一家で異世界に引っ越ししたよ!

シャア・乙ナブル

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38話 朋広、文明レベルの差を確認し計画の変更を行う

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 一行は村に入った。 豚が歩き回っている村の通りはお世辞にもよい出来の道とは言えず、馬車一台がなんとか通れる幅の田んぼのあぜみちと言った感じだった。 道の片側には水の流れる水路っぽいものが掘ってある。 
 
「水濁ってるなー。 畑用の水路だと思うけど、ザリガニとかいそうだな」
「ザリガニ? ザリガニとはなんです朋広殿」
「え? 両手にハサミのついた赤い色した大きなエビみたいな...... 説明しようとすると案外難しいな。 頭の中にはパッと思い浮かぶのに」

 道の両側にも所々木の柵があり、道沿いには家か畑のどちらかしかない。 畑で作業している人間がちらりとこちらを見てそのまま作業を続けている。 家族の子供が水路にバケツを入れて水を汲み、畑に運んでいる姿も見える。

「子供も何人かいるねー。 遊んでいる子よりお手伝いしてる子の方が多いかな。 書いとこう」
「......うーん? なんか変な違和感があるわねぇ」
「へぇ、幸依がそんな事言うの珍しいな?」
「まだそれがなんなのかわからないんだけど......。 あら」

 一行に豚が近付いてきた。

「豚さんだー。 ......顔が泥だらけでなんか汚い」
「いや、華音。 それ泥だけじゃなくて糞尿の......」
「! やだー近寄らないでー!」

 馬がヒヒンといななくと豚さんは驚いて離れて行った。

「あ、ありがとー馬さん。 助かったよー」

 華音が馬さんを撫でる。 馬さんは瞬間ビクッと全身を硬直させたように見えた。

「あの家畜、どちらかと言えば痩せておりましたな」

 オーシンが言う。 入口で交わした会話の内容を覚えており観察していたようだ。 他のメンバーは豚さんの汚れの方に気をとられていたので、異世界人と現地人の汚れへの意識の違いが出た感じだろうか。 まぁ、糞尿が突きつけられたら現代人なら仕方がない反応だとは思う。 一行はそのまま進み家なども観察する。

「家は木製の建物ばかりだな」
「家によってはあなたの建てたログハウスの方が立派よねぇ」
「メインストリート沿いの建物クラスなどは王都にもそうはありませんぞ?」
「え、そうなんですか?」
「はい、石材で出来た建物も城をはじめ当然ありますが、木材メインであれだけの規模となると......」
「そこは全く考慮してなかった......」
「もー。 パパには計画性っていうものがないんだから」

 華音に計画性という言葉を用いられダメ出しをされる朋広。

「いやいや華音ちゃん? 計画性については主に正和担当ですからね? 今の発言にはパパは異議を唱えます」
「それでいてあの建物はまだ発展の余地を残しておりますからな。 完成すれば木造建築での歴史的遺産になりますよ」
「歴史的遺産ですって。 さすがねあなた! さすともよ」
「趣味、日曜大工の男が歴史的遺産を建築とか意味わかんない。 ついでにそのさすともとやらも」
「あ、ママ。 あそこで女の人が何かやってるよ?」

 幸依は華音の示した方を見る。 家の庭とまでは呼べないスペースで、水を入れた桶の中で足踏みを繰り返す女性がいた。

「ダイエットかなにかかな?」
「いいえ華音。 あれは多分お洗濯の最中だと思うわよ」
「え? そうなの?」
「ああ、ママの考えで間違いないだろう」

 真剣な顔をして朋広も見ていた。

「あれが一般的な洗濯の方法だとすると、洗濯道具セットは画期的発明品になってしまうんじゃないか?」
「え? いや、よく考えたものだと母と話しておりましたが...... 違ったのですか? てっきり正和殿が考案したものかと」
「え? あ、いや、正和考案なのは間違いないんですけどね」

 元からある世界とそうでない世界とでは発想の意味合いが全然変わる。 もちろんそれを世に出すという行為の影響も、だ。

「......よく見れば煙突がある家すらない。 オーシンさん、つかぬ事をお訊きしますが、かまどと暖炉というものはご存知ですよね?」

 朋広はまさかと思いながら質問する。

「いえ、存じ上げません。 申し訳ない」
「え!?」
 
 まさかな答えが返ってきた。
 
「カマドトダンロという言葉を聞いたのも初めてでして」
「じゃ、じゃあ料理はどうやって......」
「え? 普通にかまどですが...... ! ああ、かまどと何かについて訊かれたのですね」
「ん? ああ、なるほど。 そうなんです。 暖炉というのはお貸ししたログハウスの壁についていた薪を燃やす場所の事で......」
「ああ! あれもよく考えられていると母と感心しましたよ! 煙に困らされる事なく部屋の中に明かるさと暖かさをもたらせるものだと」

 オーシンは初めて見た時の感覚を思い出したのか興奮気味に言う。 逆に朋広はどんどん不安になっていった。 この世界に来た時に予想した、文明レベルの差が現実味を帯びてきたからだ。 その様子に長年連れ添った幸依が気付く。

「あなた? なんだか様子が変よ?」
「あー...... みんな、ちょっと計画を変更しようか」
「え? どうして?」
「一旦村から出よう。 商品の変更だ。 戻った方が早いかな?」
「パパ? 多分このまま進んだ方が村からはすぐ出れると思うよ? あそこからもう建物も畑もなくて柵があるし」
「え? 道一本に家が十軒もなかったぞ? これで村全部?」
「あらあら、よく分からないけど撮影現場のセットみたいな感じなのかしらねぇ」
「あー確かに。 感覚的にはそこを通った感じかも。 じゃあ村人は役者ってとこか」

 夫婦はオーシンには理解不能な会話を始める。 だがこの会話に幸依は引っ掛かるものを感じた。

「そうよ役者よ! さすがあなたね」
「え? 俺何か凄いこと言いました?」
「うんうん。 この村ね、大人と子供は見たけど、老人と正和や華音位の子を見てないのよ」
「「あ!」」

 幸依の言葉に朋広と華音がハッとして同調する。

「? 村の規模も住人に関しても特におかしな点はないと思いますが。 どこかおかしかったですか?」
「「「え!?」」」

 オーシンの言葉に朋広と幸依と華音が同調して驚く。 
 
 朋友達は村の入口でまずは視覚のみで得た情報を整理する事にした。 結局村人の誰からも声を掛けられる事はなかったので、余所者には閉鎖的な空間なんだろうと推測し、それも含めて計画の練り直しを始める。

「あれ? パパ、向こうからも馬車が一台くるよ? こっちのと違って荷台が布で覆われてる」
「幌つきの馬車ってやつかな、どれ...... って、え、どこ?」
「あれだってば。 ほら、まだずっと先だけど」
「は? 豆粒みたいな何かしか見えないけど」
「その豆粒みたいなのだって。 こっちに向かってきてる」
「まさか私の追っ手でしょうか!?」

 オーシンが身構える。

「ううん、見た限りじゃそんな感じじゃないみたい。 こっちより商人って格好。 お馬さんは同じ一頭」
「華音は随分目がよくなったのねぇ」
「えへへ」
「うーん、ここじゃ狭いから幅の広い場所を探して通してあげるか」

 朋広達は少し進み向かってくる馬車が通れる場所で荷台の整理を行う。 洗濯道具セットを回収し、煉瓦と木材各種を加える。 一行は気付いていなかった。 自分達がこの段階で『建材屋さん』と呼ばれる条件を満たしてしまっていた事に。
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