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6.街の実態調査
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――――翌日。朝の光が差し込むホールに数名の職員とオドネルを集めていた。
「皆さん、おはようございます。昨日はご苦労様でした。今日は街へ出ます」
壁に貼り出した大きな街の地図を指し示し、きっぱりと告げた。
「机上の資料は古いものばかり。今の街を知らなければ再生計画など立てられません。自分の目で見て、耳で聞いて、この街の現状を正確に把握します」
私の周りにはささやかながらも前に進もうとする熱気が生まれていた。彼らはもう、昨日までの無気力な役人ではない。
「オドネルは護衛を。皆さんは記録をお願いします。さあ、行きましょう」
私自ら先頭に立って街へと足を踏み出した。まず、かろうじて日用品を商う店が数軒残る市場跡地へと向かった。さびれた道端で痩せた野菜を並べる老婦人に膝を折って目線を合わせ、穏やかに話しかける。
「こんにちは、お母さん。新しい市長のルティアと申します。カブを一ついただけますか?」
老婦人は目をぱちくりさせ、市長を名乗る目の前の女性を見返した。その穏やかな眼差しにこわばっていた顔が緩む。
「……本当に市長様なのかい。ああ……カブなら一つ銅貨一枚だよ」
「ありがとうございます。ところでこの街で一番困っていることは何ですか? どんなことでも構いません。教えていただけませんか」
その問いに老婦人は溜め息をついた。
「全部さ。仕事もなけりゃ、まともな食い物もない。昔は腕のいい職人たちがたくさんいて、市場も人でごった返していたもんだけどねえ。今じゃあ夜になるとゴロツキがうろついて、このわずかな野菜すら盗まれることもある」
同行していた職員に「治安の悪化、食料不足、技術者の失業」とメモを取るよう指示する。次に訪れたのは壊れた水路が放置されている居住区。唯一稼働している井戸には水を汲むための長い列ができていた。列に並ぶ人々に断りを入れ、井戸の構造や水の量、水質を手早く確認する。そして、元石工だという男性に声をかけた。
「この水路、あなたの技術があれば修理は可能ですか?」
「資材がなきゃ始まらないし、報酬もない。技術だけじゃ腹は満たせない」
「もし資材と正当な報酬が用意されるとしたら?」
バルトマーと名乗る男性は黙る。彼は職人としての誇りを忘れていないと感じ取った。
一行は街を隅々まで歩き、住民一人一人に耳を傾けた。集まる情報はどれも深刻なものばかりだったが、私の表情は曇るどころか、ますます輝きを増していくよう。それらすべてが解決すべき課題であり、改善の余地を示すデータに他ならなかったから。
陽が傾きかけた頃、市庁舎に戻った一行は疲労困憊だったが、その顔には達成感がにじんでいた。集まった情報を地図の上に次々と書き込んでいく。
「総人口のうち労働可能な人口は約半数。食料備蓄は乏しく、水の供給は井戸一つに依存。インフラはほぼすべてが機能不全。しかし…」
ペンを置き、職員たちを見渡した。
「石工、鍛冶屋、織物職人、料理人…この街にはまだ、再生の核となる『人』という名の宝が眠っています」
絶望的なデータの中から、はっきりと希望を見出していた。
「皆さん、よく見てください。これが私たちのスタート地点です。やるべきことは山積みですが、一つ一つ解決していけばこの街は必ず変わる」
再生へのロードマップは今まさに頭の中で鮮明な輪郭を描き始めていた。
「皆さん、おはようございます。昨日はご苦労様でした。今日は街へ出ます」
壁に貼り出した大きな街の地図を指し示し、きっぱりと告げた。
「机上の資料は古いものばかり。今の街を知らなければ再生計画など立てられません。自分の目で見て、耳で聞いて、この街の現状を正確に把握します」
私の周りにはささやかながらも前に進もうとする熱気が生まれていた。彼らはもう、昨日までの無気力な役人ではない。
「オドネルは護衛を。皆さんは記録をお願いします。さあ、行きましょう」
私自ら先頭に立って街へと足を踏み出した。まず、かろうじて日用品を商う店が数軒残る市場跡地へと向かった。さびれた道端で痩せた野菜を並べる老婦人に膝を折って目線を合わせ、穏やかに話しかける。
「こんにちは、お母さん。新しい市長のルティアと申します。カブを一ついただけますか?」
老婦人は目をぱちくりさせ、市長を名乗る目の前の女性を見返した。その穏やかな眼差しにこわばっていた顔が緩む。
「……本当に市長様なのかい。ああ……カブなら一つ銅貨一枚だよ」
「ありがとうございます。ところでこの街で一番困っていることは何ですか? どんなことでも構いません。教えていただけませんか」
その問いに老婦人は溜め息をついた。
「全部さ。仕事もなけりゃ、まともな食い物もない。昔は腕のいい職人たちがたくさんいて、市場も人でごった返していたもんだけどねえ。今じゃあ夜になるとゴロツキがうろついて、このわずかな野菜すら盗まれることもある」
同行していた職員に「治安の悪化、食料不足、技術者の失業」とメモを取るよう指示する。次に訪れたのは壊れた水路が放置されている居住区。唯一稼働している井戸には水を汲むための長い列ができていた。列に並ぶ人々に断りを入れ、井戸の構造や水の量、水質を手早く確認する。そして、元石工だという男性に声をかけた。
「この水路、あなたの技術があれば修理は可能ですか?」
「資材がなきゃ始まらないし、報酬もない。技術だけじゃ腹は満たせない」
「もし資材と正当な報酬が用意されるとしたら?」
バルトマーと名乗る男性は黙る。彼は職人としての誇りを忘れていないと感じ取った。
一行は街を隅々まで歩き、住民一人一人に耳を傾けた。集まる情報はどれも深刻なものばかりだったが、私の表情は曇るどころか、ますます輝きを増していくよう。それらすべてが解決すべき課題であり、改善の余地を示すデータに他ならなかったから。
陽が傾きかけた頃、市庁舎に戻った一行は疲労困憊だったが、その顔には達成感がにじんでいた。集まった情報を地図の上に次々と書き込んでいく。
「総人口のうち労働可能な人口は約半数。食料備蓄は乏しく、水の供給は井戸一つに依存。インフラはほぼすべてが機能不全。しかし…」
ペンを置き、職員たちを見渡した。
「石工、鍛冶屋、織物職人、料理人…この街にはまだ、再生の核となる『人』という名の宝が眠っています」
絶望的なデータの中から、はっきりと希望を見出していた。
「皆さん、よく見てください。これが私たちのスタート地点です。やるべきことは山積みですが、一つ一つ解決していけばこの街は必ず変わる」
再生へのロードマップは今まさに頭の中で鮮明な輪郭を描き始めていた。
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