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どくどく

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プロローグ

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僕は、高石 悠ごくごく一般家庭の一人っ子 何の不自由もなく暮らしてきた、母も父も厳しくもやさしい二人だった。


ほめられればうれしくて笑い、しかられれば怖くて泣いた、抱きしめられた後は温ったかい物に包まれる。そんな素直すぎる子供時代。

今思えばとても普通で幸せな時間。そんな時間が最上の時間でましてこれが壊れてしまうなんて思いもしなかった。


・・・・・・・



中学校二年の夏休み明け、僕は2学期の最初の授業も終わり学校からの帰宅途中で家の前に知らない車が止まっているのを見つけた。


「うわっ黒塗りでピカピカ過ぎて反射してるなあ!


高っそう、 うちの前に誰のだ?まあいっか」 


ガチャ

「ただいま~。」


そんなことを言いながら僕は玄関のドアを開けた―――そこには


「もうすこしまってください!、お願いします!!」 


眼鏡をかけスーツ姿の男に、頭を下げる父さんと母さんの姿だった。



・・・・・・・



意味も分からず立ち止まっていると

僕に気付いた母が今は自分の部屋で待っているように言われた。



そして・・・・・一時間後、


自分の部屋で待っていると父さんから話があると呼ばれた。


「・・・悠、さっきのあれはな、・・・」


と、父さんが話し始めた


「お前も、もう中学2年生だ。だから隠さずに話しておこうと思う。・・・父さんな、借金の保証人っていうのになっているんだよ」


「ほしょうにんって。保証人?テレビ何かで聞く?」


「ああ、父さんは会社の後輩の保証人になった。・・・それを後輩は返せなくなった。・・・だからそれを父さんが・・・返さないといけなくなったんだ」


静かにゆっくりと父さんは説明して行った。


「後輩?そんなのなんで・・・なんで!父さんが返さないといけないんだよ!それでさっきみたいに謝ってたのかよ!!」


聞かされた事実とさっき見た父の姿を思い出し少しパニックになりながら徐々に声が大きくなっていった。

今までテレビの中だけだと思っていた言葉が、実感のない話が、事実としてが目のまえでおこったんだ信じられるわけがない。


「しゃ、借金した人はどこにいるの?そのひとに返すように言えばいいじゃないか。」


「借金をした後輩は、半年前ぐらいに逃げてしまったらしいんだ。

それからいろいろと探したり、連絡取ろうとしたりしたんだが ・・・見つからなかったんだ」


わかっていた ・・探して見つからない・・・だから父さんが返さないといけない。単純な事実。


それがあの謝罪につながるのだろう。


だから今日来ていたスーツの男は、借金取りでその説明と今後の話をしに来ていた、ということなのだろう。


見た目は映画やドラマなどのヤンキーの様な格好と違って、普通の人のように見える格好だった。しわの無い黒いスーツ。髪は顔がしっかり相手に見えるように整えられ、顔が認識しやすく表情の見えやすい髪形。かけていた眼鏡も派手な物ではなく目立たないデザインの黒ぶち。本当に普通の人…いや、言わば出来る人間という雰囲気の人。


けど・・・その人は、この状況を助ける為にここにいた。


・・・という訳ではない。

それだけは何故かはっきりとわかる、そんな存在。「困っている人は助けてあげたい」そんな言葉とは反対側に居るような。だからと言って僕らの明確な敵という訳でもない、攻めるべき相手でもない。


そういう相手にこれから僕らはどんな攻め方をされるかわからない、そんな恐怖が徐々に徐々に時間が経つにつれ膨れ上がっていった。


今あの父さんの謝罪時の事を思い出すと。父さんの頭を下げる姿にいっさい姿勢も表情も変えない相手の姿は肌寒い悪寒の様なものを感じていたのかもしれない・・・


そしてテーブルの上にはこの事実とともにあの借金取りが残していった名刺が置かれていた。


・・・・・


その名刺には“空白 白紙” というあの男の名前だけが書かれていた。


・・・・・


翌朝、


「見慣れた天井だ・・・ハァ。」

いつものように自分の部屋で眼を覚ます。

きのうお父さんのあんな姿、あんな話を聞かされて正直、学校に行くのは気が進まなかった。


僕の家は一般的な家庭だと思う、サラリーマンの父と専業主婦の母の三人家族だ、家は郊外だが二階建ての一軒家、将来兄弟が増えてもいいように部屋も余裕があるし父さん念願の書斎と母さんが「絶対」と譲らなかった対面式キッチン。「お父さんは結構奮発したんだぞ!」と「自分の理想の家」を自慢していた。


昨日この家にどのぐらいの貯えがあって今回の借金がどのくらいかの金額的な事は何も教えてはくれなかった。

昨日そのことを聞くとお父さんは、


「金の心配はしなくてもいい。そんなひどいことにはならんさ、・・・もしもの時は株でもやって儲けてやるさっハハハ」


とやったこともないくせにそんな事を言ってはぐらかされた。

母さんも

「でもこれからのことは少しずつみんなで解決していくしかないじゃない。頑張りましょう」

と少し元気なさげだが前向きに励ましてくれた。



だから僕が元気出せば、父さんも母さんもいつもの朝のように戻れるはずだ。


「おっはよ!父さん、母さん」


「お、おう おはよう悠 」


「おはよう ・・悠」


父さんも母さんも昨日、俺に話した事を気にしているようだった。


朝食は、いつもより口数が少ないし空気が重い ・・・よし!ここは一発僕が!


「父さん!母さん! これからは 、僕も今後の借金の話に加わるからさ

何かあったら言ってよ! 僕に何ができるかわんないけどさ!」

そんな僕の言葉を聞いた二人は少しだけ笑顔になってくれていた。


これからどうなるか分からないがきっと何とかなるはずだ。


「じゃあ、いってきまーす」


僕は、そのまま学校へ向かった。



――――――――



学校での僕は、勉強も運動も中の中ぐらいの成績で容姿もクラスでの評価も普通くらいの位置にいると思う。


友達も圧倒的に男子が多い。 女子とは、まぁ …うん これからこれから。


「何、ぼう~としてんだよ~!」


後ろからノートで頭を叩かれたかれた。


「痛って、何だ健司か」


健司こいつは幼稚園からの友達だ 見た目はクールなイケメン、中身もクールなイケメン(ということになっているらしい) こいつの世渡り術で子供のころを知らない人は評価がかなりいい。


俺達は、昔団地に住んでた頃お隣さんでよく遊んでいた。健司はクールどころか行動派の子供だったいたずらなんかもしょっちゅうやって起こられた、なぜか僕も巻き込まれていて。

まぁ僕はこいつとは腐れ縁だと思っている


「何、ナニ~?元気ないな~今日そんなきつい授業だっけ~?」


と健司は携帯を操作しはじめた。多分今日の時間割を確認しているのだろう。


「いや別に時間割は関係n「うわっ!今日体育の後に生物 数学 現代文何だこれはユリゲラーも真っ青な催眠術じゃんか~俺に“眠れ!”と言っているみたいじゃ~ないか~?」


「ハァ、うるさい。 二学期から時間割変わっていちいちテンションあげんなよな。こっちは色々あって大変だったのに。あとユリゲラーはスプーン曲、って聞いてないし」


そう言っている間に健司は携帯でゲームを始めていた。


僕は静かに腕を枕にして完全に視界を遮り寝る姿勢に入った。


「なんだよ~怒んなよ~ごめんごめん。何があったんだよ~。チャンと聞くからさ チャンと!」


と僕はしぶしぶ顔を上げた。

「たくその言い方だと「チャン」っていう中国人連れてくることになるだろ」


「わかったよ。・・・じゃあシルベスタ スタローンと聞くから」



「恐れ多いわ!!! まぁどんな悩みでも解決してくれそうだけど(おもに肉体で)それになんで今出て来たのがシルベスタ スタローンなんだよ。」


「えシルベスタスタローンを検索しようとして変換したら“導べスタスタろーん”って出たんだよ。

導いてスタスタ言ってろーん ってなんか悩み解決!って感じするだろ~ん。」


「その発言で僕の交友関係の悩みが蓄積されたて行くよ。それにそれは解決じゃなくて考えるのを捨てて諦めているだけじゃないか。友達を捨てるか交換するかしたくなったよ。」


「なんだよ友達を捨てるとか交換とか~それじゃ消耗品みたいじゃないか~。消耗品?あ!!エクスペンダ「もういいよ!!」


と僕の一言で教室が一瞬静寂に包まれる。つまり「しーーん」だ。


うん、こんな時に僕はなにをやっているんだ。


・・・・・・


「っで結局なに?マジで悩んでんの~?」


「ん?まぁね ・・・そうだな。放課後とか時間あるか?」


「ん?・・・ああ~わかったよ。体育館裏で待ってればいいのか~?制汗スプレーあったかなぁ~」


「いやなんかもうこいつに相談とかしない方がいい気がしてきた。 ってほんとに探さんでいいから!」


健司は自分の鞄をあさり始めた


「制汗すぷれー、性感スプレー、制汗スプレー」


「ダメなやつが混じってる!」


「制服についた 汗を 吸う プレー それが“性”汗吸うp「違います!」


はぁ疲れた、ほんとに寝よ!


・・・・・


そんなこんなでようやく放課後


それから健司に今俺の置かれてる状況を話すことが出来た


「ハァー、スッキリしたー やっぱ誰かに話すとちょっと軽くなるな」

健司は最後まで黙って俺の話を聞いてくれた


「・・・」


「やっぱり自分ひとりで抱え込むよりは 友達に聞いてもらえると楽になるもんだな」


「・・・・」

健司は俯いたままだった。

僕も自分が今無理して明るくしようとしているのは分かっているが、健司が黙って聞いてくれていた事に少しホッとしている自分もいた。


「あっ!それと このことは誰にも言わないでほしいんだ。健司にしか話せ無かったしな」


「あっああ、 そうだな 誰にも、言わないよ」


健司もやっぱショックなのか俯いたまま無言でいた。少し悪い事をしたと思った。事実とはいえ他人の家の事を心配させるのは少し気が引ける。


そのあと分かれぎは、後ろから健司に「がんばれよ」と一言言われ、僕はその気持も少し楽になって家に帰った。


やっぱり友達に相談出来るっていうのはいいものだな。





なんて僕は思っていた。

これから始まる事なんて夢にも思わずに・・・
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