むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス

文字の大きさ
34 / 45

31話 夏祭り①

しおりを挟む
夕暮れの屋敷には、金魚のような朱色の光が差し込んでいた。
 窓の外では、遠くの神社から太鼓の音が響いている。
 今日は待ちに待った夏祭りの日――期末の修羅場を乗り越えた、ご褒美のような一日だ。

「坊ちゃま、準備はお済みですか?」

 控えめな声がして振り向くと、沙耶香さんが立っていた。
 いつものメイド服ではない。
 今日は淡い藍色の浴衣に白の帯。髪も高くまとめていて、うなじがすっと見える。

「……似合ってますね」
「まぁ。お褒めいただけるなんて光栄ですわ」
「いえ、ただ……その、雰囲気にあってるなって思って」

 そう言うのが精一杯だった。
 “きれい”なんて言葉を出したら、完全に照れ負ける気がして。

 それでも、目が離せなかった。
 帯の結び目からふわりと香る石鹸の匂い、
 薄布越しにわずかに透ける肌のライン。
 理性の中で何かが軋む。
(……やばい、変なこと考えるな俺)

「……どうかなさいましたか?」
「い、いや! なんでも!」
 慌てて視線を逸らす俺に、沙耶香さんは小さく笑う。

「ふふ。では、坊ちゃまのお支度を整えましょう」
「えっ? べ、別に自分で――」
「お任せください。浴衣というものは、帯の締め具合ひとつで印象が変わりますから」

 器用な手つきで帯を結び直す沙耶香さん。
 背後から近づく気配と、かすかな息づかい。
 わずかに背中に当たる指先の感触に、思考がふわっと浮く。

(お、落ち着け……! これ、そういうのじゃないから!)

「はい。完了ですわ。よくお似合いですよ、坊ちゃま」
「ど、どうも……」

 心臓の鼓動が耳まで響いているのを隠すように咳払いした。

 玄関ホールに出ると、すでに他の三人が集まっていた。

「おっそーい! もう出ちゃうとこだったんだから!」
 橘が扇子をひらひらさせながら笑う。
 彼女は向日葵色の浴衣。明るく、彼女らしい元気な柄。
 髪をまとめて、ほんのり見える首筋が妙に眩しい。

(……うわ、いつもより大人っぽい)

 その隣では白石が静かに立っていた。
 薄い水色の浴衣に、白い帯。
 涼やかな見た目で、凛とした雰囲気がある。

(……うん、これぞ“正統派”。なんか風鈴が似合う)

 そして奥のソファには、美優さん。
 黒地に金魚柄の落ち着いた浴衣。
 大人の余裕をまとっていて、他の二人とは違う“色気”が漂っていた。

(うわ、反則級……。完全に大人の女だ……)

「ふふ、見とれてるのかしら?」
「い、いや! 確認してただけです!」
「確認ね。そういうことにしておくわ」

 美優さんの微笑みを見て、沙耶香さんが穏やかに言った。
「では、皆さま。準備が整いましたので出発いたしましょう」

 屋敷を出ると、街の夜気がふわりと肌をなでた。
 昼間の熱をわずかに残した風が、線香花火のように甘い。
 遠くから聞こえる笛と太鼓、風鈴の高い音、
 そしてソースと砂糖が混ざったような屋台の匂いが鼻をくすぐった。

「わぁ~、すごい人! もう、祭りって感じ!」
 橘が嬉しそうに笑って、ぱんっと手を叩いた。
 浴衣の袖がひらりと舞う。
 その明るさはまるで祭りの灯りみたいで、
 見ているだけで少し楽しくなる。

「坊ちゃま、はぐれませんように」
 沙耶香さんが、さりげなく俺の袖を取る。
 その仕草が自然すぎて、
 一瞬、手を握られたことさえ意識し損ねるほどだった。
 けれど、袖越しに伝わる体温が不意に強く感じられて、
 心臓が跳ねたのが自分でも分かった。

「なに食べる? たこ焼き? かき氷?」
「金魚すくいも気になります」
「ふふ、射的もありますよ。男子の腕の見せどころね」

 誰も止まらず、屋台の列を歩きながら次々に声を上げていく。
 橘はヨーヨー釣りの水面を覗き込み、
 白石は静かにうちわで髪を押さえながら人混みを見渡し、
 美優さんは「懐かしいわね」と微笑んでいた。

 提灯の光がそれぞれの横顔を照らす。
 赤、橙、金色。
 同じ光の下にいても、誰も同じ色には見えなかった。

 橘がふと、俺の方を振り返る。
「ねぇ、健斗くん。祭りってさ、こういう雰囲気だけでテンション上がるよね?」
「そ、そうだな。雰囲気がもう“非日常”って感じだ」
「でしょ? 日常より、ちょっとドキドキする感じ。ね?」
 軽く笑いながら言うその一言が、
 太鼓の音よりも強く胸に響いた。

 白石が隣から静かに言葉を添える。
「……浮かれすぎて怪我しないようにしてくださいね」
「わかってるって!」
「橘さんは“わかってる”って言った後でいつも転びます」
「なっ、バカにしてる!」
「言ってるそばから、浴衣が乱れている。胸見えちゃってるよ。」
 胸という単語に反応してしまいつい橘のほうを見てしまった。
「ちょっとー!今胸って単語に反応してこっち見たぞ。ここじゃまずいから。見たかったら後で見てもいいから。我慢しな、エロ助!」
橘に強く背中を叩かれてしまったが明らかにこちらが悪いので何も言い返せなかった。
「いいわねぇ、こういう掛け合い。青春って感じ」

 その声に振り向いたとき、
 ちょうど風が吹いた。
 みんなの髪が揺れ、提灯が小さく鳴る。
 夜風が肌をすり抜けて、うっすらと鳥肌が立った。

 屋台の明かり、笑い声、太鼓。
 そのすべてが混じり合って、心の奥をくすぐるようだった。

(――なんだろう、この感じ。祭りって、ただ楽しいだけじゃない)

 胸の奥に、妙な高鳴りがあった。
 夏の空気が心臓の鼓動と混ざり合って、
 世界全体が少し明るく見える。

「さぁ、坊ちゃま。最初はどの屋台に参りましょう?」
 沙耶香さんの穏やかな声が現実へと引き戻す。

「……うーん、どこでも。みんなの行きたいところで」
「じゃあ、あたし金魚すくい!」
「私は射的を見てみたいです」
「ふふ、決まりね。では行きましょうか」

 夜の参道の奥、屋台の光が続いている。
 その光の列の中へ、俺たちはゆっくりと歩き出した。

 笑い声と太鼓の音。
 ――そして、胸の中でひっそりと膨らんでいく何か。
 夏の夜が、確かに始まった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

処理中です...