色が見せる人の心

キィー

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気になる

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「…翔?」
自分たちの教室へ向かう廊下を歩いてる最中、夜蛭に名前を呼ばれてやっと我に返る
「あ、ごめん。ぼーっとしちゃって」
「…いや、それは別に構わない。さっきの…昨日会ったって奴が気になるのか?」
鏡夜には状況を一通り説明して誤解は解けたが、それでもまだ猫山さんを警戒しているのか、不安そうに翔を見る。
「うん。なんでなのかわからないけど、すごく気になるんだよね」
初めて会った状況が印象的だったからなのか、どうしても気になってしまう。
それに昨日、川にいた理由もわからないままだし…。
とりあえず様子を見ながら少しずつ仲良くなれたらいいなと、思っていた時、キーンコーンカーンコーンと、チャイムが鳴る。
「あ!急がないと、千結ねぇに怒られる!」
翔がそう言った瞬間、額を軽く小突かれた
「…影山先生な」
そう言って翔の先を小走りで行く鏡夜。翔はその後を急いでついて行った
「そうだった。まだ気を抜くとつい…」
「もう5月だろ?俺は大丈夫だけど、翔はそろそろ慣れないとな…」
すると、突然立ち止まった鏡夜。
それに気づいて翔も少し遅れて立ち止まった。
翔が振り向くと、ニヤニヤした顔の鏡夜と目が合う
「呼ぶ度に罰ゲームとか…どう?」
鏡夜は翔にそう提案してきた
翔は嫌な予感に呆れながらも一応話を聞く
「えー…罰ゲームって例えば?」
「何か1個おごる」
人差し指を立てて歩きだした鏡夜は満面の笑みでそう言って翔の前を通り過ぎた
翔は少しため息を漏らしながらその後をついていく
「それ、鏡夜が得するだけじゃん」
不貞腐れる翔が面白いのか、いまだにニヤニヤしている鏡夜。
「呼ばなきゃいいだけじゃん」
「…別のがいいよ」
「それは我儘よ」
わざと語尾を真似しながら挑発する鏡夜に苦笑しながら
提案自体は良いかな、なんて思い始めた翔は
鏡夜と他の罰ゲームについて話しながら駆け足で教室へと向かった。



屋上にいた心愛は空を見上げる
「青い空に…白い雲…でも…」
眩しいくらいに晴れ晴れとした空を見ながら瞳をゆっくり閉じてみる
「目を閉じれば黒…」
でも、何かが違う気がする。心愛は気難しそうな顔をしながら考え込む。
「あれは…もっと…はっきりとした…」
突然、ハッと我に返った心愛は無理やり思考を中断させた
「考えちゃだめ…何も見なかった…それでいい」
そう自分に言い聞かせるように心愛は一人呟く。
千里の幼なじみである信条 翔。そして、鏡夜と呼ばれたあの人。
不思議な2人だった。
今後関わることはもうないと思うけど、やっぱり気になってしまう。
「ーーーーー…」
心愛が呟いた言葉は髪が巻き上がるほどの風によって掻き消された
「戻らないと…」
千里のお説教が待っている教室に行きたくはなかったけど、行かないとも心配するから、仕方ないとため息をついてから心愛は屋上の階段を下りていった。
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