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田加井さん
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「……ッう、ひゃあぁっ!」
ふにゅ、と唇が触れた瞬間、その何かと同時に、ミリーの苦手な生暖かい湿った感触がして、ミリーは思わず男を突き飛ばした。
咄嗟のそれは力加減ができず、男を思い切りベッドから突き落としてまう。
「…っ!? なんだ……?」
男はようやくハッと意識を取り戻して、何が起こったのかわからないという風だった。
男はミリーのフェロモンにあてられて、眠りから覚めないままにミリーに触れていたようだった。ミリーにしてみれば、いきなり触ってきたくせに眠っていたなんてどういうことだと怒ってしまいそうになる。
「…………誰だ、君は」
しかし、目の前の男にとってのこの状況は淫魔であるミリーも知っている。そう、『不法侵入』というやつだ。
多くの悪魔に『自分の家』という概念はない。だからきちんと理解できているかは定かでないが、人間には個人が所有する家という空間があって、そこは所有者の同意なく立ち入ってはならないのだ。
なんて面倒くさいルールなんだろうか。ミリーはそう思う。
「ご、ごめんなさいっ! あの、決して怪しい者では…………怪しいですよね~……」
「うん。怪しいというか、なんなんだ君は。どうしてここにいる」
ミリーの言葉に素直に頷く男。
「あの、僕は……」
「身分を証明できるものは持っているか? 名前と年齢と住所は言える?」
「は、え? 名前は、ミリーと言います。年齢は……忘れちゃった。住所って、住んでるところだよね? 魔界から来ました」
こんな状況下での男の業務的な態度と質問に驚き、ミリーは男に合わせた対応をしてしまう。
「魔界? なんだい、それは。ここへは何しに来たの?」
「あっ……あなたの、恋人になりに来ました!」
「……はい?」
ミリーはとにかく必死で状況を伝えようと思った。
「あの、僕は淫魔という生き物なんです」
「淫魔……?」
「はい。だから僕は人間とえっちなことをしないと生きられないんですけど」
男はミリーが何を言っているのかまるでわからなかったが、なんとか理解できるように務めた。
「ずっと淫魔のお仕事をサボって生きてたら、とうとう上官から怒られてしまって。あなたとエッチなことをしないと、僕死んじゃうんです」
「死ぬ?」
男は人間の身からすると荒唐無稽な話を、一応は理解しようと聞いてくれている。
「はい。人間と性交渉をすることで作り出せる石……みたいなものがあるんですけど、それを納品できないと、使い魔っていうただのエネルギーを使われるだけの消耗品に降格させられちゃうんです」
「淫魔とやらをクビになって、その先は死が待っているということか」
「……! はい、その通りです! 信じてもらえないかもしれないですけど、……えと、たかいりょうへいさん! あなたが僕の運命の人なんです」
男の名前は『田加井亮平』という。名前は司令官より渡されていた資料にあって、ミリーは覚えていた。
しかしながら、そうハキハキと話すミリーの手は震えている。それは田加井が、ミリーが考えていたよりもずっと体格の良い無骨な青年だったからだ。
ミリーはすらりと華奢で肉付きは良くないほうだった。そんなミリーが背も高くよく鍛えている田加井を目の前にしたなら、威圧感を覚えても無理もない。
(人間と触れ合うだけでも怖いのに、こんなマッチョだなんて、聞いてない~……!)
ミリーは心の中で嘆くのだった。
ふにゅ、と唇が触れた瞬間、その何かと同時に、ミリーの苦手な生暖かい湿った感触がして、ミリーは思わず男を突き飛ばした。
咄嗟のそれは力加減ができず、男を思い切りベッドから突き落としてまう。
「…っ!? なんだ……?」
男はようやくハッと意識を取り戻して、何が起こったのかわからないという風だった。
男はミリーのフェロモンにあてられて、眠りから覚めないままにミリーに触れていたようだった。ミリーにしてみれば、いきなり触ってきたくせに眠っていたなんてどういうことだと怒ってしまいそうになる。
「…………誰だ、君は」
しかし、目の前の男にとってのこの状況は淫魔であるミリーも知っている。そう、『不法侵入』というやつだ。
多くの悪魔に『自分の家』という概念はない。だからきちんと理解できているかは定かでないが、人間には個人が所有する家という空間があって、そこは所有者の同意なく立ち入ってはならないのだ。
なんて面倒くさいルールなんだろうか。ミリーはそう思う。
「ご、ごめんなさいっ! あの、決して怪しい者では…………怪しいですよね~……」
「うん。怪しいというか、なんなんだ君は。どうしてここにいる」
ミリーの言葉に素直に頷く男。
「あの、僕は……」
「身分を証明できるものは持っているか? 名前と年齢と住所は言える?」
「は、え? 名前は、ミリーと言います。年齢は……忘れちゃった。住所って、住んでるところだよね? 魔界から来ました」
こんな状況下での男の業務的な態度と質問に驚き、ミリーは男に合わせた対応をしてしまう。
「魔界? なんだい、それは。ここへは何しに来たの?」
「あっ……あなたの、恋人になりに来ました!」
「……はい?」
ミリーはとにかく必死で状況を伝えようと思った。
「あの、僕は淫魔という生き物なんです」
「淫魔……?」
「はい。だから僕は人間とえっちなことをしないと生きられないんですけど」
男はミリーが何を言っているのかまるでわからなかったが、なんとか理解できるように務めた。
「ずっと淫魔のお仕事をサボって生きてたら、とうとう上官から怒られてしまって。あなたとエッチなことをしないと、僕死んじゃうんです」
「死ぬ?」
男は人間の身からすると荒唐無稽な話を、一応は理解しようと聞いてくれている。
「はい。人間と性交渉をすることで作り出せる石……みたいなものがあるんですけど、それを納品できないと、使い魔っていうただのエネルギーを使われるだけの消耗品に降格させられちゃうんです」
「淫魔とやらをクビになって、その先は死が待っているということか」
「……! はい、その通りです! 信じてもらえないかもしれないですけど、……えと、たかいりょうへいさん! あなたが僕の運命の人なんです」
男の名前は『田加井亮平』という。名前は司令官より渡されていた資料にあって、ミリーは覚えていた。
しかしながら、そうハキハキと話すミリーの手は震えている。それは田加井が、ミリーが考えていたよりもずっと体格の良い無骨な青年だったからだ。
ミリーはすらりと華奢で肉付きは良くないほうだった。そんなミリーが背も高くよく鍛えている田加井を目の前にしたなら、威圧感を覚えても無理もない。
(人間と触れ合うだけでも怖いのに、こんなマッチョだなんて、聞いてない~……!)
ミリーは心の中で嘆くのだった。
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