夜を開ける…

夜が明けても

※ ↑タップして見てください(星が見えます)

ーータケシが子どもの頃に通っていた学校を見てみたいなーー

『何だよ突然、もう随分前に統合されて廃校になってるし、そんな所に行っても仕方ないじゃん』

ーーでも見たいのーー

『ほんとお前は変わってるよな』

私のワガママに渋々承諾してくれたタケシはそれでもどこか嬉しそうだった

中央道から富士吉田線に分岐して河口湖ICで降りたあと、月明かりに照らされる富士山を横目に樹海を過ぎ、甲州いろはと呼ばれる山道を抜けて、ようやくたどり着いたこの場所

「中に入れるみたいだから行って見ようか」

誰もいない静まり返った校庭の先には体育館と校舎が佇んでいる
その上にはカシオペア座や北極星なんかも見えた

ここで育ったんだ……
幼いタケシを校舎に重ね合わせる

｢ねえタケシ、勉強と運動ならどっちが得意だった？｣

「どちらかと言えば運動かな、1年から6年までずっとリレーの選手に選ばれてたし」

子ども達の声が響く賑やかな校庭に幼いタケシ走らせた
眩しい太陽の光を受け風をきってさっそうと駆け抜ける

その姿は次第に夜の闇に消えていった

もうすぐ朝がやって来る、あの太陽が現れる

けれどもこの学校に子ども達はやって来ない、誰も校庭を走らない

夜が明けてもずっと静かなままの学校…