むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス

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31話 夏祭り①

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夕暮れの屋敷には、金魚のような朱色の光が差し込んでいた。
 窓の外では、遠くの神社から太鼓の音が響いている。
 今日は待ちに待った夏祭りの日――期末の修羅場を乗り越えた、ご褒美のような一日だ。

「坊ちゃま、準備はお済みですか?」

 控えめな声がして振り向くと、沙耶香さんが立っていた。
 いつものメイド服ではない。
 今日は淡い藍色の浴衣に白の帯。髪も高くまとめていて、うなじがすっと見える。

「……似合ってますね」
「まぁ。お褒めいただけるなんて光栄ですわ」
「いえ、ただ……その、雰囲気にあってるなって思って」

 そう言うのが精一杯だった。
 “きれい”なんて言葉を出したら、完全に照れ負ける気がして。

 それでも、目が離せなかった。
 帯の結び目からふわりと香る石鹸の匂い、
 薄布越しにわずかに透ける肌のライン。
 理性の中で何かが軋む。
(……やばい、変なこと考えるな俺)

「……どうかなさいましたか?」
「い、いや! なんでも!」
 慌てて視線を逸らす俺に、沙耶香さんは小さく笑う。

「ふふ。では、坊ちゃまのお支度を整えましょう」
「えっ? べ、別に自分で――」
「お任せください。浴衣というものは、帯の締め具合ひとつで印象が変わりますから」

 器用な手つきで帯を結び直す沙耶香さん。
 背後から近づく気配と、かすかな息づかい。
 わずかに背中に当たる指先の感触に、思考がふわっと浮く。

(お、落ち着け……! これ、そういうのじゃないから!)

「はい。完了ですわ。よくお似合いですよ、坊ちゃま」
「ど、どうも……」

 心臓の鼓動が耳まで響いているのを隠すように咳払いした。

 玄関ホールに出ると、すでに他の三人が集まっていた。

「おっそーい! もう出ちゃうとこだったんだから!」
 橘が扇子をひらひらさせながら笑う。
 彼女は向日葵色の浴衣。明るく、彼女らしい元気な柄。
 髪をまとめて、ほんのり見える首筋が妙に眩しい。

(……うわ、いつもより大人っぽい)

 その隣では白石が静かに立っていた。
 薄い水色の浴衣に、白い帯。
 涼やかな見た目で、凛とした雰囲気がある。

(……うん、これぞ“正統派”。なんか風鈴が似合う)

 そして奥のソファには、美優さん。
 黒地に金魚柄の落ち着いた浴衣。
 大人の余裕をまとっていて、他の二人とは違う“色気”が漂っていた。

(うわ、反則級……。完全に大人の女だ……)

「ふふ、見とれてるのかしら?」
「い、いや! 確認してただけです!」
「確認ね。そういうことにしておくわ」

 美優さんの微笑みを見て、沙耶香さんが穏やかに言った。
「では、皆さま。準備が整いましたので出発いたしましょう」

 屋敷を出ると、街の夜気がふわりと肌をなでた。
 昼間の熱をわずかに残した風が、線香花火のように甘い。
 遠くから聞こえる笛と太鼓、風鈴の高い音、
 そしてソースと砂糖が混ざったような屋台の匂いが鼻をくすぐった。

「わぁ~、すごい人! もう、祭りって感じ!」
 橘が嬉しそうに笑って、ぱんっと手を叩いた。
 浴衣の袖がひらりと舞う。
 その明るさはまるで祭りの灯りみたいで、
 見ているだけで少し楽しくなる。

「坊ちゃま、はぐれませんように」
 沙耶香さんが、さりげなく俺の袖を取る。
 その仕草が自然すぎて、
 一瞬、手を握られたことさえ意識し損ねるほどだった。
 けれど、袖越しに伝わる体温が不意に強く感じられて、
 心臓が跳ねたのが自分でも分かった。

「なに食べる? たこ焼き? かき氷?」
「金魚すくいも気になります」
「ふふ、射的もありますよ。男子の腕の見せどころね」

 誰も止まらず、屋台の列を歩きながら次々に声を上げていく。
 橘はヨーヨー釣りの水面を覗き込み、
 白石は静かにうちわで髪を押さえながら人混みを見渡し、
 美優さんは「懐かしいわね」と微笑んでいた。

 提灯の光がそれぞれの横顔を照らす。
 赤、橙、金色。
 同じ光の下にいても、誰も同じ色には見えなかった。

 橘がふと、俺の方を振り返る。
「ねぇ、健斗くん。祭りってさ、こういう雰囲気だけでテンション上がるよね?」
「そ、そうだな。雰囲気がもう“非日常”って感じだ」
「でしょ? 日常より、ちょっとドキドキする感じ。ね?」
 軽く笑いながら言うその一言が、
 太鼓の音よりも強く胸に響いた。

 白石が隣から静かに言葉を添える。
「……浮かれすぎて怪我しないようにしてくださいね」
「わかってるって!」
「橘さんは“わかってる”って言った後でいつも転びます」
「なっ、バカにしてる!」
「言ってるそばから、浴衣が乱れている。胸見えちゃってるよ。」
 胸という単語に反応してしまいつい橘のほうを見てしまった。
「ちょっとー!今胸って単語に反応してこっち見たぞ。ここじゃまずいから。見たかったら後で見てもいいから。我慢しな、エロ助!」
橘に強く背中を叩かれてしまったが明らかにこちらが悪いので何も言い返せなかった。
「いいわねぇ、こういう掛け合い。青春って感じ」

 その声に振り向いたとき、
 ちょうど風が吹いた。
 みんなの髪が揺れ、提灯が小さく鳴る。
 夜風が肌をすり抜けて、うっすらと鳥肌が立った。

 屋台の明かり、笑い声、太鼓。
 そのすべてが混じり合って、心の奥をくすぐるようだった。

(――なんだろう、この感じ。祭りって、ただ楽しいだけじゃない)

 胸の奥に、妙な高鳴りがあった。
 夏の空気が心臓の鼓動と混ざり合って、
 世界全体が少し明るく見える。

「さぁ、坊ちゃま。最初はどの屋台に参りましょう?」
 沙耶香さんの穏やかな声が現実へと引き戻す。

「……うーん、どこでも。みんなの行きたいところで」
「じゃあ、あたし金魚すくい!」
「私は射的を見てみたいです」
「ふふ、決まりね。では行きましょうか」

 夜の参道の奥、屋台の光が続いている。
 その光の列の中へ、俺たちはゆっくりと歩き出した。

 笑い声と太鼓の音。
 ――そして、胸の中でひっそりと膨らんでいく何か。
 夏の夜が、確かに始まった。
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みんなの感想(1件)

Kenjiroh
2025.09.11 Kenjiroh

こんな上書きなら、、、経験したいと、
思いました(笑い)

解除

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