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奈落への階段(表)
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「悪鬼彷徨う怪奇の世界からおこんばんは~。幽幻 ゆうな、です! 今晩も徘徊者のみんなを霊界に引きずり込んじゃうぞ♪」
今晩もまた動画配信者幽幻ゆうなの怪奇話の時間がやってきた。幽幻ゆうなが配信を開始する前から多くのリスナーが待機していて、開始と同時に挨拶を交わしていく。
「今日の天気は曇りだったね。ゆうなは晴れの方が好きなんだけれど、曇りも嫌いじゃないんだ。何というか、晴れよりも穏やかで落ち着く、みたいな? 物悲しいとも感じるし。徘徊者の皆さんはどんな天気が好きかな?」
他愛無い話で盛り上がったところで幽幻ゆうなな咳払いをする。画面の向こうで何やら原稿を準備しているらしく、リスナーの耳に紙が擦れる音が入ってきた。
「じゃあ今日も存分に語ろうか。まずは徘徊者田中隆夫さん(仮名)からの投稿だよ。「幽幻ゆうなちゃん、こんばんは~」、はい、おこんばんは~。「これはうちの叔父から聞いた話なんだけど――」」
■■■
数十年前、ある古びたマンションがあった。そのマンションは都市の中心部に位置し、周囲には高層ビルが立ち並ぶ中にひっそりと佇んでいた。しかし、その建物には不可解な出来事が頻繁に起こるという噂が立ち込めていた。
そのマンションの階段には、奇妙な影が住み着いているらしく、夜になると足音や不気味な声が聞こえたというのだ。住人たちは階段を避け、エレベーターを利用するようになったが、誰もその正体を見た者はいなかった。
ある晩、新たに引っ越してきた一組の夫婦がそのマンションに住むことになった。彼らは不気味な噂を聞きつけていたが、信じていない素振りを見せながらも、心の奥底では何か不穏なものを感じていた。
彼らは夜の訪れと共に、階段を使って自分たちの部屋に向かった。階段を上ると、ふと不気味な物音に気づいた。静かな夜に響くその音は、まるで何かが隠れているかのような感覚を与えた。夫婦は少し怯えながらも進んでいくと、突然足音が聞こえてくる。二人は後ろから誰かが追いかけているような錯覚に襲われた。
振り返ると、暗闇の中に薄くかすんだ姿が見えた。それは人間の形をしているかのようにも見えたが、不透明で、目を擦ってもう一度見ようとしたら既に消えていた。夫婦は悲鳴を上げて急いで階段を駆け上がり、自分たちの部屋に逃げ込んだ。
その後も、何度も階段で不可解な現象が起こり、住人たちはその踊り場を避けるようになった。しかし、その怪異は階段だけでなく、時折エレベーターや廊下でも目撃されるようになった。住人たちは次第に不安を募らせ、そのマンションに留まりたくないと思うようになっていった。
ある者はその怪奇な出来事の正体を探ろうとしたが、誰も真相にたどり着くことはできなかった。そしてある日、その古びたマンションは突如として取り壊されることとなり、数カ月後には跡形もなく消え去った。
だが、後にその場所に立つ新たな建物でも同様の奇怪な現象が目撃されたという。そのマンションに宿る不可解な存在は、いつまでも都市伝説として語り継がれ続けるのだった。
□□□
「こんな風に今の建物の中に出てくる幽霊の類ってさ、その建物に関係のある存在だったのかな? それとも建物が立つ前からそこにいた、土地由来の存在だったのかな?」
語り終えた後、いつものように感想と考察を語り合う時間を設けた。幽幻ゆうなとリスナーが互いに意見を交換し、好き勝手持論を展開する。
しかしそこで結論が出ることはない。幽幻ゆうなやリスナーにとっては怪奇現象の解明など二の次であり、怪奇そのものとそれに付随する妄想を膨らませる行為を楽しんでいるに過ぎないから。
「じゃあ次のお便りは徘徊者山口悠斗さん(仮名)からだよ。えっと、山口悠斗さんのお話は実体験みたいだね」
今晩もまた動画配信者幽幻ゆうなの怪奇話の時間がやってきた。幽幻ゆうなが配信を開始する前から多くのリスナーが待機していて、開始と同時に挨拶を交わしていく。
「今日の天気は曇りだったね。ゆうなは晴れの方が好きなんだけれど、曇りも嫌いじゃないんだ。何というか、晴れよりも穏やかで落ち着く、みたいな? 物悲しいとも感じるし。徘徊者の皆さんはどんな天気が好きかな?」
他愛無い話で盛り上がったところで幽幻ゆうなな咳払いをする。画面の向こうで何やら原稿を準備しているらしく、リスナーの耳に紙が擦れる音が入ってきた。
「じゃあ今日も存分に語ろうか。まずは徘徊者田中隆夫さん(仮名)からの投稿だよ。「幽幻ゆうなちゃん、こんばんは~」、はい、おこんばんは~。「これはうちの叔父から聞いた話なんだけど――」」
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数十年前、ある古びたマンションがあった。そのマンションは都市の中心部に位置し、周囲には高層ビルが立ち並ぶ中にひっそりと佇んでいた。しかし、その建物には不可解な出来事が頻繁に起こるという噂が立ち込めていた。
そのマンションの階段には、奇妙な影が住み着いているらしく、夜になると足音や不気味な声が聞こえたというのだ。住人たちは階段を避け、エレベーターを利用するようになったが、誰もその正体を見た者はいなかった。
ある晩、新たに引っ越してきた一組の夫婦がそのマンションに住むことになった。彼らは不気味な噂を聞きつけていたが、信じていない素振りを見せながらも、心の奥底では何か不穏なものを感じていた。
彼らは夜の訪れと共に、階段を使って自分たちの部屋に向かった。階段を上ると、ふと不気味な物音に気づいた。静かな夜に響くその音は、まるで何かが隠れているかのような感覚を与えた。夫婦は少し怯えながらも進んでいくと、突然足音が聞こえてくる。二人は後ろから誰かが追いかけているような錯覚に襲われた。
振り返ると、暗闇の中に薄くかすんだ姿が見えた。それは人間の形をしているかのようにも見えたが、不透明で、目を擦ってもう一度見ようとしたら既に消えていた。夫婦は悲鳴を上げて急いで階段を駆け上がり、自分たちの部屋に逃げ込んだ。
その後も、何度も階段で不可解な現象が起こり、住人たちはその踊り場を避けるようになった。しかし、その怪異は階段だけでなく、時折エレベーターや廊下でも目撃されるようになった。住人たちは次第に不安を募らせ、そのマンションに留まりたくないと思うようになっていった。
ある者はその怪奇な出来事の正体を探ろうとしたが、誰も真相にたどり着くことはできなかった。そしてある日、その古びたマンションは突如として取り壊されることとなり、数カ月後には跡形もなく消え去った。
だが、後にその場所に立つ新たな建物でも同様の奇怪な現象が目撃されたという。そのマンションに宿る不可解な存在は、いつまでも都市伝説として語り継がれ続けるのだった。
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「こんな風に今の建物の中に出てくる幽霊の類ってさ、その建物に関係のある存在だったのかな? それとも建物が立つ前からそこにいた、土地由来の存在だったのかな?」
語り終えた後、いつものように感想と考察を語り合う時間を設けた。幽幻ゆうなとリスナーが互いに意見を交換し、好き勝手持論を展開する。
しかしそこで結論が出ることはない。幽幻ゆうなやリスナーにとっては怪奇現象の解明など二の次であり、怪奇そのものとそれに付随する妄想を膨らませる行為を楽しんでいるに過ぎないから。
「じゃあ次のお便りは徘徊者山口悠斗さん(仮名)からだよ。えっと、山口悠斗さんのお話は実体験みたいだね」
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