さすがに異世界では学校に行くよ!

キムチ鍋

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アストライア王国VS魔界編

第27話 炎の心と炎の街

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朝日は学校の正門をくぐり、校長室の扉を開けた。校長が椅子に座って本を読んでいる。
「話の整理はつきましたか?」
「正直完璧に整理できたわけじゃありません......でも、もう大丈夫です」
校長はほっと息を吐き、笑顔で言った。
「良かったです......それよりもなぜ私が今になってあなたにこの話をしたのかと言いますと......」
校長の表情が一気に鋭くなった。その表情からただ事ではないことが読み取れた。
「ヘルが再び戦争を引き起こそうとしています。ヘルを倒すにはまず朝日くんは自分のことをよく知るべきだと思ったからです。それに.....」
朝日が素早く口を挟んだ。
「俺のお母さんとお父さんが何か関係しているんですか?」
「......あなたの母親と父親が目撃された場所は魔界です......何か嫌な予感がします」
朝日の胸が騒ぎ出した。
(まさか......そんなはずないよな......)
「その話はまた後日......実は私は今一つ嘘をつきました......戦争はもう既に起きています」
朝日は目を大きく見開いた。
「どういうことですか!?」
「先日......王様の城がヘルたちに襲われた時にそれを宣戦布告と見なし、魔界との戦争に向けて今は戦争の準備をしています」
朝日は王様の城での事件を思い出した。それと同時に憎たらしいヘルの顔も思い出した。
「あれが宣戦布告だったのか......」
(ってことはサアヤを俺達の屋敷に預けた理由はこのことをサアヤに知らせないためだったのか......)
「そして、私も戦争に参加します。ヘルは親友の仇ですからね......」
朝日は少し苦しそうな表情の校長を見てあることを察した。
「俺にもその戦争に参加しろと?」
「いいえ。ステラさんたちを連れてこの街から逃げてください。この街はこの国の中心となる街......必ず戦場になります」
校長の手には細長い六枚の紙切れが握られていた。校長は朝日にそれを手渡した。
「このチケットは避難する時に使ってください......これを使えばこの国の一番南にある田舎の街に行けるはずです。ペットはちゃんと"触っていれば"大丈夫です」
朝日はチケットをポケットに入れた。
「ありがとうございます......」
すると、朝日は校長室の隅に置かれた黒いローブに目をつけた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
一方屋敷の庭では......サアヤが木の剣を握り、サアヤの前に木の剣を握ったステラ、由奈、ナナが立っている。由奈の身体は震えている。サアヤが由奈を励ますように言った。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ?なんならやめても......」
由奈が大きな声で叫んだ。
「嫌です!!......守られるだけじゃ......ダメなんです」
ステラとナナが心の中で同じことを言った。
(まあ、寝起きのあんたは守るどころか朝日を殺しかねないけどね)
サアヤは決心した様子の由奈を見て、微笑んだ。まるで自分が師匠になったかのように良い気分になったのだ。
「分かったわ。それじゃあまずは......」
そんな四人を暖かい目でユウとマイサンが見つめている。
「良い志ね」
「おいらも少し変身したりしないといけないわん」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
数時間後......朝日が屋敷に帰って来た。朝日の肩には黒いローブがかかっている。朝日は庭で汗と泥まみれで地面に尻をついているステラたちを見て目を見開いた。
「お前らどうしたんだ!?」
ステラたちの前に立っていたサアヤが口を開いた。
「ステラちゃんたちが剣術をやりたいって言ったから......」
ナナが肩で息をしながら言った。
「あんた......こんなの毎日やってるのね......少し見直しちゃった」
ステラが地面から身体を起こした。
「でも、私たちも......なかなかやれそうね」
由奈は木の剣を汗ばんだ手で強く握った。
「まだ終わってません!これから......」
すると、由奈の頬に衝撃が走り、皮膚が叩かれた音が響いた。朝日が由奈の頬に平手打ちをしたのだ。朝日は黙ってステラとナナの頬にも平手打ちをした。ユウとマイサンは不安そうな表情をして呟いた。
「朝日くん......」
「ご主人様......」
「え......なんで......」
ステラが赤くなった頬を押さえた。朝日が心の底から叫んだ。
「バカ!!お前らが剣なんか握ったらすぐに殺されちまうだろ!!」
由奈が目を涙で麗せながら震える声で言った。
「でも......それじゃあ......」
「ごちゃごちゃうるせえよ!黙って俺に守らせろよ!!」
朝日は由奈の赤くなった頬に優しく手を置いた。
「ぶったりしてごめん......女に手をかけるなんて最低だな......でもな......こんな最低野郎に全て任せてくれないか?こんな最低な野郎でもお前らを絶対に守るから」
五人を月光が照らした。朝日の目は優しく由奈をまっすぐ見ていた。ステラとナナは笑顔で言った。
「たまにはかっこいいこと言うのね......」
ナナはユウの方を見ながら言った。
「それなら私もあんたに全部任せるよ!それじゃあご飯にしよう!」
ナナの顔は赤く、おそらく照れ隠しのためにユウの方を見たのだろう。
「そうね.....」
だが、彼らはこの時これから自分たちに起きる悲劇のことを知るよしなどなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
王城の地下では多くの兵士たちが自分の武器の手入れに励んだり、談笑したりと中には恋人や家族の家に帰っている兵士もいるそうだ。銀色の鎧に身を包んだ一人の兵士が自分の銀色の剣を見つめながら言った。
「まさかこの平和な国で戦争が起きるなんて想像もしなかったな......」
そこに二人の兵士がニヤニヤしながら寄って来た。
「よおよお。ちゃんと奥さんと子供に会いに行ったのか~い?」
「そういえば娘が産まれたらしいな。今いくつだ?」
兵士は自分の家族の温もりを思い出して思わず微笑んでしまった。
「今日で五歳になる。剣の手入れが終わったら会いに行く予定だ」
すると、地面が大きく揺れた。兵士たちは慌てた様子で周りをキョロキョロした。
「なんだ?地震?」
すると、階段を急いで走り降りてくる足音が聞こえてきた。そこには黒いスーツを着た執事が汗を流しながら立っていた。
「大変です!魔界の連中が......街を襲っています!出撃準備を!!」
兵士たちはそれぞれ剣を握り、走り出した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
街が襲われる数分前......朝日たちは屋敷で食堂でご飯を食べていた。今日のご飯はハンバーグだ。サアヤが物珍しそうな目でハンバーグを見ている。
「ステーキかしら?それにしては丸いような......」
朝日たちはサアヤの生い立ちについて想像した。朝日たちは彼女は城にいたので高級なものばかり食べていてハンバーグなどとは縁がないということを想像した。そんなことを考えると、朝日たちは思わず笑ってしまった。
「なにがおかしいのよ!」
サアヤは少し照れくさそうに頬を赤くした。
「私......なんか高級なものしか食べてなかったから......」
朝日はもじもじしているサアヤを見て少し胸がほっとした。
(ちょっとは可愛いとこあるじゃねえか)
「これはハンバーグっていうんだ。ステーキみたいなものだから食べてみろよ」
サアヤは唾をゴクリと飲み、ナイフで食べやすいサイズに切り、フォークで口に入れた。
(これは......ステーキほどじゃないけど...なんかすごくおいしい......なんでだろう......胸が暖かい)
朝日はおいしそうにハンバーグを食べるサアヤを見て笑顔になった。
(そうか......もっとおいしいものを教えてやりたいな......)
すると、地面が大きく鈍い音をたてながら揺れた。
「なに!?」
揺れはすぐに収まったが、外が騒がしかった。朝日の頭の中で嫌な可能性が横切った。
「まさか......」
朝日は屋敷を飛び出し、外に出た。いつもの街の光景とはまったく違うものが朝日の目の前には広がっていた。人々の悲鳴が朝日の耳を痛くする。街はまるで火の海で赤く炎が人々や建物を包んでいる。黒いローブの男達が所々に歩いている。
「ヘル......てめえ......」
ヘルは赤い空を背に不気味に笑った。











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