良識のある異世界生活を

Hochschuler

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学園

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「で、どうするのよ」
どうするって何がだ。
「あんたもそろそろ気づいているんじゃないの」
……なるほど、お前も気づいていたか。
「「視線があることに」」
「何も対処しないってわけ?」
そうだな。それもまずい。
「じゃあどうするのよ」
そうだな、まずは――本人に来てもらおう。
そう言い終わるや否や、俺は後方に向かって手のひら大の石を投げ込んだ。
……避けたか。
「へぇ、あんたの投擲をね。結構な手だれなのね」
いや、むしろ――
俺はそう言うと片手を前に出した。
刹那、高速の何かが俺の手中を撃った。
俺はそれの運動量に少し後退する。
――投げ返してきたようだ。
俺はシャーロットに手のひら大の石を見せる。
「……どうも目的は叶ったようで」
シャーロットは気配に気づいたのか、そんなことを言う。
まだ何も反応するな。ギリギリまで引きつけるぞ。
瞬間、俺たちは上から降ってきたに対して蹴りを入れた。
空を震わせるような轟音が胸を貫く。
砂埃が晴れた後にいたのは変な仮面をした凡そ人間と思しき影だった。
そいつは俺たちの蹴りをそれぞれ片腕で受け止めている。そして俺の脚を掴むと壁に向かって投げ放った。
俺はそれに飛ばされながらシャーロットにこう言う。
前衛を頼む。
「前衛は苦手なのだけれど……」
そう言いつつもシャーロットは玄人顔負けの格闘術で相手に差し迫る。
然し、どれもがいなされてしまっている。
なるほど、こいつは――相当な手練だな。まあ、十中八九あいつだろうが――認識阻害も特徴的だし。
俺は投げ飛ばされた体勢を整えると、壁を思いっきり蹴ってシャーロットの後方、つまりあの仮面野郎、いや、仮面小娘の死角に向かって走った。
すると、前に鋼鉄の棘山が現れた。
なるほど、死角は取らせはせんと。
俺は其れ等を手刀で塵芥に付すと、先を急いだ。
然し、器用なやつだな。シャーロットと戦いながらもこっちを気にする余裕があるとは。っと、今度は溶岩ですかい。
俺は絶対零度領域を発動し其れ等を鎮める。
そして遂に死角を取ると、大魔術を錬成し始めた。
死ぬなよ。
俺はそう思ったが、全力を出さなくては恥だと思い直し、超弩級の魔術を錬成する。
気配から何やらまずいものが来ると知った仮面小娘は俺のいるらしき方向に早急に魔法を打つが、シャーロットの前衛としての有能さからか、シャーロットに隠れた俺をどれも捉えられてはいない。シャーロットめ、それが前衛なんか得意ではない人間のすることですかい。
とまぁ、とりあえず魔法の錬成が終わったので発射準備に入る。
さあ、くらえ、これが俺の全力だ。
俺が手を挙げると、俺の後ろには超弩級の魔法陣が浮かび上がった。
シャーロット!避けろ!
俺はそう言ってシャーロットが避ける体勢になったことを確認すると、その魔法陣を行使した。
雷炎が仮面小娘のいたところを消し飛ばす。
ここにまで風圧、熱波が押し寄せる。
遠くの木々どもは震撼し、鳥どもは鳴き叫ぶ。
そしてそこは――あとかもなく、抉れた地面のみがあった。
……避けたか。
「ちょっとあんた!あれで死んでたらどうするの!」
大丈夫、あいつならこれを避けると信じてた。
「大丈夫ってあんた――はぁ、まあいいわ。幸い、避けてくれたんだし」
……そういえば、そろそろマイケルも数学が終わったんじゃないか?
「……そうね、帰りましょう。なんか、一汗かいたこの後にもう一戦ってのは考えられないわ」
俺たちは良い運動になったと、そりゃあもうにっこりと帰った。シャーロットは抉れた地面と俺を見比べて半ば呆れ気味だったが。
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