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一期一会は大スクープの予感
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「フィクションかノンフィクションかは、あなたが決めてください。」
―たまたま乗った列車、目の前の席に座るのは――?
『一期一会は大スクープの予感』
創作活動をしておりますと、しばしばネタに困り、実体験を元に書くこともありますが、実体験というものは、派手なオチや期待されるようなどんでん返しもなく、「……だった」で終わってしまうことがほとんどです。
ただ、人にお伝えしたい体験談も多々あります。小ネタであれば時にはSNSなどに呟くこともありますが、できればライターらしく形にしたいものです。
実は私は創作作家の活動とは別に、ペンネームを使い分けてフリーライター、フリージャーナリストとして活動することもあります。
そんな中、今回はおよそ一年前に実際に私が体験したできごとをお伝えしたいと思います。
今からお伝えすることがフィクションか、ノンフィクションかは、ご自身でご判断ください。
私からは、実体験のご報告……としか云うことがありません。
※
二〇××年五月。
ある出版社から私の元に取材の依頼のメールが届きました。
『○○県●●市××××という山深い避暑地に●●館という民宿があり、泊まり客にこっそりと昆虫を料理に提供しているという噂があり、その検証を兼ねて取材に行けますか?』
世のゴールデン・ウィーク明けのタイミング。一人旅とネタ探しをも兼ねるつもりで、私は即答で受けることにしました。
「なんだよ……ゲテモノ料理の物語か?」
そのようにお思いの方もいらっしゃるでしょう。しかし、その民宿の取材内容は、S出版社との契約上のものなので、私が勝手にお伝えすることはできないのです。
確かに衝撃的な取材ではありましたが、ここでは書き著わすことはできませんので、昆虫料理の真実を知りたい方は、その雑誌をお探しください。二〇××年十月に発刊されているものです。契約上、ここでは、これ以上はお伝えすることはできません。
今回お伝えしたいお話は、その取材を終えてからのことです。
私は衝撃的な取材を無事終え、そのままその民宿で一泊を過ごしました。朝、民宿の部屋で目が覚めたとき、「あっ、オレ生きてる」と本気で思ったほどです。チェックアウトを済ませ、レンタカーでその街のハブ駅に戻ること一時間半。やはり町は安心できる、と感慨深くなったほどです。
レンタカーを返却し、人の少ない駅校舎で線路図を眺めていると、急いで帰る必要もないので、ネタ探しを兼ねてあえて遠回りで帰ることを決断しました。いつかネタに使うことができればと、目に付くものを記録しながらのんびり当てのない旅を楽しむことにしたのです。
閑散としたホームには乗車客は私しかおらず、次の列車が来るのは、四十五分ほどあります。日差しは強いのですが、心地よい風が体を抜けます。私は幸先の良さそうな旅の始まりを予感させる癒された空間に、しばらく佇みました。
それでも列車が到着する時刻に近づくと、人がまばらに集まってきます。
平日の昼間、どのような素性の人たちなのでしょう。興味が沸き、私はさりげなく乗客たちを眺めます。
やはり若者候の人はいないようです。年配、初老の方たちばかりでした。
ホームに入ってきた、たった二両の列車。多数両の列車に見慣れた人にとっては、可愛くも見えることだと思います。
私は前の一両目に乗り込みました。
席は二人がけのシートが向き合うように並んでいます。都会の地下鉄に慣れてしまって、列車の座席は車体に沿って左右横一列で並んでいるものと思い込んでいたので、個人的には久しぶりに見た座席の配置に一層旅の雰囲気が盛り上がります。
私はドアからすぐの座席に腰を下ろし、乗客数もまばらなので、となりの席に荷物を置きました。荷物のために席を一人分確保するなんて、都会の地下鉄では考えられないことです。
向かいの席には誰もいません。
次の名も知らない駅でキレイな女性が乗って、自分の目の前の席に座ってくれ、思わず会話が弾む……そんな妄想を抱いていると列車は動き始めました。
乗用車での一人旅とは異なり、不便な分、人との出会いがあるかも知れない鉄道の旅。一期一会のイベントを期待したいものです。
のどかな景色を眺めていると、昨日のゲテモノ料理の恐怖も消え去ります。
できれば、あの取材のことは、もう頭の片隅に追いやって消去したいものです。でなければ、食事のたびにあの光景を思い浮かべそうで……心が萎えそうです。
列車は新鮮な山村の景色を進みます。
やがて次の駅が近いことを伝えるアナウンスが入ります。そして、静かに駅のホームへ滑り込み、静かに停止しました。
ドアが静かに開きます。やはり乗り込む客は少なく、キレイな女性との一期一会はなさそうです。
都会の地下鉄のようにせわしさはありません。停車時間にも余裕があるようで、しばらくの間ドアは開いたままです。地下鉄では考えられない風景です。
私は淡い期待を捨て、バッグからパソコンを取り出し膝の上に置き、前日の取材をまとめることにしました。パソコンを開け、ディスプレイに視線を向けていると、向かいの座席に誰かが腰を下ろしました。
あまり期待せず、そちらに目を向けると……
はぁっ? あっ! えっ?
そう、思考がフリーズしたのです。
※
今からお伝えすることがフィクションか、ノンフィクションかは、ご自身でご判断ください。
私からは、実体験のご報告……としか云うことがありません。
私はキーを打とうとしていた手の形がそのままで固まっていたはずです。口はポカンと半開きしたまま、視線は目の前の人(?)に向いたままです。
列車はいつの間にか、走り出していました。
なんと、私の目の前には、体全体がステンレスのような銀色に包まれ、白目のない目は大きな卵のような形、体長は小学生ほど? 着ぐるみ? いや、こんなタイトなスタイルの着ぐるみなんて、ないでしょ。そう、目の前に座っているのは、まさに……グレイ星人……なんですけど!
(えっ? ドッキリ? カメラあるの?)
私はそれとなく周りを見回しましたが、それっぽい様子はありません。
(えっ? あの~、グレイ星人いますけど……。私以外の乗客は、何の反応も示しません。もしかしたら、見えるのは私だけ? いや、シートの表面もちゃんと凹んでいるし、床には届かない足をブラブラと揺すっている影も映っているし……物理的には絶対的に存在してるし!)
列車はこちらの驚きも気にすることなく、リズム感を保ったまま進んでいきます。
(おい! オレ、こんな見知らぬ山村の鉄道で、グレイ星人と一緒に列車乗ってるよ!)
声を大にして叫びたい感情に包まれました。すると!
「あのぉ、何か?」
(!!! グレイ星人が話し掛けてきたよ! 日本語で!)
「あぁ……あの、いや、その……」
(えっ? グレイ星人の話し掛けられたときの返答って、習ってないよ!)
「さきほどから、私の顔を睨みつけているようですが、面識ありましたか?」
(面識? あるわけないだろ! グレイ星人に面識なんてあるわけないじゃん!)
「いや、その、つい」
「ついって、どういうことですか、失礼じゃないですか」
(怒られてるよ、オレ。なぜか見知らぬグレイ星人に怒られてるよ。これは、正直に伝えた方が無難だろうな)
「あの、もしかして……」
「はあ?」
(なんでこんなに落ち着いてるんだよ。このグレイ星人は!)
「間違っていたら、ごめんなさい。もしかして、お宅、グレイ星人ですよね?」
「はっ?」
あれ? さっきより怒っている感じだぞ。直球はダメだったかな?
「あなたね、ちょっと失礼じゃないですか?」
(えっ? なんで? オレ、そんな失礼なこと言ったつもりないんだけど……)
「あ、ごめんなさい」
(オレ、誤っちゃったよ。なんでかな?)
「あなたね、この時代に、肌の色で人を差別するんですか?」
(はあ? 何言ってんだコイツ)
「肌の黒いアフリカ系の人に向って、『お前、黒人?』って言うんですか? それとも欧米系の方に向って『お前、白人?』なんて言いますか? どうですか、あなた自分のことを『黄色人種!』って言われたら、どんな気持ちになりますか! まさにヘイトスピーチですよ! 他のお客さんを見てください。私のことをそんな目で見る人、いますか?」
(はい、仰る通りです。しかし、そこじゃないんだよ。オレの言いたいのは……)
「すみません。ただ、その……」
「その? なんですか?」
(めっちゃ、怒ってるやん、コイツ)
「お宅のような方を、私の周りではあまり見かけないものですから、つい……」
「つい、肌の色で呼んでしまった、そういうことですか?」
「あぁ、はい。その通りです」
(オレ、なんでグレイ星人に説教されてんだよ)
「あのぉ、では、なんてお呼びしたら、よろしいでしょうか?」
(オレ、グレイ星人にめっさ敬語使ってますけど!)
「人称代名詞でいいですよ」
「ニ、ニンショウダイメイシ?」
(なんで突然、聞き慣れない文法用語言うんだよ。なぜかオレが外国人っぽくなっちゃうんだ?)
「我々には地球でいう、固有名詞というものを持ちません。意思の伝達は、個人間で直接送るので、固有名詞で名前を呼ぶという習慣はないのです」
(なんの授業だよ。っていうか、そこじゃないだろ!)
「分かりました。申し訳ありません。ところで、宇宙からいらしたんですよね?」
なんでグレイ星人に敬語で質問してんだ、オレ?
「いや、宇宙ではありません。別次元です。異世界という言い方もしますね」
「はあ、なるほど」
(いや! なるほどじゃないんだけどね、本当は! でもね、もうツッコミ所満載で、何を訊いたらいいのか、分んないんだけど!)
「では、その別次元から、こちらの世界には、どのような用件でいらしたのでしょうか?」
彼は初めて表情が弱気になった……気がする。なにせ、ほぼ無表情ですから、ほんの僅かな変化で喜怒哀楽を表わすようでした。
「お恥ずかしいお話ですが……」
(照れてるよ、コイツ。絶対照れてるよ。無表情なんだけど、分るもん。なんか一瞬、顔を伏せたし。ちょっと笑える)
「どうされたんですか?」
私は親近感を持たせるために愛想笑いを浮かべながら質問してみた。
「なんですか、そのバカにした笑い顔は!」
(えっ!!!! 分んねぇよ、コイツの文化。お前が無表情過ぎなんだよ!)
「とんでもないです。バカになんかしてません」
(あぁ、また謝っちゃったよ、オレ)
「申し訳ありません。改めて質問させてください。こちらの次元にはどのような手段、目的でいらしたのですか?」
(オレは、機嫌取りの芸能記者かよ!)
「いや、実はワームホールを見失ってしまったんですよ」
「……」
(コイツ……バカ?)
我々二人の間に沈黙が起きました。
(さあて、次はどういう質問をしたら、怒られないのかなぁ~)
「見うし……なった?」
私は頭をゆっくり傾けながら聞き直してみました。
「えぇ、実は勉強を兼ねてこちらの次元に来たのですけどね、ある繁華街の路地裏にワームホールを空けたのですが、繁華街で知り合った方かたちと飲み屋で盛り上がってしまい、気が付いたら見知らぬ場所にいましてね、彷徨い迷っていましたら、こんな山間の地にいましてね」
(コイツ、絶対アホだ)
「で、なぜ今、列車に乗っているんですか?」
「は?」
(は? じゃねぇよ、間の取り方が、なんか違うんだよ)
私は上半身を乗り出して、応えを求めました。
「いやね、違う次元から来て、酔っ払ってワームホールを見失って、この地に来てから、何があって、列車に乗っているんですか? ということを訊いているんです」
「仕事ですよ」
「し、仕事?」
(もう、訳分んないよ。なんで異次元のグレイ星人が、日本の田舎で何の仕事してんだよ!)
「こちらの世界では、金銭による経済活動が社会の常ですよね。ならば郷に入っては郷に従えというではありませんか。ということで、私もそれに従っているわけですよ」
「な、なんの仕事してるんですか?」
「はい。建築関係の仕事です」
(日雇い?)
「具体的には、何を造っていらっしゃるんでか?」
いつの間にか、駅は次の駅に停車していました。
相変わらず、乗降客はまばらで、入り口付近の我々の横を通り過ぎていくのですが、グレイ星人に関心を示す人は皆無でした。
「ゲートです」
「ゲート?」
「はい。異次元同士を結ぶゲートを。こちらの次元での目一杯のテクノロジーを利用したゲートです」
(えぇぇぇ!!!!! もしかしたらスターゲート????)
「も、もしかしたら、スターゲートですか?」
「まぁ、あなたたちの世界でいうと、そういことですね。ワームホールを見失ってしまったので、ゲートができれば、自分の世界に戻ることができるでしょうからね」
(アカン! 頭クラクラしてきた)
「でも、完成するまでには何年も掛かりますよね」
すると、彼は小バカにした笑みを見せた。いや、ほぼ無表情ですから、分んないですけどね。感じるんです。
「あなたはゲートのこと知らないのですか?」
(知らねぇよ! 逆にスターゲートのこと知ってる日本人なんているんかよ!)
「あのね、ゲートが正確に完成すれば、時間の問題も解決しますから。好きな時間に戻ることができますから」
「はあ、そういうものなんですね」
(う~ん、なんかツッコミ所が違うなぁ。すべて向こうのペースで会話が進んでますけど?)
「あっ、私、次の駅で降りますので」
「えっ? 私も降りていいですか?」
(もしかしたら、すっごいスクープなりそうじゃね?)
「ご自由にどうぞ。私にはそれを禁止する権利はありませんので、降りるのは勝手です」
「ありがとうございます!」
「なぜ、お礼を言われるのか、理解できません」
(んだよ。ミスタースポックかよ)
やがて列車は静かにホームで止まった。
私は膝に乗せたままのパソコンを慌ててバッグに詰め込んだ。
彼は手慣れたように列車を降り、改札口へ向った。
私は改札前の精算機で余剰分の金額を受け取り、慌てて改札口へ向った。簡素な作りの駅舎を飛び出す。
申し訳ない程度のタクシーが停まるスペースがあるだけの小さな駅でした。実は降りたときには、その駅の駅名さえ知らずに降りたのです。自販機が二台あるだけの経済活動をする場所などさえ存在しないような田舎町。
私は辺りを見渡すと、自転車置き場らしきところにある僅かなスペースがあり、そこにマイクロバスが駐車しています。そして、二十名ほどの人がそこに集まっているのが見えたのです。そこにさきほどのグレイ星人が混じっています。なんと彼はそのグループの人と談笑しているではありませんか。いや、無表情ですけどね。
(あれがスターゲートの建築現場に行く作業員の集まりなんだ! すっげー大スクープ取れそうじゃん!)
私は無我夢中でその集まりの方へ足を速めました。
(あっ! えっ?)
その団体の中にグレイ星人とは別にまた違和感のある存在が! はっ? ま、まじ?
※
今からお伝えすることがフィクションか、ノンフィクションかは、ご自身でご判断ください。
私からは、実体験のご報告……としか云うことがありません。
私の視界に入った風景。観光する場所もなさそうな、過疎的な山村に一目見て分る二十人ほどの建築関係の作業員らしき人たちの集団。その中にどう見ても浮きだった存在のグレイ星人。
そして、もう一人(?)……全身緑で背中に亀の甲羅のようなものを背負った……?
(カッパ? カッパがいるよ。おーい、カッパいるよ!)
声を大にして叫びたい。この驚きを誰かと共有したい。
(でも、カッパとかいうと、あのグレイ星人に、またヘイトスピーチだぞって、怒られたりするんだろうか? っていうか、周りのおっちゃんたち、なんで平常心なの? グレイ星人とかカッパって、当たり前の存在なの?)
すると現場監督らしきたくましい男性が現れ、作業員たちが自然と整列しだします。
そしてさらに、マイクロバスから、背広姿の小柄な男性が手にファイルを持って出てきた。
私は徐々にその団体に近づきます。
背広姿の男性は、団体の前で一礼をしました。
「お疲れさまです。今日も安全第一で宜しくお願いします。では、バスの方へ」
現場監督らしき男性を先頭に作業員たちがバスに乗り込み始めます。その中にはグレイ星人とカッパもいます。
私は全速でそこに向って走りました。
「すみません! ちょっと待ってください」
私は息を切らして背広男の前で止まりました。
「どうかされました?」
私は急いで名刺を取り出し、取材を申し込もうとしました。
「あのぉ、私、フリーライターなんですか、取材させてもらいませんか?」
男性は明らかに疑念を抱いた表情で私を見つめ返しました。
「フリーライター? 取材? 何を?」
「ええ。建築現場に連れていってくれませんか?」
「失礼ですが、ウチは安全第一で作業に就いています。取材を受けるようなことはしていませんが?」
(は? なに言ってんだ、コイツ?)
「いえ、そういうことじゃないいんです。作業員の方の中に……」
「あぁ、確かに外国人の方もいらっしゃいますが、ウチはホワイトですよ。どの人種の方であっても日本人の方と同等に扱っていますし、作業員からクレームもありませんし、なんの問題もありませんよ。変な噂立てないでください」
(ちげー! そこじゃねぇって!)
「いや、そうじゃなくて」
「なんですか、今から現場に行くので、急ぎますから」
(もう、こうなったら直球だ!)
「スターゲートを造ってるんですか?」
(どうだ、驚いたろ!)
「そうですよ。それが?」
(……シコウテイシ……シコウテイシ……シコウテイシ……)
私はその場に凍りつきました。
「あのぉ、急いでいますんで。もし、正式な取材ということであれば、会社を通してください。安全第一の観点から、許可のない部外者を入れることはできませんから」
男性はそう言って、バスに乗り込みました。そして、バスは走り出し、やがて私の視界から消えていきました。
(あれ? 何? すっげースクープをゲットしそうな予感がしたんだけど、あれ? なんだろう? この喪失感は? あれ? グレイ星人、ワームホール、カッパ、スターゲートって、もう日常のことなの? オレだけが驚いてんの?)
私はなんともいえない喪失感を味わいながら、駅舎に戻りました。
時刻表を見ると、次の列車が来るまでおよそ一時間。
辺りを見回すと、まばらに民家があり、時折車が通るだけ。
(ここ……どこだよ)
唯一の経済活動の場となる自販機でコーヒーを買い、駅舎の壁に背をもたれ、それを飲み始めました。
コーヒーがいつもより苦く感じたのは、気のせいでしょうか……。
(鉄道の旅って……、スゴイなぁ。でも、このご時世、グレイ星人やカッパ如きで驚いてはいけない時代なのか?)
※
なお、今後も個人的にこの建設現場の取材を続行したいため、場所の特定は控えさせて頂きます。ご了承ください。
※
実体験ですので、期待されるようなオチもなくて申し訳ありませんが、お伝えしたこのお話しがフィクションか、ノンフィクションかは、ご自身でご判断ください。
私からは、実体験のご報告……としか云うことがありません。
―たまたま乗った列車、目の前の席に座るのは――?
『一期一会は大スクープの予感』
創作活動をしておりますと、しばしばネタに困り、実体験を元に書くこともありますが、実体験というものは、派手なオチや期待されるようなどんでん返しもなく、「……だった」で終わってしまうことがほとんどです。
ただ、人にお伝えしたい体験談も多々あります。小ネタであれば時にはSNSなどに呟くこともありますが、できればライターらしく形にしたいものです。
実は私は創作作家の活動とは別に、ペンネームを使い分けてフリーライター、フリージャーナリストとして活動することもあります。
そんな中、今回はおよそ一年前に実際に私が体験したできごとをお伝えしたいと思います。
今からお伝えすることがフィクションか、ノンフィクションかは、ご自身でご判断ください。
私からは、実体験のご報告……としか云うことがありません。
※
二〇××年五月。
ある出版社から私の元に取材の依頼のメールが届きました。
『○○県●●市××××という山深い避暑地に●●館という民宿があり、泊まり客にこっそりと昆虫を料理に提供しているという噂があり、その検証を兼ねて取材に行けますか?』
世のゴールデン・ウィーク明けのタイミング。一人旅とネタ探しをも兼ねるつもりで、私は即答で受けることにしました。
「なんだよ……ゲテモノ料理の物語か?」
そのようにお思いの方もいらっしゃるでしょう。しかし、その民宿の取材内容は、S出版社との契約上のものなので、私が勝手にお伝えすることはできないのです。
確かに衝撃的な取材ではありましたが、ここでは書き著わすことはできませんので、昆虫料理の真実を知りたい方は、その雑誌をお探しください。二〇××年十月に発刊されているものです。契約上、ここでは、これ以上はお伝えすることはできません。
今回お伝えしたいお話は、その取材を終えてからのことです。
私は衝撃的な取材を無事終え、そのままその民宿で一泊を過ごしました。朝、民宿の部屋で目が覚めたとき、「あっ、オレ生きてる」と本気で思ったほどです。チェックアウトを済ませ、レンタカーでその街のハブ駅に戻ること一時間半。やはり町は安心できる、と感慨深くなったほどです。
レンタカーを返却し、人の少ない駅校舎で線路図を眺めていると、急いで帰る必要もないので、ネタ探しを兼ねてあえて遠回りで帰ることを決断しました。いつかネタに使うことができればと、目に付くものを記録しながらのんびり当てのない旅を楽しむことにしたのです。
閑散としたホームには乗車客は私しかおらず、次の列車が来るのは、四十五分ほどあります。日差しは強いのですが、心地よい風が体を抜けます。私は幸先の良さそうな旅の始まりを予感させる癒された空間に、しばらく佇みました。
それでも列車が到着する時刻に近づくと、人がまばらに集まってきます。
平日の昼間、どのような素性の人たちなのでしょう。興味が沸き、私はさりげなく乗客たちを眺めます。
やはり若者候の人はいないようです。年配、初老の方たちばかりでした。
ホームに入ってきた、たった二両の列車。多数両の列車に見慣れた人にとっては、可愛くも見えることだと思います。
私は前の一両目に乗り込みました。
席は二人がけのシートが向き合うように並んでいます。都会の地下鉄に慣れてしまって、列車の座席は車体に沿って左右横一列で並んでいるものと思い込んでいたので、個人的には久しぶりに見た座席の配置に一層旅の雰囲気が盛り上がります。
私はドアからすぐの座席に腰を下ろし、乗客数もまばらなので、となりの席に荷物を置きました。荷物のために席を一人分確保するなんて、都会の地下鉄では考えられないことです。
向かいの席には誰もいません。
次の名も知らない駅でキレイな女性が乗って、自分の目の前の席に座ってくれ、思わず会話が弾む……そんな妄想を抱いていると列車は動き始めました。
乗用車での一人旅とは異なり、不便な分、人との出会いがあるかも知れない鉄道の旅。一期一会のイベントを期待したいものです。
のどかな景色を眺めていると、昨日のゲテモノ料理の恐怖も消え去ります。
できれば、あの取材のことは、もう頭の片隅に追いやって消去したいものです。でなければ、食事のたびにあの光景を思い浮かべそうで……心が萎えそうです。
列車は新鮮な山村の景色を進みます。
やがて次の駅が近いことを伝えるアナウンスが入ります。そして、静かに駅のホームへ滑り込み、静かに停止しました。
ドアが静かに開きます。やはり乗り込む客は少なく、キレイな女性との一期一会はなさそうです。
都会の地下鉄のようにせわしさはありません。停車時間にも余裕があるようで、しばらくの間ドアは開いたままです。地下鉄では考えられない風景です。
私は淡い期待を捨て、バッグからパソコンを取り出し膝の上に置き、前日の取材をまとめることにしました。パソコンを開け、ディスプレイに視線を向けていると、向かいの座席に誰かが腰を下ろしました。
あまり期待せず、そちらに目を向けると……
はぁっ? あっ! えっ?
そう、思考がフリーズしたのです。
※
今からお伝えすることがフィクションか、ノンフィクションかは、ご自身でご判断ください。
私からは、実体験のご報告……としか云うことがありません。
私はキーを打とうとしていた手の形がそのままで固まっていたはずです。口はポカンと半開きしたまま、視線は目の前の人(?)に向いたままです。
列車はいつの間にか、走り出していました。
なんと、私の目の前には、体全体がステンレスのような銀色に包まれ、白目のない目は大きな卵のような形、体長は小学生ほど? 着ぐるみ? いや、こんなタイトなスタイルの着ぐるみなんて、ないでしょ。そう、目の前に座っているのは、まさに……グレイ星人……なんですけど!
(えっ? ドッキリ? カメラあるの?)
私はそれとなく周りを見回しましたが、それっぽい様子はありません。
(えっ? あの~、グレイ星人いますけど……。私以外の乗客は、何の反応も示しません。もしかしたら、見えるのは私だけ? いや、シートの表面もちゃんと凹んでいるし、床には届かない足をブラブラと揺すっている影も映っているし……物理的には絶対的に存在してるし!)
列車はこちらの驚きも気にすることなく、リズム感を保ったまま進んでいきます。
(おい! オレ、こんな見知らぬ山村の鉄道で、グレイ星人と一緒に列車乗ってるよ!)
声を大にして叫びたい感情に包まれました。すると!
「あのぉ、何か?」
(!!! グレイ星人が話し掛けてきたよ! 日本語で!)
「あぁ……あの、いや、その……」
(えっ? グレイ星人の話し掛けられたときの返答って、習ってないよ!)
「さきほどから、私の顔を睨みつけているようですが、面識ありましたか?」
(面識? あるわけないだろ! グレイ星人に面識なんてあるわけないじゃん!)
「いや、その、つい」
「ついって、どういうことですか、失礼じゃないですか」
(怒られてるよ、オレ。なぜか見知らぬグレイ星人に怒られてるよ。これは、正直に伝えた方が無難だろうな)
「あの、もしかして……」
「はあ?」
(なんでこんなに落ち着いてるんだよ。このグレイ星人は!)
「間違っていたら、ごめんなさい。もしかして、お宅、グレイ星人ですよね?」
「はっ?」
あれ? さっきより怒っている感じだぞ。直球はダメだったかな?
「あなたね、ちょっと失礼じゃないですか?」
(えっ? なんで? オレ、そんな失礼なこと言ったつもりないんだけど……)
「あ、ごめんなさい」
(オレ、誤っちゃったよ。なんでかな?)
「あなたね、この時代に、肌の色で人を差別するんですか?」
(はあ? 何言ってんだコイツ)
「肌の黒いアフリカ系の人に向って、『お前、黒人?』って言うんですか? それとも欧米系の方に向って『お前、白人?』なんて言いますか? どうですか、あなた自分のことを『黄色人種!』って言われたら、どんな気持ちになりますか! まさにヘイトスピーチですよ! 他のお客さんを見てください。私のことをそんな目で見る人、いますか?」
(はい、仰る通りです。しかし、そこじゃないんだよ。オレの言いたいのは……)
「すみません。ただ、その……」
「その? なんですか?」
(めっちゃ、怒ってるやん、コイツ)
「お宅のような方を、私の周りではあまり見かけないものですから、つい……」
「つい、肌の色で呼んでしまった、そういうことですか?」
「あぁ、はい。その通りです」
(オレ、なんでグレイ星人に説教されてんだよ)
「あのぉ、では、なんてお呼びしたら、よろしいでしょうか?」
(オレ、グレイ星人にめっさ敬語使ってますけど!)
「人称代名詞でいいですよ」
「ニ、ニンショウダイメイシ?」
(なんで突然、聞き慣れない文法用語言うんだよ。なぜかオレが外国人っぽくなっちゃうんだ?)
「我々には地球でいう、固有名詞というものを持ちません。意思の伝達は、個人間で直接送るので、固有名詞で名前を呼ぶという習慣はないのです」
(なんの授業だよ。っていうか、そこじゃないだろ!)
「分かりました。申し訳ありません。ところで、宇宙からいらしたんですよね?」
なんでグレイ星人に敬語で質問してんだ、オレ?
「いや、宇宙ではありません。別次元です。異世界という言い方もしますね」
「はあ、なるほど」
(いや! なるほどじゃないんだけどね、本当は! でもね、もうツッコミ所満載で、何を訊いたらいいのか、分んないんだけど!)
「では、その別次元から、こちらの世界には、どのような用件でいらしたのでしょうか?」
彼は初めて表情が弱気になった……気がする。なにせ、ほぼ無表情ですから、ほんの僅かな変化で喜怒哀楽を表わすようでした。
「お恥ずかしいお話ですが……」
(照れてるよ、コイツ。絶対照れてるよ。無表情なんだけど、分るもん。なんか一瞬、顔を伏せたし。ちょっと笑える)
「どうされたんですか?」
私は親近感を持たせるために愛想笑いを浮かべながら質問してみた。
「なんですか、そのバカにした笑い顔は!」
(えっ!!!! 分んねぇよ、コイツの文化。お前が無表情過ぎなんだよ!)
「とんでもないです。バカになんかしてません」
(あぁ、また謝っちゃったよ、オレ)
「申し訳ありません。改めて質問させてください。こちらの次元にはどのような手段、目的でいらしたのですか?」
(オレは、機嫌取りの芸能記者かよ!)
「いや、実はワームホールを見失ってしまったんですよ」
「……」
(コイツ……バカ?)
我々二人の間に沈黙が起きました。
(さあて、次はどういう質問をしたら、怒られないのかなぁ~)
「見うし……なった?」
私は頭をゆっくり傾けながら聞き直してみました。
「えぇ、実は勉強を兼ねてこちらの次元に来たのですけどね、ある繁華街の路地裏にワームホールを空けたのですが、繁華街で知り合った方かたちと飲み屋で盛り上がってしまい、気が付いたら見知らぬ場所にいましてね、彷徨い迷っていましたら、こんな山間の地にいましてね」
(コイツ、絶対アホだ)
「で、なぜ今、列車に乗っているんですか?」
「は?」
(は? じゃねぇよ、間の取り方が、なんか違うんだよ)
私は上半身を乗り出して、応えを求めました。
「いやね、違う次元から来て、酔っ払ってワームホールを見失って、この地に来てから、何があって、列車に乗っているんですか? ということを訊いているんです」
「仕事ですよ」
「し、仕事?」
(もう、訳分んないよ。なんで異次元のグレイ星人が、日本の田舎で何の仕事してんだよ!)
「こちらの世界では、金銭による経済活動が社会の常ですよね。ならば郷に入っては郷に従えというではありませんか。ということで、私もそれに従っているわけですよ」
「な、なんの仕事してるんですか?」
「はい。建築関係の仕事です」
(日雇い?)
「具体的には、何を造っていらっしゃるんでか?」
いつの間にか、駅は次の駅に停車していました。
相変わらず、乗降客はまばらで、入り口付近の我々の横を通り過ぎていくのですが、グレイ星人に関心を示す人は皆無でした。
「ゲートです」
「ゲート?」
「はい。異次元同士を結ぶゲートを。こちらの次元での目一杯のテクノロジーを利用したゲートです」
(えぇぇぇ!!!!! もしかしたらスターゲート????)
「も、もしかしたら、スターゲートですか?」
「まぁ、あなたたちの世界でいうと、そういことですね。ワームホールを見失ってしまったので、ゲートができれば、自分の世界に戻ることができるでしょうからね」
(アカン! 頭クラクラしてきた)
「でも、完成するまでには何年も掛かりますよね」
すると、彼は小バカにした笑みを見せた。いや、ほぼ無表情ですから、分んないですけどね。感じるんです。
「あなたはゲートのこと知らないのですか?」
(知らねぇよ! 逆にスターゲートのこと知ってる日本人なんているんかよ!)
「あのね、ゲートが正確に完成すれば、時間の問題も解決しますから。好きな時間に戻ることができますから」
「はあ、そういうものなんですね」
(う~ん、なんかツッコミ所が違うなぁ。すべて向こうのペースで会話が進んでますけど?)
「あっ、私、次の駅で降りますので」
「えっ? 私も降りていいですか?」
(もしかしたら、すっごいスクープなりそうじゃね?)
「ご自由にどうぞ。私にはそれを禁止する権利はありませんので、降りるのは勝手です」
「ありがとうございます!」
「なぜ、お礼を言われるのか、理解できません」
(んだよ。ミスタースポックかよ)
やがて列車は静かにホームで止まった。
私は膝に乗せたままのパソコンを慌ててバッグに詰め込んだ。
彼は手慣れたように列車を降り、改札口へ向った。
私は改札前の精算機で余剰分の金額を受け取り、慌てて改札口へ向った。簡素な作りの駅舎を飛び出す。
申し訳ない程度のタクシーが停まるスペースがあるだけの小さな駅でした。実は降りたときには、その駅の駅名さえ知らずに降りたのです。自販機が二台あるだけの経済活動をする場所などさえ存在しないような田舎町。
私は辺りを見渡すと、自転車置き場らしきところにある僅かなスペースがあり、そこにマイクロバスが駐車しています。そして、二十名ほどの人がそこに集まっているのが見えたのです。そこにさきほどのグレイ星人が混じっています。なんと彼はそのグループの人と談笑しているではありませんか。いや、無表情ですけどね。
(あれがスターゲートの建築現場に行く作業員の集まりなんだ! すっげー大スクープ取れそうじゃん!)
私は無我夢中でその集まりの方へ足を速めました。
(あっ! えっ?)
その団体の中にグレイ星人とは別にまた違和感のある存在が! はっ? ま、まじ?
※
今からお伝えすることがフィクションか、ノンフィクションかは、ご自身でご判断ください。
私からは、実体験のご報告……としか云うことがありません。
私の視界に入った風景。観光する場所もなさそうな、過疎的な山村に一目見て分る二十人ほどの建築関係の作業員らしき人たちの集団。その中にどう見ても浮きだった存在のグレイ星人。
そして、もう一人(?)……全身緑で背中に亀の甲羅のようなものを背負った……?
(カッパ? カッパがいるよ。おーい、カッパいるよ!)
声を大にして叫びたい。この驚きを誰かと共有したい。
(でも、カッパとかいうと、あのグレイ星人に、またヘイトスピーチだぞって、怒られたりするんだろうか? っていうか、周りのおっちゃんたち、なんで平常心なの? グレイ星人とかカッパって、当たり前の存在なの?)
すると現場監督らしきたくましい男性が現れ、作業員たちが自然と整列しだします。
そしてさらに、マイクロバスから、背広姿の小柄な男性が手にファイルを持って出てきた。
私は徐々にその団体に近づきます。
背広姿の男性は、団体の前で一礼をしました。
「お疲れさまです。今日も安全第一で宜しくお願いします。では、バスの方へ」
現場監督らしき男性を先頭に作業員たちがバスに乗り込み始めます。その中にはグレイ星人とカッパもいます。
私は全速でそこに向って走りました。
「すみません! ちょっと待ってください」
私は息を切らして背広男の前で止まりました。
「どうかされました?」
私は急いで名刺を取り出し、取材を申し込もうとしました。
「あのぉ、私、フリーライターなんですか、取材させてもらいませんか?」
男性は明らかに疑念を抱いた表情で私を見つめ返しました。
「フリーライター? 取材? 何を?」
「ええ。建築現場に連れていってくれませんか?」
「失礼ですが、ウチは安全第一で作業に就いています。取材を受けるようなことはしていませんが?」
(は? なに言ってんだ、コイツ?)
「いえ、そういうことじゃないいんです。作業員の方の中に……」
「あぁ、確かに外国人の方もいらっしゃいますが、ウチはホワイトですよ。どの人種の方であっても日本人の方と同等に扱っていますし、作業員からクレームもありませんし、なんの問題もありませんよ。変な噂立てないでください」
(ちげー! そこじゃねぇって!)
「いや、そうじゃなくて」
「なんですか、今から現場に行くので、急ぎますから」
(もう、こうなったら直球だ!)
「スターゲートを造ってるんですか?」
(どうだ、驚いたろ!)
「そうですよ。それが?」
(……シコウテイシ……シコウテイシ……シコウテイシ……)
私はその場に凍りつきました。
「あのぉ、急いでいますんで。もし、正式な取材ということであれば、会社を通してください。安全第一の観点から、許可のない部外者を入れることはできませんから」
男性はそう言って、バスに乗り込みました。そして、バスは走り出し、やがて私の視界から消えていきました。
(あれ? 何? すっげースクープをゲットしそうな予感がしたんだけど、あれ? なんだろう? この喪失感は? あれ? グレイ星人、ワームホール、カッパ、スターゲートって、もう日常のことなの? オレだけが驚いてんの?)
私はなんともいえない喪失感を味わいながら、駅舎に戻りました。
時刻表を見ると、次の列車が来るまでおよそ一時間。
辺りを見回すと、まばらに民家があり、時折車が通るだけ。
(ここ……どこだよ)
唯一の経済活動の場となる自販機でコーヒーを買い、駅舎の壁に背をもたれ、それを飲み始めました。
コーヒーがいつもより苦く感じたのは、気のせいでしょうか……。
(鉄道の旅って……、スゴイなぁ。でも、このご時世、グレイ星人やカッパ如きで驚いてはいけない時代なのか?)
※
なお、今後も個人的にこの建設現場の取材を続行したいため、場所の特定は控えさせて頂きます。ご了承ください。
※
実体験ですので、期待されるようなオチもなくて申し訳ありませんが、お伝えしたこのお話しがフィクションか、ノンフィクションかは、ご自身でご判断ください。
私からは、実体験のご報告……としか云うことがありません。
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