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30話 結果発表
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七月下旬。
梅雨が明けた校舎の窓から、真夏の光がまぶしく差し込む。
蝉の声が鳴きはじめ、放課後の廊下には熱気とざわめきがこもっていた。
今日は――期末テストの結果発表の日。
「わぁっ! ○○くん学年2位だって!」
「うちのクラス、平均高くない!?」
掲示板の前には生徒が群がり、そこら中で悲鳴と歓声が飛び交っていた。
俺も人の波を抜けて、自分の成績表を見上げる。
(……うわ、今回難しかったけど、なんとか上位に食い込めたな)
ほっと胸を撫で下ろす。
その瞬間――後ろから聞き慣れた二人の声が重なった。
「健斗くん!」
「けーんとくーん!」
白石と橘。
二人とも答案を手にして駆け寄ってくる。
そして同時に差し出してきた。
「見てください。今回、私たち……」
「まさかの同点なんだよ!」
俺は答案を見比べ、思わず口をあけた。
「え、ほんとに……ぴったり同じ点数……?」
「「そうなの!!」」
二人の声がハモった。
「どっちが勝ったか、これじゃ分かんないじゃん!」
橘が頬をふくらませる。
白石は、困ったように笑った。
「引き分けですね。……まさかここまで拮抗するとは」
「えー、あたし絶対勝ったと思ったのに!」
そのやり取りを見ていた俺は、そっと自分の答案を取り出した。
「……あの、ちなみに俺の合計点も出たけど……」
二人がのぞき込む。
「え……ちょっと待って、健斗くんも同じ!?」
「……えっ、ほんとに!?」
三人の答案の合計点、ぴったり一致。
数字が見事にそろっていた。
一瞬の沈黙のあと――
「「納得いかない!!!」」
二人同時に叫んだ。
「じゃあどうするの!? 夏祭りの勝負、どっちが誘うのよ!」
「決められませんね。公平を期すなら、再戦かしら」
「もうテストはいやぁぁ!」
(……そりゃそうだ)
その日の夕方。
勉強会で使っている屋敷のリビングは、まだ外の熱をわずかに残していた。
天井のシャンデリアから落ちる柔らかな光が、
テーブルに並ぶ答案用紙の上でゆらゆらと反射している。
「なるほど、まさかの全員同点、ね」
美優さんが紅茶をかき混ぜながら、涼しげに微笑んだ。
大学帰りらしいノースリーブのトップスに淡いロングスカート。
動くたびに肩先が少しだけ揺れて、
そのたびに軽い香水の香りがふわりと漂う。
「はい……」
俺がうなずくと、向かいのソファで橘がぐったりと背中をあずけた。
「も~、今日ほんと暑くない? 屋敷ってクーラー効いてるのにさぁ~」
彼女はブラかキャミソールが汗で透けたYシャツの首元をつまんでパタパタさせながら、
下敷きで風を作って顔に当てている。無意識に見てしまう。
「……橘さん、うるさいですよ。集中力が散ります」
白石がきっちり座りながらも、同じように首元を扇いでいた。
髪をまとめたうなじに一筋の汗が光っていて、
見ているだけで“夏”が伝わってくる。
「ねぇ白石さんもやってるじゃん」
「仕方ありません。空気がこもってますから」
「ふふっ、真面目な人が言うと説得力あるねぇ」
二人がそんな軽口を交わす横で、
美優さんは紅茶を一口飲み、静かに言った。
「三人そろって同じ点数なんて、珍しいわね。
でも、勝負がつかないなら――全員で行けばいいじゃない」
「えぇー!」
橘が頬をふくらませる。
白石も眉を寄せた。
「それだと、誰も“勝ち”じゃありません」
「ふふ、そうね。でも、“誰と一緒に行ったとき一番楽しいか”は、また別の話でしょう?」
その言葉に、橘が「出た出た~、美優さんの人生論!」と笑いながら下敷きをぱたぱたさせる。
白石は苦笑しながらも、内心では反論できずにいるようだった。
俺はというと、
(やっぱりこの三人がそろうと、空気が濃い……)
と、うなずくしかなかった。
そんな中、美優さんがカップを静かに置いた。
「それにしても……暑いわね。沙耶香さん、アイスティーもある?」
「坊ちゃま、紅茶のおかわりとアイスティーをお持ちしました」
声の方を振り向くと――
ちょうど扉が開き、沙耶香さんが入ってきた。
髪をゆるくまとめていて、薄いベージュのブラウスに淡いデニム。
普段のメイド服ではない。そして何より、乳袋がある。つい目に焼き付けてしまった。
落ち着いた雰囲気の中にもどこか艶っぽさがあった。
「沙耶香さん!? 来てたの!?」
「はい。坊ちゃまたちの期末結果を伺いに」
彼女は笑みを浮かべながら、テーブルの答案を一瞥する。
そして、すぐに小さく頷いた。
「三人同点……まぁ、見事に気が合うこと。――ご褒美として、夏祭りには私もご一緒いたします」
「……え?」
三人同時に固まる。
「もちろん、お世話係として、ですわ。坊ちゃまが迷子にならぬよう、きっちり手をお引きいたします」
にっこりと微笑む沙耶香さん。
その姿は穏やかそのもの――けれど、どこかで「私も負けませんよ」と言っているようにも見えた。
「え、えっと……」
俺は思わず目を泳がせた。
視界の中には、首元を扇いでいる橘、
真剣な顔で手帳を開く白石、
涼やかに笑う美優さん、
そして優雅に立つ沙耶香さん――。
四方向から視線が飛んでくる。
(な、なんでこうなるんだ……!)
「……じゃあ、結局、全員で行くってことか」
俺が呟くと、沙耶香さんが微笑んだ。
「ええ。仲良く“お勉強の成果”を祝うのです。
それが坊ちゃまらしい夏の始まりかと」
美優さんが軽く笑う。
「そうね。健斗くん、女性の扱いも立派な“社会勉強”よ」
「そ、そんな勉強いらないですって!」
橘と白石が同時に吹き出した。
リビングに夏の光が差し込み、
笑い声と紅茶の香りがゆるやかに混ざっていった。
梅雨が明けた校舎の窓から、真夏の光がまぶしく差し込む。
蝉の声が鳴きはじめ、放課後の廊下には熱気とざわめきがこもっていた。
今日は――期末テストの結果発表の日。
「わぁっ! ○○くん学年2位だって!」
「うちのクラス、平均高くない!?」
掲示板の前には生徒が群がり、そこら中で悲鳴と歓声が飛び交っていた。
俺も人の波を抜けて、自分の成績表を見上げる。
(……うわ、今回難しかったけど、なんとか上位に食い込めたな)
ほっと胸を撫で下ろす。
その瞬間――後ろから聞き慣れた二人の声が重なった。
「健斗くん!」
「けーんとくーん!」
白石と橘。
二人とも答案を手にして駆け寄ってくる。
そして同時に差し出してきた。
「見てください。今回、私たち……」
「まさかの同点なんだよ!」
俺は答案を見比べ、思わず口をあけた。
「え、ほんとに……ぴったり同じ点数……?」
「「そうなの!!」」
二人の声がハモった。
「どっちが勝ったか、これじゃ分かんないじゃん!」
橘が頬をふくらませる。
白石は、困ったように笑った。
「引き分けですね。……まさかここまで拮抗するとは」
「えー、あたし絶対勝ったと思ったのに!」
そのやり取りを見ていた俺は、そっと自分の答案を取り出した。
「……あの、ちなみに俺の合計点も出たけど……」
二人がのぞき込む。
「え……ちょっと待って、健斗くんも同じ!?」
「……えっ、ほんとに!?」
三人の答案の合計点、ぴったり一致。
数字が見事にそろっていた。
一瞬の沈黙のあと――
「「納得いかない!!!」」
二人同時に叫んだ。
「じゃあどうするの!? 夏祭りの勝負、どっちが誘うのよ!」
「決められませんね。公平を期すなら、再戦かしら」
「もうテストはいやぁぁ!」
(……そりゃそうだ)
その日の夕方。
勉強会で使っている屋敷のリビングは、まだ外の熱をわずかに残していた。
天井のシャンデリアから落ちる柔らかな光が、
テーブルに並ぶ答案用紙の上でゆらゆらと反射している。
「なるほど、まさかの全員同点、ね」
美優さんが紅茶をかき混ぜながら、涼しげに微笑んだ。
大学帰りらしいノースリーブのトップスに淡いロングスカート。
動くたびに肩先が少しだけ揺れて、
そのたびに軽い香水の香りがふわりと漂う。
「はい……」
俺がうなずくと、向かいのソファで橘がぐったりと背中をあずけた。
「も~、今日ほんと暑くない? 屋敷ってクーラー効いてるのにさぁ~」
彼女はブラかキャミソールが汗で透けたYシャツの首元をつまんでパタパタさせながら、
下敷きで風を作って顔に当てている。無意識に見てしまう。
「……橘さん、うるさいですよ。集中力が散ります」
白石がきっちり座りながらも、同じように首元を扇いでいた。
髪をまとめたうなじに一筋の汗が光っていて、
見ているだけで“夏”が伝わってくる。
「ねぇ白石さんもやってるじゃん」
「仕方ありません。空気がこもってますから」
「ふふっ、真面目な人が言うと説得力あるねぇ」
二人がそんな軽口を交わす横で、
美優さんは紅茶を一口飲み、静かに言った。
「三人そろって同じ点数なんて、珍しいわね。
でも、勝負がつかないなら――全員で行けばいいじゃない」
「えぇー!」
橘が頬をふくらませる。
白石も眉を寄せた。
「それだと、誰も“勝ち”じゃありません」
「ふふ、そうね。でも、“誰と一緒に行ったとき一番楽しいか”は、また別の話でしょう?」
その言葉に、橘が「出た出た~、美優さんの人生論!」と笑いながら下敷きをぱたぱたさせる。
白石は苦笑しながらも、内心では反論できずにいるようだった。
俺はというと、
(やっぱりこの三人がそろうと、空気が濃い……)
と、うなずくしかなかった。
そんな中、美優さんがカップを静かに置いた。
「それにしても……暑いわね。沙耶香さん、アイスティーもある?」
「坊ちゃま、紅茶のおかわりとアイスティーをお持ちしました」
声の方を振り向くと――
ちょうど扉が開き、沙耶香さんが入ってきた。
髪をゆるくまとめていて、薄いベージュのブラウスに淡いデニム。
普段のメイド服ではない。そして何より、乳袋がある。つい目に焼き付けてしまった。
落ち着いた雰囲気の中にもどこか艶っぽさがあった。
「沙耶香さん!? 来てたの!?」
「はい。坊ちゃまたちの期末結果を伺いに」
彼女は笑みを浮かべながら、テーブルの答案を一瞥する。
そして、すぐに小さく頷いた。
「三人同点……まぁ、見事に気が合うこと。――ご褒美として、夏祭りには私もご一緒いたします」
「……え?」
三人同時に固まる。
「もちろん、お世話係として、ですわ。坊ちゃまが迷子にならぬよう、きっちり手をお引きいたします」
にっこりと微笑む沙耶香さん。
その姿は穏やかそのもの――けれど、どこかで「私も負けませんよ」と言っているようにも見えた。
「え、えっと……」
俺は思わず目を泳がせた。
視界の中には、首元を扇いでいる橘、
真剣な顔で手帳を開く白石、
涼やかに笑う美優さん、
そして優雅に立つ沙耶香さん――。
四方向から視線が飛んでくる。
(な、なんでこうなるんだ……!)
「……じゃあ、結局、全員で行くってことか」
俺が呟くと、沙耶香さんが微笑んだ。
「ええ。仲良く“お勉強の成果”を祝うのです。
それが坊ちゃまらしい夏の始まりかと」
美優さんが軽く笑う。
「そうね。健斗くん、女性の扱いも立派な“社会勉強”よ」
「そ、そんな勉強いらないですって!」
橘と白石が同時に吹き出した。
リビングに夏の光が差し込み、
笑い声と紅茶の香りがゆるやかに混ざっていった。
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