約束と追憶 promitto of memory

Natsuki

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promitto of memory Ⅱ

第20話 新たな旅路の物語。

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──それでも…その果てに辿り着いたのは
希望でも、絶望でも無くて、
その中で貴女と過ごした日々や思い出が
今も尚、自分の中で生き続けている…

それだけでも、自分にとって
とても幸せな時間に変わりは無いから。

これは、今此処で新たに創られし記憶と
とある青年と旅団の新たな旅路の物語───。

約束と追憶 Ⅱ
—第20話 新たな旅路の物語—

「おししょー!起きてくださーい!」

自分を呼び起こそうと、リウラの声が
部屋の下の方から聞こえてきた。

自分はどうやら、
寝台で横になって寝ていたようだった。

トタトタ、とその足音が
早くも近づいてくると同時に自分は、少しだけ
悪戯をしてみよう…と思って寝ている振りをした。

「んもー、お師匠!朝ですよっ!」
「…」
「むむ、そんなに起きたくないのですねっ」

リウラが不満気な顔をして何処かに行くと、
数秒後、何やらフライパンとお玉を
持って来てそれをカンカンカン、と鳴らした。

「ぅわっ…!?」

自分はそれに驚き飛び起きた。
それに、何やらリウラは嬉しそうで
どこか得意げな顔をしてこちらを見ていた。

「あっ、やっと起きましたね!お師匠!」

それに少しばかり…表情には
出さなかったが、自分は悔しげにしていた。
だが、リウラが起こしてくれなければ
自分はそのまま寝てしまっていただろう。

自分は少しばかり苦笑いも含めたような
笑顔で微笑んでこう言った。

「…おはようございます、リウラ」

「えへへっ、はい!おはようございます!」

それにリウラもにっこりと良い笑顔で返答した。

自分とリウラは下の階へと向かって行く。
その時にスクランブルエッグのいい匂いがした。

──兄さんが何か料理をしているのだろうか…
と、早々気がついていた。

そして階段を降り終わると同時に
兄さんが自分の存在に気がついていた。

「あ、アンルおはよ!ご飯
出来てるから早めに食べちゃってね~」

「うん、ありがとう兄さん。」

ヴァルフとアギトさんは、自分より早く起きて
朝食を済ませたのだろう。
ラミジュは、自分より先に朝食を食べていた。

いただきます、と言うと同時に手を合わせる。
そしてふと窓の外を見て、今日もいい天気だと思った。

そして朝食を食べ終わったあとに、
自分は部屋に戻り、新聞を見て今の現状を把握する。
これは旅団長である自分にとって欠かせない事だ。

「…」
「うーん、今の所はやる事が無いや…。」

…と、そうやって独り言をブツブツと呟いていた。
すると、扉越しからラミジュの声が聞こえてくる。

「アンル兄さん、開けるよ。」

「あっ、どうぞ。」

ガチャ、と扉を開ける音が部屋中に少しだけ響いた。

「どうかなさいましたか?」

自分がそう優しく問いかけると、
彼女は躊躇いを隠しながら恥ずかしげにこう答えた。

「私って、此処の旅団に入ってなかったっけ。」

「…ええ、そうですね。」

ラミジュは、何やら言いずらそうにこう答えた。
「…」
「…なら、私も…入りたい。」
「それと、突然で今更だけど…出会った途端に
攻撃しちゃって…ごめんなさい。」

彼女が緊張しているかのような
素振りを見せてそう言っていた。

自分が唖然としたあと、
そのくらい気にしていないのに
…と言わんばかりの表情をして少し微笑んだ。

「気にしていませんよ。旅団に入りたいのなら、
自分がその手続きをしておきます。」

その事にラミジュは、
少し唖然とした表情になった後、緊張が解けたのか
ふふっ、と微笑をたたえていた。

「…うん、ありがとう。」

少しでも、自分が彼女の心の支えになれるのなら
自分はそれに尽くしてあげたいと、思っていた。

…自分も、彼女と同じ傷を
背負って生きてきたものだから。

そして彼女が部屋から出る。
それと同時にリンクルスが目を覚ました。

「おはよう、リンクルス。」

「おはようございます、主さま。」

そして自分は彼女に関して気になったことがあり、
それを問いかけることにした。

「リンクルス…そういえば君が、自分と出会う前
何処を旅していたのか教えてくれるかな。」

それを聞いたのは、ただ単に気になっただけで
なにか理由があってのことでは無い。
彼女もそれを知っているだろう。

「…私もハッキリと覚えてはいないのです。」
「世界樹の時以外にも、
主さま達が居た気がしたのですが…。」

という事は、加護を得る試練の時だろうか…
「…そっか、ありがとう。」

試練の時にも、確かにリンクルスの気配はしたと思う。
…それでも自分がそれに気がつけなかったのは
やはり記憶を取り戻す前と後に関係があるのだろうか。

「まぁどちらにせよ
記憶は取り戻せたし…別にいっか。」

自分は、ふと窓越しに映る景色を見る。
日差しが少しばかり眩しくて
それに自分は目を細めながら、こう呟いた。

「…もう少しで着くかな。」

リルエッタ旅団の団長になってから、やや二年が経つ。
それから自分は、成長したと思うことが多々ある。
その成長した部分とは、地図を見なくても
今いる所を把握出来ているということ。

…そう考えていると、ふと自分は
ヴァルフとの約束を思い出した。

「あ…そうだ、行かないと…」

次の地に着くまで少しばかり時間があった。
自分はヴァルフの部屋へと向かう。
それと自分達の部屋は、二人一部屋となっている。

2階はヴァルフと兄さん、その隣は自分とアギトさん。
1階の部屋はリウラとラミジュの部屋となった。

「ヴァルフ、ごめん遅くなった…」

「ううん、平気。」

「それで…話って、どうしたの?」

自分がそう問いかけると
ヴァルフは、少しばかり見たことも無い様な
恥ずかしげな表情をしてこう言った。

「くだらない事なんだけど…」
「一緒に、窓の景色を見たいと思って。」

自分は少しばかり、ふふっと笑ってこう答えた。
「なんだ…そういう事だったんだ。」
「いいよ、一緒に見よう。」

ヴァルフも、自分に頼み事を
してくれる様になってとても嬉しいと、そう感じた。

自分はヴァルフの隣に座って、向かいの窓を見ていた。
それと同時に、彼は自分に世間話をしてくれた。
「アンルは、暇つぶしをする時って何をしてるの?」

「んー、本を読んだりとかそのくらいかな…」
「ヴァルフも暇つぶしには何かしてるの?」

ヴァルフは、瞼を閉じて少しの微笑をたたえた。
「こうやって窓の外を、ボーッと
眺めてるくらいしかしてないよ。」

「そっかぁ、それもいいね。」

そう言った後に自分はヴァルフの顔を見つめていた。
それに気がついた彼は、少しばかり頬を赤らめる。

「どうしたの?そんなに見つめて…」

自分は少し彼をからかう様に、にっこりと微笑む。
「ううん、何もない。」

ほんの少しだけヴァルフの事を知れて、
自分は嬉しかった。

そして数分経ち、自分にはまだ済ませてない物が
あったことを思い出した。

「じゃあオレは、そろそろ部屋に戻るよ。」

「うん、わかった。」

自分は部屋に戻り、棚と机の整頓などをしていた。
「…これは此処でいっか…」

すると、扉を開ける音が後ろからすると同時に
アギトさんが部屋に戻ってきて、
どうやら朝風呂から出た様子だった。

「アギトさん。おはようございます。」

「…ん、おはよう。」

彼が自分の所に歩み寄って、
後ろから抱きついてこう言った。

「風呂上がりでさみぃから温めてくれねぇか。」

自分は少しだけ作業を中断しながらこう言った。
「いいですよ。」

…彼は、本当は
抱きしめて欲しいと思っていて、けれども
それが恥ずかしくて言えないだけだと
自分は分かりきっている。

自分がアギトさんの方を向くと、
アギトさんは自分の頬を撫でる。
無意識なのだろうか、親指で自分の唇を触った。

「…アギトさん…?」

すると彼はハッと気が付き、
疑問に思った自分に、彼は真顔で
首を少しかしげながらこう答えた。

「ん…いや、何でもねぇよ。」

先程のことはどういう意味なのだろう。
何が何だかよく分からなかった。
それでも…まぁいいか、と思っていた自分もいた。

そしてアギトさんが話を逸らすようにこう言った。
「んな事よりも、もう着いたんじゃねぇのか?」

自分は、ふと窓の外を見る。
そしてようやく目的地に着いたことが分かった。
「…本当ですね、では行きましょう。」

そうして皆を呼んで舟の外へ出た。
自分たちが目の当たりにした光景は
そこに立ちはだかるひとつの門。

自分たちは、
歯車の国アルク・ランドに帰って来たのだ。
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