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強行と喪失
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部屋に残ったのはグラントと私、二人きりだった。外から差し込む夜の明かりがまざまざと私たちの暗い表情を照らし出す。私は布団の上に腰を下ろし、グラントを見上げながら小さく息をついた。
「ごめんね。こんなやり方、良くないのはわかってる。でも、もうやむを得なかったの」
思えば初めて私が“強硬手段”に出た瞬間だった。グラントは憔悴した面持ちで私の隣に座り込む。
「リリアナ……俺が情けないから、こんなことさせてしまって本当にすまない」
「謝らないで。私も引き返せなくなってるの。あなたが夜ごとヴィーネを抱きしめて寝ている姿を見るのはつらかった。少しでも隣にいる時間を取り戻したくて……」
体中が震える。やがてグラントはそっと私を包み込もうとした。私は一瞬身を強張らせたものの、その温もりにほっとする。こんなにも夫の肌が恋しかった……。
グラントは唇を噛みながら、言葉を探すように問いかける。
「隣にいてくれるか? 俺のベッドで」
「ええ……。私はあなたと一緒に寝たい。例えあなたが今、ヴィーネを必要としているとしても、今夜だけは私を選んで」
その申し出にかすかに戸惑うような表情を浮かべながらも、グラントは小さく首を縦に振る。私たちは慎重に、はぐれた夫婦が再び同じズレた歯車を合わせるように、そっと寄り添い合った。
腕の中に夫の存在を感じる。彼の吐息、心臓の鼓動……。こんなにも近くに感じるのはいつ以来だろうか。胸が熱くなる。
「リリアナ……ありがとう」
「ううん。私こそ、ごめんね。もっと早くあなたの心に向き合うべきだったのに」
私たちは互いの体温を確かめるように、静かに抱き合った。そのまま自然と瞼が重くなる。彼と触れ合った安心感が不眠症のような夜にあたたかな毛布をかける。二人で眠ることの、どうしようもないほどの懐かしさと安堵感に包まれながら――私はこのまま時間が止まってほしいと願った。
◇◇◇
朝日が射し込む頃、私はゆっくりと目を覚ました。隣を見ると、グラントの穏やかな寝顔があった。彼の腕の中で眠っていたのだ。正確には私が彼に腕を回して眠っていたのかもしれない。ただ、それだけで心が浮くような気がした。
(……久しぶりに、夫婦らしく眠れた)
私の腕の中でグラントが小さく身動きする。彼の目が開き「あ……」と気まずそうに呟いた。
「ごめん、リリアナ。苦しくなかったか?」
「大丈夫。あなたこそ、私が邪魔じゃなかった?」
「ううん。むしろ、この安らぎを忘れてたなって感じた」
その言葉に胸がきゅっとなる。私もそうだ。夫婦の当たり前のはずが当たり前ではなかった日々がこんなにも重くのしかかっていた。私たちは起き上がり、服を整えたあと、ふと互いに言葉を失った。
すぐに思い出す。ヴィーネのことを――。彼女はどんな夜を過ごしたのだろう。いつもなら隣にいるはずの人がいなかったのだ。孤独と不安で泣いていたかもしれない。それを思うと罪悪感が湧き上がる。
けれど、同時に"あれでいいのだ"と自分に言い聞かせるもう一人の自分もいる。私は妻だ。グラントは私の夫だ。奪われてなるものかという確たる感情があった。
「ごめんね。こんなやり方、良くないのはわかってる。でも、もうやむを得なかったの」
思えば初めて私が“強硬手段”に出た瞬間だった。グラントは憔悴した面持ちで私の隣に座り込む。
「リリアナ……俺が情けないから、こんなことさせてしまって本当にすまない」
「謝らないで。私も引き返せなくなってるの。あなたが夜ごとヴィーネを抱きしめて寝ている姿を見るのはつらかった。少しでも隣にいる時間を取り戻したくて……」
体中が震える。やがてグラントはそっと私を包み込もうとした。私は一瞬身を強張らせたものの、その温もりにほっとする。こんなにも夫の肌が恋しかった……。
グラントは唇を噛みながら、言葉を探すように問いかける。
「隣にいてくれるか? 俺のベッドで」
「ええ……。私はあなたと一緒に寝たい。例えあなたが今、ヴィーネを必要としているとしても、今夜だけは私を選んで」
その申し出にかすかに戸惑うような表情を浮かべながらも、グラントは小さく首を縦に振る。私たちは慎重に、はぐれた夫婦が再び同じズレた歯車を合わせるように、そっと寄り添い合った。
腕の中に夫の存在を感じる。彼の吐息、心臓の鼓動……。こんなにも近くに感じるのはいつ以来だろうか。胸が熱くなる。
「リリアナ……ありがとう」
「ううん。私こそ、ごめんね。もっと早くあなたの心に向き合うべきだったのに」
私たちは互いの体温を確かめるように、静かに抱き合った。そのまま自然と瞼が重くなる。彼と触れ合った安心感が不眠症のような夜にあたたかな毛布をかける。二人で眠ることの、どうしようもないほどの懐かしさと安堵感に包まれながら――私はこのまま時間が止まってほしいと願った。
◇◇◇
朝日が射し込む頃、私はゆっくりと目を覚ました。隣を見ると、グラントの穏やかな寝顔があった。彼の腕の中で眠っていたのだ。正確には私が彼に腕を回して眠っていたのかもしれない。ただ、それだけで心が浮くような気がした。
(……久しぶりに、夫婦らしく眠れた)
私の腕の中でグラントが小さく身動きする。彼の目が開き「あ……」と気まずそうに呟いた。
「ごめん、リリアナ。苦しくなかったか?」
「大丈夫。あなたこそ、私が邪魔じゃなかった?」
「ううん。むしろ、この安らぎを忘れてたなって感じた」
その言葉に胸がきゅっとなる。私もそうだ。夫婦の当たり前のはずが当たり前ではなかった日々がこんなにも重くのしかかっていた。私たちは起き上がり、服を整えたあと、ふと互いに言葉を失った。
すぐに思い出す。ヴィーネのことを――。彼女はどんな夜を過ごしたのだろう。いつもなら隣にいるはずの人がいなかったのだ。孤独と不安で泣いていたかもしれない。それを思うと罪悪感が湧き上がる。
けれど、同時に"あれでいいのだ"と自分に言い聞かせるもう一人の自分もいる。私は妻だ。グラントは私の夫だ。奪われてなるものかという確たる感情があった。
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