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田加井さん 2
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黙ってしばらく考えた顔をしながらミリーを見つめていた田加井は、ようやく口を開く。
「……君の話は、俄には信じ難いが。とりあえずミリーくんと言ったか。君が俺に害を加えようとしている者ではないということはわかった」
「……! ありがとうございます、よかった」
「震えているのは怯えか? 俺も君に何かしようという気はないから安心しなさい。それとも、そんな格好をしていて寒いんじゃないのか」
「へっ? あ、寒いとかは平気です。人間より寒さ暑さには強いんです」
田加井はわざわざさっきまで眠っていた自分のタオルケットを勧めるような仕草を見せながら、突然現れたミリーの心配までし始めた。
ミリーはあまり人間と話したことはなかったけれど、本来であればもっと驚かれたり騒がれたりするものなのではと思う。
(へんなの。それとも、人間って意外とみんなこんな感じなのかな)
「なら話を進めるが、何故俺の名前を知っている?」
田加井はミリーを受け入れたというわけではなく、危害を与える存在ではないと確認したうえで、状況を理解しようと話を進める。
「司令官から渡された資料に書いてあったからです。運命の人っていうのは、上層部が作ったシステムで選ばれてるらしくって、僕が選んだのではないんです」
ミリーは拙いながらも説明をする。
「その、運命の人っていうのは何?」
「そのシステム曰く、僕とあなたとは身体の相性が世界で一番いいらしいです。だからそう呼ぶって」
「か、身体のねえ……」
田加井はそう言われて改めて、ミリーの身体を見る。
ミリーの着ている服は魔界では特に変わったものではないデザインだが、人間からしてみるととんでもない露出度で、大事な部分しか隠れていない。
トップスは胸の谷間がハートの形に開いていて、胸から下は素肌が露出している。下は少し動けばパンツが見えてしまうほど短いスカートで、真っ白な素足がむき出しになっている。
正直田加井にとってみれば、目のやり場に困る、といった感じだった。
「……それは、コスプレとかではないということだよな……」
ミリーが嘘をついているようには見えない。けれど、魔界だの淫魔だの、運命の人だのと言われてもはいそうですかとはならないのが普通だ。
「……?」
コスプレという言葉は知らないミリーは不思議そうな顔をしている。田加井はミリーの背中側でちらつく羽根や尻尾が、まるで猫のそれと同じように時折ぱたぱたと動いているのも見えている。
これはいよいよ、夢でも見ているのか。田加井は頭が痛くなりそうだった。
「その、頭のに触れても大丈夫か?」
「ツノですか? あの、少し敏感なところなので、そーっとであれば……」
「わかった。乱暴にはしない。触れるだけだ」
「なら、はい……どうぞ」
ミリーはおとなしく触れやすいように頭を田加井のほうに傾ける。
田加井の指先がする、とミリーのツノの中程から付け根までをなぞる。
「んっ……!」
「痛いか?」
「痛くは、ないです……っ」
触れた瞬間から、ミリーはぴくっと反応してしまい、なんだかぞくぞくする感覚に身を震わせた。ツノは痛覚はないから痛みは感じない。ただ骨に繋がる部位であり触れられたという感覚はわかるし、普段触れられるような場所ではないから慣れない感覚に驚いてしまう。
田加井はそれで、このツノが出来のいいカチューシャなどではなく、こめかみの少し上のほうから直接生えているものだと確認する。根元に触れると、頭蓋骨から地続きに骨が伸びていて、そこの部分だけが皮膚が骨に近い組織に変化しているのがわかる。
それを実感すると、ミリーが人間ではないということがなんとなく実感として理解できてきた。
「君は……本当に悪魔なんだな」
「はい」
ミリーが本当のことを話してくれているのなら、田加井も真摯に向き合わねばと考えた。田加井という男は、絵に描いたような生真面目な男だった。
「……君の話は、俄には信じ難いが。とりあえずミリーくんと言ったか。君が俺に害を加えようとしている者ではないということはわかった」
「……! ありがとうございます、よかった」
「震えているのは怯えか? 俺も君に何かしようという気はないから安心しなさい。それとも、そんな格好をしていて寒いんじゃないのか」
「へっ? あ、寒いとかは平気です。人間より寒さ暑さには強いんです」
田加井はわざわざさっきまで眠っていた自分のタオルケットを勧めるような仕草を見せながら、突然現れたミリーの心配までし始めた。
ミリーはあまり人間と話したことはなかったけれど、本来であればもっと驚かれたり騒がれたりするものなのではと思う。
(へんなの。それとも、人間って意外とみんなこんな感じなのかな)
「なら話を進めるが、何故俺の名前を知っている?」
田加井はミリーを受け入れたというわけではなく、危害を与える存在ではないと確認したうえで、状況を理解しようと話を進める。
「司令官から渡された資料に書いてあったからです。運命の人っていうのは、上層部が作ったシステムで選ばれてるらしくって、僕が選んだのではないんです」
ミリーは拙いながらも説明をする。
「その、運命の人っていうのは何?」
「そのシステム曰く、僕とあなたとは身体の相性が世界で一番いいらしいです。だからそう呼ぶって」
「か、身体のねえ……」
田加井はそう言われて改めて、ミリーの身体を見る。
ミリーの着ている服は魔界では特に変わったものではないデザインだが、人間からしてみるととんでもない露出度で、大事な部分しか隠れていない。
トップスは胸の谷間がハートの形に開いていて、胸から下は素肌が露出している。下は少し動けばパンツが見えてしまうほど短いスカートで、真っ白な素足がむき出しになっている。
正直田加井にとってみれば、目のやり場に困る、といった感じだった。
「……それは、コスプレとかではないということだよな……」
ミリーが嘘をついているようには見えない。けれど、魔界だの淫魔だの、運命の人だのと言われてもはいそうですかとはならないのが普通だ。
「……?」
コスプレという言葉は知らないミリーは不思議そうな顔をしている。田加井はミリーの背中側でちらつく羽根や尻尾が、まるで猫のそれと同じように時折ぱたぱたと動いているのも見えている。
これはいよいよ、夢でも見ているのか。田加井は頭が痛くなりそうだった。
「その、頭のに触れても大丈夫か?」
「ツノですか? あの、少し敏感なところなので、そーっとであれば……」
「わかった。乱暴にはしない。触れるだけだ」
「なら、はい……どうぞ」
ミリーはおとなしく触れやすいように頭を田加井のほうに傾ける。
田加井の指先がする、とミリーのツノの中程から付け根までをなぞる。
「んっ……!」
「痛いか?」
「痛くは、ないです……っ」
触れた瞬間から、ミリーはぴくっと反応してしまい、なんだかぞくぞくする感覚に身を震わせた。ツノは痛覚はないから痛みは感じない。ただ骨に繋がる部位であり触れられたという感覚はわかるし、普段触れられるような場所ではないから慣れない感覚に驚いてしまう。
田加井はそれで、このツノが出来のいいカチューシャなどではなく、こめかみの少し上のほうから直接生えているものだと確認する。根元に触れると、頭蓋骨から地続きに骨が伸びていて、そこの部分だけが皮膚が骨に近い組織に変化しているのがわかる。
それを実感すると、ミリーが人間ではないということがなんとなく実感として理解できてきた。
「君は……本当に悪魔なんだな」
「はい」
ミリーが本当のことを話してくれているのなら、田加井も真摯に向き合わねばと考えた。田加井という男は、絵に描いたような生真面目な男だった。
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