婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

きさらぎ

文字の大きさ
61 / 195

レイ様からの手紙Ⅱ

しおりを挟む
「お母様? どうかされましたか?」

 固まったまま動かないお母様に声をかけます。
 すると、やっと我に返ったのか

「あっ、いえ、なんでもないわ」

 平静を装うように、菓子皿に手を伸ばしたお母様はクッキーを一口齧りました。

「美味しいわね。でも、ローナの砂糖漬けが甘い分、もう少し砂糖をひかえてもよさそうね」

 私も試食してみました。
 サクッとした食感は合格ですが、お母さまの言う通りで甘すぎました。上にトッピングしているローナはグラニュー糖をまぶしているので、甘さがくどくなってしまったようです。

「そうですね。では、砂糖控え目のものも作ってもらいましょうか?」

「それがいいわね。砂糖の種類も変えてみてもいいかもしれないわ」

 お母様の言葉に私も頷きます。
 種類によって砂糖の甘さも違いますから、試してみるのもいいかもしれません。
 
「もう一度、レシピを確認して練り直してみます」

「そうね。それがいいわね。わたくしも協力するわ」

 クッキーはもう少し工夫が必要ですね。いろいろアイデアを出して考えてみましょう。
 いろんな種類のクッキーを作って、みんなで食べ比べをしてみたらどうかしら。
 クッキーは改良の余地ありということでお母様と意見が一致したので、私は紅茶を飲んで一息つきました。

 そういえば……
 クッキーで話が飛んでしまいましたが、手紙の件はどうなったのでしょう。

「ところで、お母様。レイニー殿下より時々手紙が届くと思うのですが、よろしいですか?」

「それは、あなたが良ければよいのだけれど、どんな経緯で手紙をやり取りすることになったの? レイニー殿下もお忙しい方でしょうし」

 私は昨日の出来事をお母様に説明しました。

「サンフレア語でって。まあ、難度の高いことを……」

 お母様はビックリ眼で話を聞いています。普通は考えもしないことでしょう。母国語と違って難しいですから時間も取られますしね。

「それで、さっそくお手紙が届いたのですけれど」

「えっ? 昨日の今日で?」

 お母様もまたもやビックリしています。
 やっぱり、そうですよね。
 
 約束はしたものの果たされるかどうかは、あまり期待はしていませんでした。その時のノリで、ついうっかり口にされたのかもしれませんしね。
 ですから、私もまさか今日だとは思いませんでした。ちょっと苦笑いです。

「はい。それで、その内容が……北の宮の珍しい花を見に来ないかというお誘いでした」

「そう。それで、フローラはどうしたいの?」

 お母様は優雅な仕草で紅茶を飲むと私に問いかけました。

「お断りするわけにもいかないでしょうし、来週リチャード殿下の授業が終わった後に行ければとは思っています」

 この時間なら丸一日スケジュールを開けておけばいいので、自分としては都合がいいのですよね。また別の日となるともう一日開けなくてはいけないので、時間の効率が悪くなるのです。
 花の見頃がいつかはわかりませんが、来週がダメなら再来週で、とも思っているのですけど。
 レイ様のスケジュールと合えばですけれどもね。
 
「フローラ。あなたも忙しいのだから、無理に行くことはないと思うわよ。ダメなときはお断りしてもいいのよ?」

「……あの、お断りしてもいいのですか?」

 お相手は王族ですし、王子殿下ですけれども。

「ええ、大丈夫よ」

 お母様は自信満々に大きく頷きました。
 お断りする。頭にはありませんでした。すっかり行く気でしたし、珍しい花にも興味があります。

「確かに忙しいですけれど。でも、授業が終わった後にお願いしようと思ってますし、花を見るだけならそんなに時間はかからないと思いますから、大丈夫ですよ」

 あらかじめわかっていれば時間の調整は出来ますし、仕事は前もってやるか後にずらせばいいですしね。支障をきたさないようにすればよいことです。決して難しいことではありません。
 
「ふふふっ。そんなに深刻な顔をしなくてもいいわよ。ちょっと心配しただけよ。無理強いされているのではってね」

「それはありません。レイ様はお優しい方ですし一緒にいてとても楽しいですから、決して無理やりとかではありませんからね。お母様」

 誤解のないように言っておかなくては。
 少々、強引な所はありますけど、決してイヤではないわ。

「わかったわ」

 納得してくれたようです。
 澄ました顔でクッキーをつまんでますけど、紅茶を飲んでますけど。
 でも、お母様、顔が緩んでいませんか? なんでしょう、笑いをこらえているように見えるのですけれど。
 私、変なこと言ってませんよね?

 なんとなく居た堪れない空気を感じていると二杯目の紅茶が運ばれてきました。その後は別の話題に切り替わり、久しぶりにお母様とのお茶の時間を満喫したのでした。
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お妃候補を辞退したら、初恋の相手に溺愛されました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のフランソアは、王太子殿下でもあるジェーンの為、お妃候補に名乗りを上げ、5年もの間、親元を離れ王宮で生活してきた。同じくお妃候補の令嬢からは嫌味を言われ、厳しい王妃教育にも耐えてきた。他のお妃候補と楽しく過ごすジェーンを見て、胸を痛める事も日常茶飯事だ。 それでもフランソアは “僕が愛しているのはフランソアただ1人だ。だからどうか今は耐えてくれ” というジェーンの言葉を糧に、必死に日々を過ごしていた。婚約者が正式に決まれば、ジェーン様は私だけを愛してくれる!そう信じて。 そんな中、急遽一夫多妻制にするとの発表があったのだ。 聞けばジェーンの強い希望で実現されたらしい。自分だけを愛してくれていると信じていたフランソアは、その言葉に絶望し、お妃候補を辞退する事を決意。 父親に連れられ、5年ぶりに戻った懐かしい我が家。そこで待っていたのは、初恋の相手でもある侯爵令息のデイズだった。 聞けば1年ほど前に、フランソアの家の養子になったとの事。戸惑うフランソアに対し、デイズは…

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

処理中です...