配信者幽幻ゆうなはかく怪奇を語りき

福留しゅん

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ホラーゲーム実況(前)

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「悪鬼彷徨う怪奇の世界からおこんばんは~。幽幻 ゆうな、です! 今晩も徘徊者のみんなを霊界に引きずり込んじゃうぞ♪」
「どうも~隣人の七尺二寸よ~」

 今宵もまた幽幻ゆうなの配信が始まったのだが、今回は事前に告知されたとおりいつもの怪奇談とは異なる内容でお届けする、と彼女は宣言する。幽幻ゆうなは配信用パソコンの画面をリスナー達に見せる。

「昨日も言ったけど、三日ぐらい前に徘徊者の藤井愛莉さん(仮名)から投稿があったの。何でも幻の呪われたゲームを入手したから是非実況プレイしてみて、って」
「圧縮ファイルで来たんだっけ~。ウイルスソフトとかイタズラじゃないの~?」
「昨日のうちに買い替えてから使ってない古いノートパソコンで確かめてるから問題は無い、と思う。一応念のためにネットに繋げない状態のノートパソコンでプレイするつもり」
「あら~、じゃあこの大画面に出てるのはノートパソコンの画面?」
「ノートパソコンの画面の信号だけ配信用パソコンに出力してるんだ」

 ノートパソコンの画面に表示される幾つかのアイコン。そのうちの一つをダブルクリックして起動させる。簡素な起動画面からメニュー画面に移り、幽幻ゆうなは設定でフルスクリーンモードに切り替えた。

 その間に幽幻ゆうなは説明する。

 今からやろうとしているのは普通の検索エンジンでは絶対に引っかからないようなウェブの深淵でやり取りされるようなホラーゲームなんだとか。藤井愛莉は長年の苦労の末にようやく見つけ出し、幽幻ゆうなにデータを送ってきたらしい。

「だから一本道のノベルゲームなのか謎解きゲームなのかアクションゲームなのか、前知識一切無しでお届けしまーす」

 一応題名を検索してみたものの手がかりは無し。単に完成間近で開発中止になったゲームなら少し工夫すればいくらでも掘り出せるが、どうもこのホラーゲームはそうしたサーフェスウェブ上のデータが痕跡ごと消去されているようだった。

 藤井愛莉曰く、開発者がデバッグを兼ねた体験版を知人に配布してプレイしてもらったのだが、ことごとく悲惨な目にあったらしい。恐怖に支配されるだけならまだマシな方で、中には発狂したりショック死する者まで現れたんだそうだ。

“特級呪物かよ”
“貞子でも出たのか?”
“ダークウェブもんとか本当に信じてんの草”
“メイン画面は雰囲気出てるじゃん”

「ゆうなはホラーゲームは好きな方なのでそれなりにやってるけど、好みはうるさいよ。ほら、アクションゲームだと最初のうちはおどろおどろしい建物の中をビビりながら進むけど、最後になると気持ち悪いクリーチャーをロケランでぶっ飛ばすだけになる、みたいなのは勘弁」
「舞台は昭和の日本の田舎かしら~? 昔のノベルゲームによくあった紙芝居形式みたいね~」
「化け物登場と同時に爆音鳴らすのセンス無さすぎ。驚きと怖さは全然違うから。あと制限時間内に脱出、とかやらせるのもどうかと思う。怪奇に追い回されて逃げ惑う、とかきちんとホラーっぽい要素で理由を付けてほしいかな」
「あらあら、一時間ごとにどこに行くか行動を選択するの~? さっき貰った道具とかも別の所で使いそうね~」

 プレイヤーが操作する主人公は田舎の村に引っ越してきた若い夫婦のうち夫の方。序盤は近所の家や村長宅に挨拶回りをする。その晩に歓迎の宴が開かれ、どうもその村には古い言い伝えと信仰がある、と耳にする。

 主人公夫婦は村人達と交流を深めて馴染んでいく。村人達も主人公夫婦を認めるようになり、段々と打ち解けていく。そうすることで次第に村に伝わる昔話と信仰についての情報を断片的に明かされていく。

「ゆうなが好みなのは静かに恐怖心を煽ってくるような雰囲気ゲーね。ちょっとした演出、想像力を掻き立てる描写、文章、音楽。不安と恐怖が入り混じった中で進まきゃいけなくなってさ。それで山場でどーんと怪奇発生。プレイヤーは絶叫を上げるところか気絶寸前にまで追い込まれる、みたいな」
「あ~、ゆうなちゃん。そこ廊下で居間の会話盗み聞きするより台所に行った方がいいと思うよ~」
「そんなわけでおすすめのホラーゲームあったらコメント頂戴。時間と予算と検討して実況プレイするか計画立てるから。映画でもオッケーよ」
「そこは画面内の物をクリックしてゲットするシステムみたいね~。重要アイテム取り逃さないようにしてね~」

 やがて散発しだす怪奇現象。突然身に降り掛かってくる命の危機。悪霊が主人公を幾度となく騙そうとし、村人達はそれらを嬉々として受け入れる始末。やがて、ゲーム内のイベントは信仰する神への儀式と結びついていることが発覚する。

 そんな中、突如として失踪する主人公の妻。一体最愛の人はどこに消えてしまったのだろうか? 直前の足取りを調べるうちに、なんと妻は件の儀式に深く関わってしまっていることを突き止めてしまった。
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