34 / 35
24食目 菊さんの卵とじうどん
しおりを挟む
この町に来て八回目の朝。梨花は柔らかい朝の日差しと、穏やかな波の音で目が覚めた。
布団の中で仰向けになったまま、もうすっかり見慣れてしまった天井を見つめる。
「今日……帰るんだ」
そう口に出したら、なんともいえない気持ちが込み上げてきて、それを振り払うように勢いよく体を起こした。
支度をして広間へ行くと、出汁の良い香りが部屋中に漂っていた。
「おはようございます、梨花さん」
「おはようございます、芙美さん」
「いよいよ今日はお帰りですね。列車の運行も通常に戻りましたし、外はポカポカ陽気ですよ」
芙美がそう言って、にっこり微笑む。広間の窓からは明るい朝日が差し込んでいた。
「あの、今朝もみんなで一緒に食事をしたいんですが」
「ふふっ、もうそのつもりのようですよ」
芙美がいたずらっぽく笑ったとき、広間に十希也がやってきた。お盆に三つのどんぶりをのせている。
「朝飯、できたぞ」
「わぁ、いい香り。なんですか?」
梨花の前に、十希也がどんぶりを置いた。温かい湯気が立っている。のぞき込むと、ふわふわの卵とその上にのった緑のねぎ、つゆの中には白いうどんが見えた。
「十希也さん、これって……」
「『菊うどん』のうどん。秘伝のレシピで作ってみた」
そう言って十希也が、梨花の隣に座る。
たしかに見た目はこの前食べたうどんにそっくりだ。
「とにかく食ってみてくれ」
「はい」
梨花が箸を持つと、「菊さんのおうどん、久しぶりだわ」と、芙美も嬉しそうに箸を取る。
「いただきます」
三人そろってそう言って、うどんをすすった。
ふわふわの卵も、太めでコシのあるうどんも、優しい味のつゆも、菊さんのうどんそのものに思えた。
「おいしいです」
梨花はそう言ったが、十希也は渋い顔をしていた。
「うーん、うまいけど、なんか違う」
「えっ、違いますか? 私には同じようにおいしかったですけど」
「いや、やっぱ菊さんのとは違う」
「でもレシピは同じなんですよね?」
「レシピは同じでも、作り手が違うと微妙に変わっちまうんだよ。俺は親父の味もまだ出せてない」
そう言いながら、十希也はつゆを全部すすると「ごちそうさま」と箸を置いた。
すると同じように最後のひと口を食べた芙美が、箸を置きながら言った。
「そうね。なにかが足りないといえば、『心』かもしれないわね」
「心?」
十希也がつぶやくと、芙美がうなずいた。
「菊さんもお父さんも料理には心を込めて作っていたわ。あんたにはまだそれが足りないのかもしれないわね」
十希也がなにか言いたげに顔をしかめる。また喧嘩になったらどうしようとひやひやしたが、十希也は素直に「わかった」と言った。そして梨花だけに聞こえるような声で、ぼそっとつぶやいた。
「今度あんたが来るまでに、完璧にしとく」
梨花の気持ちが晴れやかになって、大きくうなずいた。
朝日の差し込む三人の食卓。
帰りたくない、と出かかった声を、梨花はそっと呑み込んだ。
「芙美さん、本当にお世話になりました」
宿の前で梨花は頭を下げる。外まで出てきてくれた芙美が、梨花の手を取る。
「いつでも遊びにきてくださいね」
「はい。また必ず来ます」
芙美は微笑んで、梨花の手をそっと離すと、少し眉をひそめた。
「十希也はなにしてるのかしら。駅まで送ってあげなさいって言ったのに」
梨花は慌てて首を横に振ると、ボストンバッグを手に持った。
「いえっ、大丈夫です! お見送りとかされるの苦手なんで、私はこれで!」
「だったら、十希也を呼んで……」
「大丈夫です! あの、本当にこのままで……」
本当は十希也の顔を見たら、帰りたくなくなってしまう気がするからだ。
「そう? じゃあ、気をつけてお帰りくださいね」
「はい。ありがとうございました」
梨花は頭を下げて、手を振る。芙美も笑顔で手を振ってくれた。
芙美と別れて、駅へと続くゆるい坂道を上っていく。振り返るとのどかな港の風景が見えて、鼻の奥がツンと痛んだ。
「にゃお」
足元で猫の鳴き声がした。
「デュオ」
梨花の足に顔をすり寄せてくるデュオを、そっと抱き上げた。
「もうさよならなんだ。でもまた会いにくるから、元気でいてね」
「にゃおん」
柔らかいデュオの毛に頬ずりをしてから、そっと地面に下ろした。
「にゃお、にゃお」
しかしデュオは鳴きながら、三本の足で梨花のあとを必死で追いかけてくる。駅の改札はもう目の前だ。
「デュオ、だめだよ。これ以上は来られないの。十希也さんのおうちに帰ってね」
「にゃん、にゃん」
駄々をこねるように鳴かれてしまい、梨花は困ってしまう。
だけどもうそろそろ電車が来る。ホームに向かわなければならない。
「ごめんね。バイバイ、デュオ」
最後に一度だけ頭を撫でると、梨花は逃げるように改札を抜けた。
「にゃお、にゃお!」
デュオはその場に立ち止まったまま、まだ鳴いている。
後ろ髪を引かれながらも、梨花は急いでホームへ向かった。そのときだ。
「梨花!」
誰かに名前を呼ばれた。慌てて振り返ると、十希也がデュオを抱き上げ、そのまま改札を抜けてこちらに走ってくる。
「十希也さん?」
戸惑う梨花の前に、十希也が息を切らしながら立った。
「にゃお! にゃお!」
十希也に抱かれたデュオが梨花に向かって鳴き声を上げる。
「どうしてこんなところまで……」
「これ……渡したくて……」
十希也が持っていた小さな風呂敷包みを差し出す。前に桟橋で重に会ったとき、サンドイッチを包んでいた風呂敷だ。
「なん……ですか?」
「腹減ったら食えよ」
梨花は黙って十希也の手から風呂敷包みを受け取る。一瞬だけ触れ合った指先が、すぐに離れた。
「梨花」
十希也に名前を呼ばれたのは、今日がはじめてだ。
「いつかまた、満月の夜に来いよ」
満月の夜……梨花の頭に、海にできた月明かりの道が浮かんでくる。
また満月の夜に、ここで一緒にあの景色が見られるなら……それまでどんなことでも頑張れそうな気がした。
「はい」
うなずいた梨花に、十希也が言った。
「いろいろありがとな」
梨花の心に、温かいものが染みわたる。
「こちらこそ、ありがとうございました」
ひと気のない駅のホームに電車が滑り込んできた。
「デュオ、今度こそ本当にバイバイだよ」
電車が停まりドアが開く。数人の乗客が降りてきて、発車のベルが鳴りはじめる。
梨花はもう一度デュオの頭を撫でて、列車に乗り込む。
「にゃおん……」
そんな梨花のことを、十希也とデュオが見つめている。
「またね、十希也さん」
あふれる気持ちを抑えて梨花が言うと、十希也がうなずいた。
「ああ、またな、梨花」
目の前でドアが閉まり、ふたりの距離がわずかに遠くなる。やがて列車が、ゆっくりと動き出す。梨花は風呂敷包みを抱えながら、ドアの窓から外を見る。
誰もいなくなったホームでは、十希也がデュオを抱いたまま、梨花に向かって大きく手を振っていた。
布団の中で仰向けになったまま、もうすっかり見慣れてしまった天井を見つめる。
「今日……帰るんだ」
そう口に出したら、なんともいえない気持ちが込み上げてきて、それを振り払うように勢いよく体を起こした。
支度をして広間へ行くと、出汁の良い香りが部屋中に漂っていた。
「おはようございます、梨花さん」
「おはようございます、芙美さん」
「いよいよ今日はお帰りですね。列車の運行も通常に戻りましたし、外はポカポカ陽気ですよ」
芙美がそう言って、にっこり微笑む。広間の窓からは明るい朝日が差し込んでいた。
「あの、今朝もみんなで一緒に食事をしたいんですが」
「ふふっ、もうそのつもりのようですよ」
芙美がいたずらっぽく笑ったとき、広間に十希也がやってきた。お盆に三つのどんぶりをのせている。
「朝飯、できたぞ」
「わぁ、いい香り。なんですか?」
梨花の前に、十希也がどんぶりを置いた。温かい湯気が立っている。のぞき込むと、ふわふわの卵とその上にのった緑のねぎ、つゆの中には白いうどんが見えた。
「十希也さん、これって……」
「『菊うどん』のうどん。秘伝のレシピで作ってみた」
そう言って十希也が、梨花の隣に座る。
たしかに見た目はこの前食べたうどんにそっくりだ。
「とにかく食ってみてくれ」
「はい」
梨花が箸を持つと、「菊さんのおうどん、久しぶりだわ」と、芙美も嬉しそうに箸を取る。
「いただきます」
三人そろってそう言って、うどんをすすった。
ふわふわの卵も、太めでコシのあるうどんも、優しい味のつゆも、菊さんのうどんそのものに思えた。
「おいしいです」
梨花はそう言ったが、十希也は渋い顔をしていた。
「うーん、うまいけど、なんか違う」
「えっ、違いますか? 私には同じようにおいしかったですけど」
「いや、やっぱ菊さんのとは違う」
「でもレシピは同じなんですよね?」
「レシピは同じでも、作り手が違うと微妙に変わっちまうんだよ。俺は親父の味もまだ出せてない」
そう言いながら、十希也はつゆを全部すすると「ごちそうさま」と箸を置いた。
すると同じように最後のひと口を食べた芙美が、箸を置きながら言った。
「そうね。なにかが足りないといえば、『心』かもしれないわね」
「心?」
十希也がつぶやくと、芙美がうなずいた。
「菊さんもお父さんも料理には心を込めて作っていたわ。あんたにはまだそれが足りないのかもしれないわね」
十希也がなにか言いたげに顔をしかめる。また喧嘩になったらどうしようとひやひやしたが、十希也は素直に「わかった」と言った。そして梨花だけに聞こえるような声で、ぼそっとつぶやいた。
「今度あんたが来るまでに、完璧にしとく」
梨花の気持ちが晴れやかになって、大きくうなずいた。
朝日の差し込む三人の食卓。
帰りたくない、と出かかった声を、梨花はそっと呑み込んだ。
「芙美さん、本当にお世話になりました」
宿の前で梨花は頭を下げる。外まで出てきてくれた芙美が、梨花の手を取る。
「いつでも遊びにきてくださいね」
「はい。また必ず来ます」
芙美は微笑んで、梨花の手をそっと離すと、少し眉をひそめた。
「十希也はなにしてるのかしら。駅まで送ってあげなさいって言ったのに」
梨花は慌てて首を横に振ると、ボストンバッグを手に持った。
「いえっ、大丈夫です! お見送りとかされるの苦手なんで、私はこれで!」
「だったら、十希也を呼んで……」
「大丈夫です! あの、本当にこのままで……」
本当は十希也の顔を見たら、帰りたくなくなってしまう気がするからだ。
「そう? じゃあ、気をつけてお帰りくださいね」
「はい。ありがとうございました」
梨花は頭を下げて、手を振る。芙美も笑顔で手を振ってくれた。
芙美と別れて、駅へと続くゆるい坂道を上っていく。振り返るとのどかな港の風景が見えて、鼻の奥がツンと痛んだ。
「にゃお」
足元で猫の鳴き声がした。
「デュオ」
梨花の足に顔をすり寄せてくるデュオを、そっと抱き上げた。
「もうさよならなんだ。でもまた会いにくるから、元気でいてね」
「にゃおん」
柔らかいデュオの毛に頬ずりをしてから、そっと地面に下ろした。
「にゃお、にゃお」
しかしデュオは鳴きながら、三本の足で梨花のあとを必死で追いかけてくる。駅の改札はもう目の前だ。
「デュオ、だめだよ。これ以上は来られないの。十希也さんのおうちに帰ってね」
「にゃん、にゃん」
駄々をこねるように鳴かれてしまい、梨花は困ってしまう。
だけどもうそろそろ電車が来る。ホームに向かわなければならない。
「ごめんね。バイバイ、デュオ」
最後に一度だけ頭を撫でると、梨花は逃げるように改札を抜けた。
「にゃお、にゃお!」
デュオはその場に立ち止まったまま、まだ鳴いている。
後ろ髪を引かれながらも、梨花は急いでホームへ向かった。そのときだ。
「梨花!」
誰かに名前を呼ばれた。慌てて振り返ると、十希也がデュオを抱き上げ、そのまま改札を抜けてこちらに走ってくる。
「十希也さん?」
戸惑う梨花の前に、十希也が息を切らしながら立った。
「にゃお! にゃお!」
十希也に抱かれたデュオが梨花に向かって鳴き声を上げる。
「どうしてこんなところまで……」
「これ……渡したくて……」
十希也が持っていた小さな風呂敷包みを差し出す。前に桟橋で重に会ったとき、サンドイッチを包んでいた風呂敷だ。
「なん……ですか?」
「腹減ったら食えよ」
梨花は黙って十希也の手から風呂敷包みを受け取る。一瞬だけ触れ合った指先が、すぐに離れた。
「梨花」
十希也に名前を呼ばれたのは、今日がはじめてだ。
「いつかまた、満月の夜に来いよ」
満月の夜……梨花の頭に、海にできた月明かりの道が浮かんでくる。
また満月の夜に、ここで一緒にあの景色が見られるなら……それまでどんなことでも頑張れそうな気がした。
「はい」
うなずいた梨花に、十希也が言った。
「いろいろありがとな」
梨花の心に、温かいものが染みわたる。
「こちらこそ、ありがとうございました」
ひと気のない駅のホームに電車が滑り込んできた。
「デュオ、今度こそ本当にバイバイだよ」
電車が停まりドアが開く。数人の乗客が降りてきて、発車のベルが鳴りはじめる。
梨花はもう一度デュオの頭を撫でて、列車に乗り込む。
「にゃおん……」
そんな梨花のことを、十希也とデュオが見つめている。
「またね、十希也さん」
あふれる気持ちを抑えて梨花が言うと、十希也がうなずいた。
「ああ、またな、梨花」
目の前でドアが閉まり、ふたりの距離がわずかに遠くなる。やがて列車が、ゆっくりと動き出す。梨花は風呂敷包みを抱えながら、ドアの窓から外を見る。
誰もいなくなったホームでは、十希也がデュオを抱いたまま、梨花に向かって大きく手を振っていた。
1
あなたにおすすめの小説
12月25日の軌跡
朱村びすりん
ライト文芸
私には歳の離れた妹がいる。
妹は、生まれつき軽度の脳性麻痺。足が少し不自由で、普段の生活では大人の助けが必要になる。
母は、仕事ばかりでほぼ家にいない。
父は、我が娘のハンデを知ると私たち家族から離れていった。
妹は、両親の愛を知らない。
だから私は姉として、家族として、妹を支えていくんだ。
そんな妹は、ある日手術を受けることになった。
「もっと上手に歩けるようになりたい」
その願いを叶えるために──
妹を支えようともがく姉。ハンデを抱えながらも懸命に生きる妹の強さ。
信頼できる医師との出会い。
家族の絆を描いたヒューマンストーリー。
※物語上で行われる手術「選択的脊髄後根切断術(SDR)」を受ける推奨年齢は平均五歳前後とされております。医師の意見や見解、該当者の年齢、障害の重さや特徴等によって、検査やリハビリ治療の内容に個人差があります。
また、物語に登場する主人公の妹の私生活等は、全ての脳性麻痺の方に当てはまるわけではありませんのでご理解ください。
◆表紙絵…フリー素材ぱくたそ
[ https://www.pakutaso.com ]
【完結】あの日の月に君を見る
月狂 紫乃/月狂 四郎
ライト文芸
【アルファポリス「25周年アニバーサリーカップ」参加作品】
深夜に峠へ肝試しに行った中学生の男女4名。その肝試しがきっかけで、それぞれの関係に変化が起こりはじめる。甘酸っぱい青春の日々を過ごしていた4人は、ある事故をきっかけに別れていき、そのまま25年の時が過ぎ去っていく。
大人になった彼らは小規模な同窓会を開く。だが、目の前に現れた「彼女」は、25年前の事故で亡くなったはずの少女だった。
なぜ「彼女」は現れたのか。そして、25年の間に果たされなかった想いとは?
ラストは涙必至⁉ 切ない想いが胸をしめつける、感動の純愛ストーリー‼
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
毎月25日は椿くん感謝デー
佐々森りろ
ライト文芸
5月25日、16歳の誕生日、如月虹子は母からのプレゼントで別人になるほど見た目が変わってしまった。慣れないヒールで歩いていると、ふら付いた拍子に自転車と接触しそうになってしまう。そこに現れたのは、同じクラスで人気者のイケメン皐月椿くん。
クラスメイトであることに気が付かない椿に助けられて、初めて話して虹子は椿くんに感謝と共に推すことを決めた。椿くんそっくりの推しぬい、ツバくんを作り密かに二人の共通点の25日に毎月感謝をして根暗なりに幸せに暮らしていた。
そんなニコの日常が、一人の先輩の登場で穏やかではなくなっていく……!?
表紙:自作
25階の残響(レゾナンス)
空木 輝斗
ミステリー
夜の研究都市にそびえる高層塔《アークライン・タワー》。
25年前の事故以来、存在しないはずの“25階”の噂が流れていた。
篠原悠は、亡き父が関わった最終プロジェクト《TIME-LAB 25》の真実を確かめるため、友人の高梨誠と共に塔へと向かう。
だが、エレベーターのパネルには存在しない“25”のボタンが光り、世界は静かに瞬きをする。
彼らが辿り着いたのは、時間が反転する無人の廊下――
そして、その中心に眠る「α-Layer Project」。
やがて目を覚ますのは、25年前に失われた研究者たちの記録、そして彼ら自身の過去。
父が遺した装置《RECON-25》が再起動し、“観測者”としての悠の時間が動き出す。
過去・現在・未来・虚数・零点――
五つの時間層を越えて、失われた“記録”が再び共鳴を始める。
「――25階の扉は、あと四つ。
次に見るのは、“未来”の残響だ。」
記録と記憶が交錯する、時間SFサスペンス。
誰もたどり着けなかった“25階”で、世界の因果が音を立てて共鳴する――。
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness
碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞>
住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。
看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。
最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。
どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……?
神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――?
定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。
過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる