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22 惜別
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しおりを挟む無事に帝都の魔術兵士寮の自室に戻ったスレクツは息をついた。
まるで夢を見ていたような気がして。
必要な家具以外はなにも置いてない自室では、見えなくても困らない。
「……」
充填槽から取り出した義眼を入れると、チリチリとした不快感が頭の中を引っ掻くのを感じて、思わず顔をしかめる。
意識の端をやすりで削られるような不快感が、止むことのない不協和音のようだ。
オンフェルシュロッケンの腕の中で、悪夢を見ずに寝た後では、不快感をことさらに嫌なものだと感じてしまう。
黒鉄魔術兵士団の兵服に着替えて、黒い布を全身に巻き、すっぽりと覆われる慣れた感覚に安堵のため息をついて。
ふと思いついたスレクツは、自分の腕で自分を抱きしめてみた。
「……ぐぅ」
意図せずおかしな声がでるほど。
ものすごく虚しかった。
やらなければよかった、と自分の非力さに悲しくなりながら、熱くて太くて硬い腕の感触を思い出す。
指先を、指の股をなめてくれた、温かくて分厚くて力強い長い舌の動きを思い出す。
もっと時間があれば、指だけでなく、もっと他の所も……って!?
私は何を考えてるんだー!?
頭を振って、大慌てで手を洗って、なめられた部分を濡らした布で拭く。
何これ、おかしい、頭が変になったのかな、と不安になり。
なめられた時の感触や、抱きしめられた時の幸福感を思い出して、頭の中が真っ白になる。
もっと触れられたい、なめられたい、と思ってしまう。
スレクツは呆然とした。
自分がおかしくなっていることを、受け入れるしかなくて。
抱きしめられたい、抱きしめたいだけなら良かったのに、なめられたいなんて狂ったとしか思えなかった。
洗濯に出そうとしていたオンフェルシュロッケン団長の肌着を広げ、立派な大きい体を思い出し、戦う時の獰猛さを思って頬を赤らめ、スレクツはついに認めた。
「私は、ついに狂ってしまったんですね」
兵士になると決めた時から、恐れていた最後が来てしまった。
いつかは訪れる未来だと思っていた。
けれど、こんな時に終わりを迎えなくてもいいじゃないか、と胸がつぶれそうに痛む。
狂気に陥った魔術兵は、廃棄される未来しかない。
あふれだした涙を止められずに、スレクツは恐怖に怯えて、悲しみに身を捩り、子供のように泣いた。
お別れの挨拶はできなかった。
アレス団長に逆らってでも、挨拶をすればよかった。
服を返しに行くことはできない。
狂った魔術兵の最後を、オンフェルシュロッケン団長に知られたくない、とスレクツは泣いた。
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