さすがに異世界では学校に行くよ!

キムチ鍋

文字の大きさ
32 / 44
王国の危機と田舎の危機編

第32話 こんな田舎でどう暮らすの?

しおりを挟む
「ここが....」
そこはまさに田舎町を絵に書いたような場所だ。様々な虫の鳴き声が響き渡っている。朝日たちは近くの平原に降り立った。
「なんだか落ち着くな......」
カナが笑い声を上げながら走り出した。
「わーい!広いよー!」
「あんまり遠くに行くなよー」
朝日たちが周りを見渡すと、一人の老人がこちらに歩いて来た。
「ようこそ。こんな田舎町にこんなに大人数で.....わしが家を差し上げよう」
老人はそう言い、歩き始めた。朝日たちは老人の後を追うように歩いた。しばらく田んぼ道を歩くと、白い屋根付きの塀に囲まれたボロボロになった大きな書院造りの二階建ての屋敷にたどり着いた。
「これをお主らにやる」
朝日たちは目が飛び出そうなほど驚いた。
「おいじいさん!?こんなの貰って良いのかよ?」
老人は長く伸びた白い顎の毛を撫でながら言った。
「わしは町長じゃからのう。なにをあげてもわしの自由じゃ」
高らかに笑いながら町長と名乗る老人は去って行った。朝日たちは老人を見送ると、汚い屋敷を見つめた。由奈がどこから持ってきたのか白い三角巾とマスクとエプロンを着けた。
「掃除しましょう!」
「お前そんなのいつから持ってたんだよ......」
朝日は乗り気を見せずに、由奈から三点セットを受け取った。他の女子たちは案外乗り気だった。まるで自分たちの家を一から作り上げるような気持ちになっていたのだ。そんな中、王様とサアヤは三点セットを身に付けずに立っていた。二人の嫌そうな表情を見て、察した。
(なるほど......金持ちめ......ここは一つ......)
朝日は挑発するような笑みを浮かべ、言った。
「まさか......やりますよね?掃除もできない王様なんかについて行きたくないからね~」
王様はその言葉が胸に刺さり、三点セットを素早く身に付けた。
「わしは元の世界では普通の人間じゃったからのう。掃除くらいできるぞ」
サアヤが裏切られたと言わんばかりに、王様を睨みつけた。
(父上の裏切り者~)
「に、人数足りてそうだし......わ、わたしはこの街の様子を見てくる」
朝日は両膝を地面につけて、声を震わせながら言った。
「まさか姫様が掃除ができないなんて.......この国は......もうだめだ......おしまいだあ......」
その言葉に苛立ちを覚えたのか、三点セットを身に付け、ほうきを片手に持った。
「いいわよ!やってやるわよ!姫様の本気見ときなさいよ!!」
朝日はニヤリと笑った。
(ちょろいぜ......お前らだけ楽しようだなんてさせてたまるか......)
朝日の思惑通りに王様とサアヤも掃除に参加し、全員屋敷の掃除を行った。扉を開けるとそこは玄関で、麩が何個か見え、所々に蜘蛛の巣が張られていたり、ネズミがチラチラと見えた。内装は和風をイメージすればわかりやすい。ステラがネズミを見て悲鳴をあげた。
「ネズミいいいい!いやああああああ!」
その叫んだ時の表情は女子ではなく、怪物のようだった。ナナが腹を抱え、笑いながらステラの肩に手を置いた。
「ネズミが苦手なの?可愛わね~」
すると、蜘蛛が蜘蛛の糸にぶら下がりゆっくりとナナの頭に乗った。朝日がイヤらしくにやけながらナナの頭を指さした。ナナは何かの感触があることに気が付き、ゆっくりと頭に手を置こうとした。指が蜘蛛の糸を触った。
「これって......」
朝日がネイティブ風に英語の部分を強調して言った。
「youのheadにspiderがput on......understand?」
ナナは全てを理解し、顔の色が真っ青になり、悲鳴をあげた。
「ぎゃああああああああ!!くもおおおおお!」
その表情はもう女子とは言えないほどの崩壊っぷりであった。由奈がクスクスと笑いながら言った。
「ステラちゃんはネズミが、ナナちゃんは蜘蛛が苦手なんですね」
朝日がため息混じりに言った。
「お前ら一応女子だもんなあ」
ステラとナナが目を光らせた。
「一応って......」
「じゃあ、掃除するか!」
朝日は危険を察知し、玄関に靴を脱ぎ捨て、近くの麩を開け、その部屋に入った。こうして、半日屋敷の掃除をして夕日が現れた頃には床が鏡のようになっていた。ほとんどの部屋には畳が敷かれ、畳がないのは廊下とトイレと階段だけだ。一同は掃除を終え、朝日、ステラ、由奈は街の人たちに顔を合わせに行った。マイサンとイッカク羊とカナは広い中庭で共に寄り添い眠っている。王様、ユウ、ナナ、サアヤは座布団をそれぞれの尻に引き、低いテーブルを中心にお茶を飲んでいる。ユウがコップに入ったお茶を補充しながら言った。
「いまあの街は......私たちの街はどうなっているんでしょうか?」
王様は茶柱が立ったお茶を見つめながら言った。
「こんな田舎町でも魔法新聞があるはじゃからのう......そればかりは朝日くんたちが帰ってくるまで分からん」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
朝日たちはしばらく田んぼ道を歩くと、建物が少し密集している場所を見つけた。近くまで歩くと、八百屋、肉屋、魚屋、本屋がある。見た目は案外普通だ。肉屋には普通のおじいさん、魚屋もおじいさんとおばあさん、本屋は除くとカウンターにじっと座っているおばあさん、八百屋には見覚えのある老人が立っている。朝日が老人を見て大きな声で言った。
「あ!さっきのおっさん!」
「わしはおっさんではなく、町長じゃ。あの家は気に入ったかの?」
ステラが前に出て、頭を下げた。
「そのことは本当にありがとうございます。おかげで宿屋を探す手間も省けました」
由奈もステラの隣で一緒に頭を下げた。
「これからもご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
町長は二人を見て、高らかな笑い声をあげた。
「気にする事はないぞ。まあ、そこの茶色の若いのも礼儀正しければ良かったのじゃが」
ステラと由奈が細い目で朝日を見た。
「す、すいません」
「まあ良いぞ。お主らはどこから来たんじゃ?」
ステラが答えた。
「エピナントタウンから来ました」
町長は少し動揺したのか、下を向いた。
「エピナントタウン......あそこは確か先日....」
朝日がその行動と言動から町長が何か知っていることに確信を持ち始めた。
「あの街に何かあったんですか?俺達避難したばっかりで新聞も読んでいなくて......」
町長は懐から新聞紙を取り出した。そこには魔法新聞と書いてある。
「なるほど......ならこれを見ると良いぞ」
朝日は新聞を受け取り、大きく掲載されている記事を読み始めた。ステラと由奈ものぞき込んだ。そこの見出しには"エピナントタウン 魔界軍に支配される!?"と大きく書いてある。その記事の内容はこうだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
魔法新聞 エピナントタウン 魔界軍に支配される!?
昨日、アストライア王国の中心である街エピナントタウンが魔界軍によって支配され、多くの者が殺された。また、桜ノ宮高校の生徒は魔界軍に捕らえられ、桜ノ宮高校で強制的な街の復興作業や授業をやらされ、人質ともいえる立場に。また生き残った他の大人たちは魔界軍によってどこかに捕らえられているという。人々の救出のために魔法警察や兵士たちが力を合わせているんだとか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
朝日は新聞紙を強く握った。
「くそ野郎......」
町長が空を仰ぎ見た。
「もうこの世界も終わりかのう......」
ステラと由奈もその記事を見て、胸を押さえた。
「いや......絶対にあの街は取り戻す......そしてこの世界も終わらせない......俺の大事な人たちと出会えた場所なんだ......」
町長は朝日の腰にぶら下がっている白色の刀と黒色の刀を見つめた。
「なるほど......そうじゃ、君たちに頼みたいことがあるんじゃ」
朝日は紫色の生物のことを思い出した。
「それってまさか......」
「最近、この町の森で現れた紫色の魔物を退治してほしいんじゃ。そしてもう一つ......」
予想通りの言葉だった。たが、もう一つの頼みごとについては予想がつかない。
「最近、若者の多くが違う街に行ってしまって、田んぼや畑仕事を手伝ってほしいんじゃ二人か最悪一人ほどで良いのじゃが......」
ステラが夕日で赤く染まった空を見上げながら言った。
「良いですけど......みんなに相談してみます」
朝日たちは町長から決まったらこの場所に案内するようにと言われ、屋敷に戻って行った。
帰り道に朝日はあることを考えていた。これから戦う相手に自分の刀だけでは勝てないような気がしたのだ。そんな時にカナを助けた時に不意に二本の刀を使ったことを思い出した。
(二刀流か......やってみる価値はあるな......それにお母さんとお父さんも探さなきゃな)
夕日が三人の背中を照らしつけた。














しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...