。
「フィーナ……・セレスティア……? 『出来損ない』の……!?」
ある貴族が吐き捨てるように言った。
その言葉を聞いた瞬間、ロイエルの空気が一変し凄まじい圧が放たれる。
「……貴様、今なんと言った」
「ロイエル」
凛と響いたその声に、彼は落ち着きを取り戻す。
私は「ありがとう」と伝えるように、そっと微笑みかけた。
玉座の少し手前で足を止めると、ゆっくりと彼らに向き直った。
見覚えのある顔がいくつも混じっている。
かつて私を嘲笑っていた者たちの顔。
「皆様、お久しぶりです。セレスティア家のフィーナです。そして……その不名誉な愛称で私を呼ぶことを許すのはこれが最後です」
その一言で貴族たちが青ざめる。
「驚いているようですね。あなた方が私を捨て、そしてあなた方が見捨てた土地、グランフェルドで何が起きたのか、まだご存じないよう」
私は真実を宣告する。
「グランフェルドは甦りました。あなた方が搾り取り、死に至らしめたあの土地は今や生命の息吹に満ちた聖地となっています。そしてそれを成し遂げたのは、あなた方が『出来損ない』と蔑んだこの私です」
「な……なにを……」
「馬鹿なことを……! あの死の大地が……お前のような女に……!」
信じられないと首を振る彼らに、私は最後の宣告を下した。
その声はかつて私が受けた数多の罵声とは真逆の、どこまでも勇敢な響きを持っていた。
「このグリゼルダ皇国はエリオット王国の都合のいい避難所ではありません。ここはあなた方が虐げ、見下してきた人々が自らの力で未来を切り拓いた場所です。この国にあなたたちの居場所はありません。―――どこへでも立ち去りなさい!」
瞬間、私の周りを舞っていた精霊たちが威嚇するように強い光を放った。謁見の間の空気がピンと張り詰め、貴族たちは見えない力に押しつぶされるかのように後ずさる。
「ひぃぃぃ……!!!」
誰かが悲鳴を上げ、みっともなく床に尻餅をついた。
それを皮切りに秩序は完全に崩壊した。
先程までの傲慢な態度は見る影もなく、彼らは我先にと扉へ殺到し、互いを押しのけ、もつれ合いながら、這うようにして謁見の間から逃げ去っていった。
あっという間に静寂が戻った謁見の間で、ロイエルが私のそばに駆け寄ってきた。
「フィーナ! よく言った! あいつらにはあれくらい言わないと分からん!」
玉座のアウレリア陛下も満足げな笑みを浮かべていた。
「宮廷魔術師長、フィーナ・セレスティア。見事な初仕事でした。あなたこそこの国の誇りです」
「もったいなきお言葉です。彼らが口にした『厄災』とやらも自分たちの行いが招いたことでしょう。これよりはただ、このグリゼルダ皇国の未来のためだけに力を尽くしてまいります」
私は胸に手を当て、深くお辞儀をした。
もう誰の言葉にも傷つかない。誰の侮蔑にも怯えない。
私には守るべき国と愛する人々がいる。
この力はそのためにこそあるのだから。
私を捨てたあの国の行く末も、そこに残った者たちの声ももう私の心には届かない。
決意を新たに顔を上げると、ロイエルが愛おしさに満ちた瞳で私に微笑みかけてくれた。
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