一家で異世界に引っ越ししたよ!

シャア・乙ナブル

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30話 斜陽の王国2

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 私とライミーネ殿は料理を食べながらキドウの悪口で盛り上がっていた。元々自分のしていた事をオーシン先生に見つかり咎められ、それを逆恨みして最終的に命を狙い国から逃亡させたキドウに、最初から好意的な感情など欠片程もない。先生が嫌がらせみたいな事をされているのは知っていたけど、命まで狙われていたというのはライミーネ殿が教えてくれて先程知った事実だ。

「先生は王と国への忠誠心からキドウの前から姿を消したのですね......」
「私も相談受けたときにいっそキドウを殺っちゃえばいいじゃない。とは言った事もあるんだけどね。王へかかる負担を考慮したみたいよ。オーシンも頑固だから」
「先生の気持ちはわかります......」
「うまく亜人と遭遇できて受け入れられていればいいけど、変なところで不器用なとこあるし、彼。ま、その前に結界を見つけて越えるっていう問題がある訳だけどね」
「ライミーネ殿は先生の恩人だったのですね......」
「やーね、そんな大袈裟なものじゃないわよ。それよりもオーシンの逃亡先は他言無用だから。わかっているとは思うけど」
「はい、もちろん承知しています」

 もしこの会話をキドウの手の者に聞かれたら、私達といえどどんな目にあうかわからないし、先生も危険になる。

「それと......オーシンが貴女に何も言わずに姿を消したのは貴女に危害が加わらない様にする配慮よ?」

 そう、当時私がこの事を知ったところで何もできる事はなかった。むしろ私が激情にかられ問題を起こしたかもしれない。......先生はそれを考慮してくれたのだろう。それでも話して欲しかったという気持ちもあるけれど。

「わかりますが......キドウに対して怒りがこみあげてきます」

 私は結局、このモヤモヤをキドウへの怒りへと転化させた。

「そうね。......キドウには何か裏があると思って間違いないと思うけど、面倒に巻き込まれた時の為に、私の知っている情報を教えておいてあげる。もしもの時はうまく応用してね?」
「ありがとうございます」

 そしてライミーネ殿からキドウとその周辺の情報を色々と教えてもらった。彼女はオーシン先生を逃亡させた後、一人でキドウの事を探っていたらしい。私は情報の対価として家にある秘蔵のお酒を提供する事を申し出て、二人分の勘定を払いライミーネ殿と家に向かうため店を出た......ところで不覚にも人とぶつかってしまった。

「これは失礼しました。ご容赦ください」
「! もし。しばしお待ちを!」
 
 謝罪して歩き出そうとしたけれど、ぶつかってしまった人物に呼び止められた。謝罪の仕方が気に入らない等と絡まれるのかと考えた時、その細目の人物は私の顔をじっと見てこう言った。

「差し出がましいようですが、あなた様には受難の相が出ております。お気をつけください」
「え? ......受難......ですか?」

 受難。......つまりこの人物は私に災難が降りかかると言っている。もしかしてと確認の意味を込めてライミーネ殿を見る。

「ごめんね、私の専門外だわ。人相見はやってないの」

 彼女もわかるものかと思ったけど、そうではなかったので、その人物に向き直り、

「どのような受難でしょうか?」

 純粋に好奇心から聴いてみた。 

「ふーむ......出ております相は剣難と見受けられます。用心なされませ」
「剣難。剣が私に害をなすと?」
「相によれば、ですが」
「なるほど。ご忠告痛み入ります」

 私は礼を言い、見料として銅貨を二枚渡そうとしたが必要ないと断られ、私達とは逆の方向に消えていった。私達も家に向かい歩き出す。

「ゆすりたかりの類じゃなかったか」
「スリでもありませんでした」
 
 ライミーネ殿が言うように、王都には難癖をつけたり、押し付けがましい事をしておいて金品を要求する輩も少なからずいる。話しかけて不安を煽って金品を狙う者や、善意で荷物を運ぶのを手伝う振りをして運び賃を要求する行為等がそれだ。後者がさらに悪質になると目を離した隙に荷物ごといなくなったりもする。これらに対応するのは衛兵の仕事であり私が所属する近衛が対応する事はない。

「しかし貴女に剣難とは。あんな話をした直後じゃ縁起がいいとは言えないわね。......妙な事が起きなければいいけど」

 ライミーネ殿は顔を曇らせている。

「ご心配は無用ですよ」
「あら、どうして? リン師範はこういうの気にしないタイプ?」
「言われたのが剣難だったから気にならない、といった感じでしょうか」
「どういう事?」

 ライミーネ殿に対して、胸を張って言い切る。

「私はこれでも武芸指南役。剣難からは最も遠い位置にいると自負しています。なぜなら大抵返り討ちにする自信があるからです」
「......なるほど、なぜか納得だわ。確かに不確定な要素を気にしすぎても仕方ないわね。でも言われたのが剣難じゃなくて、運命の出会いが訪れます、だったりしたら?」
「そ、それは気になる......かも。って何言わせるんですか!」

 私達は笑いあった。......のに、私の耳には笑い声以外に怒号も聞こえてしまった。そしてそれはライミーネ殿も一緒だったみたい。

「え? 今......」
「はい、向こうの通りから聞こえました」
「無視したいところだけど......そうはいかないかしらね」
「すみません。なんならライミーネ殿は帰っていただいても」
「ここまできてるんだから付き合うわ」

 面倒なのは同意だけど、行かない訳にはいかなかった。聞こえたのが、『近衛の俺達に逆らってただですむと思ってるのか』などという怒号であったがために。
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