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第32話 箱根旅行1 大涌谷
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六月の勉強会で決めた箱根旅行を、林莉子が具体的に計画を立てた。メンバーは、海斗、葵、小野梨沙、松本蓮、鎌倉美月、中山美咲、林莉子だ。横浜駅から東海道線に乗り小田原駅で乗り換え、箱根湯本駅までやって来た。ここ箱根湯本は、箱根で一番大きな温泉街である。ここまで来ると同じ神奈川県とでも、すっかり自然が多くなり皆のテンションが上がった。
林莉子は張り切って言った。
「じゃあ、強羅駅まで箱根登山電車で登って行くわよ!」
「よっ! 林さんカッコイイ」
鎌倉美月は松本蓮のシャツを引っ張った。
「ちょっと蓮、恥ずかしいよ。みんな見ているよ」
小野梨紗は林莉子を見て感謝した。
「林さんの計画のお陰で既に楽しいわ! いよいよ登山電車ね。ねー、葵ちゃん!」
「はい、お陰様で楽しいです。私、箱根は初めて来るのでワクワクしています」
「このプランの良いところはね、このフリー切符よ! コレで途中の駅やロープウェイも海賊船も、路線バスも、乗り放題なんだからね! ねー美咲!」
「そうよ、莉子が値段も安くなるように調べてくれたのよ」
海斗も続いた。
「林さん、凄い! お得なんだね、いろいろ調べてくれて有り難う」
鎌倉美月は松本蓮に注意を促した。
「だから、このキップ無くしちゃダメだからね」
「はーい、美月ちゃん!」
海斗達は登山電車に乗り、強羅に向けて出発をした。しばらくすると電車が停止し、折り返すように逆向きに走り出した。
葵は列車の前方と後方を代わる代わる見た。
「ねえ、お兄ちゃん、電車が戻って行くよ。なんで戻るのかな?」
林莉子は海斗よりも先にジェスチャーを付けて説明した。
「これが、有名なスイッチバックよ! 勾配のきつい斜面を走るには、いろは坂の様に行ったり来たりを繰り返して上がって行くのよ。この鉄道の勾配は日本一なのよねー! ねー伏見君?」
林莉子は、この説明をしたかったのだ。海斗は林莉子に説明の機会を奪われ口を尖らせた。
強羅駅に着くと大きな建物は無くなった。山の奥深い所まで上がって来たのだ。
中山美咲は小野梨紗を見た。
「さあ、小野さん! 今度は何に乗るのでしょうか?」
小野梨紗は目を輝かせてた。
「知っているよ。ケーブルカーでしょ! 楽しみだわー」
海斗達はケーブルカーの駅に向かった。斜面に立ち向かうような変形した列車に階段状のホームから乗車をする。見慣れない乗り物とホームに皆は驚いた。
中山美咲も興奮をしていた。
「伏見君、凄いね! 車内の通路まで階段になっているのねー!」
「ホント、凄いね。変わった乗り物だね!」
海斗は隣に居る中山美咲の横顔を見つめ呟いた。
「中山さん、可愛い!」
中山美咲は耳を疑い海斗を見た。
海斗は慌てて口を覆って正面を見た。ついつい心の声が出てしまったのだ。
「えっ?、伏見君、今、何て言ったの?」
海斗は恥ずかしくなって赤面した。中山美咲も、その反応から聞こえた言葉を確信をして赤くなった。
ケーブルカーは、あっという間に早雲山駅に到着した。いよいよロープウェイに乗る番だ。箱根は乗り物のアミューズメントパークなのだ。ロープウェイに乗車すると大きく揺れてから動き始めた。
小野梨紗は興奮していた。
「海斗、凄い! どんどん登って行くね」
「ホントだね、景色もとっても良い。葵も見えるかい?」
「お兄ちゃん、私、高い所ダメなんだよ」
葵は高所恐怖症だった。
「伏見君、私もダメ!」
林莉子は景色も見ないで、緊張して座っていた。
松本蓮はケーブルカーから見下ろす、山々の写真を沢山撮っていた。カメラのファインダーに、もくもくと上がる白い煙が見えた。
松本蓮が指を指した。
「あー、あっち、あっち! 大涌谷が見えて来たよ!」
焼けて白くなった地表から、もくもくと白煙が上がっていた。皆の歓声が上がった。まもなくゴンドラは大涌谷駅に到着した。降りると辺りは温泉の匂いに包まれていた。皆は駅を出て展望台に向かった。目に入る景色は息を呑む程の迫力で、ここだけが別世界の様に感じられた。
小野梨紗は感動して景色を見つめた。
「ねえ海斗、凄いよ。あちこちから湯気が出ているのね。私、見たかったのー!」
「うん、怖いくらいの迫力だね」
松本蓮も迫力のある景色を眺めていた。
「なあ美月、凄い景色だよな。行った事は無いけど火星みたいだ。絵力があるよな!」
「蓮、写真、撮らないの?」
「あ、忘れていた!」
松本蓮は望遠レンズを使い、白煙が立ち上る風景を撮った。
「ねえ、記念写真撮ろうよ。今、三脚をセットするから皆、並らんでよ!」
皆は好きなポーズを取って記念写真に写った。
林莉子は一声掛けた。
「さあ、次はお昼よ! あのお店までいって、その後は大涌谷を登るわよ」
売店に到着すると、カレーとラーメンを注文し、その後にソフトクリームを食べた。
松本蓮は海斗に耳打ちした。
「なあ海斗、女の子がソフトクリームをなめているところって良いよな、ムフフ!」
「うん、分かる、分かる。なんかペロペしているロがたまらないよね、ムフフ」
海斗も蓮も女子の口元を見ていた。二人とも絞まりの無い顔になっていると、鎌倉美月が近寄った。
「ちょっと、二人とも、何を考えているの!」
二人はそっぽを向いた。松本蓮は海斗に耳打ちをした。
「折角、良いところだったのな、海斗」
「ホントだよ! 楽しみを奪わないで欲しいよな、なあ蓮」
アイスクリームを食べ終え、いよいよ大涌谷の散策を始めた。
小野梨紗は話しかけた。
「ねえ林さん、上の売店まで登ったら黒たまご食べようね。わたし楽しみだな」
「うん、一つ食べると寿命が七年延びるんだって!」
「えー、そうなんだ-。私、お土産にして、パパとママに買っていこうかな?!」
海斗は小野梨沙を見た。
「小野さん、俺も考えたんだけど、この夏の気温じゃ傷んじゃうよ」
「それもそうだよね、じゃあ私が両親の分まで食べるよ」
葵は海斗に話し掛けた。
「売店までは、それ程遠く見えなかったのに、意外と歩くね、お兄ちゃん」
「登るからね。思ったより大変なんだよ」
散策コースの所々に、温泉地らしくお湯が湧き出していた。コースを登りきると売店が有り、黒たまごを作る釜が有った。この売店で出来たての卵を購入出来るのだ。
海斗達は売店で黒たまごを買い求めた。小野梨紗は中山美咲に言った。
「本当に真っ黒ね、こんなに黒いと健康に悪そうだよ」
「ウフ、大丈夫よ。変化しているのは表面だけだからね」
中山美咲は剥いて見せた。
「ほらね」
真っ白な卵が見えた。小野梨紗も殻を剥いて食べてみた。
「ホント、真っ白だー。茹でたてで美味しいね!」
鎌倉美月は殻を剥き、松本蓮の口に運んだ。
「蓮、あ~ん」
松本蓮は照れながら口にした。お返しに鎌倉美月の口に剥いた卵を運んだ。
「あ~ん」
鎌倉美月は顔を横に向けた。
「……いらない! だって蓮の手、汚ないんだもん」
皆は笑い、松本蓮は肩を落とした。
林莉子は腰を上げた。
「さあ、まだまだ、行くわよ!」
林莉子は皆を引き連れ、再びロープウェイに乗り芦ノ湖に向かった。ロープウェイは終点、芦ノ湖に面した桃源台駅に到着した。小野梨紗が楽しみにしていた海賊船に乗る港のそばまでやって来たのだ。
「わー! 凄い、海賊船だー!」
小野梨沙は、高鳴る気持ちを抑え切れなかった。海斗の手を取り走り出した。海斗はバランスを崩しながらも、小野美梨紗を追いかけた。
「小野さん、待ってよー! 転んじゃうよ!」
「わー、楽しいー!」
「もう、お兄ちゃん、置いてかないでー!」
葵は後を追いかけた。中山美咲は林莉子と顔を見合わせた。
「もー、しょうが無いなあ、行こうか、美咲!」
「しょうが無いよねー!」
中山美咲と林莉子も走り出した。続けて松本蓮、鎌倉美月も後を追って走った。皆は海賊船の乗り口、桃源台港に走り着いた。
林莉子は張り切って言った。
「じゃあ、強羅駅まで箱根登山電車で登って行くわよ!」
「よっ! 林さんカッコイイ」
鎌倉美月は松本蓮のシャツを引っ張った。
「ちょっと蓮、恥ずかしいよ。みんな見ているよ」
小野梨紗は林莉子を見て感謝した。
「林さんの計画のお陰で既に楽しいわ! いよいよ登山電車ね。ねー、葵ちゃん!」
「はい、お陰様で楽しいです。私、箱根は初めて来るのでワクワクしています」
「このプランの良いところはね、このフリー切符よ! コレで途中の駅やロープウェイも海賊船も、路線バスも、乗り放題なんだからね! ねー美咲!」
「そうよ、莉子が値段も安くなるように調べてくれたのよ」
海斗も続いた。
「林さん、凄い! お得なんだね、いろいろ調べてくれて有り難う」
鎌倉美月は松本蓮に注意を促した。
「だから、このキップ無くしちゃダメだからね」
「はーい、美月ちゃん!」
海斗達は登山電車に乗り、強羅に向けて出発をした。しばらくすると電車が停止し、折り返すように逆向きに走り出した。
葵は列車の前方と後方を代わる代わる見た。
「ねえ、お兄ちゃん、電車が戻って行くよ。なんで戻るのかな?」
林莉子は海斗よりも先にジェスチャーを付けて説明した。
「これが、有名なスイッチバックよ! 勾配のきつい斜面を走るには、いろは坂の様に行ったり来たりを繰り返して上がって行くのよ。この鉄道の勾配は日本一なのよねー! ねー伏見君?」
林莉子は、この説明をしたかったのだ。海斗は林莉子に説明の機会を奪われ口を尖らせた。
強羅駅に着くと大きな建物は無くなった。山の奥深い所まで上がって来たのだ。
中山美咲は小野梨紗を見た。
「さあ、小野さん! 今度は何に乗るのでしょうか?」
小野梨紗は目を輝かせてた。
「知っているよ。ケーブルカーでしょ! 楽しみだわー」
海斗達はケーブルカーの駅に向かった。斜面に立ち向かうような変形した列車に階段状のホームから乗車をする。見慣れない乗り物とホームに皆は驚いた。
中山美咲も興奮をしていた。
「伏見君、凄いね! 車内の通路まで階段になっているのねー!」
「ホント、凄いね。変わった乗り物だね!」
海斗は隣に居る中山美咲の横顔を見つめ呟いた。
「中山さん、可愛い!」
中山美咲は耳を疑い海斗を見た。
海斗は慌てて口を覆って正面を見た。ついつい心の声が出てしまったのだ。
「えっ?、伏見君、今、何て言ったの?」
海斗は恥ずかしくなって赤面した。中山美咲も、その反応から聞こえた言葉を確信をして赤くなった。
ケーブルカーは、あっという間に早雲山駅に到着した。いよいよロープウェイに乗る番だ。箱根は乗り物のアミューズメントパークなのだ。ロープウェイに乗車すると大きく揺れてから動き始めた。
小野梨紗は興奮していた。
「海斗、凄い! どんどん登って行くね」
「ホントだね、景色もとっても良い。葵も見えるかい?」
「お兄ちゃん、私、高い所ダメなんだよ」
葵は高所恐怖症だった。
「伏見君、私もダメ!」
林莉子は景色も見ないで、緊張して座っていた。
松本蓮はケーブルカーから見下ろす、山々の写真を沢山撮っていた。カメラのファインダーに、もくもくと上がる白い煙が見えた。
松本蓮が指を指した。
「あー、あっち、あっち! 大涌谷が見えて来たよ!」
焼けて白くなった地表から、もくもくと白煙が上がっていた。皆の歓声が上がった。まもなくゴンドラは大涌谷駅に到着した。降りると辺りは温泉の匂いに包まれていた。皆は駅を出て展望台に向かった。目に入る景色は息を呑む程の迫力で、ここだけが別世界の様に感じられた。
小野梨紗は感動して景色を見つめた。
「ねえ海斗、凄いよ。あちこちから湯気が出ているのね。私、見たかったのー!」
「うん、怖いくらいの迫力だね」
松本蓮も迫力のある景色を眺めていた。
「なあ美月、凄い景色だよな。行った事は無いけど火星みたいだ。絵力があるよな!」
「蓮、写真、撮らないの?」
「あ、忘れていた!」
松本蓮は望遠レンズを使い、白煙が立ち上る風景を撮った。
「ねえ、記念写真撮ろうよ。今、三脚をセットするから皆、並らんでよ!」
皆は好きなポーズを取って記念写真に写った。
林莉子は一声掛けた。
「さあ、次はお昼よ! あのお店までいって、その後は大涌谷を登るわよ」
売店に到着すると、カレーとラーメンを注文し、その後にソフトクリームを食べた。
松本蓮は海斗に耳打ちした。
「なあ海斗、女の子がソフトクリームをなめているところって良いよな、ムフフ!」
「うん、分かる、分かる。なんかペロペしているロがたまらないよね、ムフフ」
海斗も蓮も女子の口元を見ていた。二人とも絞まりの無い顔になっていると、鎌倉美月が近寄った。
「ちょっと、二人とも、何を考えているの!」
二人はそっぽを向いた。松本蓮は海斗に耳打ちをした。
「折角、良いところだったのな、海斗」
「ホントだよ! 楽しみを奪わないで欲しいよな、なあ蓮」
アイスクリームを食べ終え、いよいよ大涌谷の散策を始めた。
小野梨紗は話しかけた。
「ねえ林さん、上の売店まで登ったら黒たまご食べようね。わたし楽しみだな」
「うん、一つ食べると寿命が七年延びるんだって!」
「えー、そうなんだ-。私、お土産にして、パパとママに買っていこうかな?!」
海斗は小野梨沙を見た。
「小野さん、俺も考えたんだけど、この夏の気温じゃ傷んじゃうよ」
「それもそうだよね、じゃあ私が両親の分まで食べるよ」
葵は海斗に話し掛けた。
「売店までは、それ程遠く見えなかったのに、意外と歩くね、お兄ちゃん」
「登るからね。思ったより大変なんだよ」
散策コースの所々に、温泉地らしくお湯が湧き出していた。コースを登りきると売店が有り、黒たまごを作る釜が有った。この売店で出来たての卵を購入出来るのだ。
海斗達は売店で黒たまごを買い求めた。小野梨紗は中山美咲に言った。
「本当に真っ黒ね、こんなに黒いと健康に悪そうだよ」
「ウフ、大丈夫よ。変化しているのは表面だけだからね」
中山美咲は剥いて見せた。
「ほらね」
真っ白な卵が見えた。小野梨紗も殻を剥いて食べてみた。
「ホント、真っ白だー。茹でたてで美味しいね!」
鎌倉美月は殻を剥き、松本蓮の口に運んだ。
「蓮、あ~ん」
松本蓮は照れながら口にした。お返しに鎌倉美月の口に剥いた卵を運んだ。
「あ~ん」
鎌倉美月は顔を横に向けた。
「……いらない! だって蓮の手、汚ないんだもん」
皆は笑い、松本蓮は肩を落とした。
林莉子は腰を上げた。
「さあ、まだまだ、行くわよ!」
林莉子は皆を引き連れ、再びロープウェイに乗り芦ノ湖に向かった。ロープウェイは終点、芦ノ湖に面した桃源台駅に到着した。小野梨紗が楽しみにしていた海賊船に乗る港のそばまでやって来たのだ。
「わー! 凄い、海賊船だー!」
小野梨沙は、高鳴る気持ちを抑え切れなかった。海斗の手を取り走り出した。海斗はバランスを崩しながらも、小野美梨紗を追いかけた。
「小野さん、待ってよー! 転んじゃうよ!」
「わー、楽しいー!」
「もう、お兄ちゃん、置いてかないでー!」
葵は後を追いかけた。中山美咲は林莉子と顔を見合わせた。
「もー、しょうが無いなあ、行こうか、美咲!」
「しょうが無いよねー!」
中山美咲と林莉子も走り出した。続けて松本蓮、鎌倉美月も後を追って走った。皆は海賊船の乗り口、桃源台港に走り着いた。
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