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28話 地下4階より下は

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 「カティ!?鑑定男!?」
 勢いよく立ち止まる。
前方からかけてきたのはギルドであったネズミ男。

「こっちはだめだ!逃げなきゃまずいぜ!
ワニとラクダはどうした!?」

「2人は後ろでグリーンアントとアントの群れとやり合ってます。
私たちを逃がしてくれたんです。
前のパーティに助けを呼びにきたんです」

「おお。残念だがこの先はほぼ全滅だ。
地獄だぜ。
地上へ戻ろう。2人には捜索隊をだしてもらおう。」

「後ろのルートは地魔法の壁で塞がっちゃいました」

「なんだと!?
じゃあ未踏のルートで地上に戻れるルートを探すしかないな!」

「前でなにがあった?」

「とんでもない数のアリモンスターが沸いてきてな。
しかもどいつもこいつも進化個体なんだ。
アリ型ってのは基本クイーンアントから生まれるんだが
おそらくこのクイーンが特異個体なんだ。
異常に進化が早いのはこいつが原因だぜ。
たぶんな。
一匹一匹が知能も高い。
追い詰められて命からがらみんなで逃げたんだが、
オーガのパーティのやつら、PKを始めやがった!」

PK・・・プレイヤーキラー。モンスターではなく人間を襲う。

「人同士でも殺せば経験値が入るからな。
しかもまれにスキルやステータスの一部も奪える。
それでレベルアップしてアリを殺そうって腹だ!
前のパーティ全滅してやつら進化を始めやがった。
そのすきに逃げてきたんだ。
あいつら元々暗いところ、せまいところ得意な種族だ、ステータスも高いし勝ち目ないぜ。
とにかく俺は逃げる!
カティ、毒消しはやるよ!」

「チュージさん、ありがとうございます」

チュージっていうのかこいつ。

「お前たちもとりあえず一緒にこい。上の階だ」

チュージにつれられ3階へ戻る。

「俺たちは松明を戻る。」

「なにいってんだ!アリの群れがいるんだろう!
ワニとラクダはもうだめだ!
あいつらお前たちを助けるために留まったんだろう!
あいつらの覚悟無駄にするんじゃねえよ!」

カティと顔を見合わせる。
覚悟は決まったようだ。

「やはり見捨てていけない!」

「馬鹿野郎が勝手にしろ!
ここでお別れだ!
帰ったら毒消し代金ふんだくってやるからな!
ワニとラクダにもいっとけ!
カティてめえのことも今日から亀に格下げだ!
捜索願いは出しておいてやるよ!おまえら4人分のな!じゃあな!」



チュージ・・いいやつかよ。
走りダンジョンの闇に消えていった。


「行こう」

松明を駆け足で戻る。


灯りを頼りに進む。


途切れていた。


「冗談だろ・・・」

二度目の土厚壁(どこうへき)。

クロックとバンは前も後ろも通路を塞がれていた。
こんな薄暗いところでアントの群れと隔離されてしまった。

大きな戦闘音が地下から響いてくる。
例のオークたちとアントの戦いが始まったのだろう。

帰宅魔法はあいかわらず使えない。
発動条件でもあるのか、うんともすんとも言わない。

スマホは当然圏外だ。
地下だし国外では使えないと言っていた。

カティはほぼ全快したがMPはほとんどない。

「チュージを追いかけよう」
「そうですね」

2人のいる壁からしばらく動かないカティ。

「行こう」
「わかってます」

カティの手を取り強引に進む。
声を立てないようにすすり泣くカティ。
手に呼吸が荒くなる振動が伝わってくる。
俺はカティの顔を見ないふりをしてチュージを追いかけた。

松明のないくらい道を行く。

「火魔法LV1 蛍火」
カティの灯りの魔法だ。

「わたしのMPはもうすぐ尽きます。簡単なのでこの際に覚えて下さい」
半泣きでついてくるカティに火魔法を教わりながら進む。


「また行き止まりだ」

何回か行き止まりに当たる。
異様に分かれ道が多い。

「こんなに枝分かれしているなんて変です。」

アントの巣作りか。
 
ダンジョン全体が巨大なアントの巣。

何度も曲がり何度も戻り、階段もない坂を上り、下り。

「カティ地図上で大体いまどの辺にいるか分かるか?」
「・・・うーんかなりダンジョン入り口から遠ざかったところにいるかもしれません。
この真上、2層か3層か隔てたところが屋台街でしょうか。」

「それでいい。国に近づけばもしかしたら電波がはいるかもしれない。」
「なるほど!スマホって便利ですねー。
国ではまだ一部の要人か施設に1個あるかないかくらいですからね」

「そうなのか。
もしかしたらアントはダンジョン外から食料調達しているかもしれない。
あの数。そしてダンジョン内のモンスターの少なさ。可能性はある。」

「なるほど。
それでどんどんダンジョン入り口から離れるように動いてるんですね」

「それにあのグリーンアントってモンスター。生きているなら俺たちを待っているんじゃないか。
松明を目印に戻ってくるのを。」

「たしかに。あれは知能が高そうでした。
クロックさんとバンさん無事でいてくれるといいですけど。」

またカティの目が潤む。

スキル火魔法LV1を獲得しました。

「お。俺火魔法使えるようになったわ。」

「本当ですか!おめでとうございます!
ロべの腕輪も便利ですね。
使えるようになった瞬間が分かるなんて。」

「カティの教え方がうまかったからだよ」

「『見て覚える。触れて覚える。
世界の理(ことわり)は人の手中で産み出せる。』
って師匠が言ってました」

「それは分かりにくいな」

「ピューイさんの受け売りです」

「師匠ってあれかよw」


そしてカティのMP切れとともに
俺が蛍火を放つ。

ぼぼぼう

「ちょ、もうちょっと抑えて下さい」

「おお火魔法操作むずいな」


しばらく進む。
チュージの居場所の手がかりはない。


暗視のレベルも徐々に2人とも上がってきた。
さらに聴覚強化、視覚強化、感覚強化のスキルも手に入れた。


ダンジョンはこんなにも経験値が高いのか。

「魔力の密度が高いからスキルやレベルが高くなりやすいそうです」
「なるほど。」


「そろそろ俺のMPも尽きそうだ」
「・・・それはコワイですね」
「そうだな」

2人の周りを飛び回っていた蛍火が消える。

完全な闇。


「カティ。どれくらい見える?」
「自分の手がギリギリ見えるくらいです」
「そうか」

カティの手が俺を強く握る。

もう一度離れたら二度と会えない気がしてくる。

時々遠くでモンスターのざわめきが聞こえてくる。

MPの回復手段は
休息をとる、
MP回復薬やMP回復する薬草をつかう、
レベルアップ
この3つしかない。

モンスターを倒してレベルアップは無理だな、暗すぎてとても戦闘にならない。
薬もない、
2人で代わる代わる寝るか?
それも厳しいな。
ダンジョンに漂う魔力が濃すぎていつモンスターに遭遇してもおかしくない
今真後ろに、目の前にモンスターがいてもおかしくないような緊張感がある。

「静かに。赤羽さんなにか聞こえませんか?」

猛獣の唸り声のようなものが聞こえる。

右前方の上り坂のほうだ。

ずっと小さい声を発している。
近づけば居場所もざっくり分かるかもしれない。
気づかれず忍び寄ってひと突き。めった刺しにする。
軍用の短剣。やっと出番だ。
レベルアップでMP回復チャンス。

登坂をゆっくりと登る。

すると光が見えてきた。
「太陽光?まだ地下2.3階かの位置だぞ」


坂の先が見える。
「赤い木組みの門?・・・ですかね?」
「いやこれは・・・」
鳥居だ。
鳥居が7つ並んでいる。
それが怪しく光っている。

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