一家で異世界に引っ越ししたよ!

シャア・乙ナブル

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48話 アリマ、過去の自分の夢を見て キエル、アリマに対し悩む

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 暗い...... 寒い...... 妾は......? ああ、そうか。 妾は不覚にも神族の魔法に敗れたのか......。 まさか神族が妾、神そのものに直接有効な『闇』の属性を扱えるとは思わなんだわ。 妾、亜人の神アリアがいなくなれば眷族の亜人達は苦戦するであろうか。 妾の意思は不滅な上に時が経てば妾は再び復活する。 その時こそ我が眷族の亜人と共に、崇める神を失った神族どもを滅ぼし、この世界を平和に導いてくれよう。 しばし妾を討てた高揚感を味わうがよい...... 復活の時が楽しみじゃの。


 暗い...... 寒い...... 妾は......?
意識ははっきりしておるが...... 身体の自由がきかぬし、周囲も何も見えぬ。 不完全に復活したのか? ......それにしては我が眷族の気配すら感じられぬ。 誰かおらぬのか!? 我が呼びかけに応えよ。 ......返事はない。 これは意識の覚醒が行われただけなのであろうか? なに、またしばらく眠り力を蓄えれば全てが妾の望む通りになるであろう。


 暗い...... 寒い...... 妾は......? あれからどれくらいの時間が流れた? わからぬ...... 見えぬし動けぬ。 神の転生による復活とはこのようなものであったであろうか? ......そもそも妾はなぜこのようなどこかわからぬ場所におるのかや? そもそも妾はなんの神であったのか? 誰か! 誰もおらぬのか!? 返事はない。 妾には目的があったはずじゃが...... 何も思い出せぬ。 妾は...... 妾が......


 暗い...... 寒い...... 妾は......? ここは...... 暗くて身動きが取れぬ......。 推測するに土の中か? なぜ妾が土中におるのだ? そもそも妾はなんじゃ? 妾は...... そう、神じゃ。 じゃがなんの? 妾が神なら司る眷族がいるはずじゃが...... そのような気配は感じられぬ。 と、すれば妾は新興の神なのであろうか? それならば眷族がおらぬ事にも合点がいくが、では何によって妾は産み出された? 世界の望みか? 世界の望む事とはなんじゃ?


 暗い...... 寒い...... 妾は......? そうかここは土中であったな。 そして妾は新興の神であった。 眷族を誕生させる力が足りなかった故、眠り、力を蓄えていたのであったわ。 妾が誕生してからどれくらいの年月がこの世界で経過したかはわからぬが、妾は暗く、寒いこの世界で気の遠くなる時間を孤独に過ごしてきた訳か。 しかし妾だけがなぜこのような時を過ごしているのじゃ? ぐ、頭が痛む...... まずは眷族を誕生させ、妾の世話を始めさせねばな。 孤独は...... 辛いし寂しい。


 ......暗い。 ここは...... どこかの洞穴か? 丸い空洞の中に妾はおるようじゃ。 妾? 妾はなんじゃ? ぬ? 何者かの気配がする。 これはこの世界の生き物か!? 妾に敵意は抱いておらぬようじゃが...... どうやら妾の世話をしておるのか? すると妾はまさかこの生き物の子供なのかや!? ......いや違う。 この生き物からは妾の波長を感じる。 ならばこやつは妾の眷族なのかの? では妾は眷族を統べる立場にあるという事じゃが...... まだ妾には世界の意思がわからぬ。 妾は何のためにこの地で産まれたのか......


 うう...... 頭が痛む。 妾の眷族はその数を増やしたが、妾は相変わらず暗い土中にある眷族がつくった『巣』の中じゃ。 妾はその中で女王の立場についておる。 眷族からの報告によれば、この世界は全てがこんな暗い世界ではないらしい。 土中から出ればそこには多種多様な生き物がいて、光溢れる場所でそれぞれ生活していると報告を受けた。 その者達によると我が眷族は『魔物』と呼ばれ、害をなす存在と分類されているそうじゃ。 だとすれば妾はその魔物の王という事になる。 世界はなぜ妾をこんな光も届かず何もない場所に誕生させたのか。 その答えにたどり着けそうな気がするのぅ。


 そうか分かった。 世界が妾を魔物の王として誕生させた意味が遂に。 妾の頭に直接世界の意思が流れ込んできたような感覚もあった。 妾は魔物、そして魔族の王として...... 他の種族を淘汰せねばならぬ。 これこそが世界の意思であったのだ。 駆逐した後に妾にこの世界の神になれという事なのじゃ。 そして世界を救う。 ならばこれを契機に妾は自らを...... そうじゃ、『アリマ』と名乗る事にしようかの。 ふと浮かんだ名ではあるが、妙にしっくりくるような気もするしよかろう。

 
 ......いよいよその時がきた。 侵攻を開始できる準備が整ったのだ。 狼煙をあげる場所はもう決めてある。 眷族からの報告によれば、妾達の巣の真上に光溢れる地に住まう者達の神殿があるという。 妾はそやつらの足下で踏みにじられるように生きてきた訳か。 ......許せぬ。 ......そうじゃ。 滅ぼすのは容易いが妾の庇護の名の下に眷族として組み込むのも面白いかもしれぬな。 神殿を奇襲する。 そやつらがどんな神を崇めておるかはしらぬが、妾が踏みにじってやろう。

(やめるのじゃ!)

 ......奴等は自らを亜人、我が眷族の事を蟻と呼んでいたようじゃ。 まぁ、呼び名などどうでもよい。 我が眷族による襲撃は大成功で、奴等に甚大な被害を与えてやった。 捕獲した亜人もかなりの数にのぼる。 異種を淘汰して世界を救うつもりなのだから、こやつらの命など妾にとってどうでもいいものでしかないのだが...... 妾は亜人にとって憎い敵であるのに、亜人は何故か妾の言う事に逆らわない。 先程の情報もこやつらからすぐに引き出せた。 ふーむ......。
 

(よせ、よすんじゃ! その先を決断してはいかん! それを行えばお主は本当に一人きりになってしまうのじゃぞ!)

 これから先、駒は多いに越したことはなかろうしの? これだけ妾の言う事に逆らわぬのであれば、慈悲の心くらい見せてやってもよかろう。 外様の眷族として妾の為に尽くすがよいぞ。

(そやつらが! そやつらこそお主の!)

 目の前の亜人達は色は違えど、我が眷族と同じ、蟻の姿にその見た目を変えていった。

「これを世界救済の為の第一歩とするのじゃ」

(何が救済じゃ愚か者! これで貴様は本当に孤独の世界を手に入れてしまったわ!)

 うぐっ、頭が痛い...... 胸もなんだか締め付けられる。 なんだこの痛みと感情は!? ぬ? なぜ妾は涙を流しておるのじゃ?

(婿殿が体を張ってまでお主の為に行動したと言うに、まだ呪縛に捕らわれておるつもりか、この痴れ者が!)

 う? 呪縛......? 婿......?

(そなたは...... 妾は亜人の神アリアであろうが!)

 あ...... あ゛あ゛! 妾はまた...... 一人はもう......

「大丈夫。 もう一人じゃないよ、アリマさん」

 そ、そなたは? ......そなたが妾と共に居てくれるのか? ありがたい。 ......? そなた怪我をしておるではないか。 なぜそんな怪我を...... あ、あああ!


「婿殿!」

 アリマはガバッと上半身を起こした。

「こ、ここは......? い、今のは夢か......?」

 アリマは辺りを見回す。 見たことのない場所に寝かされていたようだと考えながら...... 視線がある一点で止まる。

「む、婿殿!? 婿殿がなんで妾の隣で寝ておるのじゃ!? 妾は妾でも知らないうちに婿殿と、そ、そんな仲に!?」

 思わず赤くなった顔を両手で覆おうとして右手が何かを握っている事に気付く。 アリマの右手は正和の左手をしっかりと握っていた。

「あ...... そうじゃ...... 妾は......」

 アリマは夢ではない現実を思い出す。

「妾は...... 妾はなんて事を」

 胸が締め付けられると同時に後悔の念が押し寄せ、アリマの目から涙があふれだす。

「泣いている場合ではないぞ! 婿殿の反応が以前より遥かに弱くなっておる。 これは妾のせいじゃ。 婿殿? 婿殿?」

 正和に呼びかけたが反応はない。 アリマは涙を拭い、そのまま握っている正和の左手を引き寄せ両手で握る。

「婿殿。 命をかけてまで妾を救ってもらった事、嬉しく思う。 じゃが今後妾の世界にはそなたがいなければ意味がない。 どうか......。 ......?」

 そこで部屋の入口からアリマをうかがっている視線とアリマの視線がぶつかった。 アリマが固まる。

「あー...... 気が付いておったのか。 儂らの事は気にせず続けてもらって構わんぞ?」

 部屋の入口にいるシロッコが気を使う。

「!? ち、ちが、違う! こ、こ、ここ、ここ、これはその!」

 途端に真っ赤になってしどろもどろになるアリマ。 不審者感MAXだ。 しかし、シロッコに続いて入ってきたオワタ、そしてキエルを見て表情を引き締める。 キエルは下を向いていてアリマと視線をあわさない。 アリマも正和の手を離し、寝かされていた布団の上で姿勢を正す。

「そのぶんじゃと記憶は戻ったと判断してもよいのかの?」
「記憶に関しては妾にも全部戻ったかどうかまではわからぬが、此度は迷惑をかけた上に世話にまでなってしまったようで申し訳なく思っておる」

 すでに敵対する理由はない。 とアリマは付け加えた。 アリマは正和をちらりと見て、そのままキエルに視線を移す。 キエルは下を向いたままカタカタと全身を震わせている。

「そこの亜人の神官よ」

 アリマがキエルに話しかけるとキエルはビクッとして硬直する。 だが目線は下を向いたままだ。

「ふむ、そなたも我が眷族の姿にしてやろう。 その姿を蟻に変えるがよい」
「「え!?」」
「な、なぜそのような!」
 
 キエルを含めたその場の全員が、予想もしていないアリマの言葉に驚きアリマを見る!

「すまぬ、冗談じゃ。 やっとこっちを向いてくれたのう。 その服装、アリアに仕える神官の証であろう?」

 アリマの発言はキエルに自分と目線をあわさせるための詭弁であり、キエルに対して亜人への絶対の強制力は働かせていなかった。 シロッコとオワタはアリマの意図がわかり安心する。

「お、お主はすでに前科があるんじゃから発言には気をつけてもらわんと困るのぅ」
「じゃから謝っておるであろうが。 それよりも質問に答えてはもらえぬのかや?」

 シロッコが注意し、アリマはそれを軽く流す。 シロッコとオワタが様子を見ることに決め込むと、沈黙していたキエルが口を開いた。

「......はい。 確かにわたくしは亜人の神、アリア様に仕える身でございます。 ......え?」

 キエルは正和の介抱の為この部屋には訪れており、その隣で意識のないアリマの姿は見ていたのだが、亜人の災いの元凶としての認識があり、良い印象は持っていない。 キエルは一度目を伏せ、悲しげにアリマの質問に答える。 アリマはそれを確認すると、キエルが驚く行動にでた。
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