さすがに異世界では学校に行くよ!

キムチ鍋

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王国の危機と田舎の危機編

第34話 なんつーかギャップだし、本性出してきてるし

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黒髪の少年は背中にある矢筒を揺らしながら歩み寄って来た。
「無事か?お前らか?最近ここに引っ越してきたのって」
朝日とサアヤは身体を起こして頷いた。
「そうか......」
朝日は少年の冷たい目を見てあることを考えていた。
(こいつは......クール系男子か?......やばい......何言われるか分かんねえぞ)
しばらくの沈黙のあと、クールに見えた少年は口を大きく開けて笑い出した。
「あははははは!おらがクールな少年だと思って緊張してるんだろ?全然クールとかじゃないから安心してくれ!」
朝日とサアヤは胸の中でほっとした。緊迫した空気はあっという間に破壊されたのだった。少年が元気で活力に満ちた大きな声で胸を張って言った。
「おらの名前は長谷川 春樹(はせがわはるき)だ!おめえらもあの影を退治しに来たのか?」
朝日はその名前で彼が自分と同じ境遇であることに気がついた。元気いっぱいな少年からは溢れ出るエネルギーが感じ取れた。
「まあね。それより、あなたあの影について何か知ってることはない?」
春樹は頬を人差し指で掻きながら言った。
「この森の奥に洞窟があるんだが、あの周辺でよく目撃されるんだ。おらがその洞窟に入ろうとしたらなんか入れなくてな......」
サアヤはその話を聞いてある仮説を考え出した。
「もしかしたら、"結界魔法"かもしれないわ」
朝日は右に首を傾けた。
「結界魔法?」
サアヤは説明するのが面倒だったのか腕を組んでざっくりと言った。
「バリアみたいなものよ」
朝日は案外納得したようだ。
「春樹......だっけ?その洞窟に案内してくれないか?」
春樹は弓を背中に背負い、歩き出す準備をした。
「りょうかい......無駄な気がするけどなあ」
しばらく森を歩き続けると、薄暗い洞窟の入口にたどり着いた。サアヤは洞窟の入口に手を入れようとした。しかし、入口の穴に入らず、見えない壁のようなものが手に当たった。
「やっぱり......これは"エアーウォール"ね」
朝日は空を見上げながら呟いた。
「空気の壁......見えない壁か」
朝日の頭の中である考えが導き出された。朝日はそれぞれの鞘から二本の刀を手に取り、白銀の刀身を見せびらかした。
「壁があるなら壊すだけだな」
春樹はため息を吐き、首を横に振りながら言った。
「無理だな......おらが何十本も矢を当てても、ハンマーで殴っても壊れなかったんだぞ?」
朝日は春樹の言葉を耳に入れず、入口にある見えない壁に刀を振った。するどい金属音がサアヤと春樹の耳に響き渡る。
すると、何かが崩れる音が響いた。
「嘘だろ......ハンマーでも無理だったんだぞ?」
朝日は二つの刀を鞘に収め、笑顔で言った。
「刀は試してないだろ?それにこんな壁なんかで立ち止まってられねえんだよ」
朝日とサアヤはさっさと洞窟の中に足を踏み入れた。
「すごい......きっとおらより強い......その目を見れば分かる」
春樹も二人の後に続いて洞窟に入って行った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ステラ、由奈、ナナは町長がいた八百屋の前にいた。三人の前には町長が立っている。
「わざわざ手伝いなんかさせて悪いのう」
由奈が愛想笑いをし、言った。
「いえいえ。あんなに大きな屋敷を貰ったのに何もしないのも心が痛みますしね」
ステラが一歩前に出て言った。
「それじゃあ、私たちは何を手伝えば良いんですか?」
町長が八百屋の隣にある大きな畑を指さした。そこにはまだ何もない。
「あの畑にわしが君たちに渡す種を植えてほしいんじゃ。やり方はわしの娘に教えてもらうと良いぞ」
八百屋から、一人の女  が現れた。短い銀色の髪の毛を後ろで小さく束ね、ジーパンよ裾を捲り、白色のタンクトップを着た大人びた女の人だ。
「おっす!ん?可愛い子ばっかりだねえ~」
ステラと由奈はある人物と被って見えた。その人物とはステラの隣にいるナナだった。二人はナナをじっと見た。
「なんだよ?」
ステラはナナを見つめて、ある疑問が思い浮かんだ。
「そういえば、あなた最初とキャラ変わりすぎじゃない?」
「そう?あんたも最近ツンがなくなってデレデレになってなるわよ?」
二人は顔を近づけて威嚇しあった。そんな二人を由奈がなだめようと仲裁に入った。すると、銀髪の女の人が手を叩いた。
「はいはい!喧嘩はあと回し!さあ、お姉さんに着いてきなさい!」
二人は睨み合うのをやめ、由奈と女の人に着いていった。町長は四人を微笑ましそうに眺めた。ナナが女の名前を聞いていないことを思い出した、
「そういえば、お姉さんの名前はなんて言うの?」
「私はカイよ。呼び方はなんでも良いよ!」
カイと名乗った女は桑を手に持ち、堂々と言った。
「じゃあ、まずはこの土を耕してもらうわよ!やり方は......」
カイの農作業教室が始まった。
数時間後......ようやく土を耕し終わり、一同はカイに貰った白いタオルを首に巻き、麦わら帽子を被っていた。ステラはタオルで汗を拭いながら言った。
「意外と楽しいわね。こういうのとを無縁だって思ってたけど......」
カイは桑に両手を乗せながら言った、
「ステラの家はお金持ちなんだよね。凄いねえ~」
由奈が疲れを忘れたように目を輝かせて言った。
「カイ姉さんもいつか遊びに行きましょうよ!」
ナナは口に当てていた水筒を口から離した。
「それ良いね!絶対楽しいぞ~」
カイは腰を掻きむしりながら言った。
「私もその街に行ってみたいもんだな」
すると、甲高い聞き覚えのある下品な音が鳴り響いた。
「あ、おなら出た。あははははは!」
ステラたちは冷たい目でカイを見つめ、三人は同じことを考えていた。
(黙ってれば美人なのに......)
カイの笑い声が周りに響き渡った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
風が王様の髭を激しく揺らしている。王様の視界に見覚えのある建物たちが写った。
「そんなに遠くないみたいじゃな......」
イッカク羊はゆっくりと旋回し、桜ノ宮高校の近くの山の中に着陸した。
「ここで待っておるんじゃぞ」
王様はイッカク羊の首元を優しく触り、山の中を歩いて行った。しばらくすると、人の声が聞こえてきた。学校の近くまで着いたようだ。草の中に身を隠しながら息を殺して広がる校庭を見た。そこでは多くの生徒が桑を持ち、土を耕していた。その奥にはバツ印の大きな銅像が建てられている。周りには黒色のローブを身にまい、片手にムチのような物を持つ男たちが立っている。生徒たちは嫌そうな顔をし、汗を流し働かされていた。
「あのバツ印は魔界の印......」
一人の女生徒が地面に倒れた。大量の汗を流し、肩で息をして顔も真っ青だ。その女生徒の友達であろう女生徒が桑を捨て、駆け寄った。
「大丈夫!?」
黒色のローブの男がゆっくりと歩み寄って来た。
「地下牢だ。そこで処刑の時を待つんだな」
その言葉と同時に複数の黒色のローブがぐったりしている女生徒を無理やり立たせた。
「嫌よ!死にたくない!いや!」
必死に抵抗するが、黒色のローブに殴られ、地面に倒れた。
「抱えて行くぞ」
横で悔しそうに見ていた女生徒がローブに飛びかかった。その瞬間、血の雨が降り注いだ。その光景を見て周りの女生徒たちの悲鳴が響き渡った。男生徒も顔を真っ青にし、見て見ぬフリをし地面を桑で殴り続けた。背後にいたユグドラがその女生徒の腹を剣で貫いたのだ。
「自業自得だな。自分から処刑されるなんてな」
目の前で血が飛び、具合が悪かった生徒は地面に倒れていた。そのままローブの男たちにどこかに連れていかれた。ユグドラが赤く染まった剣の刀身を自分のローブで拭いながら言った。
「これで何人目だ?黙って働かないとお前らも......」
王様の我慢はもう限界に達していた。目の前でなんの罪もない子供が殺されたのだ。ユグドラの言葉からは過去に何人も殺されたことも分かる。王様の目が鋭くなり、拳を握った。




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