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学園
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「で、これは一体どう言う事態かしら」
そう言って俺をきつく睥睨するのはシャーロット。
それを受けて冷や汗ダラダラの2人。
後ろには王家の家があり、その門の前で俺がリリーと共に出てくると俺を待っていたシャーロットは一気に眉間に皺を寄せたのだ。
リリー、そして俺は睥睨の意味がよくわからなかったのだが、何か不吉な予感がしてこう弁明した。
「ま、まて! 私たちはただ一緒に寝ただけなんだ! 」
リリーが両手を振ってそう言う。
「一緒に寝たですって!? 」
それに大仰な返事を返すシャーロット。
おい、なんでそれだけでそんな反応ができる。
俺は心の中で突っ込んだが、当然ご機嫌斜めのシャーロットにそれが言えるわけもなく、リリーの言葉に付け足した。
あ、ああ、本当にそれだけなんだ!
「本当かしら? 」
シャーロットがリリーの方をチラリと見やる。
「あ、ああ、後は慰めてもらったくらいで! 」
「慰める!? それはどう言う意味で慰めたのかしら!? 」
これまた大仰な返しをしたシャーロット。
俺たちは土台その反応の意味がわからないので、当惑するしかなかった。
しかしシャーロットは途端に肩をすくめて見せてこう言った。
「まぁ、十中八九私が何かを勘違いしているんでしょうね。この意気地なしにそんな大それたことができるとは思えないもの」
おい、大それたこととは何だ――まさか、お前! おれがリリーと――
それを言い終わる前にはシャーロットの意識は俺になかった。
彼女はリリーを見つめて、一呼吸おくとこう言った。
「まあ、私にはあんたがどんな事態になっていたかなんて皆目見当がつかないのだけれど、兎に角おかえり、リリー」
その言葉を受けたリリーはさっきのあくせくした表情とは打って変わって満面の笑みを浮かべてこう答えた。
「ああ、ただいま、シャーロット、アル、そしてここにはいないがマイケル」
リリーはこう続ける。
「そして、ただいま! 人間界! 」
「ちょっと! 声が大きいわよ! 歩行者から変人扱いされちゃうわ! 」
シャーロットはそう言って諌める。
「む? なら問題ない! 私はもともと人ではないしな! 」
そう言って胸を叩くリリー。
「そう言う問題じゃないわよ! それに私たちも変人だと思われちゃうじゃないの! 」
「いいじゃないか! 変人! みんなでなろう! 」
こめかみを抑えるシャーロット。
歩行者が通るたびに「ただいま! 人間! 」と呼びかけるリリー。
当然歩行者の顔には困惑の二文字が浮かぶ。
しかし、俺にはそれが平穏に見えた。
どうやらこの街には、いや、そんな大規模ではなく、俺の心には平穏が舞い戻ってきたらしい。
こうして当たり前の毎日が送れることのなんたるありがたさか。
俺はこめかみが熱くなるのを感じながら、肩にバッグを担いで道を急いだ。
「あんた、何泣いてんのよ」
そうシャーロットに囁き声で指摘されたが。
龍王の部屋にて。
で、俺を呼びつけて何の気だ。お前はもう決定的に俺たちの敵だろ。
「ふぉっふぉっ、そうか。そうなってしまったか……まあ、一つ感謝をせねばな。娘を迎え入れてくれてありがとう」
……そうか、やっぱり不思議だったんだ。時空間魔法を持ったあんたが、持たないリリーに負けるはずがないと。さらに、あれほどまでに強い龍どもが、こういっちゃなんだが小娘一匹を殺せないほど弱いはずがないと。
「……まあ、もう過ぎたことはいいわい。わしもお主らとは決別するつもりだった。だがな……時は近いぞ、青年。この世界が破滅する時が」
言いたいのはそれだけか?
「ああ、お主には今まで時空間魔法の基礎を叩き込んだ。それをどのように発展させていくかはお主次第だ。ただ……どうか娘を頼んだぞ」
……ああ、分かった。お前は俺の恩情によって生かしといてやる。……今まで世話になったな。
「ふぉっふぉっ、それが敵に向かって言う言葉かい」
俺はその場をさった。これで龍皇との関係も終わりだ。――彼は世界が絶滅に瀕した時、どっちのサイドにいるのだろうか。
そう言って俺をきつく睥睨するのはシャーロット。
それを受けて冷や汗ダラダラの2人。
後ろには王家の家があり、その門の前で俺がリリーと共に出てくると俺を待っていたシャーロットは一気に眉間に皺を寄せたのだ。
リリー、そして俺は睥睨の意味がよくわからなかったのだが、何か不吉な予感がしてこう弁明した。
「ま、まて! 私たちはただ一緒に寝ただけなんだ! 」
リリーが両手を振ってそう言う。
「一緒に寝たですって!? 」
それに大仰な返事を返すシャーロット。
おい、なんでそれだけでそんな反応ができる。
俺は心の中で突っ込んだが、当然ご機嫌斜めのシャーロットにそれが言えるわけもなく、リリーの言葉に付け足した。
あ、ああ、本当にそれだけなんだ!
「本当かしら? 」
シャーロットがリリーの方をチラリと見やる。
「あ、ああ、後は慰めてもらったくらいで! 」
「慰める!? それはどう言う意味で慰めたのかしら!? 」
これまた大仰な返しをしたシャーロット。
俺たちは土台その反応の意味がわからないので、当惑するしかなかった。
しかしシャーロットは途端に肩をすくめて見せてこう言った。
「まぁ、十中八九私が何かを勘違いしているんでしょうね。この意気地なしにそんな大それたことができるとは思えないもの」
おい、大それたこととは何だ――まさか、お前! おれがリリーと――
それを言い終わる前にはシャーロットの意識は俺になかった。
彼女はリリーを見つめて、一呼吸おくとこう言った。
「まあ、私にはあんたがどんな事態になっていたかなんて皆目見当がつかないのだけれど、兎に角おかえり、リリー」
その言葉を受けたリリーはさっきのあくせくした表情とは打って変わって満面の笑みを浮かべてこう答えた。
「ああ、ただいま、シャーロット、アル、そしてここにはいないがマイケル」
リリーはこう続ける。
「そして、ただいま! 人間界! 」
「ちょっと! 声が大きいわよ! 歩行者から変人扱いされちゃうわ! 」
シャーロットはそう言って諌める。
「む? なら問題ない! 私はもともと人ではないしな! 」
そう言って胸を叩くリリー。
「そう言う問題じゃないわよ! それに私たちも変人だと思われちゃうじゃないの! 」
「いいじゃないか! 変人! みんなでなろう! 」
こめかみを抑えるシャーロット。
歩行者が通るたびに「ただいま! 人間! 」と呼びかけるリリー。
当然歩行者の顔には困惑の二文字が浮かぶ。
しかし、俺にはそれが平穏に見えた。
どうやらこの街には、いや、そんな大規模ではなく、俺の心には平穏が舞い戻ってきたらしい。
こうして当たり前の毎日が送れることのなんたるありがたさか。
俺はこめかみが熱くなるのを感じながら、肩にバッグを担いで道を急いだ。
「あんた、何泣いてんのよ」
そうシャーロットに囁き声で指摘されたが。
龍王の部屋にて。
で、俺を呼びつけて何の気だ。お前はもう決定的に俺たちの敵だろ。
「ふぉっふぉっ、そうか。そうなってしまったか……まあ、一つ感謝をせねばな。娘を迎え入れてくれてありがとう」
……そうか、やっぱり不思議だったんだ。時空間魔法を持ったあんたが、持たないリリーに負けるはずがないと。さらに、あれほどまでに強い龍どもが、こういっちゃなんだが小娘一匹を殺せないほど弱いはずがないと。
「……まあ、もう過ぎたことはいいわい。わしもお主らとは決別するつもりだった。だがな……時は近いぞ、青年。この世界が破滅する時が」
言いたいのはそれだけか?
「ああ、お主には今まで時空間魔法の基礎を叩き込んだ。それをどのように発展させていくかはお主次第だ。ただ……どうか娘を頼んだぞ」
……ああ、分かった。お前は俺の恩情によって生かしといてやる。……今まで世話になったな。
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