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学園
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『ツァラトゥストラはかく語りき』はニーチェによって著された書物だが、如何せん難解で嘆息せざるを得ない。
ああ、ニーチェよ、あなたはそんなに高度な頭脳を持っておられるのね。でしたらどうか我々『終わりの人間』、自分の能力への諦念を持った我々を啓蒙せしめ、どうか『超人』へと導いてください。
と、一知半解な、しかもこれを言ったのがカントかニーチェか曖昧な知識を披瀝しつつ、俺の思考は彼女の言ったこと、リリーの吐露したことに舞い戻る。
リリー・ミドガルズ・オルムはかく語りき。
彼女は龍皇の娘である。
そして、強い。
ドラゴンの中で次期龍王として認められるほどに強い。
故に他を寄せ付けなかった。故に孤独だった。
龍の世界で強さにあるのはただ単なる尊敬だったから。
心を寄せられる者が父親のみと言うことのなんたる孤独か。
幼子の彼女には落涙もあっただろう。
だが、それによって弊が変わるわけもなく、そのまま彼女は育っていったのだ。
そんな彼女が人間界を見て羨むのは毫も可笑しいことではない。
唯の能力至上主義のドラゴンが見たら小蝿共が蝟集しているようにしか見えない人間界が、彼女には何よりも輝いて見えただろう。
そしてこう思うわけだ。
何故人間は親密な人間関係を築くのか。
もしそれが分かれば私も或いは――
と、ここで俺が登場するわけである。
彼女に言わせれば、俺はドラゴンの中でも強い部類に入るらしく、人間にしては素晴らしいらしい。
だが、俺は仲間を持っている。
俺と同じくらいの強さのドラゴンは1人なのにだ。
若しかしたら彼に聞けば何か仲間の作り方が掴めるかもしれない。
彼女はそんな希望を抱いた。
そこで、彼女は勿論俺と話してみようとするわけだが、龍の巣にきては四六時中龍皇と稽古している俺に話す隙はなかった。
そして多少落ち込んでいる時に、まあ落ち込みながら洋服を脱ぎ脱ぎ(人間界に偵察して行ったため洋服を着ていた)している時に俺がそこに入ってきた。
まあ、その時は驚いて殴ってしまったが、逆に彼女はそれがチャンスだと考えて話すようにしてみたらしい。
俺からしたら殴ってしまった相手に話しかけるなど、羹か膾かわからぬものを一気に飲み干すより難しいことなのだが。
しかし、結果的にその試みは成功を収める。
何せそれで今があるわけだからな。
そこで彼女ははたと知った。
人間と龍の根本的な違いについて。
いや、前にも気づいていたことを痛感したと言うべきか。
つまり、人間は弱さに立脚するから群れるのに対して、龍は強さに立脚するから群れないのだ。
そしてその気づきは彼女の現状への懐疑につながる。
つまり、龍の私が、1人が理想とされる私が人間と同じように群れても良いのかと言うことだ。
俺としては強さに立脚するドラゴンになったことがないのでその悩みがズバリとわかるわけではないのだが、まあ、苦労していることはわかる。
そりゃあだって、目の前では今も苦悶の表情のリリーがいるのだから。
まあ、俺としてもリリーは良い友達であるわけだし、なんとか救ってやりたいのだが。
救うというと烏滸がましいかもしれないが、逼迫している彼女の状況を、もう少し彼女が動けるようにしたいというのが本音だ。
彼女の選択がどうであるにせよ、俺は彼女の彼女らしさが好きだから。
しかし、こんな相談をされると旧友を思い出す。
そいつはサークルに入っていたのだが、そのサークルが見事にハズレで、人間関係に四苦八苦していた。
そして俺にどうしたら良いか相談してきたんだ。
そして俺はな確かああ言ったはずだ。
――ああ、そうだ、彼女にも同じことを言ってみよう。
人間界に馴染むか、龍界にいるかはリリー、お前の勝手だ。だが、一つだけ言わせてもらう。お前がどちらに行ったとしても、俺が、俺たち4人の中にあったお前の居場所は守ってやる。
リリーは俺が発する言葉を、一言一句逃さぬように聞き入っていた。
その言葉を聞き終えた瞬間、リリーは少し俯く。
「すまない。もう少し考えさせてくれ」
そう言って彼女は走り去っていった。
ああ、ニーチェよ、あなたはそんなに高度な頭脳を持っておられるのね。でしたらどうか我々『終わりの人間』、自分の能力への諦念を持った我々を啓蒙せしめ、どうか『超人』へと導いてください。
と、一知半解な、しかもこれを言ったのがカントかニーチェか曖昧な知識を披瀝しつつ、俺の思考は彼女の言ったこと、リリーの吐露したことに舞い戻る。
リリー・ミドガルズ・オルムはかく語りき。
彼女は龍皇の娘である。
そして、強い。
ドラゴンの中で次期龍王として認められるほどに強い。
故に他を寄せ付けなかった。故に孤独だった。
龍の世界で強さにあるのはただ単なる尊敬だったから。
心を寄せられる者が父親のみと言うことのなんたる孤独か。
幼子の彼女には落涙もあっただろう。
だが、それによって弊が変わるわけもなく、そのまま彼女は育っていったのだ。
そんな彼女が人間界を見て羨むのは毫も可笑しいことではない。
唯の能力至上主義のドラゴンが見たら小蝿共が蝟集しているようにしか見えない人間界が、彼女には何よりも輝いて見えただろう。
そしてこう思うわけだ。
何故人間は親密な人間関係を築くのか。
もしそれが分かれば私も或いは――
と、ここで俺が登場するわけである。
彼女に言わせれば、俺はドラゴンの中でも強い部類に入るらしく、人間にしては素晴らしいらしい。
だが、俺は仲間を持っている。
俺と同じくらいの強さのドラゴンは1人なのにだ。
若しかしたら彼に聞けば何か仲間の作り方が掴めるかもしれない。
彼女はそんな希望を抱いた。
そこで、彼女は勿論俺と話してみようとするわけだが、龍の巣にきては四六時中龍皇と稽古している俺に話す隙はなかった。
そして多少落ち込んでいる時に、まあ落ち込みながら洋服を脱ぎ脱ぎ(人間界に偵察して行ったため洋服を着ていた)している時に俺がそこに入ってきた。
まあ、その時は驚いて殴ってしまったが、逆に彼女はそれがチャンスだと考えて話すようにしてみたらしい。
俺からしたら殴ってしまった相手に話しかけるなど、羹か膾かわからぬものを一気に飲み干すより難しいことなのだが。
しかし、結果的にその試みは成功を収める。
何せそれで今があるわけだからな。
そこで彼女ははたと知った。
人間と龍の根本的な違いについて。
いや、前にも気づいていたことを痛感したと言うべきか。
つまり、人間は弱さに立脚するから群れるのに対して、龍は強さに立脚するから群れないのだ。
そしてその気づきは彼女の現状への懐疑につながる。
つまり、龍の私が、1人が理想とされる私が人間と同じように群れても良いのかと言うことだ。
俺としては強さに立脚するドラゴンになったことがないのでその悩みがズバリとわかるわけではないのだが、まあ、苦労していることはわかる。
そりゃあだって、目の前では今も苦悶の表情のリリーがいるのだから。
まあ、俺としてもリリーは良い友達であるわけだし、なんとか救ってやりたいのだが。
救うというと烏滸がましいかもしれないが、逼迫している彼女の状況を、もう少し彼女が動けるようにしたいというのが本音だ。
彼女の選択がどうであるにせよ、俺は彼女の彼女らしさが好きだから。
しかし、こんな相談をされると旧友を思い出す。
そいつはサークルに入っていたのだが、そのサークルが見事にハズレで、人間関係に四苦八苦していた。
そして俺にどうしたら良いか相談してきたんだ。
そして俺はな確かああ言ったはずだ。
――ああ、そうだ、彼女にも同じことを言ってみよう。
人間界に馴染むか、龍界にいるかはリリー、お前の勝手だ。だが、一つだけ言わせてもらう。お前がどちらに行ったとしても、俺が、俺たち4人の中にあったお前の居場所は守ってやる。
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