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promitto of memory
第18話 まだ見ぬ景色と出会い。
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「さて…では皆さん、戻りましょうか。」
──そして、自分たちは舟へと戻った。
今の所、お腹を空かせているのは
ラミジュとリウラの二人のみだった。
そこで兄さんはとある料理を作っている途中だ。
…それと、自分はその手伝いをしている。
「ラミジュちゃん、好き嫌いって何かあるかな?」
ラミジュは、その言葉に
首を横に振ってこう答えていた。
「…ううん、無い。野菜もほとんど食べれる。」
それに承諾して、兄さんは
調理場に戻り慣れた手つきで
スクランブルエッグと
ポトフを、リウラとラミジュに振る舞った。
「おぉ~…!」
そしてその料理を目の当たりにして、
ラミジュはこう言っていた。
「これ…食べていいの?」
「勿論だよ、二人のために作ったからね!」
ニッコリとした太陽のような笑顔でそう言っていた。
相変わらず、兄さんは子供に好かれる性格だな
…と思いつつその微笑ましい光景を、
自分とアギトさんは静かに見守っていた。
…とはいえ自分の横にいる彼は、
椅子に座りながら寝ていた様なものだった。
──そして数分後に二人が速くも、
出された料理を食べ終わった。
「ご馳走様でしたっ!」
リウラが幸せそうな笑顔でそう言うと、
ラミジュもその姿を見て、真似して
『ご馳走様でした』と言っていた。
「はーい、じゃあ食器はオレが片付けるよ♪」
「わわ、ありがとうございます!」
──師匠が居なくなってからもう二年が過ぎていた。
それもその筈…自分は、
彼女の意志を紡げるか不安になっていた。
だがそんなことを思ってしまったら、
良くない気がしてしまって仕方がなかった。
―第18話 まだ見ぬ景色と出会い―
そして自分は、とある事を思い出して
自分の部屋へと向かっていった。
「…リンクルス、傷の手当をしておこう。
そのままだと傷口が広がっちゃうから。」
自分がそう言うと、彼女は
申し訳なさそうにこちらを見てこう言った。
「…主さま、私は何ともありません。
貴方様の手を煩わせる訳には行かないのです…」
そう言っていたけれど、
…自分でも分かるくらいに
彼女は無理をしている様子だった。
自分は、駄目だよと言う様に
首を横に振ってこう言った。
「貴女も一つの命なのだから、
これくらいはして置かないと駄目。」
主の言う事は絶対であっても、その武器に
名前を付けたからにはその名を付けた主が
それ相応の責任を持たなければならない。
…何事にも、決まりが必ずある事と同じだ。
そして彼女の手当を終えた後に、自分は
次なる旅路となる場所を決める事にした。
──【楽園・ラスティム】。
戦争後の今は滅んでしまっているが、
文明が最も栄えた国として…多くの国で
その名を知られていたとされる場所だ。
自分達は何故、そこに行くのか
理由などは決めている。
──あの声の主を探す。
兄さんが行方不明になった時から聞こえていたが…
世界樹にいた時にも、その自分に似た声が聞こえた。
一体誰がなんの意思で、自分にその声を響かせたのか…。
その声の主がどうしても気になる。
それとリンクルスは、アギトさんが作ってくれた
止まり木の上で少しばかり瞼を閉じて寝ている様だ。
彼女が寝ているその間に自分は、
机の整理整頓をしたり
地図等の書き直しと本の整頓…
時間があれば、少しぼさついた髪の毛を
櫛で梳かしたりしていた。
「ん…?あれ、櫛が通らない…
そんなに風にあおられてたのかな…。」
力を入れてしまえば良いと、少しだけ思ったが
それだと髪の毛が傷んでしまうとそう思った。
「んー、まぁ次の場所で温泉にでも行こう…」
幸いな事に、次の旅路となる
楽園には湯治場もあると聞いた。
…髪を洗うのはそこで済ませる事にした。
すると部屋の外から、
自分の名前を呼ぶリウラの声がした。
「お師匠、入りますね!」
「ええ、どうぞ。」
「どうかなさいましたか?」
リウラはその言葉に、少し戸惑いながら
恥ずかしげにこう答えていた。
「んーと、お師匠が忙しくなければ
少しだけ聞きたいことがあるのですっ」
…自分のやるべきことは全て終えた為、
今の所は忙しくは無いな…と思ってそれに承諾した。
「なるほど…、分かりました。」
「えへへ、ありがとうございます!」
「その…神々の記憶の事なんですがお師匠は
どうやって記憶を取り戻していたのですか?」
…
──神々の記憶を
どうやって取り戻しているのか…?
確か自分の場合、正確な方法では無かった為
説明するには相当難しかった。
…取り敢えず、そのまま説明することにした。
「ん?…んー」
「その場で起きた物事でも記憶が戻ったりしますね。」
…。
その言葉にリウラは、少しの間に、
ポカン…と唖然しているような表情をしていた。
「……はへ?」
…確かにその表情になるのも無理はない。
と、そう思ってしまっている自分がいた。
何故なら…神々の記憶と言うものは、
普通は自分の様に簡単には取り戻せないらしい。
…ならどうやって戻すのか、それは
長い年月をかけて取り戻すか記憶の箱を探す、
という二つの手段だ。
但し、記憶の箱を探す為には
少しばかり困難な物になる。
「お師匠…なら他には…?」
「んー…年月をかけて記憶を戻すか、
記憶の箱を探すかの二つ、でしょうか。」
リウラはその手段の難しさを分かっていたため
少しばかり、目を点にして驚いていた。
「はわわ…」
リウラの記憶は、もう既に十分戻っていると見た。
それと、このような事を聞いたのは
単に気になったからという理由なのだろう。
「…そう言えば、ラミジュとは相変わらずですか?」
「あ、はい!一緒に遊んだりして
毎日楽しいのです!えへへっ」
リウラの反応を見て自分は、
それもまた微笑ましい、とそう思った。
「ふふ…そうですか、なら良かった。」
そしてリウラがこの部屋から
出ると同時に、ふと窓の外に目を向けた。
──自分達と出会うまで
リンクルスは…その翼を羽ばたかせて、
この広大な空を飛んでいたのだろうか。
…。
そう思うと、少しばかり彼女の
自由を奪ってしまったかのような…
そんな複雑で申し訳ない気持ちになった。
…それでも自分は、
リンクルスと再会できた事を
今でも嬉しいと思っている。
でも彼女は、その事を
どう思っているのかは分からない。
主従関係だからこそ
自分の言った事に従っていたのか、
それとも彼女自身の願いなのだろうか。
…
リンクルスも一つの命であって、感情もある。
元は武器だからといって、
ぞんざいに扱っていいものでは無い。
──そしてようやく、自分たちは
楽園の近くである草原地帯に到着した。
鞄を持って舟から降りると同時に
リンクルスは雛くらいの姿になる。
鞄の中だと、中に荷物もある為少し危険だろう
…と思い服の衣嚢に入らせた。
何故、彼女の存在を他の人達に隠すのか。
その理由はリンクルスが、
極めて数少ないものである事。
武器に命を宿らせ名前をつける儀式は
嘗て神々が行った幻の儀として
多くの人々に、今も尚語り継がれている。
その為、悪い人達に狙われないよう
このように隠す必要がある。
それでもヴァルフと兄さんは信用している為
此処に来る前に、その事を全て明かした。
兄さん達に事情を話した時、
最初は驚いていたものの
時期にその事には慣れて行ったらしい。
…それと何か、木陰の方から気配がした。
その気配の正体が、
何やら此方を見ているようだった。
「…」
自分はそれに、少しだけ怯えてしまっていた。
何か気配がする時に怯える事は今まで無かった。
しかし何故だろう…。
それでも、嫌な予感はそれ程迄にはしなかった。
【楽園・ラスティム】
──大きな門を潜り抜けた先には、
試練の時に来ていた歯車の国と同じく
屋台や商店が立ち並び、その場所の後ろには
行事ごと等が行われる建物らしきものや
大きな城が佇んでいた。
楽園…と呼ばれつつも、
本当は王国のような場所だったのだろうか。
…それは自分の思ったことであって、
不明な点や噂された謎では無い。
その名で知られて
呼ばれていた…それだけなのだろう。
「…?」
…すると何処からか、また視線を感じる。
嫌な予感はしないものの
最初に此処へ来た時の感覚に見舞われた。
その事にアギトさんは、
心配そうな顔をして自分を見つめこう言った。
「アンル、大丈夫か?」
「あ…はい。何でもないです。」
取り敢えず皆と自分が買いたい物は全て買った。
残った分は旅費にしようと、そう考えた。
感じる視線が少しずつ消えていく。
…そんな中で、自分は何かを思い出せずにいた。
「…」
そして自分達は、中央街に行った。
…同時に何かが聞こえてきた。
『────。』
あの声では無い何か。
すると自分は、ぼんやりとしてしまったのか
誰かと肩がぶつかってしまった。
「わっ…ごめんなさい…」
そしてその誰かを見ると
その人は何処かで見覚えがあった人だった。
「…自分は何ともない。其方こそ怪我は?」
その人は自分に手を差し伸べていた。
そした差し伸べられたその手を自分は取った。
「あ…はい、自分も大丈夫です。」
「なら良かった。」
何やら微笑むようにそう言っていた。
思い出せそうで、思い出せなかった。
あの声はどんな声色だったか…
…この人は誰だったのか。
そして自分は、
自分の名前を呼ぶ声の方へ向かって行った。
「…成程。」
「あの幼子が現在の、約束の賢者か…。」
「…」
───。
「…お待たせしました。
では皆さん、行きましょうか。」
それでも…あの人は誰なのか分からない。
でも何か心の底で、モヤがかかった様な
…そんな気持ちになっていた。
リンクルスは今も疲れているのか
自分のポケットの中で眠っている様だ。
『…こう見ると、リンクルスが
可愛く見えてしまって仕方なくなる。』
衣嚢の中を覗いて
そう微笑みながら思っていた。
───そうして…自分達は
何やら不思議な場所にたどり着いた。
「…」
「此処って…」
何かの遺跡のようで、花が一面に咲いていた。
自分は、その場所に何か気がかりなことがあった。
自分が世界樹の深層部にて、新たなものに
目覚めかけた時に舞いちった花と似ていた。
「…」
──なんだろう。
このような感覚は初めてで、
…どう表していいのか分からなかった。
「アンル、大丈夫?」
…ヴァルフが心配そうに自分に向けて言った。
自分は何も無いと言いつつこう答えた。
「…うん、大丈夫。」
それと同時にアギトさんは
なにか考え事をしているのか
腕を前にして組んでいる仕草を見せた。
「…アギトさん?」
「ん?あぁいや…すまねぇ、
少し考え事をしてただけだ。」
「そうですか。」
…取りあえず、ここがどこかも分からなかった為、
慎重に探索することにした。
…数分後、とある所に迷ってしまったようだった。
すると自分は、とある人物を
そこで目の当たりにした。
「!」
どこかで会ったようで知っていた。
けれど忘れてしまった…。
──そんな人物だった。
「…あぁ、君か。」
そして自分はその人物に問いた。
「貴方は、誰ですか…?」
自分が問うと同時に彼は
少し微笑を浮かべてこう言っていた。
「…自分は、『アスト』だ。」
…アストがそう言うと、
彼は自分に手招きをしてこう言った。
「それと君は、此処へ迷ってきたらしいね。
…おいで、わたしが案内してあげよう。」
「あ…ありがとうございます。」
そしてお礼を言った後、彼に案内を
されるがままに自分はそこへとついて行った。
「そういえば、君とその他に
仲間がいたように見えた。」
「その伴侶達は何処にいるのか教えて欲しい。」
自分はその言葉に疑問を持ちつつこう答えた。
「なぜです…?」
「…その者の所へ連れて行こうと思って。」
話していく内に、自分は
この人は不思議な人だなと思えてきた。
敵対していそうで味方のようにも思えて、
どうにも不可思議に思った。
そして自分は、
アギトさん達がいる所にたどり着いた。
「アンル!どこ行ってたの、心配したんだよ…!」
「ごめん兄さん…突然迷っちゃって。」
そしてふと後ろを
振り向くと、そこには誰もいなかった。
「あれ…?」
「アンル、どうかしたの?」
兄さんが心配そうに
不思議そうに問うと自分はこう答えた。
「いや…なんでもない。」
さっきのは幻覚だったのだろうか…。
なら先程の人はどこに…?
…それすらも分からなかった。
──そして、自分たちは舟へと戻った。
今の所、お腹を空かせているのは
ラミジュとリウラの二人のみだった。
そこで兄さんはとある料理を作っている途中だ。
…それと、自分はその手伝いをしている。
「ラミジュちゃん、好き嫌いって何かあるかな?」
ラミジュは、その言葉に
首を横に振ってこう答えていた。
「…ううん、無い。野菜もほとんど食べれる。」
それに承諾して、兄さんは
調理場に戻り慣れた手つきで
スクランブルエッグと
ポトフを、リウラとラミジュに振る舞った。
「おぉ~…!」
そしてその料理を目の当たりにして、
ラミジュはこう言っていた。
「これ…食べていいの?」
「勿論だよ、二人のために作ったからね!」
ニッコリとした太陽のような笑顔でそう言っていた。
相変わらず、兄さんは子供に好かれる性格だな
…と思いつつその微笑ましい光景を、
自分とアギトさんは静かに見守っていた。
…とはいえ自分の横にいる彼は、
椅子に座りながら寝ていた様なものだった。
──そして数分後に二人が速くも、
出された料理を食べ終わった。
「ご馳走様でしたっ!」
リウラが幸せそうな笑顔でそう言うと、
ラミジュもその姿を見て、真似して
『ご馳走様でした』と言っていた。
「はーい、じゃあ食器はオレが片付けるよ♪」
「わわ、ありがとうございます!」
──師匠が居なくなってからもう二年が過ぎていた。
それもその筈…自分は、
彼女の意志を紡げるか不安になっていた。
だがそんなことを思ってしまったら、
良くない気がしてしまって仕方がなかった。
―第18話 まだ見ぬ景色と出会い―
そして自分は、とある事を思い出して
自分の部屋へと向かっていった。
「…リンクルス、傷の手当をしておこう。
そのままだと傷口が広がっちゃうから。」
自分がそう言うと、彼女は
申し訳なさそうにこちらを見てこう言った。
「…主さま、私は何ともありません。
貴方様の手を煩わせる訳には行かないのです…」
そう言っていたけれど、
…自分でも分かるくらいに
彼女は無理をしている様子だった。
自分は、駄目だよと言う様に
首を横に振ってこう言った。
「貴女も一つの命なのだから、
これくらいはして置かないと駄目。」
主の言う事は絶対であっても、その武器に
名前を付けたからにはその名を付けた主が
それ相応の責任を持たなければならない。
…何事にも、決まりが必ずある事と同じだ。
そして彼女の手当を終えた後に、自分は
次なる旅路となる場所を決める事にした。
──【楽園・ラスティム】。
戦争後の今は滅んでしまっているが、
文明が最も栄えた国として…多くの国で
その名を知られていたとされる場所だ。
自分達は何故、そこに行くのか
理由などは決めている。
──あの声の主を探す。
兄さんが行方不明になった時から聞こえていたが…
世界樹にいた時にも、その自分に似た声が聞こえた。
一体誰がなんの意思で、自分にその声を響かせたのか…。
その声の主がどうしても気になる。
それとリンクルスは、アギトさんが作ってくれた
止まり木の上で少しばかり瞼を閉じて寝ている様だ。
彼女が寝ているその間に自分は、
机の整理整頓をしたり
地図等の書き直しと本の整頓…
時間があれば、少しぼさついた髪の毛を
櫛で梳かしたりしていた。
「ん…?あれ、櫛が通らない…
そんなに風にあおられてたのかな…。」
力を入れてしまえば良いと、少しだけ思ったが
それだと髪の毛が傷んでしまうとそう思った。
「んー、まぁ次の場所で温泉にでも行こう…」
幸いな事に、次の旅路となる
楽園には湯治場もあると聞いた。
…髪を洗うのはそこで済ませる事にした。
すると部屋の外から、
自分の名前を呼ぶリウラの声がした。
「お師匠、入りますね!」
「ええ、どうぞ。」
「どうかなさいましたか?」
リウラはその言葉に、少し戸惑いながら
恥ずかしげにこう答えていた。
「んーと、お師匠が忙しくなければ
少しだけ聞きたいことがあるのですっ」
…自分のやるべきことは全て終えた為、
今の所は忙しくは無いな…と思ってそれに承諾した。
「なるほど…、分かりました。」
「えへへ、ありがとうございます!」
「その…神々の記憶の事なんですがお師匠は
どうやって記憶を取り戻していたのですか?」
…
──神々の記憶を
どうやって取り戻しているのか…?
確か自分の場合、正確な方法では無かった為
説明するには相当難しかった。
…取り敢えず、そのまま説明することにした。
「ん?…んー」
「その場で起きた物事でも記憶が戻ったりしますね。」
…。
その言葉にリウラは、少しの間に、
ポカン…と唖然しているような表情をしていた。
「……はへ?」
…確かにその表情になるのも無理はない。
と、そう思ってしまっている自分がいた。
何故なら…神々の記憶と言うものは、
普通は自分の様に簡単には取り戻せないらしい。
…ならどうやって戻すのか、それは
長い年月をかけて取り戻すか記憶の箱を探す、
という二つの手段だ。
但し、記憶の箱を探す為には
少しばかり困難な物になる。
「お師匠…なら他には…?」
「んー…年月をかけて記憶を戻すか、
記憶の箱を探すかの二つ、でしょうか。」
リウラはその手段の難しさを分かっていたため
少しばかり、目を点にして驚いていた。
「はわわ…」
リウラの記憶は、もう既に十分戻っていると見た。
それと、このような事を聞いたのは
単に気になったからという理由なのだろう。
「…そう言えば、ラミジュとは相変わらずですか?」
「あ、はい!一緒に遊んだりして
毎日楽しいのです!えへへっ」
リウラの反応を見て自分は、
それもまた微笑ましい、とそう思った。
「ふふ…そうですか、なら良かった。」
そしてリウラがこの部屋から
出ると同時に、ふと窓の外に目を向けた。
──自分達と出会うまで
リンクルスは…その翼を羽ばたかせて、
この広大な空を飛んでいたのだろうか。
…。
そう思うと、少しばかり彼女の
自由を奪ってしまったかのような…
そんな複雑で申し訳ない気持ちになった。
…それでも自分は、
リンクルスと再会できた事を
今でも嬉しいと思っている。
でも彼女は、その事を
どう思っているのかは分からない。
主従関係だからこそ
自分の言った事に従っていたのか、
それとも彼女自身の願いなのだろうか。
…
リンクルスも一つの命であって、感情もある。
元は武器だからといって、
ぞんざいに扱っていいものでは無い。
──そしてようやく、自分たちは
楽園の近くである草原地帯に到着した。
鞄を持って舟から降りると同時に
リンクルスは雛くらいの姿になる。
鞄の中だと、中に荷物もある為少し危険だろう
…と思い服の衣嚢に入らせた。
何故、彼女の存在を他の人達に隠すのか。
その理由はリンクルスが、
極めて数少ないものである事。
武器に命を宿らせ名前をつける儀式は
嘗て神々が行った幻の儀として
多くの人々に、今も尚語り継がれている。
その為、悪い人達に狙われないよう
このように隠す必要がある。
それでもヴァルフと兄さんは信用している為
此処に来る前に、その事を全て明かした。
兄さん達に事情を話した時、
最初は驚いていたものの
時期にその事には慣れて行ったらしい。
…それと何か、木陰の方から気配がした。
その気配の正体が、
何やら此方を見ているようだった。
「…」
自分はそれに、少しだけ怯えてしまっていた。
何か気配がする時に怯える事は今まで無かった。
しかし何故だろう…。
それでも、嫌な予感はそれ程迄にはしなかった。
【楽園・ラスティム】
──大きな門を潜り抜けた先には、
試練の時に来ていた歯車の国と同じく
屋台や商店が立ち並び、その場所の後ろには
行事ごと等が行われる建物らしきものや
大きな城が佇んでいた。
楽園…と呼ばれつつも、
本当は王国のような場所だったのだろうか。
…それは自分の思ったことであって、
不明な点や噂された謎では無い。
その名で知られて
呼ばれていた…それだけなのだろう。
「…?」
…すると何処からか、また視線を感じる。
嫌な予感はしないものの
最初に此処へ来た時の感覚に見舞われた。
その事にアギトさんは、
心配そうな顔をして自分を見つめこう言った。
「アンル、大丈夫か?」
「あ…はい。何でもないです。」
取り敢えず皆と自分が買いたい物は全て買った。
残った分は旅費にしようと、そう考えた。
感じる視線が少しずつ消えていく。
…そんな中で、自分は何かを思い出せずにいた。
「…」
そして自分達は、中央街に行った。
…同時に何かが聞こえてきた。
『────。』
あの声では無い何か。
すると自分は、ぼんやりとしてしまったのか
誰かと肩がぶつかってしまった。
「わっ…ごめんなさい…」
そしてその誰かを見ると
その人は何処かで見覚えがあった人だった。
「…自分は何ともない。其方こそ怪我は?」
その人は自分に手を差し伸べていた。
そした差し伸べられたその手を自分は取った。
「あ…はい、自分も大丈夫です。」
「なら良かった。」
何やら微笑むようにそう言っていた。
思い出せそうで、思い出せなかった。
あの声はどんな声色だったか…
…この人は誰だったのか。
そして自分は、
自分の名前を呼ぶ声の方へ向かって行った。
「…成程。」
「あの幼子が現在の、約束の賢者か…。」
「…」
───。
「…お待たせしました。
では皆さん、行きましょうか。」
それでも…あの人は誰なのか分からない。
でも何か心の底で、モヤがかかった様な
…そんな気持ちになっていた。
リンクルスは今も疲れているのか
自分のポケットの中で眠っている様だ。
『…こう見ると、リンクルスが
可愛く見えてしまって仕方なくなる。』
衣嚢の中を覗いて
そう微笑みながら思っていた。
───そうして…自分達は
何やら不思議な場所にたどり着いた。
「…」
「此処って…」
何かの遺跡のようで、花が一面に咲いていた。
自分は、その場所に何か気がかりなことがあった。
自分が世界樹の深層部にて、新たなものに
目覚めかけた時に舞いちった花と似ていた。
「…」
──なんだろう。
このような感覚は初めてで、
…どう表していいのか分からなかった。
「アンル、大丈夫?」
…ヴァルフが心配そうに自分に向けて言った。
自分は何も無いと言いつつこう答えた。
「…うん、大丈夫。」
それと同時にアギトさんは
なにか考え事をしているのか
腕を前にして組んでいる仕草を見せた。
「…アギトさん?」
「ん?あぁいや…すまねぇ、
少し考え事をしてただけだ。」
「そうですか。」
…取りあえず、ここがどこかも分からなかった為、
慎重に探索することにした。
…数分後、とある所に迷ってしまったようだった。
すると自分は、とある人物を
そこで目の当たりにした。
「!」
どこかで会ったようで知っていた。
けれど忘れてしまった…。
──そんな人物だった。
「…あぁ、君か。」
そして自分はその人物に問いた。
「貴方は、誰ですか…?」
自分が問うと同時に彼は
少し微笑を浮かべてこう言っていた。
「…自分は、『アスト』だ。」
…アストがそう言うと、
彼は自分に手招きをしてこう言った。
「それと君は、此処へ迷ってきたらしいね。
…おいで、わたしが案内してあげよう。」
「あ…ありがとうございます。」
そしてお礼を言った後、彼に案内を
されるがままに自分はそこへとついて行った。
「そういえば、君とその他に
仲間がいたように見えた。」
「その伴侶達は何処にいるのか教えて欲しい。」
自分はその言葉に疑問を持ちつつこう答えた。
「なぜです…?」
「…その者の所へ連れて行こうと思って。」
話していく内に、自分は
この人は不思議な人だなと思えてきた。
敵対していそうで味方のようにも思えて、
どうにも不可思議に思った。
そして自分は、
アギトさん達がいる所にたどり着いた。
「アンル!どこ行ってたの、心配したんだよ…!」
「ごめん兄さん…突然迷っちゃって。」
そしてふと後ろを
振り向くと、そこには誰もいなかった。
「あれ…?」
「アンル、どうかしたの?」
兄さんが心配そうに
不思議そうに問うと自分はこう答えた。
「いや…なんでもない。」
さっきのは幻覚だったのだろうか…。
なら先程の人はどこに…?
…それすらも分からなかった。
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