『Pâtisserie Hina 〜夢と絆のスイーツ物語〜』

ユキワラシ

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第1章:「静かに始まる予感」

第12話:心の中の戦い

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放課後、陽菜と木下が一緒に歩いているのを見かけたその瞬間、胸の奥で何かが弾けた。

あの時、陽菜に言えなかった言葉が、今でも俺の中で渦巻いている。木下の笑顔、陽菜に対するあの冷たい目、全てが俺の心をかき乱す。

「これ以上、黙って見ているだけなんて、できない」

俺は思わず呟いていた。

俺の心の中で、木下への不信感がどんどん大きくなっていく。陽菜を本当に友達として心配しているのか、それとも――。

「おい、朝倉」

突然、背後から声がかかる。振り返ると、真田が立っていた。

「何だよ、真田」

「お前、なんか顔色悪いぞ」

真田は俺の顔を見て、少し気にしたように言った。だが、その目はどこか鋭く、俺を見透かしているような気がした。

「……大丈夫だ」

「ならいいけど、何か悩んでるんだったら話してみろよ」

俺は少しだけ真田に目を向けたが、すぐに視線を逸らした。今は他の誰かに相談している場合じゃない。

俺の中で、全てを乗り越える覚悟が固まっていった。

***

その日の放課後、俺は陽菜を待っていた。木下に対して、今のままでいいとは思えなかった。彼女が陽菜に対してどう思っているのか、そして、自分の気持ちがどうしたいのか、はっきりさせたかった。

「朝倉くん!」

陽菜が急いで歩いてきて、俺の前に立った。その顔はいつも通りの笑顔だが、どこか少しだけ疲れているようにも見える。

「どうしたの? なんだか、今日は元気ないみたい」

陽菜が心配そうに言うが、俺はその時、今すぐにでも気持ちを伝えようと決心した。

「陽菜、俺、木下にはっきり言いたいことがある」

陽菜は一瞬驚いたように目を大きく開いた。

「え? 何を?」

「お前が、木下に気を使いすぎるのが気に入らないんだ」

陽菜は驚きの表情を浮かべたまま、言葉が出てこない様子だ。その瞬間、どこからともなく木下が現れた。

「おい、朝倉。あんた、また陽菜に構いすぎじゃない?」

木下の声に、俺は無意識に立ち上がった。その目は、冷たく、そして何か挑発的なものを含んでいる。

「お前、何が言いたいんだ?」

「ただ、陽菜が一人でいる時に、もっと自由にしてあげるべきだと思うよ」

木下の言葉に、俺は胸の奥が熱くなるのを感じた。俺は思わず手を握りしめ、もう一度言った。

「お前に何が分かる?」

木下は一瞬、目を細めたが、すぐにその冷たい笑みを浮かべた。

「何も分からないのは、あんたの方だろう?」

その瞬間、何かが爆発した。

「ふざけるな」

俺は一歩踏み出し、木下の方に向かって強く言った。木下もその目を俺に向け、少しも引くことなく言い返した。

「お前、陽菜を守るつもりなんだろ? でも、陽菜に何が必要かなんて、俺の方が分かってる」

「分かってるのは、俺だ」

その瞬間、木下が一歩前に出てきた。陽菜が驚いた顔をして二人を見つめている。

「陽菜を守りたいなら、まずは自分の気持ちに向き合え。陽菜が必要としているのは、あんたみたいにうろたえる男じゃない」

「それはお前の思い込みだ」

俺は木下に向かって、強く言い放った。その声が、屋上に響き渡った。

木下はその瞬間、険しい表情を浮かべた。そして、俺をにらみつけながら一歩後退する。

「陽菜、私はあんたのことを本当に心配してる。あんたには、他の誰かを選んでほしいんだ」

木下はその言葉を吐き捨てると、俺を無視してその場を離れていった。

陽菜はその背中を見つめていたが、すぐに俺の方を見た。

「朝倉くん、あんな言い方しなくても……」

「でも、陽菜」

俺は言葉を続ける。

「お前が木下に振り回されるのが嫌なんだ。お前は、もっと自分の気持ちを大事にしてほしい」

その言葉に、陽菜の顔が少し赤くなる。だが、彼女はゆっくりと俺に歩み寄ってきて、静かに言った。

「ありがとう、朝倉くん。でも、私には木下さんの気持ちも分かるし、あなたの気持ちも分かる」

「……陽菜」

「でも、今は少しだけ、私自身で考えたい」

その言葉を聞いた瞬間、胸の中に温かいものが込み上げてきた。それでも、俺は一歩後ろに下がり、静かに答える。

「分かった、俺は待つよ」

その後、陽菜は少しだけ微笑んだ。木下との戦いは、今はまだ終わらない。それでも、陽菜に伝えたかった気持ちが、少しだけ軽くなった気がした。
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