夜を開ける…

月が満ちる

さっきまで雲に隠れていた月がおぼろげに姿を現した…

今、私は深夜の街道を南西へと向かうクルマの助手席に座っている。

城ヶ島と言う神奈川県の三浦半島にある島から朝日を見るために。

フロントガラス越しに見えていた雲間から光が漏れていたのであの辺あたりに月があるんだろうなぁと漠然と思っていたけど、完全に月が現れるまで今日が満月だって知らなかった…

月には不思議な魅力がある…私は幼い頃からそう感じていた。特に満月。

ねぇタケシ、人が生きてる間に満月を見られる回数って知ってる？

隣でハンドルを握る彼に質問してみる。

そんなの意識したことないけど…100回位じゃん…

彼はそんなの分かる訳ないだろうと深く考えもせずに言った。

惜しいけど違うわ。
月は約１ヶ月にいち度満月になるから見られる回数は生きてる年数×12よ。
タケシが100歳まで生きればおおよそ120回だけど、赤ちゃんや物心つくまでは満月って分からないし、その全部が晴れるとも限らない…そもそも意識しないと満月だって気が付かない時もある。

だからきっと100回もチャンスはないはずよ。

また面倒くさいこと言って、そう言うのヒカリは好きだよな…

彼はまたかと言うようにため息混じりに言った。

ーねぇ、2人でこうして満月を見られるのってあと何回だろうねー

その言葉は声に出さずに心にしまっておいた…