さすがに異世界では学校に行くよ!

キムチ鍋

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アストライア王国VS魔界編

第29話 温もりの中で

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朝日と校長は炎の街を歩いている。道端には兵士や一般人の亡骸が転がっている。朝日の目に家族の写真を右手に持って死んでいる兵士が止まった。その写真の一部には血が飛び散っているが、小さい子供とその子の母親と父親であろう人物が写っている。朝日はその写真を優しく兵士から取った。
「この世界にもカメラ......あったのか......なあ。この写真......俺があんたの家族に届けるよ」
朝日はその写真をポケットにしまった。
しばらく歩くと、くまのぬいぐるみを持った子供が道の真ん中でうずくまっているのが見えた。朝日と校長は急いでその子の元に駆け寄った。その子はおそらく女の子で黄緑色の髪の毛を二つに縛っている。校長が優しく話しかけた。
「怪我はない?」
「うん......でもママが起きないの......さっきからずっと起こしてるのに......」
朝日はその子供の目の前に倒れている女の亡骸を見た。その子供は母親の亡骸を何度も揺さぶっている。
「ねえ。ママ起きてよ。ママ......ママ」
少女の目から涙がこぼれ落ちると、朝日の胸がひどく痛んだ。悲しみと同時にヘルに対する憎悪が激しく増加して来た。
(どいしてこんな子供が......親を失わなきゃいけないんだ......)
朝日は少女の目の前に座った。
「君......名前はなんて言うの?」
「カナの名前はカナだよ」 
朝日はポケットからチケットを取り出した。
「そうか......カナちゃん......この紙を持って目を閉じてごらん」
カナという少女は朝日からチケットを受け取り、目を閉じた。その少女の姿は光とともに消えた。
「朝日くん......」
すると、遠くから何かが崩れる音がした。振り返ると城は崩れ落ち、原型をとどめていない。中からは大きな黒色の炎の様な細長いものが現れた。よく見ると赤い瞳を輝かせ、黒色の炎は二本の角のような形を描いている。その姿はまるで龍だ。校長は目を大きく見開いた。
「まずいですね......もうこの街はおしまいです......」
黒い龍は雄叫びを上げた。
「あれはなんですか?」
「あれは本来の姿のヘルです......あの姿になってしまったら今の私ではもう......」
校長は下を向いた。朝日は校長が絶望的な表情になるのを初めて見た。そんな校長に対して朝日は一切同様していない。
「あなたが勝てなくても俺なら......」
朝日は刀を龍と化したヘルに向けた。校長はその行動を見て朝日がどんなことをしようとしているのか悟った。
「そうでした......あなたは天龍の力を持っていましたね。それに守護霊の加護も......」
朝日は歯を剥き出しにして微笑んだ。
「やらなきゃ終わりだ......やってやる」
(ガイア......ハッピー......力を貸してくれ......)
すると、朝日の身体を黒色と金色の光が包んだ。朝日は身体の中に力が流れ込んでくるのを感じた。朝日を包む光が一度激しく輝いた。その輝きに校長は思わず目を庇った。輝きは徐々に優しくなり、校長は目を開けた。朝日の髪色は右半分が黒く、左半分が金色に輝き、目の色は赤く変色していた。
「天龍の力と守護霊の力を合わせてみました......守護霊はおそらくハッピーだけじゃありません......ガイアも......」
朝日は目を閉じて、力を覚醒させる直前に頭の中で起きたことを思い出した。
朝日の頭の中で声がしたのだ。その声は懐かしく、もう聞くことがない声だと思っていた声だ。
「朝日くん......僕の分も暴れてね」
(ガイア......なのか?......もちろん暴れてやるよ!)
朝日は目をゆっくりと開いた。校長は優しい眼差しで朝日を見つめた。
「朝日くん......君の教師になれて私は光栄でしたよ」
「なに言ってるんすか。まだあんたの教師生活は終わらないっすよ......俺の宿題もまだ終わりそうにないし......校長先生」
朝日の右側の背中に白色の光の翼が生え、左側には黒色の光の翼が現れた。
「じゃあ、ちょっくら街を救ってきます」
そう言い放ち、朝日は赤色の空に飛び立った。朝日はまっすぐヘルに向って飛んでいた。ヘルは朝日を見つけて雄叫びを上げた。
「グオオオオ!!スズキ......アサヒ......コロス!」
不気味な声が鳴り止むと、ヘルは大きく口を開いた。そこから黒色の炎が朝日を焼き尽くそうと放たれた。
「そんなの......こうしてくれる!!」
朝日は迫る炎に刀を横に構えた。ヘルには朝日が一瞬だけ黒色のパピヨンに見えた。朝日はその炎を叩き斬った。刀を構え直し、再び朝日はヘルに向かい始めた。ヘルは慌てて口からなんども炎を出すが朝日には難なく避けられてしまった。
「バカ......ナ......」
朝日の刀が金色の光を帯びた。朝日の頭の中にステラ、由奈、ユウ、ナナ、マイサン、サアヤの笑顔が横切った。
「これで終わりだあああああああ!」
朝日の想いを込めた刀はヘルの大きな身体を切り裂いた。ヘルの目には朝日の後ろに剣を構えるのを金髪の少年......ガイアが一瞬見えたが、ガイアは雄叫びを上げその姿は光とともに消え去った。
朝日は崩れ去った城の目の前に降り立った。いつの間にか朝日の髪色は元の茶色に戻り、翼も消えていた。校長がゆっくりと歩いて朝日の隣に立った。
「あっけなく倒してしまいましたね......あなたは本当に凄いですね」
「ステラたちのおかげです。あいつを貫く時にステラたちの笑顔が頭の中を走ったんです。それでこれで負けたら.....絶対倒す!って思ってたらなんとか......でも、この力はもう使えない気がし......」
次の瞬間、朝日の腹に激痛が走った。自分の腹を見ると銀色の剣が突き刺さっていた。そこから血が流れ初め、朝日は地面に倒れた。
「朝日くん!!......誰だ!?」
校長が崩れた城の門を見ると、ガレキの山の上に一人の男が立っていた。
「俺を忘れていないか?......鈴木 朝日」
そこには白く、長い髪を風に揺さぶられているユグドラが立っていた。
「お前......生きてたのか......」
朝日は自力で刺さった剣を抜き、立ち上がった。その足元はふらついている。
「ヘルはもう倒したぞ......」
ユグドラは不気味な微笑み、両腕を広げた。
「計画の第一段階......ヘル様の復活......第二段階......王国の中心であるこの街を支配すること......第三段階......この王国を完全に支配する......そして最終段階......神を殺す!!」
朝日は腹に手を当てながら呟いた。
「神を殺す......だと」
「おっと!これ以上は言えないな。ちなみに君を殺そうとして剣を突き刺したわけじゃないんだよね......でも......」
ユグドラが右手を突き出すと、地面に落ちている朝日の血がついた剣がユグドラの手に渡った。
「殺しても害はないからな」
ユグドラが剣を構えると同時にユグドラを尖った氷が襲った。ユグドラは剣で地面に切り落とした。校長が右手を突き出していた。
「朝日くん......もしもこれからどんなことがあっても前を見て生きてください......でも、どうしても辛くなったらたまにはみんなを......」
校長は朝日に向けて、右手を向けた。
「頼ってあげてください......」
朝日の身体を赤色の光が包んだ。
「校長!?どういうことですか......」
腹の傷が痛み、朝日はうずくまった。
「ぐう......校長......」
校長は朝日に背中を向けた。そして朝日は光とともに消えた。ユグドラが高笑いしながら言った。
「おやおや。ずいぶんと感動的なものを見せてくれたね」
「どうせすぐ会えますから」
校長は右手を空に突き上げた。すると、魔法陣が現れ、そこから刀が出現した。持ち手と鞘の色は白色の刀だ。校長は鞘を外し、真っ白な刀身を見せた。
「すぐ会えると思ってるのか?残念だったな......お前の負けはもう確定している」
ユグドラの背後から黒い影が出現し、目にも止まらぬ速さで校長の目の前に飛んだ。赤色のローブを羽織り、顔はフードで隠れている。だが、校長はフードの隙間からその顔を見てしまった。
「あなたは.........」
校長の胸を赤色の剣が貫いた。












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