さすがに異世界では学校に行くよ!

キムチ鍋

文字の大きさ
41 / 44
希望の未来への世代交代編

第41話 告白

しおりを挟む
ナナたちは葬儀を終え、イッカク羊の背中に乗りながら帰って来た。イッカク羊はサアヤと話合い、ナナたちが預かることにした。カイと春樹は自分の家へと帰って行った。ユウは夕食の支度のために台所に、マイサンとカナはイッカク羊と庭ではしゃいでいる。ナナは一人ぼーっと空を眺めていた。突然、ナナは咳をした。ナナの手に液体の感触があった。
「痰がついちゃったのか?最悪......」
それは痰以上に最悪なものだった。ナナの右の手のひらは血で染まっていた。ナナは冷汗を流した。
(まさか......でもまだ......)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
朝日とステラと由奈は屋敷の食堂で教材を広げ、勉強していた。朝日が鉛筆を鼻の下の溝の部分に置きながら言った。
「サアヤのやつ......学校辞めたな」
ステラがノートに字を書きながら答えた。
「仕方ないよ。王様がいなくなったんだからあの子が女王になるしかないでしょ?」
由奈が苦笑いしながら言った。
「女王様になったら学校になんて行ってる暇なんてありませんからね」
朝日は静かになった屋敷を見渡しながら言った。
「結局、最初の三人に戻ったよな」
ステラと由奈が手を止め、顔を見合わせながら笑った。
「そうね。そういえばこの三人から始まったのよね」
「懐かしいですね。そこから色々な人に出会って......別れて......今になりますね」
朝日は王様が死んだ時のサアヤの泣きじゃくる顔を思い出した。
(そういえば......王様と約束したんだっけ......ガイアとも......)
朝日はゆっくりと立ち上がった。
「俺......学校やめる」
ステラと由奈が呆れた目で朝日を見た。
「それは赤点取ってからね」
「朝日くん......そこまでしてテストを受けたくないんですか?」
朝日はあまりにもひどい誤解を受けた。
「違うわ!ちゃんとした理由があるんだよ」
朝日は落ち着くともう一度椅子に座った。
「俺......サアヤのそばにいたいんだ」
ステラはその言葉を聞き、手に持っていた鉛筆を折り曲げた。
「え......それってサアヤと......結婚するってこと?」
朝日は顔を赤くして言った。
「そういうわけじゃねえよ......正式に騎士になってサアヤを守る」
「なんで?」
朝日はふてぶてしいステラに腹を立てた。
「なんだよ!?なにがそんなに気にくわないんだよ!?人を守るのがそんなにいけないことなのかよ!!」
ステラも負けずと机に両手を叩きつけた。
「そうは言ってないでしょ!ただあんたみたいなのがいなくてもサアヤは一人で大丈夫よ!」
「じゃあ、なにが気にくわねえんだよ!?なんでそんなに引き止めるんだよ!?」
由奈はその険悪な空気に押し潰されそうだった。だが、由奈は黙って見ていることしかできない。ステラは頬を真っ赤にし、息を大きく吸い込んだ。
「あなたが好きだからだよ!正式に騎士になるってことはサアヤの命を第一に考えて、サアヤが死にそうになったらなにがなんでもあなたの命を捨てるしかないのよ!?嫌だよそんなの!もう朝日が離れていくのは嫌だの!」
ステラの目から涙が流れ始めた。
「わがままだってことは分かってるの......でも......私から......離れないで......ずっとそばにいてよ」
ステラは朝日に優しく抱きついた。朝日の体をステラの温もりが包んだ。
(そうか......お前は俺のことをそんなに大切に思ってくれてたのか......)
朝日は優しくステラの頭に手を置いた。
「ありがとうステラ......学校を辞めるのは考え直すよ。だけど、きっとユグドラの奴らは絶対にサアヤを狙うはずなんだ。だから......」
ステラは甘えた声で言った。
「今夜は一緒にいて......お願い」
由奈が咳払いをした。
「私は今日は宿屋にでも言った方が良いですかね?」
ステラが慌てた様子で朝日から離れた。
「い、いや!忘れて!今の忘れて!」
由奈は優しく微笑み、部屋の扉を開けた。
「では、今日の晩御飯の買い物に行ってきますね」
由奈はそっと扉を閉じた。
「ちょ......由奈!」
(材料ならナナたちがいっぱいくれただろうが!)
朝日とステラは二人きりの空間に取り残された。
「その......さっきの......答え」
「は?」
「私のそばに......いてほしいってやつ......」
もじもじするステラの頬に優しく手を当てた。
「これからもずっとそばにいるよ......必ず守るよ」
朝日はステラの唇に優しく自分の唇を重ねた。朝日は唇を離した。
「そうだ......良いこと考えた」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夜中......王城の中にあるサアヤの部屋にある大きなベッドの布団が膨らんでいる。誰かが眠っているようだ。サアヤの部屋の扉がゆっくりと開いた。そこにはリューネと優希が片手にナイフを握りながら立っている。リューネがベッドの膨らみにナイフを突き刺そうと振り上げた瞬間に布団がめくられ、布団がリューネを包んだ。
「夜這いを夜這い作戦成功だな」
優希の首元にはサアヤの剣の銀色の刀身が突きつけられている。そこにサアヤが立っていることで優希は目を大きく見開いて、ベッドの上に立っている朝日を見た。
「お父さん......お母さん......なんでこんなことをしてるんだよ」
優希はサアヤを蹴り飛ばした。地面に倒れたサアヤに優希は剣を向けた。朝日は素早く優希の目の前に立ち塞がった。
「そこをどけ......」
朝日はまったく動じない。朝日の首元にナイフが突きつけられてた。リューネが赤色の目から涙を流しながら言った。
「お願い......あなたを......あなただけは殺したくないの」
リューネのナイフを握る手が震え始めた。優希の剣先も震えている。
「今やっと思い出したんだ......朝日......もしもその子を守りたいなら......俺たちを斬るんだ」
朝日は驚きを隠せず、一歩後ろに下がった。
「そんな......そんなの選べるわけ......」
サアヤは剣を奪われてしまい、朝日の後ろで朝日の決断を待っていた。
「朝日......あなたに私と同じ体験はしてほしくない......だから私を......」
朝日は目を強く閉じた。
(お父さんは本当の父親じゃないけど、本当の父親のように俺を育ててくれた......お母さんは俺を生んでここまで育ててくれた......そんな人たちを殺すことなんて......守るべきものだ......)
朝日は膝をついているサアヤを見た。
(かと言って、こいつを見捨てるわけにも......)
その時、朝日の脳裏に、初めての体験をした時のサアヤの無邪気な笑顔、親を失った時の泣き顔がよぎった。
(そうか......サアヤを俺は守りたいのか......)
朝日は鞘から二つの刀を抜き、腰を落とした。
「俺は......守りたいものを守るために守りるべきものを捨てる!!」
優希は歯をみせて笑った。
「それでこそお前だ!」
朝日は刀を構えながら優希に向かって行った。優希はナイフを構えると、すぐにそれを地面に落とした。次の瞬間、リューネが優希に抱きついていた。朝日はそのまま二人の腹に刀を貫き通した。
「朝日......自分の息子にこんなことさせたくはなかったんだ......」
リューネが涙を流しながら言った。
「でも、このまま生き続けるともっとたくさんの人を殺してしまう......いずれ朝日......あなたのことも......」
朝日は刀を地面に叩きつけ、抱き合う二人に加わった。
「俺を......生んでくれて......育ててくれて......ありがとう」
優希とリューネはお互いの顔を見合わせ、笑った。
「俺たちはまだやり残したことがあるから......」
朝日は二人の温もりが消えたことを感じ、目を開けると、二人の姿は既に消えていた。朝日はその場に膝をついた。その目からは涙が零れ落ちた。
「サアヤ......もう大丈夫だ......二人がユグドラたちを潰してくれるから......安心して女王になってくれ」
サアヤは優しく朝日の手を握った。
「ありがとう......あなたも早く帰ってあげなさい......心配してるわよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~霧が辺りを包んでいる中に人影が王城の前にある。ステラはマフラーを首に巻き直した。
「朝日......大丈夫かな」
と、その時に王城の大きな扉がゆっくりと開いた。そこにはステラと朝日が立っていた。朝日もステラも怪我はないようだ。ステラは朝日を強く抱きしめた。
「おかえり」
「ただいま」
嵐が過ぎ去ったかのように思えたが、悲劇はまだ終わらなかった......。
~~~~~~次回 最終話~~~~~~~





















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...