良識のある異世界生活を

Hochschuler

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学園

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一言で言って了えばこれまでの連日に及ぶショッピング日和、まあこれはその日がショッピングに似つかわしいとされたからではなく、ただ単にショッピングが多く行われたことから結果論的に帰納された感応と言うわけだが、これらは夏休みに入る前である。

夏休みに入る前というのはつまり、中間テストが終わり、夏休みが始動するその間隙を縫って催されたものであるから、恐ろしく早い期間、俺でなきゃ見逃しちゃうね、というべきである。

では肝心の夏休みはというと、狩猟者×狩猟者とでも言うべき加速度的な魔獣退治が連日続き、遊遊としたアクション、遊遊アクションはできなかったわけだ。

まあそれでも遊びたくなるのが一青年の性とでも言うべきもので、詰まるところ俺は今いつものメンバーで海水浴に来ている。

濃い青空のもとに燦然と輝く太陽はたなびく雲に影を落とす。
ジリジリと焼かれた砂浜は薄いクリーム色であるが、波の打ち寄せるところは黒く湿り固められている。
青と白のパラソルの下は――ああ、こう言ってしまうとものすごく癪なのだが、スタイルの良い美少女がハレンチな水着を着て涼んでいた。

ハレンチと言っても彼女たちはビキニを着ているだけなのであり、昨今の若者の情勢からすると至極当然の装いであるのだが。

つまりビキニとは俺がハレンチに感じてしまうから問題なのであり、これは俺の問題、極論俺がいなくなればいいだけなのだ。

そう思って俺は俄かに立ち上がるわけだが、それをシャーロットが止めた。

曰く、直射日光の下は大層暑いのだから海がもう少し空くまでここで待っておいた方が良いとのことである。

「それとも何かここにいられない理由でもあるのかしら? 」
シャーロットは不敵な笑みを浮かべながらそう言うのであるが、そのような表情を一瞥した時、俺は本来疑問を抱くはずのその笑みにそこはかとなく敗北感を感じたので押し黙っていた。

意地悪く笑むシャーロットから視線を外すとリリーが興味深そうに海水浴客を見つめているのであり、この視線に何やらランデブーの匂いを誤覚した鼻の下の伸びた男どもが寄ってくるのであるが、そいつらは誰もが貧弱なようでマイケルの一睨みに退散するのだった。

ああ、リリーさん。
俺はあんたの純心こそが奥ゆかしい。
あんたの、その、シャーロットに教えられたことを素直に人間界の常識だと思う純なる心が。

ちなみにリリーはこの前のデパートでシャーロットの口車に乗せられてこのビキニを買っていた。

ただ、このままではリリーが思わせぶりのクソ野郎だと言う悪評が、或いは拡がってしまうかもしれない。
だから俺はリリーにこう忠言した。

リリーさん。そんなにジロジロ海水浴客を見ないであげてくだせぇ。あいつらが勘違いしちまう。

「勘違い? 一体何をだ」
リリーはきょとんとする。
俺としてはその可愛らしい仕草を守るためにその純心を維持しようと努めたいのだが、そうは問屋が下さないと言うのは世の常で、これからの彼女の益々の健勝を友の立場として考えた時に俺は心を鬼にして言わなければならないのである。

そりゃあもちろん、一夜の思い出を作りにきたのかなと。
俺は婉曲的に男どもが何を求めているかを教えてみる。

「……ほう、人間にはそんな風習があるのだな。これは失礼した」

やれやれリリーさん。あんたそんなに大人ぶって返していますが、耳まで茹蛸のように真っ赤ではありませんか。漸く今までの自分の態度に気がついたんですかね。
俺は心の中で思ったその言葉をそのまま心にしまい込むと海の方を見た。

波が迫ると共に運ばれてくる潮の匂い。
波によって砂が擦り合わされる音。
どこまでも果てしない蒼い海はそろそろ空いてきていた。

俺はみんなに泳いでくることを伝えるとパラソルの下を出て、あつい砂浜に出た。
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