一家で異世界に引っ越ししたよ!

シャア・乙ナブル

文字の大きさ
47 / 84

46話 華音、兄と共に覚醒し アリマ、自らを変貌させる

しおりを挟む
 亜人を脅かした蟻の頂点、アリマは亜人を創造した神、アリアであると正和は推測した。 だが、彼女の言動は支離滅裂で自分の事がわかっていないようにも感じられる。 恐らくここに亜人の悲劇を引き起こした原因があるのだろう。 正和は家族と相談し、アリマに自分自身が何者であるかを自覚させる事で問題の解決を図ろうとしていた。

「じいちゃんはログハウスの入口があった場所わかる? わかるならそこに結界を張ってアリマさんを閉じ込めてから移動用の扉を守って」
「了解じゃよ」
「僕と華音はアリマさんの相手をするけど、直接の対応は華音に任せてもいいかな?」
「うん、いいよ。 任せてー」
「攻撃よりも防御重視で頼むよ。 僕が隙を見ながら彼女の記憶を引き出させるから」

 正和は同じ神でもアリマの現段階の力量は、シロッコに届いていないと判断している。 

「正和、父さんと母さんはどうすればいい?」
「プランBで」
「ないだろそんなの!」
「うん。 でも『この空間』で話がつけられるなら僕ら三人でなんとかなるから、父さんと母さんは向こうに戻っておいて。 むしろここで五対一だと狭すぎて危ない」

 正和は適当な理由を述べているが、真意は別の所にある。 そして勝算もきちんと考えていた。

「戦闘面ならじいちゃん、華音、僕だから」
「何を言うんだ正和! 父さんも必要な時には戦うぞ!」
「母さんだってあなた達を守る為なら戦うわよ!?」
「アリマさんよりも僕や華音の攻撃が父さん達に命中する可能性があるからなんだけど......」
「......退避しておこうか幸依」
「......そうねアナタ」

 朋広と幸依は応援の言葉を残して退避していった。

「さて...... これで全力をだせるだろ華音。 奇しくもこの展開はじいちゃんとの修行の形に近いもんな」
「!? な、なんの事か華音にはわからないなー」
「とぼけなくても大丈夫だよ、僕もじいちゃんと同じような事してたんだから」
「え? お兄ちゃんも? おじいちゃんがばらした訳じゃないの?」
「儂は何もしゃべっておらんぞ。 二人とも自分以外の家族には内緒でと言ってきた時には、やはり兄妹なんじゃなぁ。 とは思ったがの」

 シロッコは笑いながら言う。 華音はシロッコ相手に戦闘訓練をしていた。 きっかけは家族を守る為。 色々な好奇心もあったかもしれない。 正和も今後の事を考えて同じ頼みをシロッコにしていた。

「期待しとくよ? 華音」

 正和の瞳に赤い光が宿る。

「あれ、お兄ちゃんも......? なら華音もやっちゃいますかー」

 華音はアイテムボックスから二本の丸い棒を取り出す。 片手で握れるサイズで長さは短めだ。

「名付けて華音二刀流。 そして......」

 華音の瞳に金色の光が宿る。 それと同時に華音からの威圧感が増した。

「すごいな。 冷や汗がでたよ......」
「ふふーん。 まだパパやママには内緒にしておいてよ?」
「そこはお互いにね」

 正和は盾だけ取り出す。

「アリマさん。 真実を取り戻してもらいますよ」
「......うう」
 
 正和の呼びかけにアリマが反応した。 だが意識はまだ混濁状態にあるようだ。 

「もしじいちゃんが標的になっても防御主体で対応してね」
「それは構わぬが、相手も神なんじゃろ? 一筋縄ではいかんのじゃないかのぅ?」
「神レベル? 神格? そういうのはわからないけど、力は現段階でじいちゃんの方が上だと断言できるよ」
「なぜ言いきれるのかきいても?」

 正和はある一点を指差しながら言う。

「第一にアリマさんが力を解放したにも関わらず、結界は無事だと推測できる事。 証拠はそこの看板。 結界の内側のログハウスはなくなったのに、すぐ近くの結界で覆った看板は無傷」
「ほう、確かに」
「結界が残ってるって事はここは凄い狭い空間な訳で、やや形は違うけどじいちゃんと戦闘訓練をした......」
「あ! 結界でつくった四角い空間にそっくり!」

 華音が気付いて声をあげる。 華音達の修行場とは家の三階の空き部屋の中の事で、そこに結界(防音効果つき)を張って秘密裏に行っていた。

「そう。 そしてアリマさんが結界を破壊できないという事実は、じいちゃんの能力を力で凌駕できない証明になる」
「ふむ」
「また、アリマさんは精神的な能力の面でもじいちゃんにはおよばない」
「なんでそんな目に見えない部分までわかるの?」

 華音が正和に質問する。

「アリマさんと会話ができたからだよ。 華音」
「......どういう事かわかんない。 話せない方が良かったの?」
「アリマさんと言葉が通じたろ?」
「うん」
「なんで通じたのさ」
「え、だって日本語なんだからそりゃ通じるよ。 ......あ!」
 
 華音が気付いた。 シロッコも納得する。
 
「なるほど。 世界の基本言語を日本語にした儂の能力に無意識ながらも影響されておるという訳じゃな? 儂より力か抵抗力が上回っておれば日本語は使わんかったじゃろう」
「うん。 暗示がかけられるなら、僕の力も通用する可能性があって、狙いも実現できるかもしれない」
「じゃあその為に華音がお兄ちゃんの壁になってればいいんだね?」
「そういう作戦になるね。 ただ相手はじいちゃんとタイプが違うだろうから慎重に頼むよ?」

 三人は頷きあう。

「アリマさん、あなたは今のままではこの世界に存在する者全てを蟻にするまで止まる事ができなくなってしまう! 本来の自分を思い出してください!」
「うう...... 妾は...... 妾だ!」

 アリマが動いた! 狙いを正和に決めたのか距離を詰めようとしたがその間に華音が割ってはいる。

「そうはさせないよ!」
「邪魔をするな小娘!」

 アリマはそのまま華音に掌底をくりだすが、華音の左手で持った棒でいなされた。 アリマは払われた手を引きつつ、その反動を利用して蹴りを放つ。 華音が右手の棒でそれを反らすとアリマの背後に正和が回り込む。

「あなたは亜人の神だった。 神族と戦っていた記憶があるはずです」
「だまりゃ! 神族も貴様達も妾の敵ぞ!」

 アリマは正和の顔に裏拳を当てにいくが、正和はしゃがんでそれをかわす。 アリマの死角から華音が仕掛ける。

「華音を忘れないでね!」
「くっ! 下等な存在が小賢しい!」

 アリマは華音の攻撃を回避する。

「まだまだー!」

 華音の連続攻撃! アリマは華音の連続攻撃を全て回避する。

「え! 嘘でしょ!?」
「なめるな小娘!」
「アリマさん!」

 正和もアイテムボックスから角材を取り出し華音を援護する攻撃を行う。

「ええい、こうるさい!」

 アリマは正和の攻撃もかわし二人から少し距離を取る。

「なにアリマさんのあの回避力! まさか全然当たらないとは思わなかった。 自信なくしちゃうよ」
「......心眼と言いたいところだけど、頭の複眼によるものだろうね。 こちらも攻撃を当てる事が目的じゃないけど、素直にすごいね」
「お兄ちゃん。 華音、突撃するよ!」
「了解!」
「いい気になるなよ、童(わっぱ)どもが!」
 
 再び兄妹対アリマの攻防が始まる。 ハイスピードな接近戦が行われているのだが、全員が相手に攻撃を当てられない。 そんな中でも正和はアリマへの語りかけを続けている。 

(ほう、こういう偶然もあるものか。 華音ちゃんは身体能力と戦闘能力を向上させ、反射神経と感覚で相手の攻撃を避けておる。 対して正和君は思考の能力を極限まで高め、相手の先を何手も読んで攻撃を受けぬ。 正反対の性質の『武』と『知』が極まって同じ結果の『先読み』を発現させるとは実に興味深い)

 シロッコは感嘆のため息をもらす。

(そしてアリマは虫の特性...... この場合は複眼か? それを最大限活かして二人の攻撃を『見切って』いる。 一見、錯乱状態で素手のアリマが不利に見えるが、仮にも元神で蟻の頂点の存在ならまだ戦う為の手段は持っておると見てよいじゃろうな。 そうなると長引くと不利になるのは......)

 シロッコは二人に最適な援護は何か考える。

「妾の言葉を聞き入れぬばかりか、またしても刃向かうとは憎き神族よ!」
「僕達は神族ではありません! あなたの眷族である亜人と協力している者ですアリマさん!」
「眷族に協力する者がなぜその創造主の邪魔をするのか。 気に入らぬ!」
「お兄ちゃんを婿にって言ってたのに気に入らないとか勝手だよね!」

 華音が棒を振りながら言う。

「何? 婿? ! うう......」
「あ」
「ぐはっ!」

 華音の言葉でアリマが一瞬動きを止めた。 そこに華音の攻撃が命中してしまい、アリマは吹っ飛ばされるがすぐ結界のある位置の空中に停止する。 これは対象が結界を越えられない為に起きる現象だ。 吹き飛んだ威力が相殺されるまで空中に固定されるとはいえ、これ自体はダメージにならない。 与えたダメージは意図せず命中した分だけとなるが、その出来事はアリマに屈辱を与えるには充分だった。

「妾が...... この妾を殴り付けるとは...... よいだろう。 消滅が望みとあらば叶えてやる」
「え゛? お、お兄ちゃんの望みはアリマお姉ちゃんが優しい亜人の女神アリア様に戻ってくれる事だよ! 華音も一緒かなー」

 華音が慌ててアリマに言い訳するが、聞き入れられる訳もない。

「たわけた事を...... 妾の意に従っていた方が幸せだったと後悔させてやろう...... 妾の真実でな!」

 アリマが空中にいる状態で再び黒いオーラに包まれる。 だが先程のオーラとは禍々しさが比べ物にならない。

「あ、華音知ってるよ。 ......これなんかいけないやつだ」
「くっ......」
「ぬぅ、この力はなんじゃ!?」

どさり。 黒いオーラに包まれたアリマが地面に落下した。 オーラがアリマに吸い込まれる様にして姿が現れていく。 そこには......

「え、えええ!?」
「な、なるほど。 これなら確かに女王蟻じゃな」
「アリマさん...... 蟻魔......」
 
 サイズこそ大きくはないが、蟻の下半身とアリマの上半身を持つ存在が居た。

「まだ...... じゃ...... 妾の...... は......」
「......そう ......妾は ......闇より産まれし ......闇姫!」
 
 メキメキという音と共にアリマの容姿にさらなる変貌が加わる! 今度はオーラに包まれた視覚的に優しい変貌ではなく、一人の人間がいきなり狼男に変わっていくような、本能的におぞましさや恐怖感を訴えるような変貌だ。 あまりの予想外な展開に正和、華音、シロッコの三人も動けない。

「ひええ! こ、こんなのありなの? お兄ちゃん?」
「さ、さすがにこれは...... ありじゃない」
「まさか...... 力の根源が闇などとはありえん。 ありえんが......」
「ス...... ベテ...... ホロ...... ビヨ...... ソ...... シテ」
 
 変貌を成し遂げ、大きさも二メートル近くになったアリマが叫ぶ。 

「ワラワノ...... コドクトゼツボウトウラミ...... オモイシレェッ!」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...