ふわふわ短編集

ho-kiboshi

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雲のふわふわ

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 ああ眠い。さっきの実験薬がうまく効いてきたみたいだ。うつらうつらする。
 
 おや、何か見えてきたぞ。白いふわふわの雲の向こうに、何かが見える。おいでおいでしているかのような。なんだろう。
 
 ああ、いけない。誘惑に負けてはいけないのだった。あれはおそらく夢の影から生まれてきたまやかしだろう。うっかり反応しようものなら一瞬であちらに引きずられてしまう。きっと影の国は太陽の昇らない暗くて寒い孤独を敷き詰めたような場所ではないだろうか。
 
 うう、
 なんだか想像しただけでぶるぶる震えてきた。やめよ、早く現実にかえろう。
 
 あれ、私の部屋はどっちだったかな。
 うん? ここはどこだろう。私の、実験室は……??
 あれ、もしかして、もう、影のまやかしに、
 あ、あれ、あれあれ……ぇぇ?

 ふわふわ
 ふうわり

 …………

 もさ、もふ、
 もふ、もふもふもふ

「ううむ……なに、」

 頭を何かに揺さぶられて、仕方なく目を開ける。うーん、何か夢を見ていたような気がする。なんだっけ?
 白い雲の向こうへ、歩いていたような気がするんだよね。ええと、

 もふ、もふ

「え、なに、君、だれ」

 起き上がった私のすぐ近くに何か白いもふもふした生き物がいる。幸い私の意識は明るく、それをじっくり眺めることができた。
 ああ、人間でないことはたしかだ。

「!?」

 ハッとして私はあわてて自分の姿を見下ろす。
 
「うわわあ!」

 やばい。やばいぞ。
 これは私の体じゃない。
 毛深くなったというより、私の体が白い綿毛のようになっている。……これは、もしかして、私は人外に変身している?

 まふ、もふ

 自分の体をさわってみる。ふわふわしている。ええ……どうしよう。服も着てないよお。謎の羞恥心にさいなまれるが、人の体ではないのでどうにもできない。

 私はすがるように目の前のふわふわに声をかけた。
 
「私、どうしちゃったの……?」

 もふもふは首をかしげて答えなかった。人間の言葉が通じない、かな?
 それとも、ひょっとしてこの子、以前は私のように人間だったのではあるまいか? それが何らかのきっかけで雲のふわふわになってしまった……とか?

 実験薬

 私はきっかけを思い出して気持ちが重くなった。
 ああ、あれか。


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