16 / 32
promitto of memory
第16話 謎のその先に在る物。
しおりを挟む
自分達の現在地はどうやら
最下層の手前に来ている様だった。
普段なら此処は封鎖されている筈…
それなのに門が開かれていた。
そこで更に先へと進むと、
何やら異様な空気を感じた。
どうやら自分達は、招かれざる者として
この場所に歓迎されていない様だった。
何やら他の場所から禍々しい気配を感じる。
…嫌な感覚がした為か、自分はそれを無視した。
―第16話 謎とその先に有る何か―
然し長い時間歩くとなると、流石に自分も疲れてきた。
自分達は、少し此処ら辺で休憩することにした。
「んーっ…疲れたぁ~」
兄さんがそう言って地面に座る。
自分はすこしだけ水筒の中の水を飲んだ。
「よし、休み終わったら行こう。」
───そうして休憩が終わった。
自分はまた立ち上がって歩く。
コツ、コツ、と靴音が鳴り響く中、
自分はとあるものを見つけた。
「…」
「…金の、鳥?」
何やらその鳥は自分のみを見ていた様だった。
そして、その綺麗な金色の羽の鳥は、
どこかへと飛んで行ってしまう。
なにやら自分たちを導くように。
…またあの鳥も、どこか前世の記憶で見覚えがあった。
あれは…一体なんだったのだろう。
そう思っていた。
「ん?アンル、どうかした?」
そう考えていると兄さんが
不思議そうな顔をしてそう言った。
…自分は、少しだけ息を吸いながらこう応える。
「金色の鳥があっちにいたんだけど…
飛んでどこかへ消えちゃったんだ。」
するとその話を聞いていたアギトさんは
何やらそれに聞き覚えがあるらしい。
「…【追憶鳥】か。」
「もしかしたらお前を見つけて
ここまで来たのかもしれねぇな。」
──【追憶鳥】。
嘗て自分の前世である約束の賢者が
自身と共に歩んできた加護杖に名前を付け、
魂を宿らせる儀式と共に創ったとされる
鳥の姿を模した物…。
「……あの鳥を追いかけないと。」
────。
『──リンクルス。』
『…君は何処か、自由な場所へと行きなさい。』
『私は…残せる物などもう無いものに等しいから。』
『主さま…。』
───。
自分は何故、あの鳥を無視してしまった?
…主である自分を待っていたと言うのに。
自分は兎に角、その鳥の元へと走った。
息が切れるまで走っていく。
まだそこまで遠くない筈。
…だが、何処に行ってしまったのだろう。
「──ッリンクルス…!!」
足を止めた後に自分は彼女の名前を呼んだ。
涙が頬を伝う中、その名を繰り返し呼んでいた。
「リンクルス…、帰っておいで…。」
…とその後に静かに呟く。
すると、金色の翼を輝かせながら羽ばたき
こちらに向かって来るリンクルスの姿が見えた。
「主さま…!」
……
──あぁ。やっぱり、
彼女の…その翼の色が綺麗だとそう思えた。
…もう一度君に会えて良かった。
…リンクルスの存在は、自分と
神々の記憶を持つ人しか知らない。
彼女は孤独になりつつ、その翼を羽ばたかせ各地を廻り
自分の事を幾千の時まで待ち続けたのだろう…。
「リンクルス…ごめんなさい、オレは…っ自分は
気づかない間に、貴方を独りにしてしまっていた…」
そう悲しげに言うと、
リンクルスは小さい首を横に振ってこう答えた。
「いいえ…あなた様と出会ったあの時、私を
孤独という鳥籠から主さまが解き放って下さりました。」
「…私はこの時まで、あなた様を待ち続けました。
それも私にとって全く孤独では無かったのです。」
その言葉を聞いて、自分は少し安心した。
彼女を一人置いていった挙句、
孤独にしてしまったらどうしようかと
…そう思っていたからだ。
そして落ち着いた後に自分は、
自分の肩に乗っていた彼女にこう問いかけた。
「自分はとある仲間と共に
旅をしているのですが、貴方はどうなさいますか?」
彼女は勿論、と言わんばかりにこう答えた。
「あなた様がご所望して
いられるのならば、私もお供させて頂きます。」
───そうして、皆の所へと戻って行った。
ヴァルフと兄さんは、リンクルスの姿を見て
少しばかりだが驚いていた。
「おぉ…ねぇアンル、
この子の名前はなんて言うの?」
ヴァルフがそう言うと、自分はこう答えた。
兄さんとヴァルフには、
リンクルスは人の言葉がわかる…とだけ伝えてあった。
そして自分は彼女の名前を向かいにいる彼に明かした。
「リンクルスだよ。」
「そっか、いい名前だね。」
するとリウラは、ハッとしながら
リンクルスの名前に反応しこっちに向かってくる。
「そのお姿は、もしやリーエさまですか…!?」
リンクルスが驚いた様な声色でそう言うと、
リウラは首を横に振った後にこう答えた。
「今はリーエではなくリウラです!
久しぶりですね、リンクルス!」
「わ、そうでしたか…!」
そして彼女は、アギトさんを見るなり
少しだけ驚いてこう言っていた。
「ば、バルド様の従者さん…ですね?」
「ん?あぁ、今は違ぇよ。」
リンクルスの記憶は
あの時と同じで殆ど変わっていないのか…
自分は、そう思っていた。
「な、何もかも変わってしまっている……。」
衝撃を受けて、しょんぼりとしながら
そう言う彼女にリウラが慰めるかのようにこう答えた。
「まぁまぁ、こんなに
年月が経っていれば仕方ない事ですよっ」
そして、兄さんとヴァルフは
少しばかり不思議そうな顔をしていた。
「えっ、リンクルスって喋るの?ヴァルフ君…」
ヴァルフは、兄さんに、仕方ないと
言わんばかりの表情をしてこう言っていた。
「そうかも、まぁ…アンル達だけでの話だよ。」
──なるほど…とそう言う兄さんを見て自分は
後で説明しなければと思っていた。
それとラミジュは
少しリンクルスに興味がある様だった。
「あ、アンル兄さん…
この子に少しだけ触ってもいい…?」
恥ずかしげにそう言うラミジュに
リンクルスは自分に向けてこう答えた。
「主さま、私は構いませんよ。」
彼女は相変わらず優しいな…と思い
自分もそれに承諾した。
ラミジュが彼女の羽にそっと触れると
目をキラキラと輝かせてこう言った。
「ふわふわだ…、」
「…ふふっ。」
最初は此処に来た時に緊張はしていたものの
…彼女のお陰で少しそれが和らいだ気がする。
それと、ラミジュはふわふわの
羽根をした鳥が大好きなのだろう。
リンクルスを気に入っていたようだった。
──そして、自分達はようやく
この洞窟の最下層に着いた。
其処はキラキラと光る
青い胞子のようなものが舞っていた。
一見、毒があるように見えるが
万が一吸っても身体に影響はなく
無害だと記録された本にそう書いてある。
すると早速、魔物が出てきた。
…獣型の魔物は此処での出没は珍しく無い。
「リンクルス!」
彼女が加護杖へと変化すると自分は
それを持って魔物に向け、その魔物に効く魔法を放った。
「ふぅ、」
あの魔物たちには申し訳ないが、
腕試しには丁度良かった。
「やはり主さまは、
約束の賢者という称号に相応しいお方です。」
「…ええ、ありがとう。」
自分は彼女と先程出会った時、
また一つ新しい記憶を思い出した。
其処まで大したことは無いが、自分にとっては
一つ一つが大事な記憶や思い出だ。
自分は静かに優しい笑みを浮かべると、
リンクルスは鳥の姿に戻り、
不思議そうに首を傾げてこう言った。
「主さま、どうかなさいましたか?」
「いいや、何も無いよ。」
「…取り敢えず皆さんも、先へ進みましょう。」
そして、また少し歩いた先に
自分達はまたとある物を発見した。
その石の壁には、何か文字が彫られていた。
「…星座語だ、もしかしたら読めるかも。」
──【星座語】。
嘗てリプルの民と
その時代の者が使ったとされる言語。
しかしその文明は潰えてしまった為、
今はもう使われてはいない。
そして、その石の壁にはこう書かれてあった。
『──阿修羅の黒炎、此処に在する者よ。
我を捜せ、殺戮が起こる其の前に。』
「…バルドの奴、相変わらず随分と回りくどいな。」
そう言うアギトさんに、自分は不思議げに問った。
「殺戮って、一体どういう事なのですか?」
此処にあの【黒炎神バルド】が居ることは確かだ。
だから此処に来た時も禍々しい気配がしたのだろう。
「…此処に書かれてある事は、
アイツの状態が良くないっつー意味かもな。」
「まぁアイツの事だ、俺も詳しくは分からねぇ。」
黒炎神バルドは最強の神で知られている。
自分も、前世ではあまり関わりの無い神だった。
もしその様な人物と戦う羽目になれば
かすり傷程度だけでは済まされないだろう。
「…なるほど。」
だがそれは、敢えて自身の仮説である。
…嫌な感覚はするものの、
先程の壁に書かれていた事では無いと思う。
それと自分は団長として
兄さん達…仲間を危険に晒しては行けない。
敢えて用心しておこうと、そう思った。
「そういえば…リンクルス、鞄に入れるくらいの
小さな姿になる事って出来るかな。」
「はい、かしこまりました。」
自分がそう言うと、彼女は
普通の鳥の姿から雛位の小さな鳥の姿になった。
それと同時に鞄の左側にある
物が入っていない方の収納に入っていった。
「主さま、これで宜しいでしょうか?」
「うん、ありがとう。」
…これなら彼女の命が狙われる事は無いだろう。
そして自分たちは、改めて
世界樹の謎について調べる事にした。
「んー…」
然し、手がかりは未だに掴めて居ない。
──そこで自分たちは手分けして探す事にした。
アギトさん達は最下層の手前場所を、
自分とリンクルスは最下層の中央を探索する。
…嫌な予感がしながらも、進んで行く。
それと、リンクルスと自分の精神
或いは自分達の心境等と
いったものが繋がっている為、
意思疎通などが可能となる。
ただ意思疎通と言っても、
相手と自分の心の中が
お互い顕になる訳では無い為、
内密な事に関しては安心できる。
…やはり、此処に黒炎神バルドが居るからか
リンクルスの気配と相まって
やはり少しだけ鈍くなってしまう。
「主さま、手掛かりらしき物を見つけました。」
彼女がその手掛かりとやらを見つけ
此方に持ってきた。
「…木の枝?」
その木の破片から、何かしらの微かな力を感じた。
見るからに普通のものでは無い。
もしやこれは、世界樹の一部分なのだろうか。
それと…この破片には、何やら
焼き焦げた部分もあった。
…何かしらの炎で焼いたのだろうか。
「もしかして…。」
世界樹を消した本人。
…アギトさんではない事は確かだ。
あの巨大な木を消すには相当な力が要る。
だとすれば…。
「!」
「世界樹を消したのは、黒炎神バルド…?」
最下層の手前に来ている様だった。
普段なら此処は封鎖されている筈…
それなのに門が開かれていた。
そこで更に先へと進むと、
何やら異様な空気を感じた。
どうやら自分達は、招かれざる者として
この場所に歓迎されていない様だった。
何やら他の場所から禍々しい気配を感じる。
…嫌な感覚がした為か、自分はそれを無視した。
―第16話 謎とその先に有る何か―
然し長い時間歩くとなると、流石に自分も疲れてきた。
自分達は、少し此処ら辺で休憩することにした。
「んーっ…疲れたぁ~」
兄さんがそう言って地面に座る。
自分はすこしだけ水筒の中の水を飲んだ。
「よし、休み終わったら行こう。」
───そうして休憩が終わった。
自分はまた立ち上がって歩く。
コツ、コツ、と靴音が鳴り響く中、
自分はとあるものを見つけた。
「…」
「…金の、鳥?」
何やらその鳥は自分のみを見ていた様だった。
そして、その綺麗な金色の羽の鳥は、
どこかへと飛んで行ってしまう。
なにやら自分たちを導くように。
…またあの鳥も、どこか前世の記憶で見覚えがあった。
あれは…一体なんだったのだろう。
そう思っていた。
「ん?アンル、どうかした?」
そう考えていると兄さんが
不思議そうな顔をしてそう言った。
…自分は、少しだけ息を吸いながらこう応える。
「金色の鳥があっちにいたんだけど…
飛んでどこかへ消えちゃったんだ。」
するとその話を聞いていたアギトさんは
何やらそれに聞き覚えがあるらしい。
「…【追憶鳥】か。」
「もしかしたらお前を見つけて
ここまで来たのかもしれねぇな。」
──【追憶鳥】。
嘗て自分の前世である約束の賢者が
自身と共に歩んできた加護杖に名前を付け、
魂を宿らせる儀式と共に創ったとされる
鳥の姿を模した物…。
「……あの鳥を追いかけないと。」
────。
『──リンクルス。』
『…君は何処か、自由な場所へと行きなさい。』
『私は…残せる物などもう無いものに等しいから。』
『主さま…。』
───。
自分は何故、あの鳥を無視してしまった?
…主である自分を待っていたと言うのに。
自分は兎に角、その鳥の元へと走った。
息が切れるまで走っていく。
まだそこまで遠くない筈。
…だが、何処に行ってしまったのだろう。
「──ッリンクルス…!!」
足を止めた後に自分は彼女の名前を呼んだ。
涙が頬を伝う中、その名を繰り返し呼んでいた。
「リンクルス…、帰っておいで…。」
…とその後に静かに呟く。
すると、金色の翼を輝かせながら羽ばたき
こちらに向かって来るリンクルスの姿が見えた。
「主さま…!」
……
──あぁ。やっぱり、
彼女の…その翼の色が綺麗だとそう思えた。
…もう一度君に会えて良かった。
…リンクルスの存在は、自分と
神々の記憶を持つ人しか知らない。
彼女は孤独になりつつ、その翼を羽ばたかせ各地を廻り
自分の事を幾千の時まで待ち続けたのだろう…。
「リンクルス…ごめんなさい、オレは…っ自分は
気づかない間に、貴方を独りにしてしまっていた…」
そう悲しげに言うと、
リンクルスは小さい首を横に振ってこう答えた。
「いいえ…あなた様と出会ったあの時、私を
孤独という鳥籠から主さまが解き放って下さりました。」
「…私はこの時まで、あなた様を待ち続けました。
それも私にとって全く孤独では無かったのです。」
その言葉を聞いて、自分は少し安心した。
彼女を一人置いていった挙句、
孤独にしてしまったらどうしようかと
…そう思っていたからだ。
そして落ち着いた後に自分は、
自分の肩に乗っていた彼女にこう問いかけた。
「自分はとある仲間と共に
旅をしているのですが、貴方はどうなさいますか?」
彼女は勿論、と言わんばかりにこう答えた。
「あなた様がご所望して
いられるのならば、私もお供させて頂きます。」
───そうして、皆の所へと戻って行った。
ヴァルフと兄さんは、リンクルスの姿を見て
少しばかりだが驚いていた。
「おぉ…ねぇアンル、
この子の名前はなんて言うの?」
ヴァルフがそう言うと、自分はこう答えた。
兄さんとヴァルフには、
リンクルスは人の言葉がわかる…とだけ伝えてあった。
そして自分は彼女の名前を向かいにいる彼に明かした。
「リンクルスだよ。」
「そっか、いい名前だね。」
するとリウラは、ハッとしながら
リンクルスの名前に反応しこっちに向かってくる。
「そのお姿は、もしやリーエさまですか…!?」
リンクルスが驚いた様な声色でそう言うと、
リウラは首を横に振った後にこう答えた。
「今はリーエではなくリウラです!
久しぶりですね、リンクルス!」
「わ、そうでしたか…!」
そして彼女は、アギトさんを見るなり
少しだけ驚いてこう言っていた。
「ば、バルド様の従者さん…ですね?」
「ん?あぁ、今は違ぇよ。」
リンクルスの記憶は
あの時と同じで殆ど変わっていないのか…
自分は、そう思っていた。
「な、何もかも変わってしまっている……。」
衝撃を受けて、しょんぼりとしながら
そう言う彼女にリウラが慰めるかのようにこう答えた。
「まぁまぁ、こんなに
年月が経っていれば仕方ない事ですよっ」
そして、兄さんとヴァルフは
少しばかり不思議そうな顔をしていた。
「えっ、リンクルスって喋るの?ヴァルフ君…」
ヴァルフは、兄さんに、仕方ないと
言わんばかりの表情をしてこう言っていた。
「そうかも、まぁ…アンル達だけでの話だよ。」
──なるほど…とそう言う兄さんを見て自分は
後で説明しなければと思っていた。
それとラミジュは
少しリンクルスに興味がある様だった。
「あ、アンル兄さん…
この子に少しだけ触ってもいい…?」
恥ずかしげにそう言うラミジュに
リンクルスは自分に向けてこう答えた。
「主さま、私は構いませんよ。」
彼女は相変わらず優しいな…と思い
自分もそれに承諾した。
ラミジュが彼女の羽にそっと触れると
目をキラキラと輝かせてこう言った。
「ふわふわだ…、」
「…ふふっ。」
最初は此処に来た時に緊張はしていたものの
…彼女のお陰で少しそれが和らいだ気がする。
それと、ラミジュはふわふわの
羽根をした鳥が大好きなのだろう。
リンクルスを気に入っていたようだった。
──そして、自分達はようやく
この洞窟の最下層に着いた。
其処はキラキラと光る
青い胞子のようなものが舞っていた。
一見、毒があるように見えるが
万が一吸っても身体に影響はなく
無害だと記録された本にそう書いてある。
すると早速、魔物が出てきた。
…獣型の魔物は此処での出没は珍しく無い。
「リンクルス!」
彼女が加護杖へと変化すると自分は
それを持って魔物に向け、その魔物に効く魔法を放った。
「ふぅ、」
あの魔物たちには申し訳ないが、
腕試しには丁度良かった。
「やはり主さまは、
約束の賢者という称号に相応しいお方です。」
「…ええ、ありがとう。」
自分は彼女と先程出会った時、
また一つ新しい記憶を思い出した。
其処まで大したことは無いが、自分にとっては
一つ一つが大事な記憶や思い出だ。
自分は静かに優しい笑みを浮かべると、
リンクルスは鳥の姿に戻り、
不思議そうに首を傾げてこう言った。
「主さま、どうかなさいましたか?」
「いいや、何も無いよ。」
「…取り敢えず皆さんも、先へ進みましょう。」
そして、また少し歩いた先に
自分達はまたとある物を発見した。
その石の壁には、何か文字が彫られていた。
「…星座語だ、もしかしたら読めるかも。」
──【星座語】。
嘗てリプルの民と
その時代の者が使ったとされる言語。
しかしその文明は潰えてしまった為、
今はもう使われてはいない。
そして、その石の壁にはこう書かれてあった。
『──阿修羅の黒炎、此処に在する者よ。
我を捜せ、殺戮が起こる其の前に。』
「…バルドの奴、相変わらず随分と回りくどいな。」
そう言うアギトさんに、自分は不思議げに問った。
「殺戮って、一体どういう事なのですか?」
此処にあの【黒炎神バルド】が居ることは確かだ。
だから此処に来た時も禍々しい気配がしたのだろう。
「…此処に書かれてある事は、
アイツの状態が良くないっつー意味かもな。」
「まぁアイツの事だ、俺も詳しくは分からねぇ。」
黒炎神バルドは最強の神で知られている。
自分も、前世ではあまり関わりの無い神だった。
もしその様な人物と戦う羽目になれば
かすり傷程度だけでは済まされないだろう。
「…なるほど。」
だがそれは、敢えて自身の仮説である。
…嫌な感覚はするものの、
先程の壁に書かれていた事では無いと思う。
それと自分は団長として
兄さん達…仲間を危険に晒しては行けない。
敢えて用心しておこうと、そう思った。
「そういえば…リンクルス、鞄に入れるくらいの
小さな姿になる事って出来るかな。」
「はい、かしこまりました。」
自分がそう言うと、彼女は
普通の鳥の姿から雛位の小さな鳥の姿になった。
それと同時に鞄の左側にある
物が入っていない方の収納に入っていった。
「主さま、これで宜しいでしょうか?」
「うん、ありがとう。」
…これなら彼女の命が狙われる事は無いだろう。
そして自分たちは、改めて
世界樹の謎について調べる事にした。
「んー…」
然し、手がかりは未だに掴めて居ない。
──そこで自分たちは手分けして探す事にした。
アギトさん達は最下層の手前場所を、
自分とリンクルスは最下層の中央を探索する。
…嫌な予感がしながらも、進んで行く。
それと、リンクルスと自分の精神
或いは自分達の心境等と
いったものが繋がっている為、
意思疎通などが可能となる。
ただ意思疎通と言っても、
相手と自分の心の中が
お互い顕になる訳では無い為、
内密な事に関しては安心できる。
…やはり、此処に黒炎神バルドが居るからか
リンクルスの気配と相まって
やはり少しだけ鈍くなってしまう。
「主さま、手掛かりらしき物を見つけました。」
彼女がその手掛かりとやらを見つけ
此方に持ってきた。
「…木の枝?」
その木の破片から、何かしらの微かな力を感じた。
見るからに普通のものでは無い。
もしやこれは、世界樹の一部分なのだろうか。
それと…この破片には、何やら
焼き焦げた部分もあった。
…何かしらの炎で焼いたのだろうか。
「もしかして…。」
世界樹を消した本人。
…アギトさんではない事は確かだ。
あの巨大な木を消すには相当な力が要る。
だとすれば…。
「!」
「世界樹を消したのは、黒炎神バルド…?」
0
あなたにおすすめの小説
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる