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学園
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エレクトロニックセンターに行った翌日。
俺たちは、当然の如く学校に来ていた。
まあ、俺たちと言っても――
リリーがいないのだが。
彼女は今悩んでいる所だろう。
そりゃそうだ。
親と決別にも近い離別をするなど、愛別離苦の極みと言っても過言ではないのだから。
まあ、俺にはどうしようもない。
彼女が俺たちから離れるとしても、それが彼女の決めたことであるなら文句などつけようがないし、それに今までのリリーを知っている以上、憎めもしないだろう。
それに、出会には別れもつきものだしな。
まあだから俺はある程度割り切っているつもりではある。
「あら、リリーはどうしたのかしら」
シャーロットがリリーのいるはずの机を見て言う。
「確かに今日は見かけなかったな」
マイケルがそれに同調する。
「ねぇ、アル、あんたは何か知ってる? 」
ああ、少しはな。
「少しって、どうしてリリーは休んでるの? 」
……そうだな。あいつが人間でないってのはわかるだろ?
「ええ、まあ薄々知ってたけど」
その事実は、リリーが隠していたことだからシャーロットは少し気まずそうにそう答える。
まあ、だから、俺たち人間にはわからない、特有の悩みってのを抱えてんだ。俺もそれについては少ししか知ることができない。
「はぁ」
シャーロットがあんたはわかる? というような目でマイケルを見るが、当然マイケルも見当がつかず、肩をすくめるのみだった。
「それで、あんたは何か言ったの? 」
シャーロットは俺に視線を向け直す。
ああ、あいつの気持ちを尊重するとな。
「へぇ、無責任ね」
いちいち責任など抱えちゃいられないさ。
「……まぁ、あんたが何か言ったんなら、リリーはそこまで間違った道にはいかないのだろうけど」
俺のことを買い被りすぎだな。
「そうかしら? 」
それから数日が流れたが、その間、リリーが来ることはなかった。
引き出しに溜まっていくプリント。
机にうっすらと降り積もる埃。
俺は席に着く前にその埃に気づくと、軽く手で払った。
それから数日後の夜。
俺はベッドで寝ていた。
刹那に窓の外に気配を感じて目を醒ます。
そして忍び寄り、カーテンを勢いよく開けると――
そこにはボロボロの姿をしたリリーがいた。
俺は急いで窓を開ける。
「喜べ! 友よ! アルバートよ! 私は父に勝ったぞ! 私は仲間の追跡に勝ったぞ! これで私は自由の身だ! これで私はどこへでも行ける! 」
彼女は窓が開くと興奮気味にそう語った。
砂埃と血に塗れた、切り傷だらけの彼女をみて俺はついに彼女がここ数日何をしていたのか思い立った。
彼女はここ数日、仲間の龍と共に戦っていたんだ。
そいつらから逃げていたんだ。
何日も死力の限り戦い続けるのはどんなに辛かったか。
見知った顔から命を狙われるのはどんなに心を抉ったか。
実の父親から命を狙われるということがどんなに怖かったか。
俺には想像ができない。
想像する前に涙が溢れそうだ。
それを彼女はやり遂げたのだ。
それを彼女はやってのけたのだ。
その彼女の強さたるや。
その彼女の勇気たるや。
いかにして形容されよう。
いかにして我々傍観者が知悉できよう。
俺は彼女の意気軒昂な眼差しを、落涙しかねない目でしっかりと見つめ、寒さに震える彼女の肩を抱き寄せ「よくやった」と一言言うのみだった。
彼女は今になって緊張がほぐれ、父親との決別に思いを馳せたのか、俺の胸の中で慟哭した。
俺は彼女の偉勲を讃える言葉が出てこず、「よくやった」と繰り返し呟くのみだった。
リリーは疲れからか俺の胸の中で寝息を立てている。
俺は、空気を読んで様子見に徹していたメイドに彼女を預けると、一通りのことを指示し、父親のところに出向いた。
結論から言うと、親父はリリーを匿ってくれるらしい。
物事をよく見通せるオヤジでよかった。
まあ、ここにはケインさんも暮らしているから龍たちも迂闊には手を出せないだろう。
これで一安心だ。
俺はリリーが適切な処置が施され客室へと運ばれたのを確認すると、ベッドに戻って眠りについた。
俺たちは、当然の如く学校に来ていた。
まあ、俺たちと言っても――
リリーがいないのだが。
彼女は今悩んでいる所だろう。
そりゃそうだ。
親と決別にも近い離別をするなど、愛別離苦の極みと言っても過言ではないのだから。
まあ、俺にはどうしようもない。
彼女が俺たちから離れるとしても、それが彼女の決めたことであるなら文句などつけようがないし、それに今までのリリーを知っている以上、憎めもしないだろう。
それに、出会には別れもつきものだしな。
まあだから俺はある程度割り切っているつもりではある。
「あら、リリーはどうしたのかしら」
シャーロットがリリーのいるはずの机を見て言う。
「確かに今日は見かけなかったな」
マイケルがそれに同調する。
「ねぇ、アル、あんたは何か知ってる? 」
ああ、少しはな。
「少しって、どうしてリリーは休んでるの? 」
……そうだな。あいつが人間でないってのはわかるだろ?
「ええ、まあ薄々知ってたけど」
その事実は、リリーが隠していたことだからシャーロットは少し気まずそうにそう答える。
まあ、だから、俺たち人間にはわからない、特有の悩みってのを抱えてんだ。俺もそれについては少ししか知ることができない。
「はぁ」
シャーロットがあんたはわかる? というような目でマイケルを見るが、当然マイケルも見当がつかず、肩をすくめるのみだった。
「それで、あんたは何か言ったの? 」
シャーロットは俺に視線を向け直す。
ああ、あいつの気持ちを尊重するとな。
「へぇ、無責任ね」
いちいち責任など抱えちゃいられないさ。
「……まぁ、あんたが何か言ったんなら、リリーはそこまで間違った道にはいかないのだろうけど」
俺のことを買い被りすぎだな。
「そうかしら? 」
それから数日が流れたが、その間、リリーが来ることはなかった。
引き出しに溜まっていくプリント。
机にうっすらと降り積もる埃。
俺は席に着く前にその埃に気づくと、軽く手で払った。
それから数日後の夜。
俺はベッドで寝ていた。
刹那に窓の外に気配を感じて目を醒ます。
そして忍び寄り、カーテンを勢いよく開けると――
そこにはボロボロの姿をしたリリーがいた。
俺は急いで窓を開ける。
「喜べ! 友よ! アルバートよ! 私は父に勝ったぞ! 私は仲間の追跡に勝ったぞ! これで私は自由の身だ! これで私はどこへでも行ける! 」
彼女は窓が開くと興奮気味にそう語った。
砂埃と血に塗れた、切り傷だらけの彼女をみて俺はついに彼女がここ数日何をしていたのか思い立った。
彼女はここ数日、仲間の龍と共に戦っていたんだ。
そいつらから逃げていたんだ。
何日も死力の限り戦い続けるのはどんなに辛かったか。
見知った顔から命を狙われるのはどんなに心を抉ったか。
実の父親から命を狙われるということがどんなに怖かったか。
俺には想像ができない。
想像する前に涙が溢れそうだ。
それを彼女はやり遂げたのだ。
それを彼女はやってのけたのだ。
その彼女の強さたるや。
その彼女の勇気たるや。
いかにして形容されよう。
いかにして我々傍観者が知悉できよう。
俺は彼女の意気軒昂な眼差しを、落涙しかねない目でしっかりと見つめ、寒さに震える彼女の肩を抱き寄せ「よくやった」と一言言うのみだった。
彼女は今になって緊張がほぐれ、父親との決別に思いを馳せたのか、俺の胸の中で慟哭した。
俺は彼女の偉勲を讃える言葉が出てこず、「よくやった」と繰り返し呟くのみだった。
リリーは疲れからか俺の胸の中で寝息を立てている。
俺は、空気を読んで様子見に徹していたメイドに彼女を預けると、一通りのことを指示し、父親のところに出向いた。
結論から言うと、親父はリリーを匿ってくれるらしい。
物事をよく見通せるオヤジでよかった。
まあ、ここにはケインさんも暮らしているから龍たちも迂闊には手を出せないだろう。
これで一安心だ。
俺はリリーが適切な処置が施され客室へと運ばれたのを確認すると、ベッドに戻って眠りについた。
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