26 / 41
学園
26
しおりを挟む
はぁ、全く、と呟いたシャーロットのその溜息は、勿論俺たちに向けられたものだ。俺だって俺の脳にため息を吐いてやりたい。或いは叱責してやりたい。何故かって?この脳は、それこそ数学、国語などの思考力が問われるものなら嬉々として取り組むのだが、歴史などの暗記科目になると途端に口を噤むのだ。然し、外国語は何やら得意らしい。そりゃそうか。俺は前世で文系だったのだから語学系には秀でていなくちゃならないのだから。然もこの脳は数学の定理一つをとっても「咲いたコスモス、コスモス咲いた」などと覚えようとせず、証明しようとするのだから。しかし、そんな深謀遠慮な真理など文系脳には土台無理な話で、全知全能なるシャーロットさんにその仕組みを聞いてもあざと可愛い女子のように「はにゃ?」と言って首を傾げるだけなのだから。ああ、ただ若しこれを読んでいる女子の中で俺のあまりの男らしさに惚れてしまってあざと可愛く擦り寄って籠絡しようとする者がいるのだとしたらやめておいた方がいい。何故か。そりゃあ、俺は男女平等主義者であり、むかついた奴の脳天は須く木っ端微塵にするからである。
そんな、俺からのありがたい忠告は置いておいて、ところでマイケルの進捗はと言うと、実は俺より駄目だったりする。もうこいつはすでに勉強に嫌悪を抱いているようだ。数学の教科書とノートが開かれた机は一瞥もせず、唯只管に天を仰ぎ、青天井に漂う雲雲に妄想をあてがっている。シャーロットが一つ苦言を述べると唯唯諾々と問題を解くふりをするが、数分後にはまた空を仰いでいて阿諛追従の嫌いこそあれ、有名無実な外発的行為のみと懇ろにしている。
「二人ともやる気はあるのかしら」
ああ、もちろんだ。精神は意気軒昂に臨んでいるのだが然し――それを刻みつける身体の方の準備がまだ整っていないようだ。
「どうすればそれは整うのよ」
さぁ?
「さぁ?、じゃないわよ。私はあんたら2人のためにわざわざ時間を削ってやってんのよ」
それは――すまない。
「はぁ、そう思ってるんならもっと――いいわ、今回のテストには実技もあったわよね。実戦形式だとか。それから対策しましょう」
刹那、マイケルの目が意気揚々と輝いた。
「おし!だったらまずは組み手からだな!」
そう言い切ると、鼻息荒く俺たちを交互に見渡す。
「だめよ。あんたはこの中で一番勉強の方が危ういんだからとりあえず数学のテスト範囲を全部分かってからにしなさい」
「おいおいそりゃない――」
刹那、シャーロットの睥睨を受けておずおずと引き下がったマイケルは肩を縮こまらせた。
「じゃ、行きましょう?」
あ、ああ。
俺とシャーロットは席を立つとひらけた平野に出た。
そんな、俺からのありがたい忠告は置いておいて、ところでマイケルの進捗はと言うと、実は俺より駄目だったりする。もうこいつはすでに勉強に嫌悪を抱いているようだ。数学の教科書とノートが開かれた机は一瞥もせず、唯只管に天を仰ぎ、青天井に漂う雲雲に妄想をあてがっている。シャーロットが一つ苦言を述べると唯唯諾々と問題を解くふりをするが、数分後にはまた空を仰いでいて阿諛追従の嫌いこそあれ、有名無実な外発的行為のみと懇ろにしている。
「二人ともやる気はあるのかしら」
ああ、もちろんだ。精神は意気軒昂に臨んでいるのだが然し――それを刻みつける身体の方の準備がまだ整っていないようだ。
「どうすればそれは整うのよ」
さぁ?
「さぁ?、じゃないわよ。私はあんたら2人のためにわざわざ時間を削ってやってんのよ」
それは――すまない。
「はぁ、そう思ってるんならもっと――いいわ、今回のテストには実技もあったわよね。実戦形式だとか。それから対策しましょう」
刹那、マイケルの目が意気揚々と輝いた。
「おし!だったらまずは組み手からだな!」
そう言い切ると、鼻息荒く俺たちを交互に見渡す。
「だめよ。あんたはこの中で一番勉強の方が危ういんだからとりあえず数学のテスト範囲を全部分かってからにしなさい」
「おいおいそりゃない――」
刹那、シャーロットの睥睨を受けておずおずと引き下がったマイケルは肩を縮こまらせた。
「じゃ、行きましょう?」
あ、ああ。
俺とシャーロットは席を立つとひらけた平野に出た。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる