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51話 華音、飛竜を撃退して アズマド、木板に真実を記す
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アズマドは馬車の上で唸っていた。 アズマドの馬車が先を行き、後から朋広達の馬車がついてくる。 周囲もつい先程までの景色と何ら変わらないのんびりしたものだ。
(私は夢でも見ていたのだろうか? 白昼夢をこんな状況で?)
そんな訳はない。 アズマドは自分を否定する為にも朋広から譲り受けたマジックと木板を取り出した。
『○月×日
旅の途中、私が白昼夢を見た訳ではない事を証明するためこれを記す。 キエソナ村から近くの砦を目指し、知人の馬車とあわせて二台、人員は三名で隊列を組んで進んだ我々は、道程の半ばで運悪く飛竜に発見され、その獲物と認識された。 本来ならこの木板にはこんな内容ではなく、遺言でも書いてあった方がまだ真実味が増すであろうと自分でも思う』
「ははは、文字があっという間に乾いてスラスラ書ける。 本当に便利な道具だな、これは。 建材を売るよりこれを増産した方が財産を築けると思うのだが...... はぁ......」
アズマドは気を取り直して二枚目の木板を取り出して書き込んでいく。
『こちらは商人二人とその娘。 相手は上空で羽ばたく馬車よりもはるかに大きい飛竜。 直接見るのは初めてだが、これは勝負にならない。 あるのはただの蹂躙だと予感した私は積み荷を諦め、馬を犠牲にしてその間に逃げる覚悟を決めて知人のもとに駆け寄った。 砦の兵士はなんのための見回りだったのかと恨みながら。 知人の商人もその娘さんも動揺のあまり混乱してしまったのか、娘さんは何故か指で輪っかをつくって飛竜に向けて弾いている。 私はそんなおまじないみたいな事をしている場合じゃないと逃げる事を勧めたのだが......』
『おじいちゃんみたいに出来ないとかなんとか叫んで悔しがっている娘さんに、父親が売り物であろう煉瓦を渡した直後、私は信じられない光景を目撃する事になる。 まさかあれを投げるつもりか? 飛竜相手に投石でどうにかするなんて無茶だ。 そう言うつもりだったのだが...... バガン! という重い音がしたかと思うと飛竜が地面におちてきた。 地面でのたうち回っている飛竜に娘さんが、私達は急いでるので邪魔するならもう一発いく。 といった旨を告げると飛竜はピギャと鳴いて、大慌てで逃げて行った...... ようにしか私には見えなかったのだが、これが私の見た飛竜襲撃事件の真相なのである』
アズマドは書き終えるとそれを自分で読み直す。
「......なんだこれは。 自分で書いておいてなんだが、君には空想作家の才能があるかも知れませんねとお世辞を言ってしまうレベルだ。 こんなの誰も信じてくれないだろう。 だがこれが真実なんだからどうしようもない」
読ませた相手に日記なら広告の裏にでも書いてろとか文句言われそうだなぁ。 とぶつぶつ言っているアズマドだが、これが後世で『アズマド見聞録』として人気を博す書物になり、中でもこの部分が人気の高いエピソードのひとつとなって、色々改変・改編が加えられていくなどとは今の彼に知るよしもなかった。
(ちなみに改変版ではこの娘が指を弾いただけで飛竜が撃退されているシーンのものがあったり、飛竜がドラゴンになっているものもある)
飛竜を撃退してからは一行には何も起こらず目当ての砦へ到着したのだが、砦からは所々煙があがっているのがみてとれる。 かなり物々しい雰囲気で何かがあったのは明白だ。 入口ではアズマドと顔見知りの兵士が出てきて対応してくれた。
「お疲れ様です。 物々しい雰囲気ですが何かありましたか?」
「おおアズマドさん! よくこんなタイミングでここまで来れたもんだ。 実はモンスターに襲撃されたんだよ。 滅多にない事だったから皆大慌てでさ。 幸い撃退できたし死者も出なかったけど、怪我人が出て防壁も一部損傷しちまった」
このタイミングでモンスターの話題となれば心当たりはひとつしかない。
「飛竜による被害ですか」
そのアズマドの一言に兵士が驚く。
「なんで飛竜ってわかるんだい! 俺も見たのは初めてだってのに。 アズマドさん、実は飛竜の生態に詳しいのかい? だったら隊長と副隊長に協力してあげてくれよ。 隊長と副隊長はまた襲撃してくるって予想してるみたいなんだ」
「あ、いや、別に詳しい訳ではなく......」
アズマドは返答に困って考える。 すでに襲われ済みで、同行している彼の娘さんが投石で撃退しました。 などと説明しても信じられる訳ないだろうし、彼等も急いでいるのに拘束されたくはないだろう。 なので無難に答える事にした。
「彼等とここに向かう途中、上空を向こうに飛んでいく飛竜を見たのでそう思ったのです」
アズマドは飛竜が逃げて行った方角を指で指し示しながら兵士へ朋広達の紹介も行う。
「なるほど、とりあえず何もない方角へ行ってくれたのか。 だが襲撃された直後に雑貨屋と建材屋が来てくれたのはありがたい。 至急隊長達に連絡するから中に進んで待っていてくれ」
アズマドと朋広達は馬車を砦の中へ進ませ砦の馬小屋の近くにとめた。 砦の馬達がアズマドと朋広の(正確にはオーシンの馬だが)馬に関心を示している。
「アズマドさん、先程は上手く誤魔化してくれてありがとうございます」
朋広が礼を述べたが、アズマドはそれを首を振って否定した。
「いえいえ、事実を言っても信用されないでしょう。 むしろ私の方が命を救っていただいたようなもの。 お礼を言うのはこちらの方です」
アズマドはこれらの事もあり朋広達家族への関心を深めていく。
「しかし飛竜が出現した時私は取り乱してしまいましたが、お二人は冷静そのものだったのですね? 私はお二人の方が取り乱しておかしな行動をとっているものだとばかり......」
アズマドは頭を掻きながら勘違いした事を詫びた。
「いえ、アズマドさんの判断は間違っていませんよ。 どちらかと言えば私達が特殊なので。 焦る必要がなかった相手だった事もありますが」
「え? ひ、飛竜ですよ?」
「あ、最初見た時はみんな大騒ぎだったよな。 華音?」
「うんうん。 お兄ちゃんとニースが狙われたんだよねー」
朋広と華音が笑いながら思い出話をしている。 この飛竜の一件の真実はシロッコしか知らない事ではあるのだが。
「え? お兄さんがおられるんですか? と、いうかそこ笑い話なんですか?」
アズマドは笑えないし話についていくのがやっとだ。
「あの時も簡単に撃退しちゃったもので、見た目よりは弱いんだなぁ。 と」
「......さっきみたいに投石でですか?」
「いや、もっとこう...... まぁ、家にいる身内みたいなのがすごいんで」
朋広はシロッコの事を濁して言ったのだが、シロッコを知らないアズマドは一度だけ会った護衛のオーシンの事を言っているのだと判断した。
「朋広さん達は...... その、商人なんですよね? (こんな戦闘力の高い商人がいるものなのか?)」
「え? ええ、そうですよ。 現在はさっき話にでた息子の為に薬を探している状態なんですが」
この会話で朋広が薬を必要とした理由が解明されたが、その息子は亜人の神と戦い意識不明になっているとはアズマドには想像する事すらできないだろう。 ただ彼等の次元が自分の予想をこえていた事実だけを認識し、青い顔をして愛想笑いを浮かべていた。
「お待たせしました」
砦の建物から二人の男女がやってきて声をかけてくる。 その人物はアズマドとは面識があるのか、目線は朋広達を見ながら自己紹介してくれた。
「私がこの砦の指揮官で隊長のガーディ。 こちらが副隊長のアンです」
(私は夢でも見ていたのだろうか? 白昼夢をこんな状況で?)
そんな訳はない。 アズマドは自分を否定する為にも朋広から譲り受けたマジックと木板を取り出した。
『○月×日
旅の途中、私が白昼夢を見た訳ではない事を証明するためこれを記す。 キエソナ村から近くの砦を目指し、知人の馬車とあわせて二台、人員は三名で隊列を組んで進んだ我々は、道程の半ばで運悪く飛竜に発見され、その獲物と認識された。 本来ならこの木板にはこんな内容ではなく、遺言でも書いてあった方がまだ真実味が増すであろうと自分でも思う』
「ははは、文字があっという間に乾いてスラスラ書ける。 本当に便利な道具だな、これは。 建材を売るよりこれを増産した方が財産を築けると思うのだが...... はぁ......」
アズマドは気を取り直して二枚目の木板を取り出して書き込んでいく。
『こちらは商人二人とその娘。 相手は上空で羽ばたく馬車よりもはるかに大きい飛竜。 直接見るのは初めてだが、これは勝負にならない。 あるのはただの蹂躙だと予感した私は積み荷を諦め、馬を犠牲にしてその間に逃げる覚悟を決めて知人のもとに駆け寄った。 砦の兵士はなんのための見回りだったのかと恨みながら。 知人の商人もその娘さんも動揺のあまり混乱してしまったのか、娘さんは何故か指で輪っかをつくって飛竜に向けて弾いている。 私はそんなおまじないみたいな事をしている場合じゃないと逃げる事を勧めたのだが......』
『おじいちゃんみたいに出来ないとかなんとか叫んで悔しがっている娘さんに、父親が売り物であろう煉瓦を渡した直後、私は信じられない光景を目撃する事になる。 まさかあれを投げるつもりか? 飛竜相手に投石でどうにかするなんて無茶だ。 そう言うつもりだったのだが...... バガン! という重い音がしたかと思うと飛竜が地面におちてきた。 地面でのたうち回っている飛竜に娘さんが、私達は急いでるので邪魔するならもう一発いく。 といった旨を告げると飛竜はピギャと鳴いて、大慌てで逃げて行った...... ようにしか私には見えなかったのだが、これが私の見た飛竜襲撃事件の真相なのである』
アズマドは書き終えるとそれを自分で読み直す。
「......なんだこれは。 自分で書いておいてなんだが、君には空想作家の才能があるかも知れませんねとお世辞を言ってしまうレベルだ。 こんなの誰も信じてくれないだろう。 だがこれが真実なんだからどうしようもない」
読ませた相手に日記なら広告の裏にでも書いてろとか文句言われそうだなぁ。 とぶつぶつ言っているアズマドだが、これが後世で『アズマド見聞録』として人気を博す書物になり、中でもこの部分が人気の高いエピソードのひとつとなって、色々改変・改編が加えられていくなどとは今の彼に知るよしもなかった。
(ちなみに改変版ではこの娘が指を弾いただけで飛竜が撃退されているシーンのものがあったり、飛竜がドラゴンになっているものもある)
飛竜を撃退してからは一行には何も起こらず目当ての砦へ到着したのだが、砦からは所々煙があがっているのがみてとれる。 かなり物々しい雰囲気で何かがあったのは明白だ。 入口ではアズマドと顔見知りの兵士が出てきて対応してくれた。
「お疲れ様です。 物々しい雰囲気ですが何かありましたか?」
「おおアズマドさん! よくこんなタイミングでここまで来れたもんだ。 実はモンスターに襲撃されたんだよ。 滅多にない事だったから皆大慌てでさ。 幸い撃退できたし死者も出なかったけど、怪我人が出て防壁も一部損傷しちまった」
このタイミングでモンスターの話題となれば心当たりはひとつしかない。
「飛竜による被害ですか」
そのアズマドの一言に兵士が驚く。
「なんで飛竜ってわかるんだい! 俺も見たのは初めてだってのに。 アズマドさん、実は飛竜の生態に詳しいのかい? だったら隊長と副隊長に協力してあげてくれよ。 隊長と副隊長はまた襲撃してくるって予想してるみたいなんだ」
「あ、いや、別に詳しい訳ではなく......」
アズマドは返答に困って考える。 すでに襲われ済みで、同行している彼の娘さんが投石で撃退しました。 などと説明しても信じられる訳ないだろうし、彼等も急いでいるのに拘束されたくはないだろう。 なので無難に答える事にした。
「彼等とここに向かう途中、上空を向こうに飛んでいく飛竜を見たのでそう思ったのです」
アズマドは飛竜が逃げて行った方角を指で指し示しながら兵士へ朋広達の紹介も行う。
「なるほど、とりあえず何もない方角へ行ってくれたのか。 だが襲撃された直後に雑貨屋と建材屋が来てくれたのはありがたい。 至急隊長達に連絡するから中に進んで待っていてくれ」
アズマドと朋広達は馬車を砦の中へ進ませ砦の馬小屋の近くにとめた。 砦の馬達がアズマドと朋広の(正確にはオーシンの馬だが)馬に関心を示している。
「アズマドさん、先程は上手く誤魔化してくれてありがとうございます」
朋広が礼を述べたが、アズマドはそれを首を振って否定した。
「いえいえ、事実を言っても信用されないでしょう。 むしろ私の方が命を救っていただいたようなもの。 お礼を言うのはこちらの方です」
アズマドはこれらの事もあり朋広達家族への関心を深めていく。
「しかし飛竜が出現した時私は取り乱してしまいましたが、お二人は冷静そのものだったのですね? 私はお二人の方が取り乱しておかしな行動をとっているものだとばかり......」
アズマドは頭を掻きながら勘違いした事を詫びた。
「いえ、アズマドさんの判断は間違っていませんよ。 どちらかと言えば私達が特殊なので。 焦る必要がなかった相手だった事もありますが」
「え? ひ、飛竜ですよ?」
「あ、最初見た時はみんな大騒ぎだったよな。 華音?」
「うんうん。 お兄ちゃんとニースが狙われたんだよねー」
朋広と華音が笑いながら思い出話をしている。 この飛竜の一件の真実はシロッコしか知らない事ではあるのだが。
「え? お兄さんがおられるんですか? と、いうかそこ笑い話なんですか?」
アズマドは笑えないし話についていくのがやっとだ。
「あの時も簡単に撃退しちゃったもので、見た目よりは弱いんだなぁ。 と」
「......さっきみたいに投石でですか?」
「いや、もっとこう...... まぁ、家にいる身内みたいなのがすごいんで」
朋広はシロッコの事を濁して言ったのだが、シロッコを知らないアズマドは一度だけ会った護衛のオーシンの事を言っているのだと判断した。
「朋広さん達は...... その、商人なんですよね? (こんな戦闘力の高い商人がいるものなのか?)」
「え? ええ、そうですよ。 現在はさっき話にでた息子の為に薬を探している状態なんですが」
この会話で朋広が薬を必要とした理由が解明されたが、その息子は亜人の神と戦い意識不明になっているとはアズマドには想像する事すらできないだろう。 ただ彼等の次元が自分の予想をこえていた事実だけを認識し、青い顔をして愛想笑いを浮かべていた。
「お待たせしました」
砦の建物から二人の男女がやってきて声をかけてくる。 その人物はアズマドとは面識があるのか、目線は朋広達を見ながら自己紹介してくれた。
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