47 / 195
ブルーバーグ侯爵夫人side③
しおりを挟む
ガーデンパーティーが、レイニー王子殿下との引き合わせの場だったと知ったのは数日あとのこと。
ディアナちゃんもいろいろと考えるわよね。
フローラも結婚に夢も希望も抱いてはいない気配はあったけど、エドガーとリリアさんのことは祝福していた。エドガーとはうまくいかなかっただけで、他の人ともそうだとは限らない。結婚そのものがイヤというわけではないでしょう。
「フローラもいつかはお嫁に行きますわ。現に学園を卒業したら結婚式の予定でしたでしょう? それが少し遅くなっただけですわよ」
「それは……そうだが。それはわかってるんだよ」
「わかっているのであれば、よいではありませんか?」
「だが、王子殿下の妃にとは考えていなかった」
そうですわね。一度お断りした時点で結婚は消えてしまった。消滅した以上二度目があるなんて思いませんものね。
「何が不満なのですか?」
普通は王子妃に選ばれたら名誉なことだと喜ぶべきことでしょう。王子妃になりたくてもなれない令嬢がたくさんいるというのに、それを喜ぶどころか嘆くとは。
「フローラと会えなくなるではないか」
まあ、まあ。そんなにムスッとした顔をなさらなくても。せっかくのハンサムなお顔が台無しですわ。それはそれで味があってよろしいですけど。
「どっちにしてもお嫁に行けば会えなくなるではありませんか」
「それは……だが、貴族同士だったら、もっと気軽に会えるだろう? 仕事だってあるのだからな」
そうね。相手が貴族であれば少なくとも仕事の接点はあるわね。嫁ぎ先だって夫人として家政を取り仕切るよりも研究や仕事で活躍することに重きを置くでしょうから、ブルーバーグ家との付き合いは必要不可欠ですものね。
「要するにフローラがお嫁に行くのが寂しいんですのね」
「……」
黙ってしまったわ。そんなに恨めしくジト目で見ないでくださいね。瞳が潤んでいるように見えるのだけれど。
まったく、世話の焼けること。
「でも、あなた。フローラが王子妃になるとは限りませんわよ。国王両陛下がおっしゃいましたでしょう? フローラの気持ち次第だと。娘の気持ちを大事にすると。フローラが了承しない限り結婚はありませんわ。王命も使わないということでしたから強制されることもありませんからね」
「フローラ次第。そうか、だったな」
ちょっとは元気になったかしら? 表情が明るくなってきたわ。
嫁に出す父親というものはみんなこんな感じなのかしら?
わたくしの時は両親も喜んで送り出してくれたように感じていたけれど、父も寂しい思いをしたのかしらね。今度母に聞いてみましょう。そしてよい対処法があるか相談してみるわ。
「そうですよ。いくら王子殿下とはいえ、フローラが気に入るとは限りませんしね。今日も招待されていますが、明日帰ってきたらどんな感じだったか様子を聞いてみますわね」
「ああ、頼む」
「フローラの答え次第で今後どうするか決めましょう。気持ちがないのに、ズルズルとつき合っても王家や王子殿下にも失礼に当たりますしね」
「そうだな。そうしてくれるか」
あらま、すっかり元気を取り戻したみたい。
「はい。わかりました」
わたくしは、にっこりと頷いた。余計なことは言わなくていいわね。フローラの気持ちが一番だもの。
一縷の望みというのかしらね、ローレンツは安心した顔をしている。
二杯目の紅茶の香りが食欲をそそって二個目のケーキがとっても美味しいわ。
王太子殿下にはお子様もいらっしゃるし、第二王子殿下にもお相手が決まり、あとは第三王子殿下だけ。
王妃陛下の美貌を受け継ぐ美麗な方だと言われている。
レイニー王子殿下の成人の儀の祝賀会以来、美貌も過ぎると災いになると噂されていた。そのせいかわからないけれど、王家主催の舞踏会などでも公の場に出ることはなく、わたくしたちも面識がない。
その時の記憶でもきれいな方だったから、成長されたレイニー殿下はどんな感じなのかしらね。
お会いできるのが楽しみだわ。
ローレンツも落ち着いたのか紅茶を楽しんでいる。
今度は彼でも食べられるお菓子を用意しようかしら。塩味系の方が喜んでくれるかもしれないわね。
「シャロン。相談があるんだが」
カップをソーサーに戻したローレンツが真顔になった。
「なんでしょう?」
「先日、チェスター貿易商会から商談の申し込みが来たんだ」
「チェスターって、チェント男爵家の商会ですわよね?」
リリアさんの実家。
「ああ。そうだ」
「今まで仕事でのつきあいはありましたかしら?」
「ない」
そうですわよね。なのにどうしたのかしら。
「商談の日は決まりましたの?」
「いや、どうするか迷っているところだ。もともと、取引のないところだから断ってもよいのだが、ちょっと気になってね」
「でしたら、面会してもいいのではないかしら。その席にわたくしも加えてくださいませ」
商談に乗るも断るも話を聞いてからでも遅くはないでしょう。
わざわざ、ブルーバーグ家の商会へと面談を申し込むのですもの。度胸があるわね。それにこちらに益があることかもしれませんしね。
チェント家の事業は代替わりしてご子息が運営していると聞いているわ。
リリアさんの一件以来、一度会ってみたいと思っていたのよ。
ディアナちゃんもいろいろと考えるわよね。
フローラも結婚に夢も希望も抱いてはいない気配はあったけど、エドガーとリリアさんのことは祝福していた。エドガーとはうまくいかなかっただけで、他の人ともそうだとは限らない。結婚そのものがイヤというわけではないでしょう。
「フローラもいつかはお嫁に行きますわ。現に学園を卒業したら結婚式の予定でしたでしょう? それが少し遅くなっただけですわよ」
「それは……そうだが。それはわかってるんだよ」
「わかっているのであれば、よいではありませんか?」
「だが、王子殿下の妃にとは考えていなかった」
そうですわね。一度お断りした時点で結婚は消えてしまった。消滅した以上二度目があるなんて思いませんものね。
「何が不満なのですか?」
普通は王子妃に選ばれたら名誉なことだと喜ぶべきことでしょう。王子妃になりたくてもなれない令嬢がたくさんいるというのに、それを喜ぶどころか嘆くとは。
「フローラと会えなくなるではないか」
まあ、まあ。そんなにムスッとした顔をなさらなくても。せっかくのハンサムなお顔が台無しですわ。それはそれで味があってよろしいですけど。
「どっちにしてもお嫁に行けば会えなくなるではありませんか」
「それは……だが、貴族同士だったら、もっと気軽に会えるだろう? 仕事だってあるのだからな」
そうね。相手が貴族であれば少なくとも仕事の接点はあるわね。嫁ぎ先だって夫人として家政を取り仕切るよりも研究や仕事で活躍することに重きを置くでしょうから、ブルーバーグ家との付き合いは必要不可欠ですものね。
「要するにフローラがお嫁に行くのが寂しいんですのね」
「……」
黙ってしまったわ。そんなに恨めしくジト目で見ないでくださいね。瞳が潤んでいるように見えるのだけれど。
まったく、世話の焼けること。
「でも、あなた。フローラが王子妃になるとは限りませんわよ。国王両陛下がおっしゃいましたでしょう? フローラの気持ち次第だと。娘の気持ちを大事にすると。フローラが了承しない限り結婚はありませんわ。王命も使わないということでしたから強制されることもありませんからね」
「フローラ次第。そうか、だったな」
ちょっとは元気になったかしら? 表情が明るくなってきたわ。
嫁に出す父親というものはみんなこんな感じなのかしら?
わたくしの時は両親も喜んで送り出してくれたように感じていたけれど、父も寂しい思いをしたのかしらね。今度母に聞いてみましょう。そしてよい対処法があるか相談してみるわ。
「そうですよ。いくら王子殿下とはいえ、フローラが気に入るとは限りませんしね。今日も招待されていますが、明日帰ってきたらどんな感じだったか様子を聞いてみますわね」
「ああ、頼む」
「フローラの答え次第で今後どうするか決めましょう。気持ちがないのに、ズルズルとつき合っても王家や王子殿下にも失礼に当たりますしね」
「そうだな。そうしてくれるか」
あらま、すっかり元気を取り戻したみたい。
「はい。わかりました」
わたくしは、にっこりと頷いた。余計なことは言わなくていいわね。フローラの気持ちが一番だもの。
一縷の望みというのかしらね、ローレンツは安心した顔をしている。
二杯目の紅茶の香りが食欲をそそって二個目のケーキがとっても美味しいわ。
王太子殿下にはお子様もいらっしゃるし、第二王子殿下にもお相手が決まり、あとは第三王子殿下だけ。
王妃陛下の美貌を受け継ぐ美麗な方だと言われている。
レイニー王子殿下の成人の儀の祝賀会以来、美貌も過ぎると災いになると噂されていた。そのせいかわからないけれど、王家主催の舞踏会などでも公の場に出ることはなく、わたくしたちも面識がない。
その時の記憶でもきれいな方だったから、成長されたレイニー殿下はどんな感じなのかしらね。
お会いできるのが楽しみだわ。
ローレンツも落ち着いたのか紅茶を楽しんでいる。
今度は彼でも食べられるお菓子を用意しようかしら。塩味系の方が喜んでくれるかもしれないわね。
「シャロン。相談があるんだが」
カップをソーサーに戻したローレンツが真顔になった。
「なんでしょう?」
「先日、チェスター貿易商会から商談の申し込みが来たんだ」
「チェスターって、チェント男爵家の商会ですわよね?」
リリアさんの実家。
「ああ。そうだ」
「今まで仕事でのつきあいはありましたかしら?」
「ない」
そうですわよね。なのにどうしたのかしら。
「商談の日は決まりましたの?」
「いや、どうするか迷っているところだ。もともと、取引のないところだから断ってもよいのだが、ちょっと気になってね」
「でしたら、面会してもいいのではないかしら。その席にわたくしも加えてくださいませ」
商談に乗るも断るも話を聞いてからでも遅くはないでしょう。
わざわざ、ブルーバーグ家の商会へと面談を申し込むのですもの。度胸があるわね。それにこちらに益があることかもしれませんしね。
チェント家の事業は代替わりしてご子息が運営していると聞いているわ。
リリアさんの一件以来、一度会ってみたいと思っていたのよ。
5
あなたにおすすめの小説
お妃候補を辞退したら、初恋の相手に溺愛されました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のフランソアは、王太子殿下でもあるジェーンの為、お妃候補に名乗りを上げ、5年もの間、親元を離れ王宮で生活してきた。同じくお妃候補の令嬢からは嫌味を言われ、厳しい王妃教育にも耐えてきた。他のお妃候補と楽しく過ごすジェーンを見て、胸を痛める事も日常茶飯事だ。
それでもフランソアは
“僕が愛しているのはフランソアただ1人だ。だからどうか今は耐えてくれ”
というジェーンの言葉を糧に、必死に日々を過ごしていた。婚約者が正式に決まれば、ジェーン様は私だけを愛してくれる!そう信じて。
そんな中、急遽一夫多妻制にするとの発表があったのだ。
聞けばジェーンの強い希望で実現されたらしい。自分だけを愛してくれていると信じていたフランソアは、その言葉に絶望し、お妃候補を辞退する事を決意。
父親に連れられ、5年ぶりに戻った懐かしい我が家。そこで待っていたのは、初恋の相手でもある侯爵令息のデイズだった。
聞けば1年ほど前に、フランソアの家の養子になったとの事。戸惑うフランソアに対し、デイズは…
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる