異世界に召喚されたが奴隷扱いされた私はエリート騎士様に溺愛される

つぐみ

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その18

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王都の見回りをしながら、ノアは仕事とは全く別のことを考えていた。
先程同じく見回り中のアラルドに「心ここにあらずだぞ」と注意を受けたが、悪いが今こちらはそれどころではない。

とまぁ、職務放棄とも言えるような悪態をつきながらも、ノアは昨晩のことを考えずにはいられなかった。

あの子の事だ。
あの子が自分に会いたいが為に駆けつけてくれたのは、柄にもなく天にも昇る気持ちだったのだが、問題はそれではない。

あの肩の傷。どうみても転んで出来るような物ではない。
間違いなく、鋭利な何かで斬られた跡だ。

……例えば、自分達騎士が扱うような剣で。

傷の角度からすると、後ろから切られたように思える。しかも素人の太刀筋じゃない。

騎士の人間か? それとも兵士?
何故? あの子が斬られる理由に検討がつかない。

まだ会って数日だが、自分は彼女に好感しか持っていないのだ。
とても罰せられる何かがあるようには、思えない。まぁ、自分以外の男が彼女に好意を持っているとすれば嫉妬で腸が煮え繰り返りそうだが。

随分と自分は彼女に入れ込んでいるようだと苦笑する。

それにしても、何故彼女は自分の治癒術に気付かなかったのだろう。
あれだけの魔力があれば、周囲の人間が気づきそうなものだが……。

そもそも、魔法の使い方を知らないなんてこと、あるのだろうか。
この世界では、魔法なんて呼吸と同じくらい自然の摂理で動いている。

それなのにあの子は、まるで初めて魔法を見たとでも言うように感動していた。

疑問はこれだけじゃない。
彼女がくれた青い薔薇。花だけでも珍しい世の中だと言うのに、青い薔薇とは。

その昔王宮で栽培されていた、青い薔薇。
確か、ノアが物心つくかつかないかくらいの頃だったと記憶している。

市場に滅多に出回らない青い薔薇を一度だけでも目にしたいと、木に登って王宮の庭を覗き見ようとしては騎士団に叱られていた。

珍しく栽培の難しいその品種は、ラムダの繁栄の証として重宝されていた。

もちろん荒れ果てたラムダでは今、青い薔薇はおろか花でさえ栽培が難しい。
それを彼女は、事も無げにノアに差し出してきたのだ。「綺麗だから」という理由で。

ラムダの者ならば王宮にまつわる青い薔薇の話は皆知っているはずだ。
繁栄の証でもあるそれは、今ではひどく高値で取引されている。もはや幻の花と言ってもいい。

しかも、だ。あの花には魔力が込められていた。
植物や生き物に魔力を込めることは酷く難しいとされている。生命に魔力が干渉するとなると、それだけ繊細な魔法付与が求められるし、魔力や剣術に抜きん出ているノアにだって出来ない。

おそらくあの青い薔薇は、しばらく枯れる事はないだろう。
あの子の魔法が付与されているから。

……おかしい。彼女はどこか、自分達とはズレている。

何かが噛み合わないのだ。
ただの女性なのに、時折見せる、あのいびつさ。

そしてノアにとって最大の収穫である、彼女がまだ未婚という事実。
未婚どころか恋人もいないと知って、どれほど胸が歓喜に震えたか。

叶うならあの時に求婚したかった。
いや流石にいきなり求婚は彼女が驚くだろうから、まずは外堀を埋めなくては。
怯えられてはたまったもんじゃない。散々いい人の皮を被ってきたというのに。


「あのさぁ、頼むから仕事してくんない? さっきから俺一人で巡回してんだけど」

「あぁ」

「いやいや、『あぁ』じゃねぇから! マジで給料天引きされればいいのにっ」


こいつ、うるさいなぁ。

アラルドの方が至極真っ当なことを言っているのは百も承知だが、こっちはかつてないほど真剣な悩みに遭遇しているのだ。ほっといてほしい。


「……おい、ノア。見ろよ」




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