約束と追憶 promitto of memory

Natsuki

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promitto of memory Ⅱ

第22話 高みを目指したその先に。

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自分とリンクルスは、競技場の所へと向かった。
「あれが競技場…凄く広い場所みたいですね。」

リンクルスがそう言うと、
自分は少しばかりの話題に…と思ってこう答えた。
「此処では行事ごと等が頻繁に行われてるんだって。」

「なる程…。」

そしてしばらく歩いていると、競技場に着いた。
「よし…リンクルス、着いたから中に入ろう。」

そして準備室に着いた頃には、
ニーニャさんが出迎えてくれた。
「おぉ、来たかアンル!時間ピッタリじゃな!」
「では少し、この手合せについて説明をしようかの!」

そうしてその場でニーニャさんは、
色々と手合わせ等について
彼是あれこれ説明をしてくれた。

手合せの時間や予定については、
この説明の後にギラトさんと手合わせをして
他の場所に移動し休憩を挟み
クロノスさんと手合わせ、
…その直後に狼煙さんとの手合せ、との事だ。

「──それから、加護の使用は良しとするから
加護は遠慮なく使って構わんぞ!」

「成程…わかりました。」

するとニーニャさんが
ハッと気がついた後、こう答えた。
「…説明はこれで以上じゃな!
アンルは定位置に戻って良いぞ!」

「わかりました。」

そして自分は、柵の前へと立つ。

「…。」
少しの緊張と、その反面には好奇心があった。

―第22話 高みを目指したその先に―

柵が上がったと同時に、自分は前に出た。
そこには大勢いた観客が居なくてとても静かだった。

そして自分の視線の向かいには、ギラトさんがいた。

「よォ…アンル。こんな形で
会うなんざ奇遇じゃねェか?」

彼の手には銃剣が握られてあった。
そして自分は、頬に垂らした汗を拭いてこう答える。
「…そうですね。」

その言葉に彼は、挑発じみた話し方でこう言った。
「言うこたァそれだけかよ…まぁ俺には関係ねぇ事だ。」

「…一度くらいはテメェと戦ってみたかった、
そのご自慢の加護、思う存分使いやがれッ!!」

そう言い放ったあと彼は、
その足で自分の元へと素早く駆け寄り
持っていた武器を振りかざした。

それと同時に自分もその三秒間に
杖を剣に変えてそれを弾き返した。

彼が吹き飛んだと同時に自分は駆け上がり、
その攻撃を彼に食らわそうとした。
「はァッ!!」

…しかし、それもその武器で止められてしまった。
「っ!?」

そして地面に足が着いた後彼はこういった。

「んな事も出来るなんざァすげぇなぁ…」
「けどよ…こんなのは序の口に過ぎねぇ、
俺を思うがまま楽しませてみろや…!!」

一度は会話を交わした相手が、
こんなに手強いとは思いもしなかった。
流石はガルバトス家の次男だ…とも思っていた。

…どうにかしてあの武器の弱点を捉えなければ、
自分が強いと証明してみせる為にも。

またもや自分は戦闘態勢に入る。
それと同時に、彼は銃口を自分の方に向ける。
「実弾よりも痛てぇから気ィつけろよ…!!」

自分は手に汗を握りながらこう答えた。
「報告感謝します、それも承知の上ですので!」

ドカン、ドカンと銃声が鳴り響く中、
自分はそれを次々と避けていく。

『あれは魔法弾…?怪我をすることは無いけれど
当たってしまえば相当な痛みを伴う…。』

問題は、どうやって自分の攻撃を仕掛けるか…
そこで自分はとある方法を思いついた。

走って弾を避けながら杖を槍に変化させる。
自分は壁を素早く走り、そこから足に力を集中させ
その壁を蹴り、飛び上がって槍を彼の方へと投げた。

「ッ!?」

その攻撃をわざとずらして怪我をさせないようにした。
幸いな事にそれは当たらなかった。
そうして笛の合図と共に
ギラトさんとの手合せが終了した。

「ふぅ…。ギラトさん、
手合せありがとうございました。」

「…お、おう」

三十分休憩で次の手合せの時間となる。
自分はその間に水を飲んだり…暫く休憩をしていた。

「よし…次の手合わせ相手はクロノスさんかな。」

…それでも彼の使う武器、
戦術等は未だ把握できていない。
狼煙さんもその一人でもあり、不明な点も幾つか…。

今その事を探っても、
無理な事は明確であって当たり前だ。
ただ休憩時間が終わるのを待つだけだった。

「……」
「アギトさん達、今頃何してるんだろう…。」

そう考えていると同時に休憩時間が終わった。
…自分はまたその場へ向かい、戦闘準備に取り掛かった。
「リンクルス…まだ戦えますか?」

そう問いかけると彼女は、余裕そうにこう答える。
「何ともありません。お気になさらず。」

自分も少し安堵して、
ホッとした表情を浮かべてこう述べた。
「…ふふ、そうでしたね。」

そうして先程の場所に戻ると、
次の手合せ相手であるクロノスさんが現れる。
その手にはサーベル…師匠も愛用していた武器だ。

「試練の時以来だな。金色まつ毛くん。」

…そう彼が言うと、自分も
言葉を交わすようにこう答えた。

「たしかにそうですね。」

すると彼は、自分に
忠告をする様で真剣な表情をしてこう述べた。

「俺はギラトや、兄貴みたいに戦闘に関しては
無関心だが…これとなれば話は別になる。」
「その力を俺に披露してくれ。」

「…承知しました。」

そして、自分と彼は戦闘態勢に入る。
すると彼は何らかの力を発揮させる。

『あれは…なんだろう。』

何やら丸い物体を宙に浮かせる。
…もしやあれは、【霊従者ネクロマンサー】の霊具なのだろうか…?

──【霊従者】。
特定の死霊を従わせ操る者。
嘗て昔では死霊の代わりに、
精霊を従わせていたとされている。

──すると次の瞬間に、
その霊具から出る黒い煙が自分を襲った。

「!」
それと同時に自分も結界を貼り、それを防ぎ止めた。
しかしその結界が破られてしまった。

「なっ!?」
「…ッ!!」

攻撃が当たる前に、自分は
後ろへと飛び上がってそれを避けた。

地面に足がつくと同時にクロノスさんは、真っ先に
自分の方へと素早く駆け寄り自分の頭を目掛けて
そのサーベルをふりかざす。

しゃがんで攻撃を回避し、自分はその瞬間に
足払いで彼をつまづかせる。
「!!」

そしてクロノスさんとの手合せが終了した。
自分は彼の方へと手を差し伸べた。

「手合せ、ありがとうございました。…立てますか?」

彼は頬に汗を垂らして唖然としていた様子を見せた。
「…っあぁ、見事だった。」

そして彼は、差し伸べた自分の手を取った。

そしてその後には次の手合せ相手である、
狼煙さんがこちらに向かって歩いてくる。

その手には大きな斧…機械式の武器だと
自分でもわかるような見た目をしていた。

彼は自分の度胸を試すように睨みつけ、こう答えた。
「すまぬが少しの間、手荒な真似をする。」
「……それも踏まえて宜しく頼むぞ。」

向かいの彼がそう言うと、自分は
頬に汗を垂らしながらこう答える。
「…こちらこそ、よろしくお願いします。」

そして彼の手に握られた斧が風を横に向けて斬ると
…その後に自分もまたもや戦闘態勢に入った。

「…っ。」

そして自分が真っ先に攻撃を仕掛ける。
それが弾き返されたと同時に、自分は
加護で杖を剣に変えてそれを彼に振りかざした。

「はぁッ!!」

…然しそれも受け止められてしまい、
自分はその斧で体ごと弾き返された。
「っ!?」

そして壁に背中をうちつけてしまう。
…が、それも加護があった為か無傷だった。
自分は打ち付けた壁を、足に力を入れて蹴り飛んだ。

そしてガチン、と鈍いような
鉄と鉄同士がぶつかり合う音がする。
火花が飛び散ると共に、自分は彼の攻撃を受け止める。
それと同時に彼も自分の杖の攻撃を止めた。

──流石はガルバトス家当主…。
素早い攻撃の割に威力が重いようで、
とてつもなく凄まじかった。

すると…その火花が散る時、
自分のどこかで何かが芽吹く感覚がした。

「!」
目の前にいる彼は、
なにやら驚いた表情をしていた。
…そして気がついた時には、自分の
髪と睫毛が銀色に輝いていたのだ。

…世界樹の時にも
感じたあのような感覚だった。

「……【約束と追憶】か…。」
「だが今は未だ、その時では無い。」
「…すまぬ。」
そう言うと彼は自分の顔へと手を伸ばした。
「!」
そして自分は、何らかの力で眠らされたのだ。

──────

…。
花畑の中…眠る師匠を見た。
…見た気がした。
その夢はまるで貴女に会えた気がして、
嬉しくも悲しかった。

そんな中、幼い頃の夢を見た。
師匠とあの澄んだ空を見上げながら話をしている、
──そんな夢を見ていた。
『…アンル。』
『もしも、私が死んでしまったらその時には…』
『私の代わりに生きてくれとは、言わない。』

『…私の願いは、
君が自分の為に生きる事だから。』

──どうしてそんな事を言ったのか
今更わかった気がして、自分は悲しかった。
夢から覚めた後に、自分は舟の中の寝室に居た。

「…」
起きた途端、自分は何やら泣いていたようだった。

そして自分の目の前の
扉の向こうにはアギトさんが居て、
自分を見るなり心配していた様子だった。
「…アンル、」

自分は何か、言葉を選ぼうとしてこう言いかけた。
「あ…」
「アギトさん、自分は──」
「……いえ、やっぱり…何でも無いです。」

…自分がそう言った後に、顔を俯くと
アギトさんは自分の方へと早足で寄ってくる。
「…?」
そして自分を抱きしめて、少しばかり
叱るように…そしてどこか悲しげにこう答えた。

「…っもっと俺を頼れよ。」
「俺は、あの時の借りを返してぇんだ。
…お前が望むなら、俺はなんだってする。」

「いつでもいい。何年かかったとしても
俺は…その時を待ってやるから。」

……。
どうして彼は、そんな事を
他でもない自分に
その様な…真剣な眼差しを向けて言えるのだろう。
自分以外の誰かなら、この言葉を
素直に受け止められたのだろうか。

……
『自分以外の誰か』…。
その言葉が自分のどこかに刺さった。

「…アギトさん、」
「自分は…貴方ではない他の人を
好きになってしまうのが、どうしても怖い…。」

…その言葉と代償に、彼の全てを受け止める。
たとえ自分が、彼にどうされようと…。

「!」
「…それなら、」
「俺のものになって、くれるのか。」

自分は涙ぐみながらも…
彼の手を握って自分の頬に当てながら、
彼の言葉にこう返した。
「大丈夫ですよ…ちゃんと、受け止めるから。」
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