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凌霄花
しおりを挟む待ち合わせ時間にはまだ早い。
彼女に電話をすると、少し遅れるという。
それにしても…
お寺で待ち合わせをするというのは、初めての経験だ。
この暑いのに…
「だってぇ…人目につかないとこじゃないと…ねぇ?」
私は少し辟易としたが、彼女の甘ったれた声にはどうにも敵わない。私は日陰を探し、流れ落ちる汗をハンカチで拭った。
目の前に赤橙色の花が広がる。円錐型をした花弁が、揃いも揃って太陽の方に顔を向けている。
あれは確か、ノウゼンカズラ…か…
私は、以前一度だけ身体を重ねた女性のことを思い出していた。
その女性は、ノウゼンカズラが好きだ、って、言っていたから。
「知ってる? ノウゼンカズラってね『凌霄花』って書くのよ。空に高くよじ登っていく
、って意味があるんですって。素敵じゃない?」
そう言いながら彼女は、私の手を彼女の花弁に誘う。
「お願い…わたしを高くよじ登らせて…」
彼女が私の耳許で囁く。
彼女の口唇が、わたしの硬直したモノを慈しむように貪る。
「もう我慢出来ない…来て…」
理性は本能に抗うことはできない。
私は彼女の花弁を何度も貫いた。
「嗚呼っ…すごい、すごいわ…おかしくなりそう…」
歓喜の声をあげながら、妖艶に動く彼女の腰使いに、私は呆気なく果てた。
「まだ!…まだだめ! もっと…」
彼女の花弁は私を離さない。悪戯っぽい表情で、下から私の顔を覗きながら、両の足を私の腰に絡め、執拗に自らの腰を律動的に前後左右に揺さぶり続ける。
何度果てたかすらわからない。すべてが彼女の花弁に吸い取られていく感覚。あの時ほどの快楽は、後にも先にも経験はない。
その後。
何度か彼女に連絡をしてみたけれど、もうそれきり、彼女は電話にすら出てくれなかった。
後で知ったのだが、凌霄花の花蜜には毒があるらしい。
彼女は、凌霄花そのものではなかったか?
美しいものには毒がある。しかもその毒は、猛毒ではなく、じわじわと身体を蝕んでゆく中毒性のあるもの…
きっと私は、彼女に再会しなくて良かったのだろう。あのまま続いていたとしたら、私は彼女の毒に肉体はおろか、精神までやられ、呑み込まれていたに違いないだろうから。
「ごめーん、遅くなっちゃった」
待ち合わせに10分遅れてやってきた子は、屈託なく笑った。
鮮やかな橙色のノースリーブワンピースから覗く、ほどよい筋肉をまとったふくらはぎが私の欲情を唆る。実に美しい…
この子の花弁には、どんな毒が隠されているのか?
私はこれからそれを確かめる。
お地蔵様を護るように、咲き誇るノウゼンカズラの花弁が、一斉に夏の風に揺れた。
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